投稿元:
レビューを見る
【自殺の名所を訪れる、様々な人間たち】「死」の気配を濃厚に漂わせる、富士の樹海。訪れる人々が生むドラマをこの世ならざるものが見守っている。魔力に満ちた連作短編集。
投稿元:
レビューを見る
樹海といえば、富士の樹海を指す。多くの自殺志願者を吸い寄せる樹海。鈴木光司さんの新刊は、樹海をテーマにした作品集である。
「遍在」。望み通りに命を絶った中年男性だが、なぜか意識が分離し、その場に残された。幽体離脱か? 自らの肉体が醜く朽ち果てる様を眺める、男性の意識。どんな気持ちなのか、察する術はない。どうして彼は自身を救えなかったのか。
「娑婆」。樹海に行くも死に切れず、誰かの遺品を持ち帰った女性。持ち主に興味を持ったことがきっかけで、過去に向き合うことになる。連鎖と呼ぶにはあまりにも酷だし、できすぎだが、これが彼女にとっての転機になるか。
「報酬」。遺体の処分を命じられ、樹海に向かう2人。ところが、「遺体」は車のトランクの中で、目を覚ました…。助かるために、さてどうするか。その筋の人間相手に、大した度胸と交渉力だと思ったら…何だよそのオチはっ!!!
「使者」。1枚の写真からスキャンダルに巻き込まれ、引退した女優。スクリーンから消えて久しい彼女が、取材を受けている。元女優、記者、カメラマンは因縁で結ばれていた。樹海との関わりが薄い気がするが、これはその後の伏線だった。
「奇跡」。かつて目前で逃がした標的を、偶然見かけた探偵。元依頼者にしてみればいい迷惑である。この男のために、どれだけ苦労したか…。色々と奇跡すぎて、笑うしかない。樹海で人生を好転させる例もあるとだけ書いておきましょう。
「禁断」。心中するはずだった男女。ところが…。ありがちな2人の生い立ち。読みどころは壮大な生命論なのでしょうか。
人間の本能は「生」であると思いたい。僕は樹海に近寄りたくない。
投稿元:
レビューを見る
6篇からなる連作短編集。
死と向かい合う人たち。樹海での死を選ぶ者。
他人の手により命を落とす者。
映像であれば伝わると思われるストーリーの核がボヤけてしまい残念。
徹底的に暗く、怖く描いて欲しかった。
投稿元:
レビューを見る
言わずと知れた自殺の名所である富士の樹海を舞台に綴られる連作群像劇。なかなかどんよりする話ばかりで読み心地も暗いのですが。あんなところで自ら死を選ぶ羽目にはなりたくないよなあ、と切に思います。
なんといっても冒頭一作の「偏在」がそりゃもう恐ろしくて仕方ありませんでした。これはかなりきつい拷問だよなあ。いくら死ぬのが楽でも、あとでこんなのになるかもしれないと思ったら……頑張って生きた方がましじゃ?
投稿元:
レビューを見る
死の樹海、死体の描写がすごい。不幸の連鎖。辛いのは、家がないことじゃなくて、愛してくれる人間が身近にいないことだよ。生きるだけ生きる。シンプルつながっている。
投稿元:
レビューを見る
正直いうと、かなり読みづらいものがあった。
話がいろんな方向にいって、集中力を保つことができなかった。
悪いのは、本か? 自分か?
投稿元:
レビューを見る
少しずつ前の章と繋がりがあるところもある。
が、そんな都合よく?!とも思った。
ま、小説ですからね。
最初の話が一番強烈だったかな。
自分が朽ちていく様を見るのはイヤだな。
投稿元:
レビューを見る
樹海で自殺した男と、その他大勢の人たちの話。
面白いかどうかの評価が、難しい話。登場人物の関係が複雑過ぎて、覚えてられないから、わけがわからないまま終わる。
投稿元:
レビューを見る
鈴木氏初読み。樹海にまつわる短編集。
1つ目の話がゾワッとしたから、他のもさぞかし怖いのかと思ったらそうでもなかった。
投稿元:
レビューを見る
リングを思いだし
読み始める。
短編は苦手だが、繋がりがあるようですが、
途中から繋がらない?
