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表紙をはじめ、この本には真海さんの写真がたくさん載せられていますが、どれも笑顔の写真ばかりです。
この本を読んであらためて気づいたのは、真海さんが何か特別に強い、または特別に能力の高い、そんなタイプでは決してなかったということです。言い切れば「どこにでもいそうな普通の女の子」です。
では何が違うのかというと、両親や兄などの家族や、大学の同期や、会社の上司や同僚や、真海さんを慕って集まってくる人や、アスリート仲間など、「運よく」人の出会いに恵まれたのだと思います。
ここでわざと「運よく」と書いたのは、この本は、真海さんが「運悪く」重い病気にかかって片足を手術するところから記述がはじまるからです。
病気や手術を、たしかに真海さんは“乗り越えた”のでしょうけど、この本からは、いわゆるガムシャラ感だとか、努力といった感じは受けません。
普通の女の子の真海さんが自分に起こった困難にどう立ち向かったか?真海さんがしようとした一番の点は、ただ“目標に向かって突き進む”ことだと思います。
この本では、アスリートとしての走り幅跳びの記録という目標だけでなく、サントリー社員としての社会人としての成長や、障がい者スポーツなどを(特に子どもたちに)知ってもらうための活動などについて自分なりに考えながら進んでいく姿が書かれています。
でも真海さんが様々な活動にたどり着くまでには、「どうしたらいいかわからない」という大きな悩みがありました。でも、この「どうしたらいいか…」という悩みは、別に障がいのある、ないに関係なく誰もがぶつかるものではないでしょうか?
「運悪く」病気で片足を失った真海さんは、「運よく」自分の人生をかけて取り組めるスポーツというものに出会えた…
こう簡単に書いてしまうと面白みがなくなるのだけど、この本では、そこに行きつくまでの真海さんのいろいろな“行ったり来たり”が等身大の素直な言葉で書かれていて、夢物語でない誰でもたどり着ける身近なストーリーとして読み終えることができました。
ちなみに真海さんの名前には海という字が入っていますが、彼女は宮城県気仙沼市出身。両親は目の前の豊かな海にちなんで「真海」と名付けたのだと思います。
その豊かな海が悲しい出来事を引き起こし、多くの人が夢や希望を失ったりしたけれど、真海さんが自分の障がいを受けとめて、自分の名前の海のことも受けとめて、そのうえで多くの人に笑顔を見せてくれるのならば、私はそれを応援し続けたいです。
「神様はその人に乗り越えられない試練は与えない」(佐藤真海さんのお母さんの言葉)