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鉄道開発を背景に、日本に流れた百年の時間を描いた著者最高傑作! 橋を架け山を切り開き、四六時中ひっ きりなしに電車を走らせよう。そうすればこの国の人間たちも、絶望の淵からほんの何歩かは引き戻されるはずだから――。日本の近代から現在に至る百年の時間を描き、自然災害、戦争、さらには資本主義経済と抗いがたいものに翻弄されながら、絶えまなく続いてきた人間の営みを活写した長編小説。
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全編通して淡々と綴られている。だがその内容はといえば、日本が近代国家に様変わりしていく過程とも言える百年がぎっしり詰まっているのである。変化の著しいこの百年という時間をコマ送りで見せられているような印象でもある。人の意志により、あるいは欲望により、意図せざる状況によって変わり変えられていく街の様子は、そこに暮らす人の営みと合わせて興味深いものがある。ただ、個人的には著者の文章になかなか馴染めず、内容にのめりこみにくかったのが残念でもある。淡々としていながら壮大な一冊である。
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明治の時代から、鉄道開発とともにあった町とそこで息づいた人たちを描いた長編小説。
明治時代、日本に初めての電軌鉄道が敷かれてからは、民間資本がこぞって私鉄を敷設し、日本中に線路が張り巡らされていった。
描かれるのは、鉄道によって人生を創られた人たち、とでもいえる群像である。
人がいて需要があるから鉄道が作られるのではない。
鉄道がまず作られ、需要を創造し、そして鉄道によって人生が形作られていく。
鉄道に魅せられたから、男は鉄道事業に乗り出したのかもしれない。
鉄道が敷かれると、沿線の宅地には都会から移住してきた人たちが新しい人生の舞台を得、元々沿線に存在していた村人は駅前で商店を興したり都心の勤め人になったり。地元で私塾を開いていた男は私学の校長となったりする。
鉄道があるから映画撮影所が建設され、それゆえに女優の道を踏み出した者がいる。
毎日の通勤電車の中で出会った女性と結婚することを選んだ者もいる。
これらの人々の人生は、電車がなければこうではなかった。
電車によって街が生まれ人は出会い、電車のある人生を送っていく。
こういったことが日本中で行われてきたと思うと、いまの日本は電車によって形作られてきた部分もあるのだともいえる。
本書は徹頭徹尾、鉄道とその沿線にまつわる人々の人生しか描いていない。
にも拘らず、本書の主人公は紛れもなく、物言わぬ鉄道なのだ。
そういう仕掛けもまた面白い小説だと思った。
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百年前の農村が近代化されるまでの道のり。
何もない原野に鉄道を引き、土地を開発する男。
これまでの人生を捨てて、町を造り、私立学校を作った男。
ありきたりの人生に満足することなく、地域を開発させた男たちに纏わる物語。
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なんじゃ?この本は。書評でベタ誉めだったのと、装丁が面白かったので、期待大だったが、時間を返せ!何を言いたいのか、何を書きたいのかサッパリ分からんわい。くだらないとまでも言えない論外の紙くずだ。作者に言いたい、まず日本語を勉強し直せ!
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明治から昭和にかけて日本の成長は隆盛を極めた。畑は土地になり、人が集まり町となる。
ある男が都会から逃げ出した。妻子を置いて、何も持たず、逃げ出した先に洞窟を見つけ、そこに住みこんだ。
男は洞窟が台地の崖にあることを知る。台地には桑畑が広がっていた。
発展の中心には鉄道が走っていた。町の発展とともに生きてきた親子三世代と、ある男の一生を描く。
人の一生は短いが、町の歴史は続く。
大成して名を残す人もいれば、人の記憶に残らずひっそりと消える人もいる。
人は死んで何を残す?
