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2型糖尿病、骨粗鬆症、がん(特に乳がん)、など現代病と呼ばれる病気が生物学的進化と文化的進化のミスマッチから生じていることを説明している。
まず、生物学進化によって人間がいかに効率的に糖を接種できる能力を獲得できたを示し、次に農業革命、産業革命を経て、人間がいかに過剰に糖を接種しやすくなったを示すことで、現代病の原因となる肥満になることが必然であることをわかりやすく説明している。
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前半はひたすら長々と続くヒトの進化の説明で、聞きなれない名称やイメージしにくい動きの話に読むのを止めるか続けるか少し迷ったが、後半になり、前半で眠たいと思っていた長い話が途端に色を変え始める。前ふりが長すぎたのではと思ってしまうが、おそらく必要な前提情報だった。進化的ミスマッチ仮説が興味深い。下巻を読もうと思う。
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・人間の身体の進化の物語であり、人は何に適応しているのかを問う
・その問いに対して明快で単一な答えは見いだせないことが人体の神秘的な結論
・人類の身体は現代の食事や運動不足にうまく対応できるように適応できていない
・これまでの人類の生物学的進化に対して、文化的進化により私たちの身体は現代の環境に適応できず、ミスマッチとなる病気が起きる
・「食べたものが人をつくる」というが、進化の論理では、場合によっては「普通なら食べないものが人をつくる」
・チンパンジーは果実中心の食生活だが、アウストラロピテクスは果実の依存をなくし、土を掘って茎を摂取するなど食生活を多様化にした
・なぜ人類は他の動物よりも脳が大きく進化したか? 大きな脳にはそれだけ多くのエネルギーが必要となるが、人類は狩猟採取により多くのエネルギーを獲得できたことでコストを補うことができた
・遺伝的には常に自然選択により進化してきたが、加速度的に進化した文化的進化が遺伝的に適応できていないために現代のミスマッチ病(糖尿病やがん、うつ病などの現代病)がおきた
・ミスマッチ病を予防するには、昔ながらの食事や運動をし、タバコや炭酸飲料、ジャンクフードをやめること
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上下巻まとめて。
人と他の種が違うところは何か。道具を使うとか(チンパンジーも使う)、言葉を使うとか(コミュニケーションとしての音は他の種も使う)…
考える事自体は動物もするが、考えることを考える、という入れ子構造の思考は人間だけではないか、と言われている。ただすでに絶滅したネアンデルタール人だってそうだったかもしれない。
人類にしか出来ないこと。それは正月太りだ。普段とはまるでちがう生活環境で本を読むか酒を飲むかぐらいしかしていないので、あっというまに肥えてしまった。
本書は人体の歴史を追っている。だがいくら追っても、人間は何に適応しているのか、ということに答は出ない。いまのところ進化上成功しているとすれば、適応能力を生み出すためのコミュニケーション能力、協力する能力、思考する能力、発明する能力、という。正月も我々の先祖が発明したものだ。
病気の多くの症状は実のところ適応である。正月太りもまた、休めるときはつねに休もうと、そして脂肪を蓄積できるときは貯めこむ、という進化である。
なぜ私たちは太りやすいのか。痩せている、とされている人でさえ霊長類の視点から見れば太っている。どうして太るのか。倹約遺伝子、という働きもあるし、消費エネルギーよりも摂取エネルギーのほうが多い、という単純な事実もある。だが食べるものそのものも変わってきている。加工食品が過剰かつ現在の消化器系では対応できないほどの量とペースで糖を供給している。ストレスや睡眠も影響するが、興味深いのはまだあまり解明されていないという、体内の微生物の働きだ。これが不自然な状態になっていることも肥満の原因ではないか、と。
それでも目の前には美味しい食べ物がある。便利な機械がある。食べて、体を動かさなくても人生は進んでいく。一見幸せなこのサイクルは、実は健康上は悪循環、ディスエボリューションである。最終章ではそのサイクルから抜け出すための提言がいくつかなされている。文化的進化が僕らをこんな風にしてしまったのだから、文化的進化こそがそこから脱出できる鍵かも知れない。
人類600万年の壮大な旅の本を読みながら、3日間の食っちゃ寝生活から、どう文化的進化を遂げるかを思うのだ。
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上下巻読んで評価が難しい。上巻は面白かったと思う。類人猿からホモ・サピエンスまでの進化を時系列でまとめつつ、それぞれの特徴がわかりやすく解説している。ホモ・サピエンスとはなんなのか。狩猟時代から農耕時代への移管など、忘れかけているが、ジャレド・ダイアモンド「サピエンス全史」に近いのかもしれないが、サピエンス全史の方が新しかった。しかし下巻になると主にディスエボリューション、ミスマッチといった言葉で、糖尿病などの病気に焦点がうつる。人類は現代社会に主としてまだ適合できていないため現代病にかかってしまう。そうなのかもしれないが、私の興味フレームからは飛び出てしまい、飛ばし読みしてしまった。