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文庫版・刀城言耶シリーズの最新作。
戦前・戦中・戦後の三代に渡って、とある遊郭で発生した事件の謎を解く、というのが大まかなプロット。故に、今作では『刀城言耶がフィールドワーク先で事件に巻き込まれる』ではなく、過去の事件に合理的な解決をつける、安楽椅子探偵ものに近い構成になっている。
まず、『遊女』の表記を一文字だけ変えて『幽女』としたタイトルが印象的。『苦界』とも言われた遊郭の世界では悲惨な出来事が多くあり、『非業の死を遂げた遊女が化けて出ても不思議ではない』という雰囲気がある。前作までとは構成が異なっていることもあるのだろうが、本作では、遊郭や赤線地帯が持つマイナスのイメージが上手く利用されていた。
刀城言耶シリーズでは、解決編としてラストに合理的な説明が用意されている。本作でもその結末は踏襲されているが、これまでよりも、『何かすっきりしない、全て解決したとは言いがたい読後感』が強調されていた。
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事件より怪異より、心を磨り減らしながら体を張る稼業の辛さに暗澹たる思い。
時代を跨いで不可解な身投げが続くにつれ、第四部の刀城氏登場が待ちきれなくなってくる。
秘めた伏線には感嘆。巡り会った大切なものを守るために…緋桜の時を越えたひたむきさに涙が滲む。日記であれ、愛してくれる人であれ、自分を見失わずにいられる存在と出会った彼女はひたすらに強かった。
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十三歳で遊女となるべく売られた少女。“緋桜(ひざくら)”と名付けられ、身を置いた世界は苦痛悲哀余りある生き地獄だった。戦前、戦中、戦後、三つの時代の謎の身投げの真相は“幽女(ゆうじょ)”の仕業か、何者かの為せる業か。謎と怪異に満ちる地方の遊郭を舞台に、ミステリランキングを席巻した“刀城言耶(とうじょうげんや)”シリーズ第六長編、文庫降臨。
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刀城言耶シリーズ第六長編。
今回はミステリというよりもホラー寄りな感じがした。
そのわりには、ホラー小説みたいに怖いってほどではなかったから怖がりの私には読みやすかった。
当時の遊女の人たちは想像していたよりとてつもなく心身共に辛かったんだなぁと思うと読んでてこっちも辛かった。
それにしても刀城言耶が630ページ過ぎないと出てこないというのには驚いた。
ちょっといくらなんでも遊女についてが長かったかなぁという気がしないでもなかったな…興味深かったし読みやすかったから苦痛というわけではなかったけども。
最後はシリーズならではの怪異が残ってモヤっとする感じ。
★3.5…かな
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大筋のトリックはなんとなくよめた。
さらにどんでん返しがあることを期待したが、特に大きな変化は無し。
思ってた通りの解決編で、騙される快感が少なかった。
最後はシリーズおなじみの怪談調の締めくくり。
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事件の真相として呈示されたものにそこまでの驚きは無く、また一応の説明はつくもののすっきりしないことが多いので、読後にミステリーを読んだという感じがあまりしない だが、本シリーズは謎の幾つか或いは全てが敢えて有耶無耶にされたままになるのも醍醐味であり、何より今作品は遊廓という特殊な場所で怪異が影を覗かせながら事件が起こっていく、その過程の叙述自体が一番の読み所なのではないかと思った
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三津田信三お変わりなくの『如き』シリーズ第六段。
一年に二回くらい来る金田一耕助(と言うより山の中、閉ざされた未開の集落、伝承怪異)を求める心を絶妙に満たし続けてくれるこのシリーズ。
いつまでも続いてほしい。
今回は廓町のとある置屋が舞台。
閉ざされ感がないかと思ったらきちんと閉ざされ、その中で蔓延する怪異、伝承、不気味な隠語。
きちんとニーズを満たしてくれている。
謎解き自体は若干緩めではあるものの、最後に『緩めである理由』もきちんと記されていて好感度大幅アップ。
