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教育に関する様々な疑問、また根拠なく定説となっているものをEvidence based approachのもとに科学的に検証している。
子どもへの報酬の与え方から教育政策まで、幅広いものに触れている。
印象的だったのは第3章の非認知能力すなわち、「自制心」や「やりぬく力」に触れたところで、学校で行われる人間教育が学力に正の優位があるという点を科学的にしめしてあるところだ。
いずれにせよ、筆者の述べることは裏づけがしっかりしており(evidence baesd approachなので当たり前だが)根拠もなくもしくは、個人の経験をもとに書いている書籍よりも信憑性は高く感じられた。
ただ、良い教師=「学力を伸ばせる教師」と断定しているような書き回しをしているあたり、現場との距離を感じた。
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教育は誰でも経験しているし、声が大きい人たちは世間一般的には「成功」した人たちで、だいたいが自分が受けた教育は良かったと思い込んでいて、それが普遍的な事実だと思い込んでいる。しかも多くの場合、小学校も中学校も高校も一度しか体験していない。比較することができない。教育政策を作る人たちっておそらくほとんどがそうに違いない。
計量経済学の手法を使った教育経済学から現在の政策を俯瞰すると、どうやらほとんどの場合、実際にそういう思いつきや思い込みで政策が作られているようにしか見えない。そしてそれは、「科学的」には誤っていたりする。この本は、そういう思い込みを排し、「科学」に基づいた政策を行うように提言する本。自分自身もいくつもの「思い込み」を正された。
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こと教育という分野に限っては体験記などが幅を効かせているが、こういうものこそEvidence basedであるべき、という指摘はその通り。なんといってもやり直しは聞かないし、そんなに試行錯誤することもできないのだから確立された知見というものがあるのならば、いくら直感に反していてもそれは採用すべきなんだろう。
本書は学術誌(単なるレポートのようなものも多いが)で発表されたRCTを中心に、有効な教育手段について紹介されている。教育システム改革のような、政策提言に関わるような内容も多く、自分の子育てにすぐ活かせる、という部分は半分ぐらい。
・ご褒美は有効である。ただしアウトプット(テストの点数がよくなるとか)に与えても、子どもたちは何をしてよいのかわからないので効果はない。インプット(本を読む、宿題をする、算数の問題を解く、など)に対してご褒美をあげるのがよい(Fryerら)
・褒めて伸ばす、という考えは支持されていない。自尊心と学力の関係については因果関係が全く逆で、学力が高いことが自尊心を高めるが、その逆ではない。特に、もともと成績の悪い生徒にこれをやると、これまでを正当化して根拠の無い自信を植え付けるばかりで逆効果であった。(Baumeister)
また、褒めるのであれば能力でなく過程を褒める。「頭がいいのね」と褒められると、次回以降は結果次第で一喜一憂するだけで進歩がない。「頑張ったのね」と褒められると、結果にかかわらず次回はもっと頑張ろうと思う。(Mueller)
・少人数クラスは効果が薄い。横浜市などでは40人を越えるとクラスが分割されるため、40人のクラスに一人転校生が来ると21+20の2クラスになる。こうした事例を集めて検討した結果、小学校の国語には学級規模が一人小さくなると偏差値が0.1上昇する効果があったが、小学校の他の科目や中学生にはこうした効果は見られなかった。米国でも同様の結果が得られており、さらに、少人数クラスで上がる成績による生涯賃金の増分よりもそれにかける費用の方が大きく、費用対効果がよくないことが示されている
・運動会の徒競走で皆で手をつないでゴールするような極端な平等主義で育てられると、子どもは人間の能力には生まれつきの差はない、本人が努力しさえすれば教育に酔って成功を得られる、つまり成功しないのは努力せずに怠けているからだ、と考えるようになり、不利な環境に置かれている他人を思いやることのないイヤな人間に育ってしまう、と考えられている
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面白い!!
教育経済学という分野から教育を経済学、データの切り口で分析した本。
とくに、データをベースとしたエビデンスの積み上げはスッキリ腹に落ちます。
昨今、ビッグデータ含めてデータの利活用が求められる中、データ活用および統計的手法を教育に活用したものだと思います。
よく勘違いしがちな、相関関係と因果関係の混同。言われてみれば、相関関係があるからといって因果関係があるわけではないのに、なんとなく言いくるめられてしまう...
