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著者が、ユーラシア・アフリカを2年間旅した記憶を綴った旅行記です。
冒頭に書かれているとおり、小さい声に耳を傾ける、というスタンスが旅の間中、貫かれています。
実際にその地に行ってみないと本当にはわからない貧困や、政治、国のあり方、旅先で出会った人との関わりなどが淡々とした文体で描かれています。
印象に残ったエピソードだけが書かれているので、始めは一つ一つの話がぶつ切りになっているように感じましたが、読み終えてみると、返ってイメージとして鮮明に残るような気がしました。
自分の知らない世界について考えさせられる一冊です。
2013.03.09
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2年間ユーラシア、アフリカ諸国を女性一人で旅した記録。事前の十分な調査とそれぞれの国の事情に対応する偽装結婚等の知略になによりも感心した。しなやかな知性と感性を持つこの著者が活躍する場が日本にあることを祈りたい。
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旅行記モノというと、豪快な熊系男子が旅先で出会うすべての人や物事と仲良くなりながらガハハと進んで行く印象が強かったが、2000年代のこちらは毛色が違う。
まず筆者はその辺にいそうな女性。そしてかなり好き嫌いが激しい。全ての物事に極力GoodとBadのタグを付けながら旅が進んで行く。思い込みも強そう、きっと僕とはウマが合わなそうだな…などと思いながらも、彼女なりのバイタリティに感銘し、明晰な描写に胸打たれながら気づけば最後まで読み進めていた。
思えば人が世界に対するに好き嫌い(竹田青嗣風に言えばエロス)はあってしかるべきものだし、今更熊系男子の旅行記なんて読んでも退屈するだけだ。
彼女の立ち位置と、彼女が見た世界と、自分の立ち位置を比べて楽しむ本。
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著者の世界47か国の貧乏旅行をとおし、世界の弱い立場の人の自立を考え、人のつながりを見つめる一冊
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実際の貧困とは、どんなものなのだろう。
著者が感じた現実は、とても興味がありますね。
マスコミによって取捨選択されていない情報は、島国日本のわたしたちにとって、とても貴重なものだと思います。
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これほどまでに過酷な旅をした女性がいることを知り驚いた。自由という言葉が似合う女性だと思った。自分には絶対無理、と思うことでも、彼女のように現地の文化を受け入れ、どこへいってもありのままの自分を出せる姿はうらやましくも感じた。
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いやもう凄すぎる。よく生きて帰れましたと驚きです。そして、所々に出てくる援助へのあり方への問題定義が本当に現実的で、なるほどと納得しました。アスピリンとバッファリンで迷うところなど、すごく分かるなあと思いました。
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本書は著者が、東南アジア・中東・アフリカを放浪したときの記録である。その日数は延べ684日。この旅は旅行といった生やさしいものではなく、バックパックを背負って、野宿なども行いながらの貧乏旅行である。
彼女は実際の眼でみた世界の状況を非常に興味深く読んだ。
国境を越えるために偽装結婚までして、また、女性として一人でパキスタンなどの紛争地域にも向かっている。ジンバブエでは強盗に顔面を殴られている。本当に怖いもの知らずだ。
彼女が実際に眼でみたルポを読んで感じたことは、アフリカや東南アジアに実際に今でも支援を必要としているのだろうけど、本当に必要な支援が行き届いているのかどうかということである。
P239
先進国は、アフリカや途上国へどんどん踏み込みインフラ整備を手伝って、資源の獲得と未来市場の開拓に汗を流して取り組んでいく。そしてテレビを設置して、欧米の暮らしを宣伝し、物があるということがどれだけ豊かなことなのか、物を持たないアフリカ人が、どれだけ惨めで貧しいのか熱を込めて教育していく。
