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どの人物も主人公のオムニバス調の物語、感動の場面も思わずにやりと笑顔になる場面もあって一気に読み進められる。
台湾高鉄の開通が軸になっているだけあって台北だけでなく、高雄や太魯閣、台中など台湾の各地の様子が伝わりすぐに行きたくなるガイドブックのよう。
中国語でのニュアンスや海外で仕事をするなかでの葛藤が懐かしく、映画化しても楽しめそうな作品。
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久々に小説を読んだなぁと思える良作。
ちょうど読み終わった所で、北海道新幹線が年間48億円の赤字かもという記事。がタイムリーでした。
台湾の空気感、人間関係。思考の違い。どれをとってもドラマチックで毒のないストーリーだったと思います。
いつか台湾新幹線を乗ってみたいと思いました。
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台湾での新幹線敷設や日本と台湾の関係を背景に、様々な人達の人生のひとコマを描き出す、オムニバス短編集。
・・・じゃあなくて・・・
普通なら主人公ごとに短編になりそうなところ、新幹線の海外進出が決まるところから開業までの様々な時点ごとに、章立てになり、それぞれの人物の「今」が語られる。
その語りの合間に、台湾の風、湿気、濃い緑が感じられて、本当はこっちが主人公なのかもと思わせる。
いくつかの恋愛(!?)も繰り広げられるが、おとぎ話めいてて、紅豆湯圓(?)のように、なつかしく、さっぱりした甘さ、かな。
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久々にキュンキュンしながら読んだ。男性作家の小説でキュンキュンするっていままで経験したことがないかも。
作者がこの小説は台湾へのラブレターだとインタビューで語っていたが、読んで納得。台湾好きの私にはたまらない内容だった。台湾の空気感が伝わってくるし、台湾のいい人がたくさん出てくる。また台湾を好きな人もたくさん出てくる。
台湾人、日本人さまざまな人の人生がからみあってところどころホロリとした。
人生残りわずかであろう勝一郎と、未来の発展成長を感じさせる春香人豪らが同じ新幹線に乗っている様子が、人と人とのご縁やら人生そのものをあらわしているようでとても好き。
まだ台湾新幹線に乗ったことがない。乗る前に、もう一度この小説を読み返してこころして読みたい。
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「台湾に新幹線が走る」という、実際にあった事業を背景に、日本人、台湾人、国と時代を越えて交錯する人々を描いた作品。
時代は2000年〜2007年。主人公は多田春香、26歳(2000年当時)。東京生まれ、神戸育ち。大手商社勤務で入社4年目、未婚、彼氏あり。台湾での高速鉄道プロジェクトのメンバーに選ばれ、開業まで台湾支局働くこととなる。
入社4年目でビッグプロジェクトに抜擢されるということは、かなりデキる女で、エリート採用なのだろう。(設定が関西の私大出身とあったので、うーん、なんとなくだけど、神戸女学院大とか、武庫川女子大とか、そういうとこ出てそう。偏差値高めのお嬢様系女子大で成績トップ、な感じ。それか無難に関関同立。)実際、ハードな仕事をこなしながら疲れを表に出さず、台湾に馴染み、楽しんでいる様子は、「仕事がデキる」だけでなく「人間的に相当デキる!!」んだと思う。こういう人って見てて安心できるというか、気持ちいいとさえ思うんだよね。分かってても、自分には無理だけど(笑)
春香の彼氏は、ホテルのフロントマンで、大きな会社ではあるけど、まあ、つまり、一般職。なんかこういう組み合わせって、うまく行かないのでは・・・と思ってると、案の定。遠距離恋愛って難しいよねえ。お互い常にそばにいなくても平気ということだし、つらい時にそばにいてくれない、いられないし。彼氏が人生つまづき始めてる一方で、彼女(春香)は台湾で仕事もプライベートも充実した日々を送っている・・・というのは、彼氏的にはかなりつらい状況のはず。なんかちょっと分かる!!彼氏の気持ち!!
他にもいろいろ思ったことはあるのですが、「台湾に新幹線が走る!」ということに関して思ったことは、このプロジェクト、決して日本の鉄道会社(史実では、JR東海とJR西日本)だけのものではなく、いろんな会社と人たちが携わっていた、ということ。だって主人公の多田春香は、JRの社員ではなく商社の人間。車両も作らない、レールも敷かない、運転もしない。そんなたくさんの人たちがたくさん携わって、このプロジェクトが成り立っていたんだなあ。普段全然意識してこなかったこと。
フィクションではあるけどかなり史実に基づいている(と思われる)ため、感情移入しやすく、またいろいろ想像できて楽しかった。台湾、私ははっきり言って中国との区別もついていないくらいなので、もっと勉強して、一度行ってみたいなあ。食べ物もおいしそうだし、もちろん新幹線にも乗ってみたい。(駅弁も食べたい!)
