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(2015/10/1)
2009年に出版されたラグビー小説が、文庫になって登場。
舞台は大学ラグビー。
リーグ戦3連覇中の大学の監督が突然倒れた。
監督の息子は4年でSOでキャプテンで日本代表。
その監督の高校時代の教え子がHCから次の監督に。
元監督の息子と新監督がラグビーに対する考え方で闘う。
息子は父の戦い方を踏襲したつもりだったが、
新監督は元監督が本当にやりたいラグビーを知っていた、、、。
というところだろうか。
2009年のラグビーはこんなに古かっただろうか。
敵陣に入ったペナルティでハイパントを選ぶ。
今はそんなラグビーは考えられない。
タッチに蹴出すか、PGを狙う。そのどちらかしかあり得ない。
しかしこの小説ではハイパント、フォワードラッシュ。
それがテンマンラグビー。
バックスがいらないラグビー。
考えてみたら昔々の慶應ラグビーはそうだった。
非力なバックスをカバーすべく、ひたすらハイパンと。
滅茶苦茶古い。
この小説、ところどころ書き換えたようだが、
ここを書き変えてしまうと、
コアな部分がなくなってしまう。
タイトルの10は、SOの10であり、テンマンラグビーの10だからだ。
元監督がOBの雑音から逃れるため、リーグ戦で勝つために選手に指導したテンマンラグビー。
本当のラグビーはそうではない。第一回ワールドカップのサモアのように、
滅茶苦茶でも繋いで走るラグビーなのだ。
高校時代、現監督は元監督にそれを学んでいた。
だからこそ、自分が監督に指名された。
最初、息子始め選手に総すかんだったが、フォワードにけが人が出るなどして風向きがかわり、
最終戦でとうとう、、。
いずれにしても今のラグビーだったら、SOがボールを持ったらハイパントとわかっていたら、
すぐ狙われるわな。オプションがないラグビーは今は通用しない。
古き良き時代のラグビー。
まあ、そ腕はいけませんよ、という小説だから、いいのかな。
プレーの描写はなかなか良く書けていて、おもしろかった。
そうした選手の葛藤もあり、一気に読み進めることが出来た。
ラグビー熱の高まりの中、こういう本にもスポットが当たるといい。
大友信彦さん解説。