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日立のビジネス顕微鏡の研究・開発の成果を総括しながら,人や組織や社会に共通する法則を具体的に解説していく内容.非常に読みやすいです.2014年発行のこの本,まだIoTという言葉がバズるギリギリ前だったのですね.
矢野先生が物理出身なこともあってか,統計力学のアナロジーで人間行動や人間集団を捉えて定式化するアプローチを取っており,論述内容がすんなりと入ってきます.
私もちょっと前にやっていた仕事と用途や分析内容がかなり重複するところがあり(というか,論文のReferenceに使わせてもらった)前々から存じ上げてはいたのですが,改めて本書を読み,筆者の社会に対する課題意識や,テクノロジーの役割に関する認識を整理して知ることができました.
押し付けがましくなく,個々人が良い働き方を実現出来るようにな社会になると良いですよね.
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ずっと読みたいに入れていたが、ようやく入手。一気に読了した。期待に違わず、わくわくする本。
「行動の結果が成功したか」ではなく、「行動を積極的に起こしたか」がハピネスを決める。まさに、アランの「幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せなのだ」あるいは、「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである」に通じる。
さらに、意志だけではなく、習慣に着目していることは面白い。いつもいつも意識的、意志的であるのは出来ない相談。でも、ウェアラブル・デバイスを使って、「行動」の見える化をはかり、その助けを借りながら習慣化すれば、意識せずにも出来るようになってくるのかもしれない。
まさに、我が意を得たり。
生活習慣を変えるために、いつも身に着けているスマホを利用するメリットにつながる。このメリットが、スマホ中毒のデメリットを相殺するほど強いと思えればよいが・・・
ちょっと心配なのは、「強者の論理」にならないかというところ。出来る人はいいけど、出来ないわれわれはどうしてくれるの・・・と。
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示唆の多い本だ。ウェアラブルセンサーで個人の活動を計測し、そのビッグデータをコンピューターで解析するという内容なのだが、そこからわかることが多い。例えば、
・人の一日の活動量は決まっていて、時間と活動量は反比例する。つまり、活発な活動は時間制限があり、一所懸命は長い時間続かない。
・人と人とが再会する確率は、「会わないでいた時間」に反比例する。メールを返す確率もいっしょ。
・人がある活動をやめて別の活動に遷移する確率は、「その活動の継続時間」に反比例する
・職場の生産性は会話時の身体活動の活発さに左右される
・職場に「知り合いの知り合い」が増えると、生産性があがる。
・人間の幸福感は身体運動の多さに現れるので、センサで計測可能。
・従業員のハピネスが高まると生産性は向上する
人間が論理を組み立て、それをプログラミングする時代から、ビッグデータをコンピュータに解析させて、論理を導き出す世の中になると。将棋のプログラムも、昔は論理を組み立てプログラミングしていたが、今は、過去の将譜から次の一手を導きだす、人間対コンピュータの対戦がよくあるが、人間対過去のデータだと。
ビッグデータ、ウェアラブルに関心のある人のみならず、職場、組織の改善に取り組む人にもお勧め。
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「データの見えざる手」を読了した。
最初は本屋で見かけたものの、右開きのエッセイちっくな内容そうだったので敬遠していたが、知人のデータ解析者が絶賛していたため、読んでみたところ、非常に興味深い内容であった。
ウェラブルセンサーによって、自身の行動の記録をつけ、それを解析することによって人間の行動は物理方程式で説明できたり、U方程式を見つけ出したりする箇所は、自分も過去にNike Fuel Bandを2年弱つけてみて思ったことの進化版だったので、示唆に富んでいた。
他にも日立のネットワーク分析の内容が過去に紹介されていたので、知ってはいたが、その内容にも触れられていた。ネットワークを学んだことのある人には既知の内容だが、そうでない人には平易に書かれているので、おススメしたい。
日立のHというマシンの登場によって、ビッグデータの解析が可能になったというが、ちょっとこの辺はもう少し詳しく知りたいと思うのは職業柄なのだろうか。自分のデータの特徴量を発見するためにマシンの算出する相関などを見ると、説明が後でつけられると思うのだが、そうでないデータの場合、この運用は難しいと感じた。
