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誰が正しいのか、誰を信用していいのか、自分の見たものを信じていいのか、足元の地面がぐらぐらするような不安感がたまりません。。。
「いま見てはいけない」が一番よく出来てる気がする。
解説は、デュ・モーリア作品と映画との関連をきちんと語っていて親切だと思う。
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映画『赤い影』の原作となった表題作をはじめ、日常を歪める不条理あり、意外な結末あり、天性の語り手である著者の才能を遺憾なく発揮した作品五編を収める粒選りの短編集。
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『レベッカ』『鳥』で有名なデュ・モーリアの短編集。短編と言うにはやや長いものばかりだが……。
デュ・モーリアの持つ不穏な感覚が堪能出来る1冊。表題作を始め、心理小説ともミステリともつかない作品がざわざわと読者の心を刺激している。中でも『ボーダーライン』は秀逸。
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これはもう一読くらいしたい感じ。タイトルのダブルミーニングとか、皮肉でひねった結末とか。「十字架の道」のような群像劇は相変わらず好き。デュモーリアっぽいのは、表題作と、「ボーダーライン」かな。
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短編集。冒頭では「普通」だった主人公が徐々に常軌を逸していく……というパターンが多かったような。設定としてはものすごいことが起きそうなのに、予想していたほどのことは起こらずに、終わってしまう(短編ですからね)。くるぞ、くるぞ、くるぞ……こーなーいー(もしくは「そこまでかー」)という感じで。でもこれがクセになりそうです。「第六の力」は長編で読んでみたいですね。
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・ダフネ・デュ・モーリア「いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集」(創元推理文庫)は表題作を含めて全5作、約420頁の短篇集である。最近の文庫は活字が大きいといつても、単純平均で80頁ある。長めの短篇といふところであらう。いかにもデュ・モーリアといふ感じの作品が収められてゐる。やはりおもしろい。
・巻頭の表題作「いま見てはいけない」は「赤い影」として映画化されてゐる作品である。未視感といふのであらうか。いや、起きるべき未来が見えてしまつた、あるいはまだ起きてゐない出来事を見てしまつたことから起きる悲劇である。ヴェネチアに滞在中のジョンとローラの夫婦にイギリス人老姉妹が関はつて事件が起きる。構成も起承転結がきつちりできてをり、老姉妹と知り合つてからの2人の心理の推移がよく分かる。これはジョンが老姉妹を嫌ひ、ロー ラは引かれるといふだけのことなのだが、個人的には、ジョンが老姉妹を嫌ふ様子がたぶんに教科書的といふか、紋切り型といふか、それにもかかはらずおもしろい。さう、ジョンがいかにもそれらしく老姉妹を嫌ふがゆゑに、ここに事件の起きる気配を漂はせて読む者を引きつける。しかも、まだ起きてゐない3人を見 てしまつて以後のジョンの行動もまた、所謂スリルとサスペンスに満ちてゐてなかなかおもしろい。要するに、これがデュ・モーリアなのである。映画化された だけのことはある。次の「真夜中になる前に」も似た感じの作品である。主人公の教師がクレタ島での休暇中に体験したスリルとサスペンス(といふほどのもではないか)である。起承転結もはつきりしてをり、3人の登場人物の描写もまた分かり易い。絵を描くのに最適なバンガローではあつても、それが最も外れに位置してゐたために起きる、これもまた悲劇であらう。不躾な米国人夫妻と知り合つて別れるまでの主人公の心理がおもしろい。先のと同様に、追ひつめられてい く、あるいは考へすぎていくのは、ある意味、紋切り型ではあつても、それがやはりこの作品にふさはしい。これらとはいささか異なるのが「ボーダーライン」である。父が死んだことにより、かつての父の親友を訪ねることにしたといふ物語である。父と友との別れの原因を突きとめるためにアイルランドまで行つて主 人公が知つたのは……最後にどんでん返しがあると言つては言ひすぎか。