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世界的な計量経済学者でありながらもベトナム戦争や公害問題などの現実にかかわろうと苦闘した学者の紹介。筆者は宇沢さんと長年にわたってコンビをくんだ編集者。
とくに自動車の経済学のところは印象深かった。
自動車の普及によって人はおおくの便益をえる。しかしながら自動車によるGDP成長だけでなく、交通渋滞や自動車の道路建設のコスト、環境破壊コストなど負の経済も計量して便益を計算すべしというのが宇沢の主張と理解した。
ものごとには必ずプラスとマイナス、光と影がある。それを言葉だけでなく計量的にとらえようとする姿勢はいまも必要である。
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著者は岩波書店の編集者から社長になった人で、宇沢の国内での出発物に長く深く関わって来たらしい。いかんせん新書で網羅するには宇沢の業績は大き過ぎやろー。半端感が否めない。
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序章 数学から経済学へ
第1章 アメリカでの活躍とベトナム戦争の影
第2章 自動車の社会的費用
第3章 近代経済学の再検討―宇沢思想の出発
第4章 「豊かな国」の貧しさ
第5章 「成田」問題とはなにか
第6章 地球温暖化に抗して
第7章 著作集の刊行、そして教育問題への提言
終章 社会的共通資本という思想
著者:大塚信一(1939-、東京都、編集者)
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【由来】
・図書館の新書アラート
【期待したもの】
・宇沢弘文がどういう経済学者だったのか、全く知らないので、少しは見通しができるかと思って。
【ノート】
・岩波書店でずっとその編集を担当してきた著者による宇沢弘文氏の業績の概観。宇沢氏の本は未読なのだが、えらい経済学者だったということだけは何となく知っていた。
・宇沢氏自身の著作である「経済学は人を幸せにできるか」を読むと本書が上手にコンパクトにまとめていることがよく分かる。まず、宇沢氏の仕事を概観するのに本書を読んでから、経済学は人を幸せにできるか」を読むと理解が深まり、そこから先は各著作をあたる、というのがよさそう。
・ただ、最後の方はちょっと尻切れトンボな印象。まとめが雑になっているような印象。でも、これはもしかしたら、読み手の集中力が切れているだけかも知れない(苦笑)。
・それにしても、その業績が岩波からの出版ってことで揃えてるのに、なぜ、本書は岩波新書じゃないんだろう?
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著者は岩波書店の編集者として宇沢弘文の著作に多く関わってきた。
宇沢は社会の課題に立ち向かう学者だった。その根底にあるのは何なのか。著者は「宇沢の場合、人柄と学問は一体化したもの」という。
そういう視点で、宇沢の著作とそこからなる業績を伝える本だ。
『自動車の社会的費用』は宇沢の初の単著であり、また著者が初めて編集した宇沢の著作でもある。僕が初めて読んだ宇沢の本、でもある。日本の自動車のクリーン技術は、この本の影響がないと言ったら間違いになるだろう。40年を経て2013年に中国で、2015年には韓国でそれぞれ刊行されたというから、彼の国での変化も期待したい。
随伴する編集者の良し悪しで本は変わる、のは頭ではわかっているが、普段読むときには著者と向き合いこそすれ、編集者のことは全く頭にない。だがやはり編集者の存在は重要で偉大だ。そしてまた、宇沢弘文も改めて。