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2年間で、ユーラシア大陸とアフリカを旅する。めちゃくちゃよかった。特に、アフリカでの旅についての記述は、秀逸としか言いようがない。日頃思ってもいなかったようなアフリカの援助についての考えに驚く。日本は、国連の常任理事国になりたいがために、援助をする海外協力隊を比較的安全な国へ送り込む。中国もヨーロッパも日本も、先進国がインフラを整えるが、中古の自動車を輸出して大気汚染をばらまき、気管支炎にさせ、高価な医療機器を輸出するようにする。そして、アフリカ人たちは援助に頼るようになり、外国人が高い金額を払うことを当たり前だと思うようになる。そしてそれが、先進国の思うつぼで、先進国が金を出した援助の仕組みがあっても、実際現地で作業にあたる人たちに支払われる金額がなんと小さいことか。 "そして、セネガルの小学校でクラスを受け持って輝く目の子供たちの素朴な質問、かわいらしさに気を失いそうになる様子、めちゃくちゃわかる。なんでも、「わ~!」っていうの、子供たち。そして、トーゴとベナンの国境越えの話。バイクが5倍の金額をふっかけてくるので、見限って一人で歩き始めた著者。途中からどこかの部族の女の人が付かず離れず歩き出す話。おしつけがましくなく、にっこりしながら歩く話。とてもよい。
アフリカは本当は、だれも困ってない、豊かな大地なのだ。それなのに、先進国がそれをダメにしている部分がある。
移動にトラックを使うアフリカ。女ひとりでは旅行できないため、偽装結婚を2度もしている。トラックが故障して、日陰もなく、水もなくなっていき、自分は生理になり、つかれきりどうにもならない。やっと乗れた代わりのトラックでは、木に頭をぶつけて、流血。すっげ。すっげえ。旅。"
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久々に旅行記が読みたくなって、手に取った本。
最初は、やけに淡々と書く人だなあ。なんて感じたが読み進めていくにつれて、この著者の性格が率直で、なかなかの切れ者なんだと気づいた(良い意味で)
根性と体力、精神面においても非常にタフ。
相手が誰であろうと、主張するべき時はしっかり主張する。
だからこそ、この過酷すぎる旅を成し遂げる事が出来たんだろう。
そして、この本では特に中東〜アフリカ地域に関しての現実と理論が大きくかけ離れている事を初めて知った。
私は中東やアフリカ地域に関しては、ニュースやネットで得た情報、もしくは学生時代に社会科で勉強した事がほぼそのままだと思っていた。
けれど、この本の中ではこれまでの意識をガラリと変える出来事の連続だった。
ネットやテレビが伝えられない、人々の表情、優しさ、おもてなし。。。
テレビやネットでは伝えられていない、現実、問題。。。
あたかも当然のように伝えられている情報は、実はその何十分の一でしかない。
本当の事は、実際に行って確かめてみないと何も分かりはしない。
私はこの本を読んで本当に、良かったと改めて感じる。
著者のフィルターを通してではあるが、著者の言う”騒音”から少しだけ離れることができたからだ。
ぜひ、できるだけ多くの人に読んでもらいたい一冊。
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ほぼ2年間にわたり、若い日本人女性がアジアからアフリカをバックパッカーとして体験した記録である。
バックパッカーという旅行スタイルは、安価で、できるだけ現地とより深くかかわることを目的としたものだと思うが、家畜を運搬するトラックの荷台や長大編成の石炭貨車で移動したり、南京虫に刺されるなど苛烈な体験をしたことにまず驚かされた。また、現地の子どもや大人たちとも深くかかわり、植民地・低開発地域としての歴史が深く人々に影を落としていることも的確に観察しており、その力にも驚かされた。
「日本からきている」=「裕福である、したがって我々に対し援助すべきである」という考え方のアフリカの男たちに対しては、関係は飽くまでも対等であるべきとして、諄々と説得をする筆者の力に感心するとともに、男性たちに深く根付いた劣等感に対する筆者の失望の大きさも感じることができた。