ガチガチのミステリではなく、人と人が織りなす美しかったり悲しかったり恐ろしかったりする柄と、そこにできた皺、そしてその皺に潜む人ならざる存在を感じたい。
そんな夜にオススメの一冊。
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今回は珍しく舞台が山村じゃなくとある遊廓。
前半はホラー色が強く、人為的な要素が加わる余地を探りながらどこまでが怪異なのか、どこからが事件なのか考えつつもサクサク読めた。
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最後の謎解きはこんなもんかという感じ。ただこの作品はそこだけでなくいろんな楽しみ方がある。
何よりも、知らない遊女の世界が濃密に描かれている。ノスタルジーを感じる年ではないが面白く読めた。
出戻りする花魁の哀しみに心打たれ、敢えて、金儲けに徹底するやり手婆アに、そこはかとない優しさも感じた。
解決編の肝に少し無理があるかな。
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相変わらず面白かったです。
このシリーズは個人的に外れがなくていいです。
三部(四部?)構成になっていて、一部で遊廓に売られてきた少女が緋桜という遊女になる話。二部がその郭の女将さんからの視点の話、三部が時が過ぎひょんなことからその郭の後に出来た店で取材をはじめた作家さんの話。そして最後がいつもの刀城言耶の謎解き。となっています。
どの話もとても面白くほんのりと不気味で、雰囲気がたっぷりでよかったです。読む前は刀城言耶が出てこない本編なんてどんなものだろうと思っていましたが心配は全くの杞憂でした。
遊女たちの哀愁が強く漂っていました。人間的な哀しさがあります。
そしていつもの謎解きなのですが、いつもよりも怪異が「説明のつかない」よりいっそう得体の知れない、形のないものに思えました。それこそ幽霊のような。そんな話でした。
とても面白かったです。シリーズ続編もとても楽しみです。
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第一部と第二部から感じられる湿った厭な空気に背筋を寒くしつつ、第三部に衝撃を受けた。その分、第四部の謎解きは面白かったが、怪談めいた恐ろしさは感じられなかった。
ラストの怖さはあまりないものの、言耶でも説明しきれない怪異は依然として残っており、読後じわじわと恐怖を煽ってくるのはお約束。
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ミステリーとしては、家族のように暮らしていた人たちが気づかないわけはない、とつっこみを入れたくなる謎である。でもいつもとは違った趣向の語りがなかなか面白く、ある花魁の人生に思いをはせるラストはなかなか感慨深い。遊郭の歴史を学ぶという意味でも楽しめた。男ってやつは。
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このミス2013年版4位。遊郭で3世代に渡って発生する身投げ事件。いままで読んだこの人の本の中で一番良かった。いつも終盤がどんでん返しの大安売りとなってもう勝手にやってよ状態になるんだけど、今回は一発で結構あっといわす結末になってる。緻密な構成と意外性のある展開で本格ミステリとしてとても良くできてるし、この作家のこだわってるとこと思うんだけど、自分的には第一部が一番良かった。ミステリアスな雰囲気につつまれた普通の物語として秀逸。第一部だけで普通の長編小説ぐらいの分量があるし、はらはらしながらグイグイ引き込まれて止まらなくなって最後はほっとする感じがすごく良い。2部、3部はそれに比べるとまんねり感がでてきて少し長さがこたえた。まあ最後が良かったのでまだゆるせるけど。
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花魁の壮絶なる人生、三代にわたる身投げの謎はかなりのボリュームがあって、内容も濃厚だったけど、それを感じさせない力強さ。言耶ががっつり絡んでないし、伝聞が多いせいか、いつもよりもほわほわした推理になってしまったのは致し方ないかな。
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幽女の怪異よりも、花魁の逃げ道のない人生に打ちのめされる。民間療法的な堕胎もキツイ…。なんというか、あまり知ってはいけない世界の話だった。最後に少しは希望があるところが救いだなぁ。