投稿元:
レビューを見る
著者によれば、現実社会の問題解決に直接貢献するような言語学のことを「応用言語学」というのだそうです。取り扱っているテーマは、「標準語と方言」、「国家と言語」といった今となってはオーソドックスなテーマから、「手話」、「法と言語」、「言語障害」、「言語情報処理」など、比較的新しいテーマまで広く扱っています。これらのテーマの背後にあるのは「言語と権力の関係」だと著者は言っていますが、社会学的なアプローチではなく、認知科学や、認知心理科学などからのアプローチが前面にでており、あくまでも科学的なスタンスに固執する姿勢がよくわかります。著者自身が「あとがき」で述べているとおり、全般にわかりやすい説明ですが、その一方でもう少し踏み込んだ記述が欲しかった気もします。岩波新書でなく、岩波ジュニア新書でもよかったかもしれません。
投稿元:
レビューを見る
読み始めたところだけど、面白い。
日常話したり聞いたりしている言葉が自分の意識や行動に影響しているんだね。
投稿元:
レビューを見る
一言にことばと言っても実に様々なテーマ、問題があることを知りました。ことばで人は動かされるし、今や機械もことばを操ろうとしている。言語学にとても興味がわきました。
投稿元:
レビューを見る
・「証拠に基づいた社会」という著者の表現が面白い。おそらく、エビデンス・ベイスド・メディスンのもじりだろう。
・ある研究では、アメリカ人の生後10か月の赤ちゃんは、フランス語を話すフランス人の白人よりも、英語を話す国人から食べ物をもらう。人種よりも言語である。
・アメリカの映画に字幕をつけるとき、英語の方言に対して日本語の、たとえば東北の方言をつけることがある。これにより、特定の方言に対する差別的思考が助長されている。
・また、黒人のボルト選手には「おれ」、白人のフェルプス選手には「ぼく」を字幕であてていた。
・イスラエルの一部ではアラビア語教育がなされている。言語を学んでいる人たちはアラビア人に好感を持つ傾向がある。平和教育としても言語教育が生かされる。
・メタファーの用い方には気をつけろ。また単語そのものに含まれているニュアンスにも気をつけろ。たとえば「ごたごた」はネガティブニュアンスである。
投稿元:
レビューを見る
たくさん勉強させていただいた。
思い込んでいたこと、勘違いしていたことも、しっかり訂正してもらった。
特に「手話」が自然言語であったことは知らなかったし、日本語対応手話とは違うこともはじめて知った。
投稿元:
レビューを見る
「ことばをめぐる権力の問題、たとえば差別や情報操作を、科学の力で解決しよう」というのが一貫したスタンス。
そのスタンスはまったくぶれていない。ブレがないからこそ、上記のアプローチ以外の、様々な「権力をめぐる応用言語学的アプローチ」については割愛されている。
たとえば、「言語と権力」をテーマとした応用言語学の代表選手と言えば、ポストモダン系やマルクス主義系の批判的応用言語学(Critical Applied Linguistics)だろうが、これらへの言及はない。しかし、だからこそ総花的にならず、入門書として読みやすくしあがっている(のかもしれない)。
あとがきを見ると、著者は、批判的応用言語学もできれば取り上げたかったようなので、より包括的な見取り図は次回作で明らかにされるのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
[図書館]
読了:2013/5/9
面白くて、2時間くらいで読み切ってしまった。
前作より、説明なしに「~するべきだ」と断定しているところが多くて気になった。反原発なんだな、ってことも伝わってきたし。もちろん、マスコミの民主党政権への中身についての議論をわざと無視させるようなネガティブキャンペーンは叩かれてしかるべきなんだけど、それも根拠がちゃんと書いてなくて、もやもやが残る。
AAE話者が被る二重の差別。
法と言語。
推測が多く必要な日本語を話す子供は、「心の理論」(他人の心の状態を意識できること)の発達が早い。
長尾真先生の名前が!自然言語処理の章は、うんうん、と言いたくなるところがいっぱい。いま出てる成果も、「表面的なものであり、人間のように考えて話すにはまだまだ程遠い。機械翻訳、通訳の精度もまだまだで、人間の翻訳、通訳がいらなくなることはないだろう。」
てか、この分野全然進化してないなぁ。
投稿元:
レビューを見る
白井恭弘『ことばの力学 応用言語学への招待』岩波新書、読了。「ことばは知らない間に人間の行動を左右する」。本来順列や排他的有為の存在しない各言語になぜ優劣を見出し、それを元に他者を判断するのか。応用言語学の知見を元に生活の盲点をつく。言語政策から震災言説まで--新しい言語文化論。
投稿元:
レビューを見る
言語学の世界では、ある言語の方が他の言語よりも本質的に優れているということはない。
ピッツバーグにはピッツバーグ語があるが、ウェストバージニアにはない。ピッツバーグの人は地元に誇りを持っているから。
差別されないようにできるだけ標準語に近い英語を身に着けるように努力する必要がある。
投稿元:
レビューを見る
言葉というのが社会にも、自分の行動にもずいぶん大きな作用をするのは当然なのだけど、それが何故かということを、剥がしていくような本。方言のこと、バイアス・推測のこと、そしてまさか手話が出てくるとは思わなかったし、コンピュータ処理のことまで。応用言語学への招待、というサブタイトルですが、まさにウマいこと招待された感じです。
投稿元:
レビューを見る
ことばの持つ力、それが無意識のうちにも様々な影響を及ぼし合いながら社会は動いている。ことばの孕む諸々の社会的な問題を俯瞰した知見を得るのに良い本。
投稿元:
レビューを見る
応用言語学って名前はよく聞くけれど実際にはどのような分野を指すのだろうか?という疑問に対して考えるヒントを与えてくれる書。方言について研究している学者が事件の解決の重要な切り札になったという事実は興味深かった。言葉を聞いただけでどこ出身でなどがわかるから驚きだ。コンピュータ言語は今後どのような進化をしていくのかも面白い。カウンセリングが必要な人専用に作られたプログラムもあるということは、今後は話す人がいなくてもコンピュータと会話を楽しめるような時代になっていくのだろうか。。。Siriなどはすでにその域まで達していることを暗示している。
投稿元:
レビューを見る
大学の講義で使った教科書。
言葉にどう私たちが無意識のレベルで影響されているのかなど、言葉に関することを考えさせられた一冊。
外国語だけではなく、言語障害や手話など多岐にわたったジャンルについて書かれているので、一読する価値あり。
投稿元:
レビューを見る
社会において言語が果たしている様々な役割や言語が人間に与える様々な影響を、これまで言語学が積み重ねてきた研究や議論をもとに、わかりやすく説いてくれている。2章の「言語政策」、4章の「平和のための外国語教育」、5章の「手話」の話などを特に面白く読んだ。
投稿元:
レビューを見る
応用言語学とは、直接的に現実社会の問題解決を目指す言語学である。本書でも、母語習得、言語政策、第二言語習得、思考と言語、手話など、様々な言語と社会とのかかわりについて言及されている。言語は我々の思考をも規定する根本的なものであり、そこから生じる諸問題についてなかなか意識しづらい。例えば、普段日本語では主語や目的語を省略しても伝わるが、共通知識が少ない異文化圏では同様にすると誤解を生じうる。本書はこのような問題を改めて指摘しており、はっとさせられるものがある。言語学に興味がない人にも、一読をおススメしたい。