一方では、子どもや女性たちの純粋さと触れ合う場面が多く登場し、緊張を強いられる場面の多いこの作品においても、ほっと息をつくことができる。また、現地の人々に救われる場面もあった。
こうした旅行記は大好きだが、タイプとしては『深夜特急』型で、若者しかできないチャレンジングでかつ(チャレンジングであるからこそ)思索を深めていくタイプの旅行である。通常乗り越えがたいだろうと思われる場面を意志の強さ、粘り強さや機智により克服していく。また、体験の深さに比例して思索も深まり、中村安希さんという人間そのものが現地の人々に飛び込んでいく過程が読んでいて爽快だった。また、旅行全体を記述するのではなく、エピソードの一つひとつを窓から見るようにつなげていくというこの本の構成も効果的だった。体験もさることながら、筆者自身の筆力も見事だったと思う。
これまでどちらかというと「おじさんの旅行記」を中心に読んできたが、こうした若くて意思の強い女性の旅行記は初めてであり、体験のさまざまなエピソードを楽しみつつも緊張感をもって読了した。
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2019年9冊目。
著者の旅のテーマのひとつといえそうな、世界の人々にとって「何が必要なのか。何が適切な支援なのか」。
授業でも単元計画の軸に据えたりしている。
この作品を読み進める中で、「やっぱり」と思う部分と、「そうか」と気づかされる部分があり、大変勉強になった。レビューをみると批判もあるようだが、個人的には示唆を受けた。
先進国と途上国。支援とは?国際貢献とは?そして、真の幸福とは何なのか。
支援することによって地域社会のバランスが崩れ、紛争の火種になる可能性もあること。
バランスが崩れることで、モラルやその類の「大切なもの」が消えたと嘆く人の存在。
特に印象深い箇所メモ。
p246
「国の宣伝や未来投資から場合によっては距離を置き、もう少しだけ純粋に地域の実態を考慮しながら、素朴な支援を試みている。だから日本の協力は、質や金額に見合うほどには世界で評価されていない。国際競争にしっかり負けて、真の協力で勝利する。評価されないことを謙虚な姿勢でやっていく。もっともっと評価されずに、それでも淡々とやっていく。」
p248
「助け合うということは、予算額の大きさではない。慈悲の精神の量でもなければ、それをどれだけ大々的に宣伝するかということでもない。(中略)数千億円の予算を使って世界を救済できなくても、東京の満員電車の中で妊婦に席を譲れる人は、十分深い「思いやり」を心の中に秘めている。(中略)大きな評価は得られなくても、相手の気持ちに耳を傾け、今日目の前にいる人々に、そっと手を差し出せばいい。それを教えてくれたのは、当のアフリカ自身だった。」
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各国での印象に残った出来事を繋いで行くスタイル。答えがない、唐突なエピソードも多いので初め慣れるまで戸惑った。旅をつらつら書いた旅行記かと思ってた。
精神性の豊かさと貧しさについて考える。わたしも自分の哲学をもっていたい。
こういった旅をなぜするのか。特に危険地域だったり、国際援助も偽善やバランスなど考えると、何が正解か、何が個人にできるかはもとより、個人の数週、数ヶ月の体験で目に見えることも限られている。例えば"日本"という章があって、どのような1つのエピソードが相応しい?それに対しての筆者の考えがこの本に残されているのは読む価値があると思われる。先日テレビでみた、沢木光太郎の自由に対しての考えと多少重なる部分を感じた。言葉だけを取ると、現地で乗り物の手段を使いこなすことが自由にどう繋がるのか、と言う気がするが、その奥のいいたいことはなんとなくわかる気がする。言葉にするのはとても難しい。
2022.1.18
