- みんなの評価
58件
太刀洗万智シリーズ
一九九一年四月。雨宿りをする一人の少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国したとき、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶の中に――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。著者の出世作となった清新なボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ。
真実の10メートル手前
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
真実の10メートル手前
2018/05/06 17:10
読み終えるのがもったいなかった
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
やっぱり読み終えるのがもったいなかった。
もっとゆっくりと一編一編を味わい尽くすように読むべきだったなぁ。
「さよなら妖精」とこの作品の間に「王とサーカス」があるのだけれど、文庫化されるのが何故かこちらが先になったので待てなかった。
「さよなら妖精」で気高く孤高な少女であった太刀洗万智がこんな風な大人になったのかという感嘆すべき喜びを噛み締めながら読んでいました。
それにしても米澤穂信さんの視点や思考の多様性は、いつ読んでも激しく読み手に自省を求めてくると思うのは私だけかな?
今年の8月に「王とサーカス」も文庫化されるようなので、その時に改めて3作を時間経過順に読み直してみることにしよう。
王とサーカス
2020/11/08 23:16
見事な社会派本格ミステリ!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
太刀洗万智がフリージャーナリストとしてネパールを訪れ、そこで殺人事件に関わってゆきます。大きな問題提起を含む社会派推理小説でもあり、地道な捜査や意外な犯人、そして驚くべき真の動機など随所に工夫が凝らされた骨太の本格ミステリにもなっています。何よりネパールの熱波に苛まれるような情景描写が見事です。その暑苦しさが読み手にまで伝わってくるようでした。
真実の10メートル手前
2018/12/24 18:40
読者のためにミステリーの追求を
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
米澤穂信の作品集であるが、短編集と考えてよさそうである。しかし、いずれもフリー・ジャーナリストの太刀洗万智が主人公の作品なので、短編集とは言えないかも知れない。合計6作品である。内容は本書のタイトルと同名の一編が万智が新聞社のカメラマンと甲府に同行するストーリーである。これだけが新聞記者としての万智が登場する。
大刀洗万智は、米澤の著作ではすでに別の小説で登場している。『さよなら妖精』では、高校生の時代に半ば主人公として初めて出てきた。また、『王とサーカス』という一編は大学卒業後に万智が就職した上記新聞社を退職し、フリーのジャーナリストになり立ての頃に、雑誌社の依頼でネパールに赴くストーリーである。
本書では新聞記者、フリーと立場は異なるが、取材をして記事を書くという点では同じである。また、『さよなら妖精』でストーリーの中心となったマーヤ・ヨバノビッチの兄がユーゴから来日し、取材活動を行う際のストーリーである。斯様に本書は万智のジャーナリストとしての様々なストーリーが描かれている。
これらはミステリーというジャンルに入るのだろうか。たしかにいずれも大変魅力的なストーリー展開であるし、万智というジャーナリストの描き方も読者としては飽きることがない。万智の多岐にわたる才能の今後が楽しみになる。
ミステリーは読者にある種の期待感を持たせるものである。作家が読者に明かさない何かを材料として、思いもよらない展開をして見せる。松本清張はその点で実に見事なストーリー展開を披露してくれた。万智はジャーナリストであるが、探偵でもよいし、刑事でもよいのだ。未知の謎を解明する面白さを読者に見せてくれるミステリーを読んでみたい。清張のストーリーが半世紀を経ても支持されているのは、ミステリーのそういう面白さを内包しているからではないか。太刀洗万智に期待するというよりも、作家米澤穂信に期待したい。