P243
黒く曇った街を歩けば、あっと言う間にメガネが曇り、黒くなった鼻の穴からヘドロの玉が転がり出てきた。途上国で壊れた車や家電製品は行き場を失い、森や砂漠に捨てられたまま、醜態をさらして朽ち果てた。一部はスラムの住宅街で、鉄くずとなって錆び付いて、漏れ出したエンジンオイルが大地に染み込み汚泥をつくった。
彼女が実際に現地で眼にした現状は真に迫っている。アフリカは確かに貧しいが、生活の面ではたくましさを持っている。
P247 ニジェール「善意とプライド」
私はアフリカへ行くにあたって、一つの構想を立てていた。アフリカへ行って貧困と向き合い、現地の惨状を確認し、世界に現状を知らしめて共感を得ようと計画していた。アフリカの貧困を見極めて、貧困の撲滅を訴えて、慈愛に溢れる発送を誰かに示すはずだった。先進国の豊かな知恵を貧しい人に紹介し、不幸そう人を探して幸福を与える夢を描いた。けれど、あてがはずれてしまった。なぜなら、予想しいていた貧困が思うように見つからなかったからだ。想像していたほど人々は不幸な顔をしていなかった。
P247 ニジェール「善意とプライド」
アフリカは教える場所ではなくて、教えてくれる場所だった。助けてあげる対象ではなく、助けてくれる人々だったアフリカは貧しい大陸ではなく、圧倒的な豊かさを秘めた、愛されるべき大陸だった。
いま豊かとされている日本でも貧困の問題がよく聞かれるようになった。日本ではセイフティーネットがあるので著しい問題は発生しないと考えられているのだけど、考え方によっては日本の方がシビアな現実があるのかもしれないと感じた。アフリカには「みんなの家、みんなのお金、みんなのご飯」がある。でも、日本では都市部でも孤独死がおこる、また年間3万人を越える自殺者がいる。
著者はアジアやアフリカでたくさんの地域の人々にご飯をもらっているし居住地を提供してたくさんの出会いを得ている。私たちが先進国として得た価値とはなんであるかを考えさせられた。
また、著者がこのような旅ができることに純粋なうらやましさを感じた。僕は挑戦をするには、護るものも増えてきたし、年もとってしまった。僕は26歳の日からもう8年も経ってしまった。
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開高健ノンフィクション賞。中国~東南、中央アジア、イスラム圏、アフリカと、身一つで現地に溶け込んで旅をしていく著者。
危険といわれるイスラム各国での親切な人々、アフリカで非黒人であるために要求される数々のこと、また、貧しいから助けてもらうことに慣れて何もしない誇りを失った人たちへの厳しい目。哲学的というか、とてもいろんなことを感じ考えながら旅をしている。
日本から見れば経済的には貧しくても、食べ物には困らず彼らの基準の中で上を目指し幸せになろうとする人々の生活・・・それが、国際援助という名の欧米文明の侵入で壊されかねない現実がある。本当はいらない道路を作ったり、効率がいいから、輸出できるからと現地に合わない作物を作ったり。そうすることで失われるものがある。
援助、ということに著者は厳しい目を向ける。国連安保理で理事国になるポイント稼ぎをさせられているだけで、長期の展望なんかないと無力感にとらわれる組織の人々がいる。なにが本当の支援なのか。データだけではわからないことがあると、まざまざと見せつけられる。
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ユーラシア大陸、アフリカ大陸をひとり縦横断した作者の旅行記。
>私は新宿のビルの谷間から、星のない夜空を見上げた。
>それから口を閉じたまま、静かに首を反転させた。
>私は「西」を見た。
序章の一節、「東」を向いて仕事をしていた作者が旅立ちを意識するシーン。
この一節でぐいっと作品に引き込まれました、旅立ちの必然性を強く感じながら。
「できれば知りたくない」、「できれば考えたくない」ことを主体的に感じに行く彼女のスタンスに、感心はするものの共感はできない私。
そもそも彼女は共感を求めてはいないと思いますが。
右傾化についてあまり意見は持っていませんが、「失敗を許さない世の雰囲気」には恐怖を覚えています。
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ボランティアや国際支援に対する疑問をはっきりと言及してくれて個人的にすっきりした。また、この本では小さな話だけどフェイスについての頁は一番気にいってる。最初は図書館で借りていたが手元に置いておきたくて買いなおした。
