紙の本
戦国時代の幕開け
2010/01/20 04:44
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白みそ - この投稿者のレビュー一覧を見る
北条早雲については、近年研究が進んでおり、史実はこの小説の設定とはかなり異なっているらしい。
早雲の生年は永享4年(1432年)とされてきたが、どうやら康正2年(1456年)のようで、これならば今川家に身を寄せたのが32歳である。また、申次衆、奉公衆をつとめた室町幕府の高級官僚であったことがほぼ確実になっている。戦国時代の幕開けとして象徴的な事件である伊豆討入りについても、中央の政治状況と連動した生臭いものであったようだ。
だが、そんなことは気にせずにこの小説を楽しむべきだろう。
足利義視に仕える一方、鞍作りの内職をして生計を立てていた人間が、50歳をこえて裸同然で今川家に身を寄せ、ついには箱根の坂を越えて関東の地に覇をとなえるに至る。
戦国時代の口火を切り、旧体制を破壊しながら理想の政治を追求するこの小説における早雲の姿は、閉そくした政治状況にある現在、より一層まぶしく感じられる。
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早雲という人の、静かな強かさがじわっとくる話です。舞台が駿河〜箱根〜関東なので、見知った地が出てくるのも親近感がわく。東海道線にゆられてのんびりと旅をしながらこの本を読む、というのがちょっとした夢です。
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タイミングも悪かったんだろけど、あんまり読むのが進まなかった本。全三冊。北条早雲の話。こういう男の人には惚れないかな。関係ないけど。
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北条早雲その誕生たるや・・・。
鞍作りを生業とする伊勢新九郎、8代将軍足利義政の弟義視の申次衆を勤めてはいるが、義視の存在は無力そのもの、申次衆と言ったって秋の蚊ほどの力もない。
早雲以前の伊勢新九郎長氏時代が描かれている巻である。
40半ばまで世間に知られることもなく過ごした早雲、司馬さんは、早雲以前の新九郎時代に感心がつよく、さらに新九郎の思想形成に大きく影響した―というよりも早雲を生みあげたというべき―室町期の世情と応仁・文明の乱につよく心をひかれたと書いている。
時は応仁の乱の糸のような原因のうちのひとすじ、将軍継嗣問題が起こっているそのとき、司馬史観も光り、言うまでもなく興味深い。
個人的には当時でいう遠州出身の私としては、土地柄のわかる舞台、興味のある連歌師の登場と一層くいついて読んでしまった。まだ中が楽しみってことで★は4つ。
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応仁の乱で荒れる京都、伊勢新九郎、後北条早雲がいた。
家伝の鞍作りに明け暮れる。妹分の美しい娘、千萱の出現が、
彼の今までの生き方を激変させる契機となり覇者への道を歩み出した。
2008.9.19 読了!
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北条早雲が大好きになりました。
戦国初期は、後期とは全く違う面白さがあるのですが、この本は本当に面白い!!
早雲が「実は一介の素浪人じゃない」と知ってからちょっと残念な気持ちになっていたのですが、司馬先生は本当に上手い見解をして下さいました。
将軍の弟の申次衆だけど…という設定は、悔しいが納得してしまいますね。実際はもっとバリバリの申次衆で馬の鞍作りなんてしなかったかもしれませんが、それでもまあ何もなければ相模の太主にはならないと思われるので。。。
という設定云々よりも、本当に面白い作品ですっ!!(説得力無…)(いや本当に面白いんですって!)
