投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ロダンはいう「石に一滴一滴と喰い込む水の遅い静かな力を持たなければならない」
水には、そんな力強さがある。
志乃子は、「私は水の流れに乗って、それに身を任せて今日まできたと思っていたが、そうではないのだ。流れとともにかたちを変え続ける水に沿って生きてきて、今日の自分というものを得たのだ。どんな尖った細い難所でも、水はそのかたちになってくぐり抜けていく。私も水のかたちと同化して、微笑みながら難所をくぐり抜ける」
志乃子には、春のひだまりのような柔らかさがある。
志乃子は、ヒビが入った古備前の壺を見て、5万円で購入する。それが、実際には300万円で売れたのだ。志乃子には、本物を見分けるセンスがあると三好老人はいう。そして、病気のために閉店となっていた喫茶店グールドで、骨董品を売りながら、喫茶店を任される。
また、手文庫からは、手紙とリュックサックが見つかり、その持ち主が横尾文之介。北朝鮮から日本脱出する時の手記だった。彼は自分の家族だけでなく、150人近くの人を脱出させようとした。その脱出した時の女のお腹の中に子供がいた。それは、志乃子の息子が就職した美容師の兄だった。人々は繋がって、それぞれの幸せを追い求めていくのだった。
志乃子、美乃、沙知代。アラファイブの女たちの活躍を祈る。
ある意味では、北朝鮮脱出劇などは、戦争体験の人たちの語り継ぐ物語だ。1947年生まれという戦後世代の作者が、父親や母親が潜ってきた物語を受け継いでいる。私の父親は大正15年生まれ。よく考えたら、父親の戦争経験を全く聞かなかった。お爺は、明治23年生まれ。お爺とは、一緒に生活したけど、戦争の話をしたことがなかった。なぜか、今頃になって、そのことが残念だと思う。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
日常を起点としながらも、スケール感のあるストーリー展開。
明るくあっけらかんとした主人公の人柄に惹かれた。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ごく普通の生活をしていた主婦が人との繋がりによって自分の幸せを広がっていく、ありそうでありえない物語の後編。
主人公は自分の力で引き寄せたのではない様々な事柄は、その生き方によって、自ずと引き寄せられていく、その生き方は相手に合わせて変化しながらも、結局は変わらない信念のようなものによって繋がっていくのだと伝えてくる、そんな話だった。そうした生き方を表したタイトルの言葉は、作者の思いが込められているのか、まあわかるような、そうかなぁというところもありか。
朝鮮半島からの過酷な脱出の物語は、ストーリーの中で重要な要素ではあるけど、これはこれで別の話の方が良かったのではないかなとも思う。
作者あとがきには、善き人たちの繋がりというテーマに欠かすことのできない無名の庶民の力を盛り込んだとあったが、そんな逸話も含めていろいろなストーリーが繋がっていく面白さがあった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
一つの茶碗を手にしてから人との縁や繋がりが広がり続けて、様々な人と接する事や様々な事が日常に起こるけれど主人公は自分という尺からは無理をして逸脱せずに、常に自分というものを大切にしている。主人公はその素晴らしさに気がつかないが友人はそれを感じて影響を受けて、人生の捉え方や生き方が変わっていく。
人との繋がりの中で、戦後の壮絶な経験をしながらも自分の信念を変えずに人々を救った名もなき人の事も知り思いを馳せる主人公。
そのどれもに私は感情が動かされました。