そんな今まで誰かの成功体験や主観、科学的根拠なく語られていた教育論をデータの積み上げて論破しています。
自分が今まで思っていたことがエビデンスを持って正しそうだということがわかったり、逆に、それはだめなの?ってあったりで、面白いです。
たとえば、本書によれば
ご褒美で釣っても「よい」
ただし、ご褒美はInput側
ほめ育てはナルシストをつくる
ほめるのは、プロセスをほめる
少人数学級の効果は中学生には「ない」
小学生の国語では効果アリ
などなど、いろいろ刺激的な言葉とそれを裏付けるデータが語られています。
しかし、残念ながら、すべてをそのまま受け取るのも考える必要がありそうです。
エビデンスについては、いくつかは海外での検証結果だったりして、そのまま日本で当てはまるのか?というところもあります。
そういった意味では、日本でもこのような学問が進んで、教育についての科学的根拠に基づく施策が打てるようになると良いと思います。
お勧め!!
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教育を科学的手法により、その効果を検証した本。教育に興味ある人なら必読です。教育評論家の意見や優秀な子供を育てた人たちの体験談などは、所詮経験的な事象に過ぎず、本当にそうなのか?は不明。例えば薬を開発する際の本当にその薬が効くのかどうか、実験して間違いなく効くということを証明して、初めてその薬は医薬品として認められるわけですが、教育についても同じような手法で実験し、その手法が本当に効果的なのかどうか?様々な事例を紹介しています。まさに教育における薬とは何か?を教えてくれる実に興味深く、実益の高い本。これは子供の教育だけでなく、人に何かを伝える・教える際の、子供の教育以外の分野でも役に立ちそうな本です。
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日本の教育はまだ感覚的な要素は強いことが分かった。
事例のない事の取り組み=リスクとして考えている
以上、本質を捉える取り組みができない。
これは企業の育成も似たようなことが言えているかも
しれない。データが正しいかは置いておいて科学的
根拠を示すやり方は相手を説得するのに必要だと思う。
ただ理屈だけは感情が置いてかれて人は動いてくれない
のでより多くの理解者を作って改善していかないと
敵だけが増えてしまうと思う。
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教育に関する諸説や教育政策について、科学的な根拠を示しながらわかりやすく解説してある本。
教育って、誰もが受けたことがあるから、専門家ではなくてもなんとなく語れてしまったり、それらしいことが言えてしまう。
根拠がなくても、「教育には正解がないから」と言う言葉で、それ以上の追求はされない。思考も停止してしまう。
でも、きちんとした実験や分析を行えば、「教育」という分野においても、信頼性のあるデータが得られるのだとわかった。
経験から得られた気付きや学びを伝えていくことも必要だが、それは万人には通じない可能性がある。
エビデンスに基づいた教育を行えば全てがうまくいく、とも限らないと思うが、指標というか道しるべになるし、考え方を知っているのと知っていないのとでは大違い。
教育業界はわりと感覚的に物事が語られることが多いけど、暗黙の了解で「なんとなく」理解している状態なのかも。そして経験がないと理解できない、語れない、という雰囲気。
エビデンスに基づいた教育、という考え方がもっと浸透していけば、教育の初心者でも、ある程度的を得た関わりができるようになるのではないかと思った。もちろん知っている、とできる、は違うけど。
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子供がいないので、なんとも。
教育は誰もが少しは関わったことはあるので、論拠なく口出しがち、という点には共感。
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「教育政策にエビデンスを!」
エビデンスの重要性を唱える本。
具体的な本書の内容のまとめ。以下の情報は実験によるエビデンスによって得られた結論である。
1.ご褒美で子どもを釣るのは間違いではない
ただし、結果でなく過程に対して評価すること。
テストの結果ではなく、学習の過程をジャッジしなければならない。
2.幼児教育の重要性
人的資本投資の収益率が最も高いのは幼児(就学前)教育である。要は、幼児期に支払われた教育費が大きい子どもの方が、そうでない子どもより、将来の収入が大きい傾向にあるということ。
3.少人数教育の効果
20人以下であれば非常に効果があるが、費用対効果が低い。
最も費用対効果が高い施策は「教育の収益率に対する情報提供」であった。しかし、これは発展途上国の実験データであることに注意。