主人公は相手をだましたつもりでゐたのに、実はだまされてゐたといふことである。これも構成的によくできてゐる。初めのうちは何だこれはと思つてゐるのだが、そのうちに引き込まれていく。ところが、最後の「第六の力」はさうはいかない。 SF仕立てであるらしいが、あまり良い出来とは思へない。少なくとも私はかういふのは好きではない。アイデアを消化できずに終はつたのであらうか、内容的に中途半端であつて、とてもSFとは思へない。更に言へば、ここには先の作品のやうな雰囲気がない。「十字架の道」もおもしろくない。これも「第六の力」 同様である。物語は現代のエルサレム巡礼といふところであらう。その人々の行動が描かれる。従つて、一つのきつちりとしたストーリーはない。個々のエピ ソードの積み重ねである。ゲッセマネを求めての散策等で��登場人物の描き分けはなされてゐても、そのエピソード自体が私にはおもしろくない。どの登場人物 も不平不満を述べるばかりである。そもそもこれがおもしろくないうへに、その行動も、そこから生じる出来事もおもしろくない。これでは物語がおもしろくならうはずがない。そんなわけでこの作品集、私には前3編と後2編が対照的に思はれて、巧拙、良し悪しとに二分されたのであつた。
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これを読みながらずっと「レベッカ」を思い出していた。「昨夜、わたしはまたマンダレイに行った夢を見た」という冒頭の一文から、ミステリアスで繊細な物語は始まっていた。ここに収められた短篇にも、「レベッカ」と同様の叙情が漂っている。そのストーリーテリングを堪能できる一冊。
「レベッカ」では、謎めいた物語に引き込まれるのと同じくらい、舞台となるマンダレイという土地や、そこに建つ邸宅などに魅せられたように思う。奥深く、底の知れない気配が立ちこめていた。本書でも、「真夜中になる前に」のクレタ島や、「十字架の道」のエルサレムなど、その土地こそが主役なのではないかとまで思わせる舞台が、それぞれ異なる魅力を持って描かれている。
中でも圧巻なのは表題作のベネチアだ。ひたひたと水に洗われる古い街が目の前に立ち現れてくる。映画になっているらしいが、まことにさもありなん。場面場面が目に浮かぶような気がする。不安で不穏な空気がこれ以上美しく似合う街もないだろう。
ゆったり贅沢な読書を楽しんだが、一つだけ、最後の一篇「第六の力」にはやや違和感があった。他の五篇とは趣が違っていて、これはない方が全体としてまとまりがあったのではないかなあ。
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『レベッカ』が大好きなので短編集も読んでみた。日常の生活や人間関係における心の機微や、ありきたりなようで意外な人間模様を、鮮やかにまたシニカルに描き出す傑作揃いだった。「十字架への道」で前歯が折れてしまった夫人をいたわる大佐が印象的。日々の生活をこうもドラマチックに描かれると、私の人生もそう捨てたものではないような気がしてくるから不思議だ。
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この中には5編の短編がおさめられているが、一番好きなのは「十字架の道」。好みで評価は別れると思うけど、すべて私は好みです。この人の作品はもっと読みたい。
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前半の3作は終盤になるまで何とも言えない不穏な空気が漂い、話がどこへ向かうか分からないハラハラ感にページを捲る手が止められない。ただ予想外のオチは、イマイチなものもゾッとするものもあったけれど、総じて『鳥』の方が好み。
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古いファンタジー短編集
新刊で登場しているが、1960年代の古い作品だ。悪い意味ではない。十分に新鮮な物語fである。
普通の夫婦を襲う悲劇のきっかけが近未来の透視であったという「いま見てはいけない」。なかなかにおもしろい。どうなるんだろう?とワクワク感が先行する。
二番目の作品はイマイチわからない。「真夜中になる前に」というサスペンス調のタイトルだが、内容も含め意味がわからない。
驚きのラストという意味では「ボーダーライン」は傑作だなぁ。父親の驚愕の真相がラスト数行で明らかになる。ラブロマンスを交えなければさらによかったと思うけれど、すばらしいオチで満足。