いずれにしても、非常にいい内容だったので、データに関連のある人にはぜひ一読を勧めたい。
目次
イントロダクション
第1章 時間は自由に使えるか
人間行動に法則性はあるか
時間の使い方は意志により自由になるか
万物を支配するエネルギー保存則は人間にも効く
人生を俯瞰することを可能にする「ライフタペストリ」
腕の動きを数えるとわかる驚くべき法則性
右肩下がりの分布が社会を支配するという謎
……ほか
第2章 ハピネスを測る
人間の幸せを制御するテクノロジーは可能か
幸せの心理学「ポジティブ心理学」
社員のハピネスを高めると会社は儲かる
幸せを感じていることをセンサで測ることができる
行動に隠された符号を読み解く
休憩中の会話が活発だと生産性は向上する
……ほか
第3章 「人間行動の方程式」を求めて
人間行動には方程式があるのか
そもそも「方程式」とは何なのか
人との再会は普遍的な法則に従って起きる
面会確率を基準に考えると時間の流れは一様ではない
1/Tの法則はメール返信などほかの行動にも
行動は続けるほど止められなくなる
……ほか
第4章 運とまじめに向き合う
偶然はコントロール不能なものなのか
運は人との出会いによってもたらされる
運と出会いを理論化・モデル化する
「到達度」は本当に運のよさの指標になっているのか
運のよい人は組織のなかでどこにいるか
「リーダーの指導力」と「現場の自律」は矛盾しない
……ほか
第5章 経済を動かす新しい「見えざる手」
社会を科学できるか
「買う」ということは科学的によくわかっていない
経済活動を科学的に解明するにはどうしたらいいか
購買行動の全容を計測するシステム
コンピュータvs人間、売上向上で対決!
自ら学習するマシンが威力を発揮する時代
……ほか
第6章 社会と人生の科学がもたらすもの
瀬戸内海・直島で未来を描く
社会を対象とした科学の急速な進歩
サービスと科学を融合させる、データの指数関数的拡大
グランドチャレンジ「直島宣言」
まとめ――人の生命力の躍動
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2014年の57冊目です。
仕事の関係で、この著作で紹介されているウエラブルセンサーを使った人の行動の見える化を行っています。人のコミュニケーション量を見える化できるセンサーでいろんな測定データがでてきます。ここから”何を変えていくか?”を考え、試し、その変化をまた測定していきます。著作の中では、それらビッグデータを人工知能(学習するコンピューター)が分析し、人間には立てれない目標達成の為の仮説を提供できることが説明されてます。日立にある人工知能型コンピューター「H」がこれに相当するそうです。今回の私の仕事では、そこは、まだ人間で考えていくことになります。ワークショップみたいなことをやって施策の仮説を立てます。ただ、人の活性度と何の業務指標の関係性を見ていくかは、自分たちで決めていきます。
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一章を読んだとき、正規分布をネタにして統計学ディスりすぎだなぁとか思いましたけど、全体としては面白い本でした。
2~4章辺りはかなり冗長ば話で飛ばしても良いと思います。簡潔に言うと、加速度センサで幸福度は測れる、人間の行動はU分布拘束的である、幸福度を上げると様々な業績が上がる、ですね。
5章辺りから本書の目的だったデータ解析系の話になりますね。データからパターンを抽出するアプローチがビッグデータには重要ということですが、「ビッグデータ」というのが一般的に想定されているようなデータ量である限りに於いて正しいと思います。
世間では何でもかんでもビッグデータ、ビッグデータと騒いでいますが、現状ビッグデータなんて殆ど無いという話ですね。本書で扱っているデータはビッグデータなので、機械学習や統計モデルアプローチが上手くいかないのは当たり前ですね。統計学は、少ないデータを如何に効果的に利用出来るかに尽力する側面がありますので。ビッグデータにはデータ・ドリブンと言うのはまさしくという気がします。
とまぁ全体としては中々面白かったです。ビッグデータと言う言葉に惑わされている人は5章だけでも読んでみては如何でしょう。
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著者は日立製作所にてビッグデータ収集・活用のためのテクノロジーを研究する企業内研究者。本書は今流行りのビッグデータに、科学的手法で定性的な概念を記述しようという唯物的な試みが絡められる、読み応えと面白味を合わせ備えた良書。
著者らはウェアラブルセンサを用いて人間の日内活動を長期的にモニタしたところ、身体活動がU分布という分子運動の頻度と同じ分布に従っていることを突き止める。
