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鉄道の旅の醍醐味が記された本。鉄道マニアしか知らないような鉄道がいくつも紹介されていて、マニアでなくても鉄道で旅をしたくなる一冊だ。
行ってみたいと思ったのは、青函トンネルの内部にある竜飛海底駅と吉岡海底駅。トンネルの保線や非常時の待避所として設置されたそうで、見学用のチケットがないと乗降できない。
乗ってみたい鉄道と言えば、日本が誇る文化事業のひとつとなったマンガやアニメのキャラクターが描かれた車両の数々。JR四国のアンパンマン列車。JR境線の鬼太郎列車。JR氷見線と城端線の忍者ハットリ君列車。
津軽鉄道のストーブ列車もそそられる。客車に置かれた石炭を燃やすストーブで、駅員がするめを焼いてくれるらしい。まぁ、これは観光客ばかりに利用されるそうで、日常的にストーブ列車を使う人からは冷たい視線を浴びることもあるようだが。
更にマニア度アップなのが、マニ30形。これは日本銀行が所有する現金輸送車だったのだ。その役割の性質上、この列車の存在や列車運用は公開されていなかったのにもかかわらず、鉄道ファンに目撃され、注目を集めていた。現在は北海道小樽市総合博物館で一般公開されているそう。
駅弁も鉄道の旅に欠かせないアイテムだ。駅弁大会で無類の強さを誇る「いかめし」は、もともと函館地方の郷土料理だった。それが駅弁として発売されたのは1941年のこと。戦時体制下で米が不足していた当時、豊漁だったイカを活用して、あまり米を使わずに腹を埋める料理として考案されたというのには驚いた。
長野県の塩尻駅にはワインランチなるものも売られている。180ミリリットルのワインボトルが一本ついていて、地元のワインメーカー4社から取り寄せたワインが月ごとに換えて詰め込まれる。惣菜もサンドイッチ、から揚げ、チーズ、サラダといったワインに合うものばかりだ。
ちなみに最初の駅弁が販売されたのはいつかという話になると、通説となっているのは、東北本線・宇都宮駅で1885年7月16日に販売された、黒ゴマをまぶしたおにぎり2個とタクアンを竹の皮に包んだ弁当。旅館を経営する白木屋が販売したもので、その値段は1包み5銭。ホームで売られていたそうだ。
マニアが挑む時刻表検定試験という民間資格がある。数千人の受験者が集まり、時刻表を取り扱うスキルを競い合っている。ご存知、時刻表は熱心な鉄道ファンにとっての「月刊のバイブル」なのだ。
鉄道ファン「テツ」の世界を垣間見れる一冊だった。