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ドゥルーズの単著としては、彼の主著と呼ぶこともできる『差異と反復』の議論を紹介しつつ、ドゥルーズの思想を新しい「生命論」に根ざした自然哲学として読み解く試みがなされています。
普遍数学や分子生物学、スピノザ、ニーチェ、フーコーといった思想家たちや、画家のフランシス・ベーコンなどにかんする章がならんでいますが、基本的には著者の解釈する生命論的な世界像にもとづく議論がくり返し語られているという印象です。ただし著者の考える生命論は、一元論的な生命への還帰を説くものではなく、微分にかんするドゥルーズの議論を踏まえて、世界のうちに身を置くわれわれが、無数の差異を認めつつも、その差異を肯定することのできるような倫理を可能にするものとして考えられているところに、ポイントがあるように感じました。
本書は、ドゥルーズの解説書という体裁をとっていますが、本書をおもしろく読むことのできるのは、ドゥルーズの思想の解説ではなく、著者の倫理学的な考察そのものに興味を惹かれるような読者なのではないかという気がします。