それは業務の効率性ややり甲斐、果ては幸福度といった、これまで客観的に計測困難とされてきた概念の定量的な評価手法への道を拓く手掛かりともなる発見だった。その結果、業務における幸福感や主体的な問題解決傾向と身体活動量の間に正の相関が見られることがわかる。
そしてこのウェアラブルセンサで身体活動をモニタすることで、組織のモチベーションや問題解決能力を数値化しブーストアップさせることができるという。さらに国家レベルの人民幸福度向上や国際紛争解決などのより高次な活用方法にまで言及している(これはさすがに少々rosy pictureのような…)。
これまでは収集データから仮説を立てる際、薄弱で急激な変化に弱い「経験と勘」に頼ってきたが、これを今後はコンピュータの守備範囲とすべき、という主張には同意。仮説を人間が立ててからでないと動き出さない日本の企業文化に触れているあたりはさすが企業内研究者、プラクティカルな視点を外さない安定感を感じる。
ただ、あくまで人間が主でコンピュータは従とはいうものの、著者の論を突き詰めていくとこの関係が逆転するまであと少しではないかという気もする。問題提起は人間の役割と言ったって、データドリヴンな分野はここ10年位で拡大したしこれからも膨張し続けるだろうから、どんな問題を設定すれば最適解が得られるかコンピュータが判断できるようになるだけの問題提起に関するデータが、今後蓄積されるかもしれない。結果の責任は人間が負う必要があると言うが、これをコンピュータに負わせることができれば人事考課の恣意性を排除できていいという意見もひょっとするとあるかも。
そうだとしたら、将来の組織の風景は今より陰鬱なものになるかもしれない。「店のここに時々立つと何故か売上が上がるが、しかし何でなのかはさっぱり分からない」「何故か知らないが、特段気が合うわけでもないあいつとしょっちゅう喋れとコンピュータが指令してくる」…。自分の行動の因果関係が理解できないまま行動のみを強制されるというのは、著者の言う幸福感とは相容れないのでは、とちょっと思ったりした。
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今後のウェアラブル動向を調べるために購入。しかし、内容は異なっていた。
ウェアラブルなセンサーを使って、人間行動や社会現象を計測して大量データを分析することで人間行動や社会現象に関するさまざまな発見により世界をリードしてきた。その全体像をまとめた。このデータにて定量的でハードなサイエンスが確立され科学的な予測や制御か可能になる。それは会社の利益に直結する。本書はこれまでサイエンスが対象としてこなかったものを対象にしつつもサイエンスの方法論に徹底しこだわった本。自然の摂理の解明に用いられてきた物理学の概念やツールが企業の利益や人間の共感の理解に威力を発揮する意外性はこれまでの書籍に見られない本書の特徴。
幸せだから仕事が出来るようになるためには、行動的になる、雑談力を高める、対人力を高めることが重要。その事はビッグデータの解析結果から明らかである。
人が仮説を立てるビッグデータの解析ではなく学習するマシンによるデータ解析により生産性の向上が図れる事が証明された。
時間の使い方、ハピネスの高め方、1/T分布に基づく行動、運こそ実力そのもの、ビッグデータと学習するマシン。
1日の行動量は決まっておりその中で配分を自由に決めている。よって、全てが自由なのではなく決められた約束事の中における自由にて行動している。
ハピネスは行動を起こした結果である。仕事ができるから幸せなのではなく幸せだから仕事ができるのである。具体的な幸せを意識することで行動的になり幸せが高まる。会社における生産性は現場の活発度、会話の活発度に起因する。多様な人とのつながりが運を引き寄せる。
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この本やばい。ビッグデータによるパラダイムシフトがリアルに感じられて衝撃を受ける。
・「人による仮説検証型分析はビッグデータには通用しない」。仮説のない分析は無駄、というのは過去の話。もはやデータ分析は、仮説出しからコンピュータに任せる時代になる。今をときめくデータサイエンティストの仕事も、そのうちなくなってしまうのではないか。
・とはいえ、そこまで行っても人間にしかできないことは3つある。問題を設定すること。定量化不可能な未知の状況でも前に進むこと。結果に責任を取ること。
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ウエアラブルセンサのデータによると、我々が1日のToDoリストとその各項目の時間配分を、自分の自由になると思っているのはまったくの幻想らしい。
バラバラシ氏著「バースト」にも書いてあったが、人間の行動にはある一定の法則があるようだ。
ウエアラブルセンサやビッグデータの解析によって今後の様々な人間行動がパターン化されていくことが予想される。この情報が個々人にとって上手に使われれば良いのだが、購買行動などと連携し知らず知らずの内にコントロールされていく懸念は大いにある。
