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登場人物の言動を抜き出せばほぼ全員ろくでもなしのクズばかりだ。妻子を捨てて不倫したのにほんの数年で独りになった途端、少女と表現するほど若い女に夢中になりはじめたのには笑ってしまった。でもその女性も実は、ってオチで真顔になった。
なのに文章が良くて読んでしまう。表現や感性がいちいち繊細で唸ってしまう。なんという観察眼。なんという生活への慈しみの深さ。なら不倫なんかするなよ…
これが明治の文豪の話ではなく、わたしも同じ時代を生きていたはずの昭和なのだから頭が痛い。
なんて良い文章だろう、と、なんてものを読まされているんだ、の感想が交互に訪れる、全く落ち着かない読書体験だった。