投稿元:
レビューを見る
脳神経医の著者が遭遇した24例の不思議な症状。症状の説明だけじゃなくて、患者さんの背景だとか、どんなふうに不具合と折り合いを付けていったのかとかを細かく書いているので、短編小説のように読めた。
印象に残ったのは、自分の躰の位置感覚(固有感覚)がなくなってしまった人のはなしと、新しく記憶することができなくなってしまった人のはなし。自分に置き換えて想像してみるとぞっとする。
投稿元:
レビューを見る
自然を見ると心が落ち着く理由がわかった。人は自然に対しては自分を作ったり、着飾ったりする必要がないからだ。このことからわかるように自分を作ることがいかに自然に反したことであるかがわかる。精神障害者の物語からたくさんの大事なことを学ぶことができた。
また、障害の中には必ずしも外見にあらわれるものばかりではなく、そのために我々は彼らを冷たく扱ってしまうことがあることが、あらためてわかりました。
本書の精神障害は先天的であったり、事故や病気によるものを扱っていますが、その他に育ちによる障害の例は扱っていませんでした。
投稿元:
レビューを見る
頭に障害のある人たちの話。
奇人変人の話としても読めるが、読んでいるうちに著者の優しい眼差しに感化されて、一人ひとりが自分と同じ人間だと思えてくる。
困難への向き合い方、対処の仕方が人それぞれで、それが人の個性として感じられる。
投稿元:
レビューを見る
名作『レナードの朝』にて名をとどろかせた、オリヴァー・サックス医師によるノンフィクション。
医師である彼の元にやってきた患者達の、『奇妙』な話が24話収録されている。
脳内に病を抱えながらも、理性的に生きようとした女性が、
幻の中でインドに帰っていく話(「インドへの道」)と、
数学の世界に二人で生き、規則を持った数だけでお互いを理解し合う双子の話(「双子の兄弟」)が個人的に感慨深かった。
投稿元:
レビューを見る
もう脳の本は何冊か読んだので、最初のインパクトはなくなってきているが、人間には実は計り知れない能力があるんだなあ、、、と、改めて思った。
普通は、バランスよく、その一部ずつしか発揮されないが、そのバランスが崩れたら、何かは失うかもしれないけど、ものすごい能力が全開となるかもしれない。
聴力の一部が失われた場合、その代わりに得るかもしれないものは何なんだろう。
投稿元:
レビューを見る
症例集。特に惹かれたのが、双子のはなし。知能指数は低くてあまり人ともコミュニケートできない二人の遊びはお互いに8桁の素数を言って微笑みあうこと。あと何年前の何月何日って言うと曜日を教えてくれるという。でも算数とかできない。あと、マッチを111本落としたら、37と三回即座に言った。すごい演算装置。プラグインするなら素数ディテクターだね。他にも人間とは、意識とはなにか?とかについて考察したくなる話がたくさん。
投稿元:
レビューを見る
小川洋子さんがすすめている本ということで、思わず買ってしまいました。医者のエッセイで、神経とか脳とかに障害のある不思議なものの見方になってまった患者さんがたくさん出てきます。現実にいる患者さんのことなのでなんというか、病院の待合室でどこどこのなんたらさんはこんな病気でさぁみたいなのりで読めます。あまり悲観的ではなくかといってがんばってる感じもなく、生きるってこんなことなのかもなぁと思える作品でした。この本に出てくる患者さんは自分が病気であることにきがついてなかったりするので余計に。
投稿元:
レビューを見る
脳は物語を紬ぎ、私達はそれを生きる。物語は無数にあり、それらはあくまで主観で語られるから、いつの時代も、どんなに科学が進んだとしても、他人の物語というのはあくまで抽象概念なのだ。だからこそ、魅惑的であり続ける。脳神経科医が彼の患者の症例を物語としてナラティブする、真摯で、そんな人の物語を愛する暖かい気持ちが詰まったエッセイ。
投稿元:
レビューを見る
自閉症、てんかんなど、特異な症状をもつ人の観察記録。
彼らは劣っているのか、健常者と同じなにかを持っているのか、むしろ優秀なのか。
人間観察に新たな視点を与えてくれる。
投稿元:
レビューを見る
この本に出てくる患者達のほとんどは病気に苦しみながら、完治する見込みがない。
悲しくなってくるが、病気をむしろ見方に付けている例も少し出てくる。
TVでこのような不思議な症状が紹介されているのを見て、生まれつきのものだと思っていたが、過度の飲酒、薬、事故、脳卒中、熱病などによるものが多く、誰にでも起こりうると知り、人間の脳は遺伝情報以上に神秘的に思えた。
しかし精神科医というのは何のために存在するのだろう。
症例を観察し、発表するだけ?
薬を打って一時的に緩和するだけ?
本書には患者の心に寄り添い心の声を聞く事が大事とあったが、それは医者でなくてもできると思う。
本書の中の考察を見ると、哲学者の言葉のようで、まさに精神論にしか私には思えなかった。
医療が目覚ましい進歩を遂げている中、精神科医は一体何をしてきたのか?何故古今東西の患者たちは治らない精神病に苦しみ続けるのか?