交互に変な作品が出てくる気がするんだが、「十字架の道」は登場人物が多いからか、読むのに苦労した。人物像が脳内に結実しないから、だれがだれかわからなくなるという(日本人が読むときの)海外小説にありがちな混乱の中で物語が終わってしまった。
短編中唯一のSF色を持つ「第六の力」は楽しいけれど、オチがオカルトになってしまい楽しくはないな。
1960年代の作品という意味ではとてもすばらしいと思う。そうだなぁ、そこまで古くはないけれど、シャーロック・ホームズの色かなぁ。
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五篇からなる短編集。
「いま見てはいけない」
映画「赤い影」の原作。
幼い娘を亡くした夫婦がヴェネチアで老姉妹に会う。
妻は、亡くなった娘さんがあなたのそばにいると言われ、悲しみに暮れていたところを救われるが、夫はそんなことを言う老女を胡散臭く思う。
「真夜中になる前に」
絵を描くことを趣味とする教師が、ギリシャに旅行に出かける。
泊まったホテルでいかがわしい夫婦に出会う。
「ボーダーライン」
病床の父のもとに見舞いに行った娘の前で、突然父が亡くなった。
娘は、父と最後に見ていたアルバムに写っていた旧友を訪ねることにする。
「十字架の道」
エルサレムのツアー引率をする予定の牧師が病に倒れたため、代理を務める牧師をはじめとして、旅行客たちに次々と起こるハプニング。
「第六の力」
知能障害のある少女を使い、白血病で死期の近い青年の生命エネルギーをコンピューターに取り込もうとする研究者の物語。
翻訳が良くないのか、少し読みにくいがよく出来た短編だった。
映画にもなった「いま見てはいけない」は、不思議な雰囲気が漂い面白い。
是非、映画も観てみたいと思った。
「十字架の道」では、様々なハプニングも去ることながら、登場人物が特徴があり面白い。残念なのは、司祭と牧師がごっちゃになっているとしか思えない残念な翻訳。
「第六の力」は、揺れる心を描く作品が多い作家さんには少し異色な作品とも言える。サイエンスミステリーとでも言うのだろうか。
何となく不思議だったり嫌な感じだったりする作品集。
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最初この作品を知ったのは偶然観た映画「赤い影」。とても好きな世界観の映画で、原作の『いまは見てはいけない』は更に期待を裏切らなかった。表題作はもちろん、傑作集というだけあって他の作品も漏れなく楽しめる。20年前に読んだ「レベッカ」や「鳥」も再読してみよう〜。
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難解な(?)作品もあれど、やっぱり読後大満足。こうなると図書館で借りた『鳥』も手に入れたくなってきた。
映画『赤い影』の原作「いま見てはいけない」。休暇で好きな絵を描くためクレタ島を訪れた教師に人生を変える出会いが「真夜中になる前に」。亡き父の死に際の後悔の声を聞き、父の旧友に会いに行くヒロイン「ボーダーライン」。キリスト巡業の跡を巡るエルサレムツアーの英国人たちの群像劇「十字架の道」。周囲から隔絶された施設で何が研究されているのか「第六の力」。
個人的には「いま見てはいけない」と残酷なラストが効いてる「ボーダーライン」が面白かった。
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目次より
・いま見てはいけない
・真夜中になる前に
・ボーダーライン
・十字架の道
・第六の力
ゴシックサスペンスの小説『レベッカ』で有名な、ダフネ・デュ・モーリアの短編集。
全体像が見えないことによるドキドキ感は健在で、「どういうこと?どういうこと?」と手さぐりで読み進めていくことの快感。
特に表題作の「いま見てはいけない」は、なんとなく結末が想像できるのではある。
けれど、押し寄せる不安で、結末を確認しないではいられない。
ただ、カタルシスを得られるかと言えば、それはない。
この短編集全体がもやもやを抱えたまま沈んでいくような読後感。
「ボーダーライン」はアイルランド問題、「十字架の道」はキリスト教をもっと知っていれば理解が深まったのだろうか。
私の中で消化不良のまま残されている。
「第六の力」
映画化作品が多いデュ・モーリアだけど、これについては清水玲子で漫画化を希望。
絶対合うと思うんだ、彼女の作風と。
オカルトと科学の融合?混濁?
濃密なイギリス臭漂う作品集。
全部違う作風なのに、全部イギリスだったわ。