紙の本
ムラカミさんを通して読む戦後日本語短編のいくつか
2007/01/19 21:11
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:石曽根康一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹さんが、主に、「第三の新人」と呼ばれる作家たちの短編小説を読み込んでいく作品。
紹介されている短編小説は、
吉行淳之介「水の畔り」
小島信夫「馬」
安岡章太郎「ガラスの靴」
庄野潤三「静物」
丸谷才一「樹影譚」
長谷川四郎「阿久正の話」
村上さんの読み方は、丁寧かつ深い。
小説というものをここまで深く読むことができるのかと驚嘆させられる。
村上さんの読み方を辿っていくうちに、自分の小説の読み方まで影響を受けそうな気もする。
この本は、単なる、「短編小説の紹介」ではない。
「紹介」の中に、村上春樹という作家の匂いが色濃くしみこんでいる。
本文だけではなく、「文庫本のための序文」や「まずはじめに」を読むと、村上春樹さんの作家としての考え方も分かり、興味深い。特に、小説を書いている人には、もっと興味深いだろう。
「付録 読書の手引き」も丁寧に作られている。
全体的に、丁寧に作られた本で、非常に好感が持てる。
お奨めできます。
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村上春樹による本の解説。数人の著者についてアメリカで講義した内容に基づき日本で座談会を行ったものを本に起こしたものらしい。
文学についての村上春樹の姿勢や、短編小説を書く上で各作品の著者がどう考えて書いたかがわかるような内容になっている。文章を書く人間にとってはよい教科書になるのではないかと思う。
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つい先ほど読み終えました。今後、戦後小説についての感想がやたら増えたら、それはきっとこの本のせいです。「自分の読書に対する姿勢が稚拙なんじゃないか」と少し心配になってしまう―「正しい読み方」なんて存在するはずがないのに―それ程感心してしまいました。『ノルウェイの森』がバカ売れした時期の状況を吐露している箇所も見受けられて、興味深いです。
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吉行淳之介や丸谷才一をはじめとする7つの短編小説を、長編作家である春樹が講義風に解説している点がおもしろい。読んだことのある作品については新たな見方ができるし、読んだことのない作品についても、読んだ後に解説を読めば、自分の視点に春樹の視点を重ねて、その相違を楽しむことが出来る。
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以下で言及しています。http://blog.livedoor.jp/subekaraku/archives/7853213.html
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実際に紹介されている小説を読まないとこの本のよさはわからないかも。個人的には読書案内系の本は好きではないかも。
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村上春樹による幾つかの短編小説のレビュー。この種の本にしては珍しく、さしたる興味もない読者にも原著に興味を持たせるだけの力はある。しかし、悲しいことに、実際に原著を読むと、この本よりも何倍も楽しめるのだろう。そのあたりがこの種の本のジレンマである。
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タイトル通り、村上春樹が推薦する作家の著書を紹介する内容。
村上春樹の視点から吉行淳之介、小島信夫らの小説、小説の背景を紹介している部分も大変興味深いが、本の前半で書かれている村上自身の短編小説に対する考え方、取組方が非常に勉強になった。
『僕は自分自身を、基本的には長編小説作家であるとみなしています。僕は数年に一冊のペースで長編小説を書き(更に細かく分ければ、そこには長めの長編と、短めの長編の二種類があるわけですが、)ときどきまとめて短編小説を書き、小説を書いていないときはエッセイや雑文や旅行記のようなものを書き、その合間に英語の小説の翻訳をやっています。考えてみれば(あらためてそういう風に考えることはあまりないのですが)守備範囲は広いほうかもしれません。ジャンルによって文章の書き方も少しずつ変わってきますし、長編・短編・エッセイ・翻訳、どの仕事をするのもそれぞれに好きです。要するに早い話、どんなかたちでもいいから、文章を書くという作業に携わっていることが、僕は好きなのです。また、そのときどきの気持ちに応じて、いろんなスタイルで文章を書き分けられるというのはとても楽しいことだし、精神バランスの見地から見ても、有益なことだと思っています。それは身体のいろんな部分の筋肉をまんべんなく動かすのに似ています。』(P7-8)
→村上春樹の文章のバランスはここから生まれているのだと感じた。
『「本当に素晴らしい、見事だ」と思える作品は、おおまかにいって(個人差はありますが)十にひとつ、五にひとつくらいのものかもしれません。』
『何から何まで傑作を書くことなんて、どんな人間にもできません。波があって、それが上がったり下がったりします。そして波が高くなったときに、そのタイミングをつかまえて、いちばん上まで行くこと、おそらくそれが短編小説を書くすぐれた作家に求められることです。(略)逆の言い方をすれば、作家は短編小説を書くときには失敗を恐れてはならないということです。たとえ失敗をしても、その結果作品の完成度がそれほど高くなくなったとしても、それが前向きの失敗であれば、その失敗はおそらく先につながっていきます。』
本を読むときに大切なこと
『ひとつは何度も何度もテキストを読むこと。細部まで暗記するくらいに読み込むこと。もうひとつはそのテキストを好きになろうと精いっぱい努力すること(つまり冷笑的にならないように努めること)』
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読んでいるうちに、うわーっとなって、自分も短編小説が書きたくなりました。
いくつもいくつも、「気付き」の種が仕込まれていて、ドキドキします。
創作を目指している人なら、読んで損はないと思う。
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これは村上春樹が短編小説を紹介し、読み方をほんの少し補足してくれてる本。
出てくる作家は以下の通り…初めて読む人たちばっかりだった。
吉行淳之介
小島信夫
安岡章太郎
庄野潤三
丸谷才一
長谷川四郎
でもどれも面白く入り込むことが出来た。
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村上春樹がアメリカの大学でもっていた講座をもとに、六人の作家の短編小説を読み解いたもの。
今まで読んだ評論とか、解読とは、一味も二味も違う。でも、普通に読書してる感覚にはものすごく近いかもしれない。
これをきっかけに上げられた作家を読むようになるかというのは、ちょっとないかもしれないが(ちょっとアニマックな作家に、アニマックな作品だから)こういう読み方もありっていう肯定は、非常に大きいかもしれない。
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村上春樹氏が、日本文学を文学的に分析・解析・解釈するのは、とても珍しいこと。大学の講堂で日本文学の授業を受けている生徒のような気持ちになった。
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青木さんにもらった。
「会社に来るまでに読み終わって、もう二度と読まないであろうカテゴリ」に属するらしいが、、
これ結構面白いけどなぁ。たしかに読み返したりはしないかもしれないが。
まぁ、とりあえず青木さんの笑顔が可愛かったのでよしとしよう。
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10.3.15~挫折
「フィガロの読書案内202冊」より。推薦者…大竹明子 2/17 pick up!
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2010年3月9日読了。村上春樹がかつて大学で講義したという、短編小説に対する彼なりの楽しみ方のガイド。対象は戦後派、当時「第三の新人」と呼ばれた人々。吉行淳之介、安岡章太郎、丸谷才一といったあたり名前はもちろん知っているのだが私は読んだことのない人々ばかり・・・。短編小説にはもちろん持って生まれた文才や後天的に身につけた作家のスキル、個性、家族構成や戦中体験などのさまざまなものが現れるものだが、作家が完全にコントロールし切れない「あふれでてしまったもの」、ごつごつとして読み手に違和感を残すものにかえって魅力を感じる、という著者の主張にはうなづけるところもある。この人の読み方が全てではない(かつ、この人自身全ての小説をこうやって読んでいるわけではないようで)が、小説の読み方は深いものだなーと改めて思わされるしだい。世界は広い。