目に見えない物を扱っているから。本当に見えないのか?
人間の脳だって結局は物質で、DNAの命令で化学反応を起こしているのに?
精神医療分野の真の発展を願わずにいられない。
投稿元:
レビューを見る
何かが足りない人に対して、足りない部分ばかりを補おうとし、良いところを伸ばさなければ、何も残らない、というのは誰にとっても当てはまることなんだろうに、でもなかなか実践はできないもので。なんでなんだろうか。出る釘は打たれるというやつか。
こういう本によっていわゆる障碍者と言われる人々は身近になるんだろうか?そう感じられるようになるのか?
投稿元:
レビューを見る
脳神経科医オリヴァー・サックスによる、1985年発表の医学エッセイ。
サックス教授は、自らの患者の脳神経に起因する奇妙で不思議な症例を綴った多数のエッセイ集を発表しているが、本作品は、後に映画化された『レナードの朝』(1973年)に次ぐ代表作のひとつである。
本作品では、症例を大きく「喪失」、「過剰」、「移行」、「純真」の4つに分けて24篇が収められているが、「喪失」の部では、視覚、記憶、身体の認知、空間認知などの障害を示す症例が示した奇妙な現象、チックに伴う暴言、人の間違い、切断された足の幻影など、「過剰」の部では、てんかん発作などに伴う幻覚、夢など、「移行」の部では、知的障害や自閉症の高度な計算能力、描画などの特異な能力などが紹介されている。
いずれも興味深いものではあったが、私が強く印象に残ったのは、重度のコルサコフ症候群の患者の症例である。重度のコルサコフ症候群の患者は、どんなことでも数秒間しか覚えていられず、自分についての過去の物語が持ちえない、即ち、自分のアイデンティティがないのである。そして、記憶障害以外の脳機能は正常な患者は、アイデンティティの喪失を埋め合わせるために、あらゆる話を打てば響くような素早さで次から次へと作り続けるのだという。これは、人間としては、最も耐え難い状態なのではないかと思う。(本人に自覚はないのだが)
本書は出版から30年が経ち、その後の脳神経医学の進歩により、本書の症例の中にも、原因が解明されつつあるもの、或いは今後解明されるものもあるのだろう。
一方で、不思議な症例を知るにつけ、脳に関わる機能の複雑さを感じるとともに、脳に関する根源的なテーマである「意識の発生のプロセス」はいつか解明されるのだろうかと、改めて思わざるを得ない。
(2014年9月了)
投稿元:
レビューを見る
脳や記憶の障害の症状に、こんなものがあるのか、と驚くばかり。
いつ自分が同様の発症に至るかも恐ろしいが、近親者にこのようなことが起こったとき、ちゃんと、サックス先生のように対応できるか真剣に想像するも、撃沈した。
それでも悲劇的なことばかりではなく、随所にかつての姿がしのばれたり、人間味があったり、なんていうことなんだろうと複雑なあたたかい気持ちになった。
脳の未知さったら、無い。
投稿元:
レビューを見る
著者は脳神経医でもあり、作家活動も精力的に行っているオリヴァー・サックス。
脳や神経に関する病気の話、というと完全に誤解が生じるだろう。本書のテーマは、あくまで人間だ。奇妙な症状を持つ人間の物語。
それに触れることで、人間とは何か。人間存在を形作っているものは何か。そういったことに想いを馳せずにはいられなくなる。
興味をひく話はいくつもあるが、3つだけあげるとすれば、「殺人の悪夢」「双子の兄弟」「自閉症の芸術家」だ。
「殺人の悪夢」は、奇妙に歪んだ物語になっている。そのままフィクションにでもなりそうなお話だ。人間に記憶、そして抑制が持つ力。それらは私たちに目に見えないところで、私たちを支えているのだろう。
「双子の兄弟」が、お互いに8桁の素数を咀嚼するように交換しあう話は、感動的ですらあった。この双子は、計算すらろくにできないのだ。でも、棋士が真剣に差す一手のように、お互いに一つずつ8桁の素数を口に出す。二人が感じている喜びを、推し量ることすらできないが、そういうものがありうるだろう、と考えることぐらいならできそうだ。
「自閉症の芸術家」は、もしかしたら昨今ではそれほど珍しい話ではないのかもしれない。こういう人たちがいる、という認知は広まっているように感じる。それでも、ホセが川に浮かんだカヌーを描いた絵をみると、瞬間的にはっとさせられる。そこには、まぎれもない芸術の芽が感じられる。
いろいろな思いがよぎる本だが、「表面的なものだけでわかったつもりになる」ことの危うさ、というものが一番感じられたかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
おぉほんとに妻と帽子を間違えるんだ
普通って何?幸せって何?
人の性格や心は、結局脳の働きのひとつでしかないんだなあ