紙の本
併録の掌編にやられました。
2017/12/26 23:21
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
五十代のさえない非常勤講師の小松と、蓄電会社に勤める
中年の宇佐美。居酒屋たらればの常連で、店で出会った時だけ
一緒に飲む間柄です。
小松は新潟大学に出張に行った時、上越新幹線で隣席の
女性と言葉を交わします。温かく迎えられた気がして、
小松の心はゆったりします。
女性が燕三条で下りたあと、携帯が落ちていました。
そこから二人の交流が始まります。
そんな話を聞く宇佐美は、ネットゲームで国盗り合戦の
盟主を務めていて、仕事半分・ゲーム半分でだらだらと
過ごしています。
なんてことのない日常に現れた、ふとした出会いによる
緩やかな変化。二人とも現状に満足はしていませんが、
何か変えようというエネルギーが湧いてきません。
等身大の日々は、それでもゆるゆると形を変え、
落ち着くところにはまり込む、そんなお話です。
負け犬じゃないけど成功者でもない。
微妙な閉塞感がなんともリアルな作品でした。
さて。併録が二本あります。
「ネクトンについて考えても意味がない」
「飛車と騾馬」
飛車の方は、小松とうさちゃんの下敷きになった掌編なので、
実質的に併録といえるのはネクトンです。
三十頁弱なのですが、切れ味鋭く、自らを短篇書きと称する
絲山さんの真骨頂を見た思いです。
南雲咲子さん。
空の高みから一本の線を伝う滴のように、
深く深く降下し、陸地の景色が変形し、
海が見え、青くなり、
水深とともに色が変わり、
海底を見透かします。
伝ってきた一本の線の中間に自分を結わえます。
同じ深さには、一匹のオスのミズクラゲがいました。
ズクラゲは、感情を色にして明滅させることができる、
意思を持った生き物でした。
南雲さんの心とミズクラゲの心が通い合い、
笑い合い、
海の中をたゆたってゆくお話です。
ネクトンとは、自らの意思で波をかき分けて泳いでいく
生き物です。プランクトンは、自ら泳ごうとしない生き物です。
クラゲもその仲間です。
海底に生活している生き物たちはベントスと呼ばれます。
海洋生物たちの区分けをとらまえ、南雲さんは静かに
漂ってきた己の人生を振り返ります。
小松とうさちゃん。ネクトン。漂う人たちの心の物語でした。
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ああ!おもしろかった!とのけぞりながらいえる小説。変わっているけどいとおしい中年たちのお話。クスっと笑える軽快な文章と,必ずグッくる一文にも出あえる絲山節はほんとうにきもちいい。短篇の『ネクトンについて考えても意味がない』もフワフワ,いい。私にとってのミズクラゲは,こういう,たのしくてあたたかくて,背中をそっとさすってくれるような小説なんだと思う。すーっとその世界に入っていけるような。
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いやぁ、好きです小松さん。こういう地上から足が浮いたまま生きているような人、好きなんです。飄々としている、というか、糠に釘男、というか、ちょっと何かが欠けたままそれでも別にかまわない人生を生きている人、というか。
そして、いいじゃないですか、52歳の恋。変な駆け引きや隠したギラギラや、そういうのさっぱりと通り越したオトナのさらりとした恋。うさちゃんじゃなくても全力で応援したくなる。
そしてうさちゃん、この恋はうさちゃんなくして成就なし、でした。大活躍。ちょっとしたサプライズも楽しい。
あぁ、そうかそうか。この物語にべたつきがないのは恋の物語ではなく友情の物語だからか。
小松とうさちゃん、年の離れた趣味も環境も違う2人のオトコの、付かず離れずの友情が大人の恋の手助けをする。この2人、どこでどうやって知り合って付き合いが続いてるんだろう、と不思議に思いながら読み終わると第三章にその始まりが描かれていて。ははぁん、なるほどね、とすっきり。
で、途中に挟まれているネクトンの物語。いや、連作短編じゃないから、いいのだけど。同じように「何かが欠けている人」であっても飄々と生きていくのは難しいのかも、とちょっと思ったりもして。
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表題作を含む3つの作品を収録。表題作の『小松とうさちゃん』の2人は名コンビのような気がする。歳の離れた友人的な感覚。不思議な雰囲気が漂う、小松さんとうさちゃん。ネトゲにハマるうさちゃんにはあまり共感は出来ないが現代人っぽさがあっていい。小松さんの恋愛を見守りながら作品を読むというのは楽しかった。中年の恋愛ってのもいいなと思ったり。
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52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この先どう詰めればいいか分からない。一方、みどりは自身の仕事を小松に打ち明けるかべきか悩んでいた。彼女は入院患者に有料で訪問サービスをする「見舞い屋」だったのだ。小松は年下の呑み友だち宇佐美に見守られ、緩やかに彼女との距離を縮めていくのだか、そこに「見舞い屋」を仕切るいかがわしい男・八重樫が現れて……絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。
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表題作のほか、「ネクトンについて考えても意味がない」 「飛車と騾馬」
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大学の非常勤講師の小松の、不器用な大人の恋心の行方と、ネトゲにはまるサラリーマン宇佐美の在りよう。居酒屋友だちの彼らの交流、
そして、コマツが恋した女性・みどりの葛藤が交互に描かれ、少しずつ物語が進んでいく。まるで舞台を見ているような心地である。それがラストでこんな展開になるとは。リアルの人間関係と、ネットの人間関係の妙まで愉しめた。人生捨てたものじゃないと思わせてくれる一冊である。
