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ルメートル氏の作品がなぜ日本でウケるか(もちろん日本だけではないのだが…)分析してみる。それは勧善懲悪に加えて日本人の大好きな人情溢れる時代劇的要素が存分に盛り込まれているからであろう。それを証拠にハッピーエンドではないにもかかわらずアレックスもアルベールも見事な大岡裁きで救われたではないか…それがなんとも言えぬ爽やかな読後感をもたらすのである。
そして上巻で「ミステリーではない!」と言ったことも撤回。
目まぐるしい展開の結末は一見唐突であっけないものなのだが実は登場人物ひとり一人の行動すべてが緻密な伏線となっておりそれがエピローグでかっちりと繋がる様は上質なミステリーそのもの。
やはり「tres bien!」と賞賛せざるを得ない
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厭世的な思いで日々を送る二人の若者が画策した計画は、戦争で疲弊した人々をさらに傷つける「事件」へと発展する。様々な登場人物が見せるすべての俗なる行動が人間の持つ醜悪な部分の具体例として提示されている。
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傑作では?
そりゃアレックスやイレーヌを読んだら否が応でも期待しますよね。でもいい意味で裏切られます。
青年2人が時代に翻弄される。但し片方が芸術家はだしの破天荒な人物であった為、フランスを揺るがす一大詐欺事件に発展していく。
それに絡む悪徳上司と、それぞれに絡む女達がまたいい。マドレーヌもポリーヌもルイーズもみんないい。小説なんて「美人であった。」と書けば誰でも美人になるのに、マドレーヌは敢えて不美人であった。ポリーヌは可愛らしかった、でも婚約者を戦争で失った25歳。ルイーズに到っては12歳だ。三者三様の設定が上手い。
最後にプラデルを見捨てるマドレーヌの男前な事!最後にあっさり詐欺に加担するポリーヌの潔さったら!そしてひたすら献身的なルイーズ!
三者三様の男の運命と、その男達に絡んだ女達の三者三様の運命。読ませますね〜、手に汗握りますね〜。エドゥアールは死んでしまいますが、一応ハッピーエンドでしょうか。そう、アレックスの様に、なんとなく落ち着かない、少し捻ったハッピーエンドです。
最後の最後にメルランのその後まで描かれる。
これがまたいい余韻を残してます。
この作者は凄いですよ。早く全部翻訳して欲しいです。
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想像を裏切る展開。暗く、エグく、悲しい展開も乾いたユーモアにする筆力。こんな小説もあるのか。訳文も良い。
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基本的に復讐譚でありつつ、どこかカラッとした明るさがあるところは、アーチャーの「100万ドルを取り返せ」を彷彿とさせる。
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ルメートルの作品だがミステリーではないし(ミステリーっぽいところはあるが)、正直展開にとまどい何がいいたかったのかわかりづらいところがある。
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ピエール・ルメートル3作目。
前2作と比べてミステリーではなくドキュメントのような。
初めは前作より出てくるキャラクター要素が弱く読みにくくてなかなか進まなかったが(相関図がややこしい)、次第に関係が分かってくると登場人物に感情移入してしまうくらいはまる。アルベール、エドゥアール、プラデルの3人の運命はいかに。
映像作品でも観てみたい作品。
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売れっ子のピエール・ルメートルの版権を獲得した早川書房は、その快挙に欣喜雀躍したに違いない。ハードカバーと文庫との同時出版となったのもその表れだろう。
しかし、実のところルメートルの作品は、あの怪作『その女アレックス』の登場後、即座に、過去に翻訳出版されていたにも拘わらずその時点では全く注目を集めなかったルメートルのデビュー作『死のドレスを花婿に』、そして少し後にカミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズとしては第一作に当たる『悲しみのイレーヌ』も出版されるというルメートル旋風が、翻訳小説界に巻き起こることになる。
『その女アレックス』が世界に席巻するルメートルのブームの発端となったにせよ、今、読む機会を与えられた過去の作品はすべて圧倒されるストーリーテリングを感じさせられる筆力に満ちたものであることは間違いない。