既にスマホからは各種の個人行動データが抜き取られている。今後もApple Watchをはじめとするウエラブルコンピュータの普及により、その傾向は加速していくだろう。
ウエアラブルセンサの解析例として面白かったのは、幸せは加速度センサーで測れるという件だ。
ハピネスは活動量に現れ、活動量は加速度センサーで測れるというのだ。「幸せ」になると「動きが増える」。なんとも人間とは単純なことであろうか。
したがって、ITを導入することにより、一見効率化するはずのように見えて、それまで集団の身体運動の連鎖に必要だった要素を排除してしまい、それにより活発度の連鎖的な向上を促す仕組みがなくなって、「生産性」や「クリエイティビティ」を低下させてきた場合も多いかも知れない。
極端な言い方をすれば、ITがハピネスを減らしているかもしれないということだ。
今後の組織のあり方として参考となる提言もあった。これまでは組織の上下での連携を行う常識として「ホウレンソウ(報告、連絡、相談)」が重要であった。しかし、今後はこれに加え、「マツタケ(巻き込み、つながり、助け合い)」が必要となるらしい。
目指すのは、個と全体を統合して共通の視点が持てる組織だろうか。
ビッグデータは人の幸せにつながる様に、ポジティブな視点で活用していきたい。
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「ビッグデータ」という言葉がバブルっぽく乱用されていますが、正直これまでの統計分析と何がどう違うのか、今ひとつよくわかりませんでした。が、この本を読み、ウェアラブルセンサーの情報から個々人の動きや、人と人とがどこでどのような頻度で会い、話をしたかのきわめて詳細な時系列データを取り、それと求める成果との相関関係を分析することで、これまでできなかった改善ができるようになるということがよくわかりました。
日立のそういうシステムを開発した人の著書ということで、多分に宣伝的要素は入っているのでしょうが、これからのIT活用のあり方が見える非常におもしろい本でした。
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2014年10月19日に開催された「全国大学ビブリオバトル2014~京都決戦~いこま予選会」で発表された本です。
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物理だけではなく、人間の社会行動にも法則というものが存在するという話。いろいろ衝撃的だとは思うのだけど、自分にはちょっとむずかしかった。
人の行動は法則により支配されてるから、ToDoなんてやってもうまくいかないのだとか。自分はやったことないけど。
後、幸せは加速度センサで計れるのだとか。幸せな人の身体はよく動くらしい。これは、幸せだから動くのではなく、動くから幸せになるということらしい。自分も意識して動くようにしておこう。
後、自ら学習する人工知能のH(Hitachi Online Learning Machine for Elastic Society)がすごい。データの解析に仮説が必要ないのだとか。ただ、Hはシャーロック・ホームズのHの頭文字からとっていると書いてあるのを見た時はある意味で驚いた。HitachiのHじゃないのかよと。
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ウェアラブルセンサが普及しつつある現代において、ウェアラブルセンサのポテンシャルがよくわかった。人間の行動や活動、コミュニケーションの階層など、仮説を超えるデータからの事象解明に驚いた。著者は、工学的科学者ではあるが、社会学や心理学にも造詣の深い、広範囲に知識を身につけている。今後の世の中において、データサイエンスがかなりものを言う世界が来ることを実感できた。
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「ビッグデータ」という言葉はほとんど業界ビジネス上のキーワードとして流通していますが、本来そうだったはずの可能性の一端を知れたような気がします。
ビッグデータは本質的には潜在的なものであって、人間の「意識(形而上の世界)」という浅い道具で取り扱っては本来の良さが引き出せないように思いますので、著者がとられているようなコンピュータに分析させるというアプローチが正しいように思います。その中で、未知の世界が発見されてくれば面白い。
「運」ということを、「人や事象との幸福な出会い」というふうに考えれば、その良質な機会をどれだけ多く持っていて、どれだけ活かすことができるかということになり、「運も実力のうち」と言うがむしろ、実は「運こそが実力そのもの」と言うこともできるでしょう。