どうも気持ちが乗らず、
読み終わっても、
うーん…という気分。
投稿元:
レビューを見る
なかなか、久しぶりの鈴木光司さんの当たりを引いた気がします。読み進めていくのがとても楽しかったです。ありがとう。
投稿元:
レビューを見る
樹海を軸に色んな人が繋がっていくわけだけども、なんかイマイチ煮えきらないというか、ガツンとくるエピソードがなくて、どうにも盛り上がらんかな。
とはいえ、樹海と言えば自殺、ということで、いろんな自殺した人、しようとする人のエピソードが盛りだくさん。特に何もかも捨て去ってホームレスになったおっさんの言葉が、ある種の仙人のようで良かった。これぞ悟り。
投稿元:
レビューを見る
鬱々と読む。年間二万人とも三万人とも言われる自殺者。その多くは首を吊る。そして、富士山の樹海に入り込む人も少なからず。躊躇して思いとどまる人、決行する人、自殺に至る事情も様々な思念による。生きることと死ぬ意味と人生の重みを訴えているのか?ホラー的でもなく、連作短編なようでそうでもなく、読み難くちょっと読むのにもしんどかったなという印象。
投稿元:
レビューを見る
図書館。ホラーが読みたくて。
「使者」はよかった。よかったというか、以前から気になっていたALSについて考える一助となってくれた。前向きにもなれた。
「偏在」のラストは、母を亡くしている私にとってはホラーではなく、肯定的なものに思えた。
他は、私の気がそぞろだったからか、あまり中に入ってこなかった。
投稿元:
レビューを見る
5年ぶりくらいに本を読んでいる。いま、一話の『遍在』を読み終わったところ。初めはなんのこっちゃ、というタイトルだったけれど、最後でしっかり回収されていて秀逸だった。
たしかに、今私の後ろには原田正吾という魂が遍在しているのかもしれない。
次の『娑婆』が楽しみ。娑婆って刑務所から出た時の言葉のイメージがないけどどんなのだろう。
娑婆の初めに「ためつすがめつ」と言う言葉が出てきた。知らない言葉だ。あちこちの向きからよく眺める様子、らしい。
「木で鼻をくくる」も、よく見るが意味を知らなかった。無愛想、と言う意味だそう。
『娑婆』読み終わった。息子を愛せず虐待に走った井口輝子が、最終的に孫である少女を引き取る手段を考える、という結末。
井口輝子と原田正吾には確かなつながりがあり、二人は出会ってすらいないものの、樹海で確かに運命を交わらせたのだと思う。井口輝子が虐待した息子が、原田正吾を虐待した父親を介護施設で殺すという連鎖が、えもいわれぬ美しさと無情さを表している。
つまりそれが『娑婆』と井口輝子が呼ぶ現実である。
『報酬』読み終わった。歯が抜けた場所から神経がむき出しになり、それを引っ張る、という描写があまりに生々しく、痛みの描写の中でもかなり想像しやすかった。
細田剛という男の今際の際の妄想が大半を占めており、最後に浮かぶ美しい女性は観音像。もしや胸に置かれた観音像が綺麗な幻を見せてくれたのかとも思う。
神谷の保身的な異常性も、竹村の中途半端な善人面もリアリティがあり面白い。私はどちらかと言うと竹村の気持ちに共感してしまうが、もしその場にいたらどうしていただろうか。やはり自分の手で人を殺す、というのは味わいたくないので、竹村と同じことをすると思う。もちろん、竹村と同じく手を止めることなく、僅かではあるが人殺しに加担してしまうという意味だ。
『使者』読み終わりました。様々な因縁が絡み合うという意味で、『娑婆』を更に読み解いたような作品だと感じた。基本的な登場人物は4人、篠沢遠子、藤田尚子、長谷川和人、そして遍く行き渡る者。⇽あまねく、と読む。この遍く行き渡る者は時折ちゃちゃを入れてくる、いわば観測者であり、遍在した意識であり、原田正吾であるのだろう。今もきっと私の後ろにいる。
そんな遍く行き渡るものの目線で読む『使者』は、たしかに分かりやすく点と点が繋がっているが、登場人物たちには全く理解のできないことである。それぞれがそれぞれの経験を憤然と思い出し、回想し、なんだか考えさせられるなあ、という結論に至るのみ。そのようなことが現実には溢れているのだろう。
唯一真実の欠片を掴んでいる篠沢遠子は、きっともうすぐ原田正吾の仲間入りをすることだろう。その時、我が息子を背後から覗くのだろうか。
『奇跡』読み終わりました。題名のとおり、奇跡にまつわるあれこれが、事細かに説明された章だと感じた。つまりは、奇跡などないということである。もしくは、様々な人の力と命と努力に、「奇跡」という名前がついているだけに過ぎないのかもしれない。
中村幸伸という、奇跡に愛された男は、遠子の息子、杉本晶(現在は高迫比呂人)に関する全ての奇跡について知った。もっとも遍く行き渡る者に近づいたと言っても良い。奇跡というのはただ、無数の誰かの力によって支えられた現象だということを彼は知った。素晴らしい収束だ。
また、矢掛弘、という奇跡に恵まれなかった男についても注視すべきだ。彼は逃げ、逃げ続け、逃げる度に戦うことを強いられた人間だ。皮肉なことに逃げれば逃げるほど苦境に追い込まれてしまう。
生き方を考えさせられる良い例だと思う。矢掛の人生は惨めなものであったが、そのお陰で彼の愛する遠子の息子は順調に画家としての人生を歩んでいるのである。
最後の『禁断』読み終わりました。あの、細田剛を殺した神谷の母が出てくるとは思いもしなかった。
そしてまた、遍く行き渡る者にひとつ、魂が加わった。
宮下和之という男は、医者をめざしたが失敗し、親にも見放されたシャブ中の男。そして、神谷の母になるであろう女、君子。宮下は自殺に成功し、宮下に殺してもらうはずだった君子は宮下の手際が悪く死ねず、生き残った。
閉ざされたテントの中で死んでいたのは宮下だ。前作「奇跡」で中村幸伸に見つけられたテントの白骨死体、あれはとうの昔に死んだ宮下で、またも繋がりが浮き彫りになった。
また、作中描かれる宮下の妄想も面白い。長ったらしく抗弁を垂れていたが、つまりは植物になりたいそうだ。宇宙にまで話が飛躍していて、私も生まれ変わるならタンポポがいいと思うことがあるが、彼のように深く考えたことは無かった。あまりにも長く語るので退屈したが、後に君子も同じく長話に退屈していたことが書かれ、君子と心が通じたことを嬉しく思った。
早々に遍く行き渡る者に加わった宮下が、愚かにも希望があると錯覚している君子を客観視するシーンも面白い。その客観視を生前にできていればと思うが、きっとそれは叶わない。
私も一生その局地にたどり着くことは無いので、背中に原田正吾と細田剛と矢掛弘、そして宮下を感じながら生きていこうと思う。
読後、本の後ろにある作者の紹介を読んだが、めっちゃ有名な人なん?リングって聞いたことある。ホラー映画だよね。ホラー作家なのを読み終わったあとに知った。個人的に、『樹海』はホラーでは無いと思いました。
全てが最終的につながり、気分の好い読後感。個人的にはかなり生に対して肯定的な作品だと思いました。