そうした翻訳ブームの中で実は地味ながらも『その女アレックス』の二年後の作品として改めて瞠目されるべき作品が、実は本作なのである。早川書房としてはとても鮮度のよい作品に眼をつけたというところなのだ。しかもこの作品、フランス最高のゴングール賞受賞作。いわば日本でいえば直木賞ならぬ純文学系の頂点である芥川賞に比肩する大きな賞なのである。ピエール・ルメートルは、実は直木賞も芥川賞も行ける作家であったということである。
しかし本書に向かい合ってみて、過去作品の見せる大どんでん返しやトリック、ツイストなどのミステリー的要素はないものの、その表現手法に接してみると、いかにもルメートル世界ではあるのだ。全然違う作品なのかな、と思いきや、その語り口、題材としての目の付けどころ、登場人物が陥る異常心理、意外な宿命とその結末といった小説的面白さは、日本の芥川賞にはまず見られることのない大衆娯楽小説としての楽しさが満載なのである。
フランスのおおらかさというようなものを感じさせる受賞であり、それに応える壇上のルメートルの妙技はやはり相変わらず見ものである。ミステリーではなく、むしろ冒険小説のジャンルに切り込んだルメートルの作品は、どことなくジャプリゾの『長い日曜日』を思い起こさせる。
戦争の残酷と、戦争を食い物にする戦争犯罪者。そしてそれらをある時は真摯に、ある時はイロニック(皮肉)に料理する名シェフのような文章(包丁)と味付けの冴え。日本の純文学では考えられないフランス純文学大賞の面白さ、という切り口だけでも改めて楽しみたいエンターテインメント・クライム・スリラーであり、壮大な復讐劇としてのビルディングス・ロマンとも言える大作をご賞味あれ。
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あれ?今、自分はシドニィ・シェルダンを読んでいるんだっけか?いや、違う。「その女アレックス」で一躍名を挙げたピエール・ルメートルを読んでいるはずだ。というくらい、期待したものとは違う。それでもよし、という場合もあるが。
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悲惨な戦争を潜り抜けた戦友たちが主人公となり物語を繰り広げ、そこに戦争を経て肥え太った元兵士も絡んでくる…といった図式から、オールスンの「アルファベット・ハウス」が髣髴された。
「その女アレックス」で一躍我が国では有名になったピエール・ルメートルの作で、ミステリー仕立てではないが、行く末が気になって焦れてくる巧みな筆運びはさすが。
生々しい負傷の描写などをぼかさず、直截的に書き切るあたりも、"らしい"。
作中世界がとにかく濃厚で、読者は知らないうちにそこにどっぷりと引き込まれてしまっているので、カウントしてみると僅か1年余りのスパンの物語なのだが、なんだか長大な大河作品を味わったような気にもなる。
優しさ、弱さ、狡猾、悲哀、怒り、誇り、孤独、家族、愛情、理不尽…、戦争とその後の世相という舞台をギミックにして、"人間"というものを巧く浮き彫りにしている小説だと思う。
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後編までどうにか読んだが、そのまま皆幸福にならず、モヤモヤさせられた。ルメートルの作品だからと期待しすぎたかも。時代背景もしっくりこない。
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上巻は、微妙に冗長さを感じましたが、下巻に入ると一気に物語が進みます。戦死者の遺族を相手にした詐欺と言う、あまり心地よくないテーマですが。
やっぱり悪人には鉄槌が降りるんですね。それはそれで、スッキリとしました。悪人が跋扈するのはよくありません。でも、その不正を見破る役人が、あまりよくない描写なのは何故なんですかね?
ペリクール氏をおそう最後の“偶然”は、小説としては、起こりうるべくして起きた悲劇ですね。エドゥアールも、実は、そう言う最後を望んでいた?
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どうなってしまうの?と、割とドキドキしながら読みました。
これまで読んできたルメートルの作品と少し違う印象でした。
メルランの存在が効いている。実際に自分の近くにいたら嫌だけど、なくてはならない人。
最終的にアルベールがしあわせに?なってくれたのが良かったですし
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どこかで紹介されていてそれで読んでみようと思ったのだけれど、『ルメートルの作品』だからじゃなく、『第一次大戦を扱った小説』というような括りじゃなかったかな。それで実際に手に取って「あ、これ書いたのルメートルだったか」って知ったという。でも、文春文庫の三作を読んだ後だからか、ルメートルってよりJ.アーチャーを読んでるような気分だったけど。
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フランスは戦勝国であるが、苦労している描写に驚いた。
(主人公二人が特殊な状況であだからかもしれないが・・・)