投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
人間の想像力は繋がっている。世界に内も外も無い。余りに近視的な文化圏の中にいる我々は、異国や異文化を外だと思い違うが、全ては想像力の中にある。人権も宗教も、ミニスカートもブルカも、同じ人間の欲望から生まれた。その見た目の差など、取るに足らない、本当は。主人公はそれを理解している。昨日まで信じていたことなんてさして重要ではない。価値はコンテキストに依存し、ならばコンテキストに従順な人間が評価されるのもまた当然だ。しかし私には勇気がない。本書のような思想的な危機に陥れば、古いアイデアにしがみついてしまう気がする。そもそも、なぜそんなふうに考えたかさえ思い出せないのに。どう生きるか、と問われ続ける読書体験。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
あ〜ぁ、だっせ
自分はまだいける、と思いたいのに
実は人生たそがれてきて焦ったオヤジが
若い子と結婚できるよ〜とそそのかされて
鼻の下を伸ばしてイスラム教に改宗する話
これイスラム教徒の人は読んで激怒しなかったのかな?
それともこれがイスラム教の真実?
ヨーロピアンのアイデンティティー崩壊が〜
とかなんとか前宣伝を聞いて読んだのだけど
どうなのこれ
行き詰まった知識階級の苦悩っぽい書き方をしてもだめ
要はそういう話しだ
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
話題だったので。70ページぐらいまでよくわかんなかった。
てっきりディストピアの話かと思いきや、そうでもないというか、有り得るんだろうか。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
フランスを思い、ムスリムの友人を思い、知識階級にいる人たちを思う。
ありえないと思っていた現実に侵食されていく、それに安堵を感じるようになる。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ウエルベックの過去の著作を読み返してみるとこの最新作の「服従」への道筋がより鮮明になる。モテ、非モテのセックス格差、高度のグローバリズム下における”心の満ち足り”、分断された個々人の癒えない孤独、西欧をはじめとした先進各国の地盤沈下、それらの国々の人々が抱える不安、宗教への回帰etc・・・。
闘争領域の拡大や素粒子ではあった露悪さ、あからさまな性的描写は近年の著作では影を潜めた代わりにこの作品では主人公は”服従”を行い満足を得るであろうことが示唆されている。
水面に石を投げ波動を発生させることにかなり成功したのではあるまいか。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ウェルベック最新作にて初体験。2022年の近未来のフランス。議員選では、テロによる妨害、殺戮、大統領は穏健派イスラーム教信者となり、フランス国内の生活は徐々にイスラーム化していく。
現実にフランスにてイスラーム過激派の殺戮テロが実際に起こる前に書かれた預言書のようだ。しかしこの小説では殺戮の酷たらしい情景は一部表現あるがそこに焦点を当てた物語ではない。イスラーム化というあり得ない状況を次第に受入れるという主人公の葛藤と洗脳の物語。
イスラーム社会では男女別学、女性はベールを被る。
体の線は見えずセックスアピール出来ず、おしゃれで楽しみ事もなし。一夫多妻であっても結婚までのプロセスが面白いのにそれはなし。男尊女卑の世界で、禁酒と思いきや禁酒ではないようで、なかなか男にとって都合のいい世界だ。真面目に考えると笑えてくる。
イスラームの考えでは本来の自然界においては、男性は強い者が生き残り、弱い者は淘汰される。この強さ 現代では知性であり技術であったりする。その知性と技術力で裕福な生活をおくれる。妻を養えれる余裕があれば多妻でもいいと説く。 主人公フランソワは大学の文学教授だが、イスラーム教徒が説くこの自然界の理論に翻弄されていく。
改教の決定は一夫多妻の妻の選び方。って そこかい。
見方によってはブラックジョークとも読める物語であった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
久しぶりに小説を読んだ。
何でも、本国フランスではこの本の発売日に、偶然にもシャルリー・エブド襲撃事件が起こったということで相当話題になったらしい。
ごく簡単な筋書は、少し未来の2022年のフランスで行われた大統領選挙で「ファシストかイスラーム主義か」という二択の末にイスラーム政権が成立し、生活の風景がイスラーム式に変わっていく中でフランス人の主人公が今後の身の振り方を考えていく、というもの。
(どうでもいいけどこの主人公、優秀な大学の教員だが厭世的で無気力な「やれやれ」タイプ。なのに女性にはそれなりにもてるという、村上春樹の小説に出て来そうな、もてない男の劣等感を煽るキャラクター設定。なんとも虫が好かない。)
あまり物語の根幹には絡んでこないけれど、決選投票で敗れた、移民排斥を訴える極右政党「国民戦線」とその代表マリーヌ・ル・ペン氏は実在しているのだそうな。
そんなに長い話ではないけど、この物語のメッセージを要約するとこんな感じ。
「現代西洋文明、特にフランスでは『人間中心主義』を掲げて『自由に生きる』ことを最も良いことだと無意識的に思っていたけれど、果たしてそれは大見得を切るほど正しいことなのだろうか。正直、『自由』を突っ張るってしんどいよね。最近EUもうまくいってないし。いっそのこと、君たちが好かないイスラームに『服従する』のも悪くないかもよ。頭の良さそうな人たちだって、金や権力といった利益を鼻先にぶら下げれば、なんのかんのとそれらしい理屈をつけても宗旨替えをするでしょう。所詮インテリなんて弱い生き物。さあ、あなたはどうしますか」
似たようなベースラインを持っている(ように思われる)「帰ってきたヒトラー」も買ったので、次に読んでみようと思う。本当は映画を見に行きたいのだけど。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