一点気になるのは著者が少し自尊心が高い所。著者の考えや言葉には説得力があるのでとても好きだけど自分に酔ってる部分は少し嫌いだ。
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世の中には、行って見て知らなければいけない、と思ってしまう衝動がある。そしてそこから生産的なものはほとんど生まれないし、ただの自己満足である。ただ、趣味とも違う。この欲求は強迫観念に近いものである。
情報化社会にあっても足で行かなければわからないことが沢山ある。むしろ情報化社会が他者への想像力を失わせる側面もある。それに耐えられなくなる人はどこかに行く。
無意味に思える行為の理由も、ただ知りたいだけ、でいいんじゃないでしょうか。ただそこで暮らす人々に無一文で会いたいんですね。真面目に、知らない人に会いたいだけでもいいじゃないか。最近はそう思うようになってきた。
自分の考える理想型に非常に近い。奇跡。
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とてもクールな人なのかな。でも全力でけんかしたり、無謀な感じのところも。
イランの「バラ色のジャム」なんかいいし、タンザニアの「男よ、泣くな」なんかアフリカ男の生態が、ほ〜って感じ。
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1979年生まれの著者が、ユーラシアとアフリカ大陸の47ヶ国を684日間かけて巡った旅の記録。2009年の開高健ノンフィクション賞受賞作。
著者がバッグパックを背負って日本からユーラシア大陸へ旅立ったのは、バッグパッカーのバイブルである『深夜特急』の沢木耕太郎と同じ26歳のとき(本書は「26歳の春が来て・・・」と明らかにそれを意識した書き出しとなっている)である。両者の間にある30数年という年月は、世界の情勢も、著者の意識や判断の基盤も大きく変え、作品全体のトーンは大きく異なったものとなっている。
著者は、現地の衛生状態に不快感を覚えたり、人々に騙されたり、盗難に遭ったりもするが、それは、1979年生まれの著者が、冒頭で「私の行く手には、貧困と紛争が待ち構えていて、汚染や疫病の脅威があった。腐敗した政治やテロが噂され、悪魔が寄り集う“軸”か何かの存在も無視できない。世界は「危ない」らしかったし、「気をつけなくてはいけない」という一般的な認識があった」と書いている、2000年代初頭の世界と正面から向き合った、自然の成り行きであったし、それがむしろ本書をリアリティのある紀行作品としている。
そして一方では、世界の隅々で日々の営みを送る人々との温かい触れ合いも数多綴られており、時代を経ても大多数の人々の日常は変わらないことに、安堵の気持ちを抱くのである。
僅か10年前に著者が巡った国々の中でも、今や紛争の激化や感染症の発生等で訪れることすらできなくなってしまった国も少なくないが、バッグパックを背負って世界の国々を巡り、人々と触れ合える世界が戻ってくることを願って止まない。
(2013年3月了)
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広大なユーラシア大陸を横断し、イスラム圏の国々を越えてアフリカ大陸へ―。絵葉書を売るカンボジアの少女に凛とした生きる意志を感じ、排他的な印象を抱いていたイランで受けた細やかな配慮に戸惑い、ザンビアでは貧富についての議論を交わす。周囲の声に惑わされず、自らの素直な感覚を頼りに47カ国を旅した著者が綴った684日間。第7回開高健ノンフィクション賞を受賞したデビュー作。
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2年近くに渡るユーラシア大陸、アフリカ大陸の旅をした記録をかなりの駆け足でダイジェストした本です。シニカルで勢いのある文章で、旅の一部を鋭角に切り取って放り出すような雰囲気で非常にかっこいいです。柔らかい旅行記に比べると埃臭さや土っぽい香りがプンプンして息苦しいほどであります。
世界と自分との境界線をどこで引くのかで、見えてくる世界が全く違うんだなあとしみじみ思う本でした。実は最初あまり共感できない状態で読み進めていたのですが、良く考えたら共感も感情移入も必要が無い、究極の個人主義の集合体としての集まり、それがもしかしたら本来の世界との関わり方なのかなと。そんなことを思いました。