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26歳の女性が、アジア・中東・アフリカ・ヨーロッパを684日間、貧乏旅行でまわる。訪問した国数は47カ国。野宿は当たり前で、途中で身体を壊したり、とっても過酷な旅だ。旅行記は、たくさん読んでいるが、女性の旅行記で、ここまで過酷なものは読んだことはない。
文庫本で、だいたい280ページ程度の本だけれども、約50の短い章に分かれている。旅行の記録も書かれているが、彼女自身の感情の動きを示している部分も多い。物事を、とても真っ直ぐに見て、真っ直ぐに書いている。読んでいて、清々しく感じる部分も多かった。
書名の「インパラの朝」は、ケニアでサバンナ旅行に参加した3日目の朝に、一頭のインパラに遭遇した出来事を書いた章の題名でもある。
そこの部分を引用したい。
【引用】
すると、私の眼前に一頭のインパラが現れた。黄金の草地に足を着き、透き通る大気に首を立て、たった一頭でたたずんでいた。インパラは草を食むこともなく、歩きまわることもなく、緊張している様子でもなく、だからと言って気を抜いてくつろいでいるふうでもなかった。誰かに追われることもなく、何かを追いかけることもなく、静かにそこに立っていた。インパラの濡れた美しい目は、周囲のすべてを吸収し、同時に遠い世界を見据え、遙か彼方を見渡していた。
ヴァンは速度を緩めることなく、近くをそのまま走り過ぎた。私は体を乗り出してインパラの姿を追いかけた-そのしなやかな筋肉と悠然としたまなざしを。
【引用終わり】
書名にしているぐらいなので、彼女にとっては、とても印象に残った場面だったのであろう。
周囲のすべてを吸収し、遠い世界をも見据えることができる悠然としたまなざしを持つことを彼女は強く望んだのであろう。
確かに本書は、そのような本だ。
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海外旅行なんてもってのほか!なご時世、せめて旅行記でも読んで…と思って手を伸ばしたのですが、2年近くバックパッカーでアジア~アフリカ~ヨーロッパと旅をする、というレベルが違いすぎる旅で、旅行気分を味わう気分にはとてもなれない1冊でした(笑
ただ、同時に、今の時点では上手く言語化できないのですが、この清冽な湧水のような、飾り気のないのにエネルギーを秘めた文章が、自分の中に地下水脈のように静かに広がって、意識しないうちに影響を受けているような気がしています。
解説を見ると「青少年読書感想文コンクール」の高校の部の課題図書にもなったそうで、確かに若いうちに読んだら面白そう、と思いました。
さて、旅…と言うか旅行は、「一時的な非日常」だと思います。非日常に置かれるからこそ、新たな思索ができる面があると思うのです。
ただ、著者の2年近い旅の中では旅自体が日常化してしまう訳で、それなりに負荷がかかる状況の中でも、ふと行き合うトラブルや人との接触において、著者の真っ直ぐな意思の強さがあらわれていて、ここまで自分を貫き、考えて思いを綴れることには崇敬の念すら感じました。
そんな著者、カリフォルニア大アーバイン校で舞台芸術を学び、26歳でこの旅に出て今はノンフィクション作家というハイスペックながら波乱万丈な経歴。本著の後に政治家との対談や食に関する本も書かれているということで、読んでみようかなと思っています。
本著は300ページもない短い文庫本で、ごく短い文章で旅の中のエピソードを連ねていくスタイル。
どちらかと言うと、貧困国や恵まれない状況にある国(例えばイラン)での出会いにフォーカスされていて、著者の問題意識がそちらに向いていることが感じられます。
比較的裕福?なマレーシアでのエピソードは、旅行者として現地の人から犯罪の片棒を担がされそうになる話で、さて金銭的な裕福さと精神的な幸せは比例するのかどうか…と考えてしまいます。
アフリカに入ってからのエピソードはその思いをより強くするものばかり。アフリカを援助が必要な国、貧しい国として下に見てはいないだろうか。
ちなみに、個人的に印象的だったのは、モーリタニアのトゥアレグの1節。わずか3ページの文章ながら、サハラ砂漠の音のない夜の情景に強く惹きつけられました。
無邪気なコトを言うと、早くコロナ禍が終わって、遠くまで旅に出られるようになってほしい!
