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…石に一滴一滴と喰い込む水の遅い静かな力を持たねばなりません。…
というロダンの言葉が作中に引用されているが、この物語の核心はこの一言に尽きると思う。良い流れに身を委ねて、次の一歩を踏み出す。人と人とのつながりって、おもしろいものなのよね。この人はと思ったら細くてもなが~く付き合えるようにしておくこと。それが自分の人生も豊かにしてくれるんだなぁとしみじみと思った。私もあの志乃子さんたちが住む場所の住人になって、志乃子さんたちと知り合って、いろいろおしゃべりしたいなと思った。
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久しぶりに読んだ宮本輝。なんだか傲慢さを感じるのはなんでだろう。嫌いな話では決してないのだが・・・。
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「自分を善人に仕立て上げよう気なんて、ひとかけらも持ってはれへん」「自然にすなおで、自然に謙虚で、自然に礼儀正しい」主婦が、次々と「善い人」と出会い、大金を手に入れ、そのうえ遂には喫茶店を経営することとなってしまう。何とも魅力的な物語。
この『グールド』という喫茶店、どこかにあったら、ぜひとも行ってみたくなってきた。
一方、要所に挿入される、大戦後の北朝鮮から帰還する一家を記した手記は、実話だそうで、光と影のように、主人公と「善き人たち」とのつながりを一層引き立てている。
また、宮本作品らしく、記録しておきたい箴言があちこちに。
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茶碗とカフェオープンの話は正直どうでも良い。作り話にもほどがあるし、不思議な縁で片付かない。引き揚げの話に集中すれば良かったのに。
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しばらくぶりに宮本作品を読了。そうだこの価値観。読み終えたら、自分も正しいことをして生きよう、本物じゃない人とは付き合うのをやめようと確信しました。
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一気に読んではしまったのだが、どこか都合の良すぎる展開の物語で、だから何、という感じがしてしまった。
こういう運の良いだけの人生も世の中にはあるのかもしれないけど……、この主人公の女性は自分で何ひとつ努力して得ているわけじゃないのよね。うーん。
一気に読んで面白くなかったわけじゃないのだが、好きではないってことだな。
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宮本作品を読むと希望を得られる。『水のかたち』は出会いを大切に受け止める。その連続が幸福の連鎖を生み出す事が描かれていると感じた。
作品の中にある下記の言葉が心に残っている。
『心は巧みなる画師の如し』
『他者への畏敬』
『石に一滴一滴と喰い込む水の遅い静かな力を持たねばなりません』
他の作品も読みたくなりました。
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上巻に続いて下巻を読んだが、下巻の方が話の展開があったせいか読みやすく、テンポ良く読めた。
しかしながら最後までなんとも言えない「偽善的」な「いい話」がむずがゆく心地よく読むことは出来なかった。
結局、何が言いたかった話なのかもよく分からず、敷いて言えば因果応報的な話なのだとすれば、あまりにただ長いだけの小説だったと思う。
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新たな恋でも始まるかと期待したがそれもなく、淡々とした人生が続く。
だんなさんの協力的な言動も、こんな旦那さんがいるのかと真実味がなく、盛りあがりに欠ける結末だった。
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物語以前に宮本輝の文章が好きである。
読んでいると、ほっとして気持ちが温かくなる。
この物語も主人公は恵まれた女性だが、「水のかたち」を柔らかく醸し出すために存在しているようだ。
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宮本輝は書きたいものをたくさん心に持っていると以前読んだことがあるが 彼は後半の想像を絶する過酷な引揚げの話を後世に伝えたくて この本を企画したのではないか?
だから あえていつも口元が笑っているように見える 春のような雰囲気のおばさんを主人公に持ってきて 恵まれすぎる暖かいお話で舞台の準備をしたのじゃないか
始まりはなんともおだやかな 人をなごませる主婦が主人公 家族も次々登場する人物も いい人ばかり
近所の古い喫茶店の2階に亡きマスターが集めた骨董品(がらくた?)があり 見亡人にすすめられその中から 気軽に2~3 もらうけることになるが これらが後に大変価値のあるものと分かり 骨董の世界入り込んでいく 彼女にはどうやら骨董品を見極める才能があるらしい また次々と出会う人たちも温かみにおある人ばかりで この人たちに助けられながら最後はビル群の中の 趣味の良い喫茶店に骨董品をならべる経営者になってしまう なんとも調子が良すぎてはがゆい
彼女が貰い受けた骨董品は文机や茶碗のほかに手の込んだ細工物の手文庫であったが この箱の中に手縫いの小さな汚いリュックサックがあり ビッシリと書き込まれたメモの束が入っていた
これの内容は「ほのぼの」から一転して非常に厳しいもので敗戦後北朝鮮に取り残された人たちの記録であった 軍人は先に逃げてしまい 一般人は朝鮮人や突然南下してきたロシアの兵隊にひどい目に会う 大勢が犯され衣類を剥がれ野ざらしの死体になったなかで 一人の男性の知恵と強い意志によって1年後の良い季節を選んで 150人もの日本人を海路によって38度線を突破 引揚後も才覚によって 戦後の厳しい時代を乗り越えた記録であった たくさんの偶然に助けられ奇跡的に一緒に引き上げることが出来た幼子に伝えたくて書き残したようだが 戦後の生活苦の中 途中で途切れた状態になっている 苦労の末書き残した人の家族がまだ生きておられることがわかり続きを聞く旅に出る
敗戦後大陸や南方から奇跡的に 命からがら引き上げてきたという話は聞いたことがあるが ここまで悲惨で生々しいものははじめて
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下巻に入っても、川の流れに乗るかのように、志乃子の前にある扉が次々と開いていく。若干うまくいき過ぎな感もあるけど、この本のテーマに「幸福の連鎖」も含まれるのだから、これでいいのだと思えます。50代の知識も経験もそれなりに積んだ女性が、新たな人脈を得て才能が花開いたのなら素晴らしいことですしね。コツコツとまっとうに生きていけば、そのうち運や道が開けてくるかもしれないと、ほっこりとできました。作品中に織り込まれている敗戦後に38度線を越える話は実話がベースになっている知り、胸が痛んだ。
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下巻は勢いで読む。
主人公の周りには、善き人たちが集まってくる。
それは主人公が、心根の正しい善き人間だからなのだろう。
上巻に比べると、心に沁みる場面は少なかったと思う。
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自分を自分以上のものに見せようとはせず、自分以下のものに見せようともしないシノコが主人公。水のように、素直に正直に周りに馴染み、溶け込み、自然に自分の思い描く通りに周りがなっていく。こころが穏やかになる一冊。
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平成28年9月
主人公の人生が平凡だったものから変わっていく。
その中で主人公の中にあるものは変わらず大切に一滴一滴の力を大切に。
ファニー(偽物)が世界を席巻している時代。
偽物、まがいもの、うらっつらだけ。そういうのに人間は騙されやすい。
一丈のほりを越えぬもの、十丈二十丈のほりをこうべきか
一丈の幅の堀を越えたら、一気に十丈二十丈がやすやすと越えられるようになる。その一丈の堀を越えてみることが大切。
この本を上下と読んで、
やっぱり人生って難しいね。自分も今、40になろうとしているところで。この主人公と同じように、今までの自分の人生って何だったんだろう、ヘイヘイボンボンと生きてきて、このまま死んでいくのか。
主人公のように何かがおきた時それを勇気を出してやってみる。偽物ばかりの世の中で本物を大切にやってみる。一滴一滴の食い込む水の遅い静かな力を!!