4.全国学力調査ついて
子どもの学力は、学校教育以上に遺伝や家庭の資源などに影響される。誤解を招くため公表は危険。もし公表するならば、それらの情報との関連付けが必要だが倫理的に難しい。
そもそも、私立学校の参加率が低いので、(学力の高い子どもが通う)私立学校の多い都市部の自治体は不利。
5.いい先生とは
担当した子どもの成績変化(経済用語でいう「付加価値」の大きい教員がいい先生である。
そういった先生は学力以外の面でも、子どもに良い影響をあたえることができる。
6.いい先生の育て方
成果主義はNGだとわかった。現在、研究中。
教員免許の有無は能力と関係ない。教員免許制を廃止することで、良い人材がもっとくるかも。
7.日本での実験データについて
本書のエビデンスは海外での実験結果によるものばかり。日本では、倫理上の観点から、実験をすることが難しい。さらに、個人情報保護の観点から、文科省が持っているデータを研究者が容易に利用することができない。
海外での実験データが日本に適用するかどうかわからないので、日本での実証実験をもっと進めて欲しい。
以上
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データで教育を紐解くという画期的なAmazon話題本!
この本に書いてはなかったけど、
「親が自分自身に投資すること(新たな興味分野の独学、大学通う、資格試験、など)で子供の学力に好影響がある」ってデータはないのかなぁ??
以下、本の内容より。
●ご褒美で釣ってよい(ただし短期的でインプットに対するインセンティブを、幼児にはお金よりモノで)
●ほめ育児はやり方次第(○よく頑張ったね×頭が良いね、つまりプロセスを具体的にほめることが良い)
●ゲームやテレビは1時間以内ならむしろ効果的
●いわゆる学力だけでなく「生きる力」のような本質的な力こそ幼児期に養うべき
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ゲームは、子どもに 悪影響か?
ご褒美で釣るのはいけない?
むっちゃ、気になるぅ〜〜。
ということで読みました。
色々な見方があるものだ。
面白い❗️
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1. 因果関係(原因と結果の正確な順序の特定)と相関関係の違いを間違えないこと。
2. 教育生産関数(インプット・アウトプットアプローチ)において、インセンティブは「テストの結果」というアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」というインプットに設定する方が良い。
3. 「テストの結果」というアウトプットにインセンティブを設定する場合は、勉強の仕方を教える指導者が必要。
4. 能力(生まれつきのもともとの能力も含む)をほめることは子どものやる気を蝕む。具体的に達成した内容、努力したことをほめることが大切。
5. お手軽なものに効果はない。
例)勉強するように言うだけ・・・× 勉強を見ている・・・〇
6. ピアエフェクトは集団の上位層にのみ作用
7. 習熟度別に分けることで同レベルの集団を複数作り出し、各上位層にピアエフェクトを作用させることができる → 結果、全体にとってプラス
8. ペリー幼稚園プログラム:社会収益率が7~10%。つまり、4歳の時に投資した100円が65歳の時に6000円から3万円ほどになって社会に還元されている。
9. 幼児教育プログラムは非認知能力に影響し、特に重要な非認知能力は「自制心」と「やり抜く力」。
10. 非認知能力を過小評価してはいけない。
11. 平等に行われた政策は、親の学歴や所得による教育格差を拡大させてしまうことがある。
類例)終身雇用 / 最低賃金
12. いい先生とは?
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漠然と少人数学級にさえすればよいわけではないことがわかった。教育に携わる人は、一度は目を通してみるとよいと思った。
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エビデンスをもとにして、学力向上など、教育政策を決めていく 当たり前のようだけど、一億総評論家状態の教育界ではなかなかそれが普及しないという
100近い本書の参考文献からもわかるように、科学的に論理的に説得力を持たせようとしているのは共感できる
教育分野において、実験の量がアメリカと日本でこんなにちがうというのは初めて知ったし、日本でもっと増やしていかなければならないと思った
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環境の違いや経済力の違いはあれど、人を変えられるポテンシャルを教師は持っている。
とても勉強になった。日本ではできないような実験と分析の数々。一読の価値あり。