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絲山秋子さん、初めまして。二つの話とも最初すごく読みにくい感じで始まって、もう閉じようかと思ったけどあとはするすると。1時間かからなかったんじゃないか。嫌いとかもないけど、するすると引っかかるところも少なくて、余韻も少なくて、機会があったら他のも試したい。勝手なイメージですけど、河出書房らしいなって思った。
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最近、絲山さんをどうにも読み切れなかったので
今回はどうかしら、と思っていました。
好きです、この小説。
けれんのない人々を絲山さんが書くと
まるで隣にいるように、人々が
映像化されます。
登場人物も少なく、話が簡易に入ってきます。
ああ、やはり、本が好きだなあと
久しぶりに思う一冊でした。
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とてもほっこりする。どこにでも居るおっさん2人組いいな。
そして併録された「ネクトンについて考えても意味がない」は現代版「やまなし」とでも言えそうな作品。
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絲山秋子さんの本を久しぶりに読んだ。「小松とうさちゃん」は、ゲームの話は全然理解不能だったが、全体の流れとしては面白かった。「ネクトンについて考えても意味ない」は、解る様で解らない不思議な小説だったが、嫌いでもないって感じかなぁ。
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(2016/3/29読了)
星5つはおまけ。4.7くらいかな。
表題作の他に2作収録。「騾馬と飛車」は「小松とうさちゃん」の10年後でありながら、ほんさくより以前に、文藝の「十年後のこと」という特集で書かれている。前後してるってこと…面白いですね。
お名前を知る程度作家さんで、今回は装丁の絵と、「小松・とうさ・ちゃん」って何?と、区切るところを間違えて気になって借りてみました。
宇佐美、長崎みどり、小松の三人の目線からの話が、波のように次から次へと押し寄せてくるようで、劇的に話が進んだりということはないのだけど、目が離せなくなる面白さがあった。長嶋有さんに似ているかな?
最後のネトゲのハンネのくだりは、やり過ぎ感もあるけど、こんなオチもまあいいかな〜
全く別の話で書かれている「ネクトン…」あまりに非日常過ぎて、最初は読みにくかったけど、もしかしたら、私が知らないだけである事なのかもっていう気がしてきた。
考えてもどうにもならない事を考えても、どうしようもないんだけど、考える事はやめられないんだよね。でも、クラゲから直接聞かされたら、止める事が出来るかもしれない。
絲山さんは、じわじわと面白さがやってくる。他の作品も読んでみよう。
(内容)
52歳の非常勤講師小松の恋と、そんな彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱。絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。
(目次)
小松とうさちゃん
ネクトンについて考えても意味がない
騾馬と飛車
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共済にも入れない弱い立場。失望や絶望がとぐろを巻く。しかし誰もそれを言い出せない。自分が手を挙げたらおしまいだという空気が芬々と漂う。怨嗟のクラウド。やりがいをもって働いているという建前だけが唯一の心の支え。崩してしまったら最後、自らの人生を否定してしまうことになってしまう。あまり実社会に向いていないタイプの院卒。手放すには惜しい。待遇も貧困もわかったうえで自ら選んだ。先行きが暗いことも皆分かっている。だからこそ前へ進んで行かなければならない。
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良かったです。心が温かくなるようなお話でした。ちょっとした謎もあって楽しめました。ネットゲームの話は妙にリアルだった。
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このあったかさは何なのか…
ネットの中の人格と現実の姿は違う。でもいい人はどこでだってつながれる。
不器用で真面目な小松。しっかりしながら可愛いとこあるみどり。そしてうさぴょん!あなたはそのままでいて。
ずぅっと付き合い続ける縁を感じて嬉しくなるお話でした。
「ネクトンについて考えても意味がない」は、一緒に笑うのって楽しいね…の一文だけでじんわり。あぁ深いとこでつながりたい、と思ってしまう。
この本は好きです。
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何か足りない感じもしつつ、でもとてもほのぼのとします。ネトゲの内容はともかく、読みやすく、まとめ方が上手いなぁと思います。
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ダビンチで見つけた本。なんか題名に惹かれた。
そして、表紙のおっさんもいい味出してる。
大学で非常勤講師をしている小松は、新潟へ行く新幹線の中で出会ったみどりに惹かれた。どうにかして、小松はみどりと接近したいが、なかなか勇気が出ず、飲み友だちのうさちゃんこと宇佐美に相談する。宇佐美は、蓄電会社に勤めているサラリーマンで、ネトゲにはまっている。しかし、最近のゲームの流れが、会社の仕事と似たようなかんじになり、うんざりしている。
みどりは、昔は教習所の講師をしていたが、今は見舞い屋という寂しい病人を見舞う詐欺みたいな仕事をしている。小松と仲良くなるうちに、仕事をやめたくなるが、なかなかそうもいかない。
中年の男女の恋ってかんじのお話だった。いろんなことに悩んだりして、でもハッピーエンド。
読んだあとに、ほっこりした。
2016.4.30 読了