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最後に作者自身が述べているように一人称で語らないほうが良い話。あくまでも主人公たる探偵役の女記者は三人称として語られた方が味がある。短編でミステリーで起承転結とsるのは無理が多いが、探偵ではなく記者である主人公は謎解きも結末もつけなくてよいので短編でもよかったかもしれない。
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太刀洗シリーズの短編集。
「王とサーカス」の様に一人称ではなく第三者から見た太刀洗が語られ事件を徐々に解いていく様が描かれる。
「王とサーカス」の方が好み。毒も薄いし至って普通のミステリ。
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さよなら妖精、王とサーカスに登場した大刀洗万智が主人公の6編の短編集。
新聞記者時代からフリーランス時代まであるので、王とサーカスの前と後の時期が含まれている。
さよなら妖精の登場人物も出てくる編がある。
全体的には、王とサーカスと同様に、ミステリーそのものよりも報道とは何かを問いかけているが、王とサーカス時よりも、自分としての考えを主張している。
以下、各短編の内容;
真実の10メートル手前
太刀洗が新聞記者時代。
あるベンチャーの経営破綻で、広報で社長の妹が行方不明になる。妹にかかってきた電話の内容だけから居場所を探りあてるが…
鋭い推理が読みどころ。最後はどう解釈したらいいのかわからなかった。
正義漢
週刊誌記者時代。
電車の人身事故の現場。話者が少し妙だと思いはじめたら、現れた女性がさらに異様なのだが、それが実は…。
太刀洗を助けたのは、さよなら妖精の同級生らしい。
恋累心中
フリー記者時代。いっしょに行動することになる週刊深層の記者の視線で話が進む。
高校生が心中する。たまたま別件で現地にいた太刀洗は、週刊深層の記者のコーディネートをする。結局は心中ではあったのだが、その裏側のいたたまれない真実に太刀洗は気づく…
高校の先生に即アポ取れたり、未公開のノートの写真が入手できたりと、手まわしが良すぎるが、太刀洗ならと思わせてしまう鋭さ。
名を刻む死
老人が孤独死し、フリーランスの太刀洗が取材する。現場のテーブルに残されていた、ある読者アンケートに目を付け、真相にたどり着く。老人がなぜ名を刻みたかったかがキーとなる。
最後に太刀洗が放つ一言は強烈だが、彼女の思いやりでもある。
ナイフを失われた思い出の中に
さよなら妖精のマーヤの兄が仕事で来日して太刀洗に会い、太刀洗の事件の取材に同行することに。
犯人の手記に隠された秘密に太刀洗が気づき、さらに真相にたどり着く。しかし、物語のポイントは事件そのものより、二人の、報道とは何かの議論であり、マーヤの兄は、太刀洗がマーヤの言っていた通りの女性だったとわかる。
話が少々込み入っていてわかりにくいが、深い。
こんな議論ができるほど英語が堪能なのかと妙なところに驚く。
綱渡りの成功例
台風の土砂災害で助けられた老夫婦の生存に隠された秘密を俵万智が明かす。結果を知れば別にたいしたことじゃないとも思うが。
救助作業に加わった消防団員で老夫婦を知っている男性の目線で語られるが、偶然にも彼は太刀洗の大学時代の後輩だった。
これも最後は、求められていることを記事にする記者の姿勢がテーマであった。
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短編ごとに、ミステリよりだったりジャーナリズムよりだったりしてるので、全体通して両方楽しめる贅沢なつくり。
「名を刻む死」が一番好きかな。
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1991年4月。遠い異国から来た少女、マーヤ。彼女と出会った高校生たちは日常に溢れた謎を解きながら交流を深めていく。異国の少女との出会いと別れを描いた「さよなら妖精」の登場人物の一人であった大刀洗万智のその後を描いたのがこの作品です。
「王とサーカス」へと繋がる新聞記者時代を描いた表題作「真実の10メートル手前」を含めた今回の短編集では、常に真実を追い求める彼女の姿を見ることが出来ます。
また、今作で彼女は記者として、ジャーナリストとして、真実を追い求めるだけではなく、その真実を本当に報道すべきかどうかという事も常に考えているように思感じられました。
「真実」を伝えることで罵声を浴びる事もあれば、人を悲しませ、憤らせる事もある。それだけでなく、その真実は「他者」を、時には「自身」を傷つける事もあるでしょう。それらの責任と危険を負いながら真実を追い続ける彼女の姿には考えさせられるものがあります。(特に前者は「綱渡りの成功例」、後者は「正義漢」を参照)
インターネットやSNSが発達した事で、今では誰もが情報を簡単に発信することが出来る様になりました。時にはメディアより早く事件の情報を発信する人もいるでしょう。
その時、あなたは罵声を浴びる覚悟を、他者や自分を傷つける責任と危険を負う覚悟を持って「報道」を行っているのかと。