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とある友人が司馬遼太郎の本を読んでいると聞いて影響を受けて司馬遼太郎の世界に飛び込んでみました。戦国武将、小田原の北条氏政の先祖、北条早雲の物語。
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全巻通読後のレビューです。
代表的な下克上の大名である、北条早雲が主人公。
室町時代(応仁の乱以降)の様子が、政治的状況以外のこともよく書かれていて、非常に参考になる。
それに和歌も登場して、日本史や古典文学に興味のある人には、なかなか楽しめる作品になっている。
早雲の前半生は史料がないため、筆者の創作となっているが、これもなかなか楽しめる。
また、当時にあって、早雲の思想の新しさも、この作品を一際輝かせているし、早雲が駿河に入って以降の合戦の様子も生き生きと描かれており、いかにもその状況が目に浮かんでくるようであった。
小田原北条氏五代の礎を築いた早雲の領国統治の方針は、現代にも通ずるものがあるのではないか、と思った。
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北条早雲の物語。先に読んだ「早雲の軍配者」で北条早雲に興味を持ち、この本を購入した。上中下の3巻構成の上巻。北条早雲がまだ伊勢新九郎と名乗り、京都で馬の鞍をつくっていてが、細川勝元と山名宗全の戦いに巻き込まれてしまうまでのストーリー。正直、そんなに面白くないので、さっさと中巻に行こう。
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全3巻。
北条早雲。
やっぱ。
早雲は若いころがキモ。
ほとんど分かってない若い頃に
どんな風な設定持ってくるかが
小説としての醍醐味だと思う。
早乙女版みたいなスーパーヒーローでなく、
割と事実っぽい設定が好感。
その分、改めてこの人の中年からの巻き返しがリアルに感じる。
長生きし過ぎ。
異常に思えるくらい。
相続してたりしてんじゃないかってくらい。
名前。
ただ、やっぱり資料が出てくる後半生は
やや小説としては失速感を感じた。
早乙女版ほどではないけども。
説教臭ささはあんまり気にならんかった。
ずっと疑問だった応仁の乱も知れたし。
よかった。
ただ、物語として作り込む途中で、
歴史小説にしなきゃ感が勝っちゃった印象。
物語の序章の期待感が、
後半全く活かされてない。
仲間をもっと活躍させてよ。
こういう中途半端さがやっぱ嫌。
上手いだけに。
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北条早雲の若き日の物語。京の鞍作りから、駿河に出立するまで。その時代の宗教、ものの考え方に言及し、当時の時代背景がよくわかり、思わず作品の中に没入してしまう。11.3.10
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物語当時の文化を説明しながら話が進んでいくため、物語自体を楽しみたいオレにとっては、冗長な感じがした。ただ最後まで読むと戦国時代が起こった背景をなんとなく理解することができる。
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北条早雲物語。
応仁の乱は中学校の日本史以来に出会いました。
徳川家康が関東に進出するために戦ったことくらいしか知らなかった人物がどうのし上がったのか。
上巻はほとんど武将らしいことはしていない。
どう展開していくのか
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個人的には微妙だった。決してつまらなくは無いが、面白くないのは、おそらく主人公に(あく)が少ないからかなと思
う。
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北条早雲の生涯を描いた歴史小説。上巻では早雲が京にて伊勢新九郎と名乗っていた頃が時代背景。
早雲は、小田原を拠点に民意を汲む稀有な戦国大名としては有名であるが、その若い頃の生き様を理解しないと後世の偉業を語ることはできない。おそらく当時の記録は限られているのだろうが、そこに十分に紙面を割くところが司馬遼太郎らしさであり、歴史をより身近に感じさせるのだろう。
室町後期、応仁の乱など幕府、朝廷、武士の関係が分かり難いところが多々あるが、当時の権力構造、力関係なども本著を通じて理解することができる。
以下引用~
・足利三代将軍義満のとき、この小笠原のもとに、礼式の再編がおこなわれた。その義に加わったのが小笠原氏、今川氏、伊勢氏で、とくに伊勢氏は殿中の作法をうけもって整備した。のち、日本人の行儀作法や冠婚葬祭の仕方などは、このとき確立したといっていいい。
・日本史の奇跡は、宦官が一度も存在しなかったことである。その理由は、よくわからない。ひとつは、日本においては、平安朝も武家の時代も、後宮は女官によって運営されていた。ことさらに去勢した男子を用いなくても、女子に物事の運営能力があったということだろうか。
・歴代の足利将軍家は、ほとんど領地をもたず、従って民から搾る租税で食っているわけではなかった。古今東西の歴史のなかえ異例なことに、将軍家の私経済のほとんどは対明貿易の現金収入でまかなわれてきた。従って狭隘な議論を立てるとすれば(足利)義政には民の面倒を見る義務はないとすらいえる。
・応仁から文明につづいた京都の市街戦は、京の貴族の第館は社寺を焼き、公家たちは衣食に窮して地方の豪族を頼った。公家だけでなく、文芸、工芸の徒から料理人にいたるまでは地方に散った。このことが、京都文化の普及という意外な現象を生んだ。
・今川氏は塩を戦略物資のようにあつかい、領域のそとに流れ出ることをきらって、厳重に禁止していた。
・・・甲斐の山国で海をもたず、塩を駿河などから高い値で買わざるを得なかった。