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湾生の祖父がいて、初めての台湾ひとり旅で春香のような出会いもありました。(すぐ終わってしまったけど) 台湾との不思議な素敵な絆。
それから何度も台湾を訪れていますが、帰ってきたなぁ、と思うあの匂いと暖かな人たちが大好きです。 今年も訪台予定。
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勝一郎パートの度に亡き祖母を思い出して泣いてしまった。
祖母も台湾からの引き揚げ者。その後、一度も台湾へ行く事は無かった。連れていきたかったや話を聞きたかった等々ぐわーっと思いが出てきてしまった。「路」の内容ではなく、祖母に想いを馳せる読書となった。
台湾は好きな場所だ。旅行の度に親切な方にお世話になった。駅でお寺でバスでお店で。本当にありがたいです。嬉しいです。
春香のような素敵な出逢いはまだないけれど、次に行った時はあるかもしれない!笑
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読み進めながらそんな感じがしていたけどやはりで、新聞連載小説(読売新聞)だった。ストーリーのテンポがそんな感じがしたんだよね。あと、台湾新幹線開通に向け奮闘する人々を中心とした物語というのが、マニッシュな新聞文化としては好みそうな感じ。そのなかでも、さすがは吉田調というべきで、ビジネス小説のようになってしまいそうなところに愛とか人の心の機微がしっかり入れ込められた佳作。かなりの長編で読後の満足感も高し。
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最後の数ページになって、収拾つくんだろうかと心配になった。読了後やっぱり半端な感じ。それぞれの人間関係や恋愛感情がなんとも不可思議。まず春香の両親は何年も娘を台湾に仕事に行かせて、ほとんどアクションがないとはびっくりする。そしてその春香の生活が仕事を中心に数年が過ぎて行く。恋人がいると言っても年に一二度会うだけ。あれっと思うと一年が過ぎているという設定。もっと恋愛に揺れてもおかしくない年齢のはずなのに悟りきったような生活ぶり。皆がいうようにファンタジー。
台湾で新幹線に乗って高雄から台北に行ったのを思い出したけど感慨はわかなかった。
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「路(ルウ)」。読後まず絶妙なタイトルだなと思った。台湾新幹線開業への路が少しずつ作られていく間に、その路を作るのに携わった人々の人生という名の路も少しずつ作られていく。
台湾が親日国というのは、知っていたが本作品で親日度合を肌で感じたように思う。
吉田さんの作品は交錯する人間模様の描き方がいつも緻密に設計されているので、読んでいて飽きない。本作品もやはりそうで、三分の一くらい読んだあたりから、ページをくる手が止まらなくなった。
あと、台湾に行きたくなった。人間模様だけでなく、その場の台湾の熱気、楽しさも伝わってくるすばらしい作品だった。
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台湾に行って美味しいもの色々食べたくなる本。あと中禅寺湖も行きたい。
日本の新幹線が台湾を走るまでの何人もの人たちのドラマが並行して書かれていて盛りだくさんです。もう少し新幹線関連のごたごたを深く読みたかったかな。
春香と人豪のエピソードは切なくもさわやか。そして日本人男子は繊細な人ばかり出てくる〜
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台湾には一度観光で行ったことはあるものの、過去にどんなことがあったのか、親日的かどうかも知らずに行ったので、当時、この小説が出ていたかどうかはわかりませんが、先に読んでおきたかったなと思いました(笑)
主人公の女性がとても一生懸命で、恋愛もそんなにドロドロしたものではなく、これから活躍する人なんだろうなーというニュアンスが伝わってきて、読んだあとほっこり笑顔になれました。
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素晴らしい小説。
台湾新幹線開発を縦糸に、5人の主要人物のストーリーを横糸に物語は進む。
台湾と日本の歴史、思い、友情を吉田修一が鮮やかな筆致で描いていく。それぞれの場面の情景が目に浮かびます。吉田修一さんの小説の中では一番好きな作品。
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帯に「これが小説だ」という北上次郎さんの謳い文句がありますが「まさしく」と頷いてしまいます。
『路』と書いて「ルウ」と読みます。
台湾で走る事になった日本の新幹線を舞台にした小説です。とは言っても企業小説でも鉄道小説でもありません。新幹線の話はあくまでバックグラウンドです。
新幹線の受注から完成までの7年間を通し、様々な人たちが緩くあるいは強く絡み合う姿が描かれます。建設にかかわる商社の春香、上司の安西。戦前の台湾で生まれた葉山。威志、美青、人豪。元気さと明るさと思いやりと優しさを持つヒロインとも言える春香を中心に、それらの人々の人物像が見事に描きだされます。様々な過去のいきさつや挫折もありますが、全員が見事に前向きな姿が心地良いのです。
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吉田修一作品を読んだのは初めて。
現在マイブームの台湾が舞台のお話だから というのが、この本を手にした第一の理由。
おそらく作者自身台湾が好きで、何度も訪れているのだろう。そうでないと描けないであろう、街の描写(飲食含め)がリアルだ。
また、登場人物の織り成す人間模様も心地よい。台湾高鐡(新幹線)開発の話とはいえ、プロジェクトX的なハードなドキュメンタリーにはなっていない。あくまでも、フィクション主体で事実を織り交ぜているくらいのほうが、小説としてページを繰り易い。
登場人物の柱は3つ4つあるが、それがラストで一箇所に集まる。ある種演劇的な演出は私の好むスタイルということもあり、久々に感動して読み終えた作品となった。
台湾を訪れたことがない人でも、台湾を何となくイメージできるし、一度は訪れたことのある人なら、地図や現地の様子がリアルに浮かんできて、再訪したい気持ちを高めてくれる。
映像化されたら見てみたいが、くれぐれもキャラの設定を「下手に」アレンジしないことを望む。