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鉄道開発を背景に
日本を流れた
百年の時間を描く
著者最高傑作。
と、帯にあります。確かに「鉄道についての歴史と百年の間の物語」でした。
でも、「電車道」というほど鉄道開発の話というわけではありません。私としてはもっと鉄道に沿ったの方が知らない事を知る楽しみがあってよかったように思います。
途中、ねじめ正一さんの『荒地の恋』を読んでしまい、そちらがものすごく良かったので、戻って来てから何だか物足りなく感じました。『荒地の恋』が実在の詩人・北村太郎の本だったので、『電車道』の人物たちが薄っぺらく感じました。
その前には滝口悠生さんの『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』を読んでいて、こちらが作家の伝えたい思いが情熱を持って溢れていたので、『電車道』の淡々とした物語が物足りなく感じてしまいました。
電車が走り始める頃からの百年の間の話、という意外に何もないのです。
何人もの登場人物が少しずつ繋がってはいるのですが、そこに意味があるわけでもなく、言うほど電車と関係もない。
何というかバラバラとしている感じでした。
文章が読みやすく丁寧なので、面白く読めましたが、私は先の2作の方が良かったです。
鉄道会社を興す男の話は小林一三を思い出しました。
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出だしは物語に入れず、中盤は奥泉光に通じる計算された奔放さに期待を抱いたが、終盤の尻すぼみが拍子抜けだった。
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家族を捨てて農村の洞窟に住み着く男がいる、選挙に敗れ湯治場でただ湯に浸かるだけの日々を過ごす男がいる、凍りつくような真冬の京都で裸足で使いに出される丁稚の少年がいる…そんな書き出しにひょっとしてこれは連作の短篇集なのでは?と思ったりするが実はいくつもの路線がひとところに集まるターミナル駅のような凝った創りになっていたのだ。
明治大正昭和と100年の線路を辿る鉄道王一族と彼らによって切り拓かれて変貌を遂げていく街の物語、その独特なリズムを掴むまでに少し戸惑うが糸口を掴むと一気に流れる。
ただこれだけの長編、巧さだけではちょっとしんどい。
ドラマあってこそのターミナル、単なる起終点ではつまらないではないか
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これまでの著者の短編小説と同様、時の流れをテーマとしているのだろうけど、人生の半分に差し掛かったアラフォーの私にとっては、この早すぎる時間経過と徒労感は凹む。今日、会社帰りに散歩してたら、昔お世話になったライブハウスが駅前の再開発のせいか跡形もなくなくなっており、この小説の事と少し重なってさらに凹んだ。
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鉄道会社を興した男の人生を当時の時代背景をベースに描きながら綴られた物語。女優の件は何となく小津安二郎の映画になりそうな雰囲気を感じながら読んでいた。
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明治から大正・昭和・平成へ、変わりゆく日本の「風景」を百年にわたる群像劇で描く。
軸に据えられるのは、鉄道敷設と宅地開発。
だがそのテーマは直截的には主張されない。
文体も個性的だ。
章の区切りもなく、いつの間にか場面と時代と登場人物がシームレスに切り替わっていく。
その流れに身を任せているうちに、自然とテーマが浮かび上がってくる。
人々の生活(養蚕農家、丁稚奉公)、娯楽の在り方(リゾート地、映画)、そして震災と戦争、復興。
メインの舞台となる「高台のまち」は、成城学園がモデルなのかなとも思った(東宝の映画スタジオも近いし)が、学園創立者のプロフィールを考えるとある程度モデルにはしていたとしても、実話に基づいているわけではないのだろう。
表紙の装丁もとてもよい。
磯崎ワールドを堪能できる一冊。
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[関連リンク]
青山ブックセンター本店さんはTwitterを使っています: "磯?憲一郎さん『電車道』(新潮社) が入荷しました。日本の百年を描き、自然災害、戦争、資本主義経済などに翻弄されながら絶えまなく続いてきた人間の営みを描いています。保坂和志さん『朝露通信』とあわせて、ぜひ。(山下) #abcfairA http://t.co/SoP4UvANF4": https://twitter.com/Aoyama_book/status/570885266358972417
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昔の人が書いたみたいな独特の文体で、読みにくいと感じる部分もあったが、最後までは読めた。モデルとなっているのは小田急かしら。学校はどこだろう?という興味が湧いた。