フランス近未来小説? 穏健派イスラムが政権を取り、次第にイスラム化していく社会。知識人たる大学教授たちは、自らの幸福のために、改宗していく。
フランスがイスラム化するかどうかはともかく、主人公にフランス知識人を代表させているとすれば、フランスの知識人たちは「知」よりも「痴」に生きているということ。本当のテーマは知識人の没落、というところではないか。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ウェルベックは、いつぞやの読書会で「素粒子」を読んで以来、何冊かは読んでみたいなと思っている作家。どの作品もそれなりに興味深いのだが、今回は2015年刊行の「服従」を手に取った。
2022年のフランスでイスラム主義政党が政権を握り、ユイスマンス文学の研究者である主人公はイスラム教徒でないことを理由に教職を追われる。徐々にフランスが、そしてヨーロッパ全体がイスラム化されていく中、主人公の懊悩の行き着く先は…というストーリーなのだが、原著の刊行日にちょうどイスラム原理主義者によるテロ(シャルリー・エブド襲撃事件)があったこともあり、恐るべき予言の書としてベストセラーになった。もっとも、ウェルベックでなくとも欧州がイスラム化するであろうという予測をする人は多くいて、かなり現実味のある話として議論されているらしい。
現在、EU や日本は自由主義、男女平等、政教分離という価値観を普遍のものとして扱っているわけだが、一方でこのシステムは必ずしも万能というわけではない。特に大きなデメリットは出生率で、男女平等を謳う先進国では都市化とともに出生率が下がり続け、人口を維持するのに必要な合計特殊出生率を下回るのが普通なのに対し、中絶が禁忌で、国によっては一夫多妻、女性は教育を受けられず家庭に拘束されることが多いイスラム教国では一般的に出生率、人口増加率が高い。国民の幸せや発展を何で測るかという議論もまた別にあるのだが、結果として国民が減り続けているシステムと、国民が増え続けているシステムでは後者を有利とする考え方があるのはもっともなことだろう。個人的には食べることが好きなので、食べものに禁忌があるシステムは嫌なんだけど…。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
2022年のフランス大統領選でイスラム政権が成立したら-
超近未来の、もしかしたらほんとうに起こり得るかもしれないディストピア?小説。
具体的にかかれる政策が真実味があって怖い。
政治に疎い無気力系(のように見えて、実は世俗欲の塊)インテリ層の主人公が徐々にとりこまれていくのも恐ろしい。
むかし「選択の化学」を読んで、選択肢や自由がありすぎることと幸福はイコールじゃない、と思ったが、
人類がほんとうに「幸福」になるには、選択肢を極端に減らして「服従」するしかないのか、、、
不穏なラストにも考えさせられた。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
佐藤氏の解説「人間の自己同一性を保つにあたって、知識や教養がいかに危ういものであるかということがわかる」これがとても的を射ている。いつの時代も誰においても、内的生命力の衰えや心身の疲労疲弊は、人を危うい方へ誘う。新しく何かを行うのには、エネルギーが必要だから。力が衰えたとき人は服従をのぞみ、そこに幸福を見いだすのか。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
『ぼくは、自分が自死に近づいているという気がしてきた。絶望や、特別な悲しみを抱えているわけでもなかったが、単に、ビシャが語っているような、「死に抵抗する機能の総体」がゆっくり崩壊していると感じられたのだ。
生きたいという欲求だけでは、平凡な西欧人の人生に次々と現れる苦悩と厄介事のすべてに対抗するには、明らかに十分でなかった。
ぼくは、自分のために生きることはできなかったが、では、他の誰のために生きてきたというのだろう。ぼくは人間に興味を持っておらず、むしろそれを嫌っていて、人間に兄弟愛を抱いたことはなく、人類をさらに小さい枠に区切って、たとえばフランス人とか、かつての同僚などに限定したとしても、厭な気分になるだけだった。』
フランス大統領選の前に。感想は政治的・宗教的な話なので控えます。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
2022年フランスにイスラーム政権が誕生したという設定の小説。あっさりとイスラームに迎合するフランス教養人の姿。佐藤優の解説で理解が深まった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
おもてたんとちがーう!って感じ。
キリスト教的価値観の転覆、というかイスラム教がヨーロッパを救う。という思考に驚いた。西洋知識人の中年のクライシス、緩やかに死んでいくことに対する恐怖と重ねる筆致は直ちにそういった価値観を賞賛する訳ではないだろうけど、うーん、問題作であることは確か、という感じ。政教分離が(表向きにしろ)当たり前と考える日本人としての受け止め方と、血生臭い歴史の結果、それを勝ち得たフランス国民の受け取り方は当然異なるだろうけど、現状にウンザリしているためにキリスト教でない宗教に対してその揺り戻しを期待する、という考え方は本当に恐ろしいことだ。この小説を読む限り大いにあり得ると思わされるだけに!
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
フランスにイスラム政権が誕生するというストーリーを背景に、文学者である大学教授の行き方を通して人間の矛盾や、周囲の環境からの影響を描き出している。大統領選での極右とイスラムの対立からのイスラム系大統領誕生という国の大きな動きと、個人の職業や行き方というパーソナルな動きが、同時並行で絡み合わさっていて、本書のテーマがより際立つ。幸福を得ようとして、得られた幸福に服従する。自由を得ようとして得られた自由に服従するものなのである。年をとるごとにこの傾向が強くなると知って軽くショックを受ける。