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きっかけ:友人のおすすめ
海外にあまり興味がなかったけど、エッセイとして楽しめた。アフリカに行く人の、それでもいく、をなんとなく感じられたのがよかった
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こころが大きく揺さぶられる一冊。すべてが生々しく、リアル。読み終わるとどっと疲れが出るくらい、内容も文体もパワフル。
自分の足で旅をして、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分のこころで感じることの大切さを思い出させてくれる。
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友達のおすすめ本。英語で書いて和訳したような、簡潔ですっきりとした文章だった。本当にそうやって書いてるのかも?これを読んで行った気分になるのは傲慢すぎるけど、筆者が感じたその国の風景や、空気が鮮やかに伝わってくる。アフリカに根付いた、将来の計画や貯蓄はないけど、助け合って生きていけるという、いわゆる「その日ぐらし」の価値観は、やっぱりなかなか理解しがたいところもあるけど、あたりまえに尊重すべきだし、先進国がズカズカ立ち入って否定していいものではない。記録に残らなくても、他人に評価されなくても、目の前の人を助けるってことをちゃんとしようと思った。
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きっかけ バイトの先輩からのおすすめ
著者の生命力に驚いた。
異国の食べ物を躊躇なく食べるシーンが多くあった。自分には出来ないことだが、この行動は異国の文化を受け入れようとしていることの著者なりの意思表示でもあるのかもしれない。
この本を読んで悔しい気持ちになった。本を読んでいるだけでは実際の体験は越えられないのだろうと思ってしまった。
イランとイラクの違いわかってなかったなぁー。
貧困は都市で起こるってなるほどなぁー
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アフリカに行ったことがなかったので、アフリカの現状が少し垣間見え、貧困や幸せについて考えさせられた。
アフリカで物質的には貧しい生活をしていたある男性が結婚をしてヨーロッパに行った。仕事ばかりして、家族や恋人、友人とゆったりした過ごせなかった。 アフリカに戻ってきて、裕福ではないが、食べるものが最低限あって、その中で大切な人とゆったり過ごすことの方が幸せだったという。
私も、仕事をしてクタクタになり家に帰る。休みは日常の疲れが残っていたり、それをほぐすような一日になったり。 。自分にとっての『幸せ』が何かっていうことがわかっていることはとても大切なことだと思うし、とても優先順位が高いものだと思う。
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旅行記としてはとても良かった。女性で一人旅するのはなかなか苦労すると思うんだけどなかなか逞しい。男性でもちょっと躊躇するような場面でもなかなか果敢に、というか淡々とこなされる姿に脱帽でした
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アジアから中東を経てアフリカへの旅の記録。ほぼ一人で。それができる語学力と情報収集力と判断力、そして度胸。感嘆。
旅の終盤の、先進国といわれる国とそう呼ばれない国との関係性への思考は、実際に見聞した人が掴んだ歯応えのある言葉になっている。
臆病な私はこういう本で、世界をほんのちょこっとだけかじらせてもらってる。
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開高健ノンフィクション賞を受賞した時から気になっていたけれど、今まで読まずにいた。読み終えた今思うのは、『15年間損した。もっと早く読んでおけばよかった。』と。
文章は簡潔でいて筋肉質。それでいて情緒はあり、読後は感慨深い。
ユーラシア大陸からアフリカ大陸を旅して2年。序盤のアジアと終盤のアフリカではタッチが異なるが、それは国情の違いか、流れた旅の経験がそうさせているのか。
あったことをそのまま並べ、全てをアピールするのではない。
大きく心を動かされたこと、強く感じたことを、その出来事と著者の心を両方描写しているので、より著者の心の内が強調されている。読者である僕に伝わるのは、著者の個人の尊厳のとらえ方と幸福の感じ方が一貫して変わらないことだ。この感覚が旅行記に深い読後感を与えていると思う。