その覚悟と責任、痛みを背負いながら真実を追い求める彼女の姿を通して、作者はミステリー小説として謎を問いかけてくるだけでなく、読者の「情報」に対する姿勢をも問いかけている様に見えました。
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ジャーナリスト太刀洗の短編集。全編を通じてジャーナリズムとは何かを問う作品となっている。王とサーカスに通じる一貫性がある。なかでも恋累心中が良い。一見只の高校生心中事件と見えるが、現場に入り違和感を感じ、取材を重ね、推測し、真相に迫るという、この過程と結果が上手く書かれている。短編集には星を付けないつもりだったが、著者の筋の通った作品ばかりであり評価した。
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ジャーナリスト太刀洗万智、「王とサーカス」後の6編。
解決したかの事件の真実に淡々と迫る太刀洗万智、どの作品もわりと普通で切ない話が多い。
正直なところ物足りなかった。
(図書館)
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<ベルーフ>シリーズ。と呼ぶらしい。
あとがきに感動。万智を読めて嬉しいですよ。
「真実の10メートル手前」
「正義漢」
「恋累心中」
「名を刻む死」
「ナイフを失われた思い出の中に」
「綱渡りの成功例」
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前半はなんだか数学の文章問題のような感じだった。謎の提示をして、謎解きの材料やヒントを徐々に出し、最後に答えを掲示する。推理問題集と言ったらいいか。
その合間に少しの小説っぽさを挟み込むから、物語にはただただ不快感しかない。
「名を刻む死」からやっと小説になったか。ただこの読後の不快感はこの本全体のテーマなのかな。なんだか救いもあったような気もするが、事件に関わってしまった人間に影を残す終わり方をする。個人的にあんまり好きな終わり方じゃなかったな。まぁここは好みの問題だから評価には加味しなかったけど。
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「さよなら妖精」「王とサーカス」に続く太刀洗万智シリーズ。後からじわじわと効いてくるような感じが堪らないし、ハッとさせられるようなことも多い。米澤穂信、絶好調だね。
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しまった!『王とサーカス』より先に読んでしまった。まぁ、短編だから大丈夫だろう。個人的には「正義感」が秀逸。
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二年連続国内ミステリ賞レース三冠、ということだが、『満願』より『王とサーカス』より面白かった連作短編集。
長さこそまちまちでが、語り手の人物の各キャラクターは毎回冷静に主人公を見る。その主人公はさらに冷静で、むしろ冷徹でドライで現実的で、どの話もどこかほろ苦い結末で締めくくる。
ミステリ短編として、教科書的でない起承転結がとても巧みだった。唐突に輪郭の見えないところから話を始め、「承転」で話の全体像を与えながら謎と布石とを散りばめ、スピーディに端的に「結」する。鋭くてキレイ。
4+
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フリーの記者である大刀洗万智が登場する短編集です。
起こった事件は、表面上だけ見ると単純だったりありがちだったりなんてことないそれぞれの事件のようで、いつもその裏に驚くような真実が隠れていて、それを大刀洗万智は丁寧な取材活動で暴くというか、真実に辿り着いていきます。
その勘の鋭さや観察力にも心を持っていかれますが、それ以上に、ジャーナリストとしての使命や役割を模索し真摯に向き合う姿勢が心に響きます。
全編、非常にシリアスで、明るみになる真実はどれも胸が苦しくなる重たいものだったりします。
報道とは、ということを考えさせられる小説でした。
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太刀洗万智が、ジャーナリズムを自身に問い、魂を削りながらひとつひとつの真実に向かっている。
「王とサーカス」を読むと余計に痛ましく思えてくる。
そして彼女の思い出はやっぱり太刀洗の中でもずっと残っているのですね。
「真実の10メートル手前」のラストと「名を刻む死」がとても良かった。
ジャーナリズムは人を傷つけ、自分を削り、それでも誰かを救っていることを少しだけ信じる。
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太刀洗万智シリーズ第3弾。第3弾にして、初めての短編集。すべての作品が太刀洗の視線からではなく、第3者の視点から描かれている。どの作品も太刀洗の着眼点は相変わらずで、巧みに事件を解決していく様は、読んでいて爽快感さえ覚える。日常の小さな事件を扱うことが多い作者だが、今回はすべて人が死んでいることも、この作品の特徴かも・・・「さよなら妖精」のマーヤの兄も登場し、読みごたえは十分。