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こどもの言語獲得をつうじて言葉を覚える、理解できるとはどういうことかを解きほぐす。母親のお腹にいるときからすでにリズムやイントネーションを覚え、受け身ながらもアンテナを研ぎ澄まして自分の中に言葉のシステムを築きあげていることなど、幼い子の言語理解についてのいろいろと工夫された実験がおもしろい。
3人の子を育て言葉の獲得過程はずっと見守っていたものの、文法の獲得過程などごく表面的なことしか観察できていなかったので、音の連なりから単語を切り出し、語の意味をどう推測するかという根本的なプロセスがあらためて興味深かった。
ことばの学習過程を研究することで人間の心や脳の仕組みを科学的に明らかにしていこうという研究の姿勢やそのおもしろさもよく伝わってきたし、そこから導き出される子どもの言語獲得や外国語学習における知見も納得のいくものだった。
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今井さんは、人間の思考とことばの関係について岩波から『ことばと思考』という本を出していて、ぼくは読んでとても感銘した覚えがある。本書はこどもがことばを獲得するシステムを探求したもので、子どもは顔には出さないし、口でも言わないものの、そこにはなみなみならぬ試行錯誤の過程があることがわかる。それは一方で、ケルが言えず「足でナゲル」と言ったり、「歯でカム」が言えず「歯でフム」と言う子どもの表現を通じ、大人には気づかない語と語の間の共通性が浮かび上がってくる。子どものことばの獲得は一方で大人の外国語学習にもヒントを与えるもので、たとえば、英語のwearを使えるにはどこまで知っていないといけないかという問題だと(p182)、その範囲にヘアスタイルや香水をまとうことまで入っていたり、put onとの違いのように状態と変化を分けなくてはならないことまで知っていないといけないことが示されている。
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ことばの発達は,単に言語習得に留まらず,知識の有機的体系化と延いては科学的思考に直結する事が詳らかにされる.大変興味深い.
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話し始めのこどもが、ドラえもんもアンパンマンもマンホールも『アンパンマン』というので、どういうことなんだろう?と疑問に思い読みました。子供の言語発達の段階だけでなく、なぜ大人になると他言語の学習が難しいのかがわかって面白かったです。やはり習うより慣れろは至言(笑)
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題名通りの内容。名詞や動詞、形容詞をどういう様に身に付けるかを分かりやすく書いている。ただし途中かったるい。という事で星三つ。
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終章では「読者のみなさんへのメッセージ」として,中学生,高校生,大学生を主な読者に想定するだけでなく,「文系の方へ」,「理系の方へ」,「子どもを育てている方々や教育に携わっている方へ」などに,読者に執筆の意図を改めて語りかけている。
最後に,このように執筆意図が述べられているので,改めて本書の内容を確認することができた。
オーストリアのドキュメンタリー映画「ピアノマニア」が終章では紹介されている。主人公はウィーンのコンサートホール専属のピアノ調律師。ピアニストがイメージする唯一無二のピアノの音を創り出すためには,熟練ピアノ調律師の卓越した調律が不可欠である。ピアニストと調律師の,究極の理想の音を,イメージを擦りあわせて,共有するために交わされる対話。映画をその様子を描き出している。「まだ創られていない音」(未だ存在しない何か)を創り出すとき,そのイメージを伝え合うことを可能にするのは「ことば」しかない。映画「ピアノマニア」に関する著者の感想を読み,ことばの学習(獲得)との関連をそこに感じた。
多くの人は,子どもが「大人にことばの意味を直接教わり,間違いを直してもらいながら考える」と誤解していますが,実際には,子どもは大人の話しかけを自分で分析し,自分でことばの意味を考えて覚えていくのです。(4/5頁)
上記の知見を含めて,ことばを学習する過程について,学ぶことが多いのが本書である。
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赤ちゃんが言語を獲得していくさまが,人類が科学を発見していくプロセスに似ているというのは新しい発見だった。はじめまったくつかめなかったシステムの全体像が,次第に明らかになっていく過程。適用できる概念(語彙)が増え,知らず知らずのうちに差異の体系が構築されていく。
赤ちゃんの発達を間近で見守る人にはうってつけの一冊。こないだお邪魔した東大赤ちゃんラボ(開研)の研究員の方も,著者の今井むつみ先生はよく御存じのようでした。
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主に1~4歳くらいの子どもが言語を獲得する過程を追う中で、言語と世界認識の謎に迫っていく。
普通、初めて言語を獲得する時、聞こえてくる音が何らかの意味を持つ単語に分けることができ、それを組み合わせて文を作り、複雑な意味を伝えているということすら分からずに、学習を始めなければならない。
その「言語の全体像」すら知らない子どもたちは、それを知っている僕らよりも遥かに早く言語を獲得していく。
この「ことばの発達の謎」を解いていくのが本書の概要である。
認識と言語と世界を「言語のシステム」として見る。
ものの名前は「もののシステム」、色の名前は「色のシステム」、数の名前は「数のシステム」として、言語の世界の整序が世界をシステム化していく。
最後の一章、言語と思考の共通したアナロジー的な性格の話が最も面白かった。次が序盤に出てくるヘレン・ケラーの話。
何にせよ、言語を使うということが世界観に及ぼす影響を語っている点で、認知心理学の立場から見た言語学の姿を顕にしていて興味深かった。
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著者の今井むつみさんは、慶応大学の先生。認知科学、特に言語認知発達、言語心理学などを専門とされているらしい。
http://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/imailab/publications/books/
「言語」「認識」は自分の興味のあるテーマなので、今後、認知科学や言語心理学についてはフォロー分野にしないといけないな。
今井先生は、「子供はどういう風に言葉を学習していくのか?」ということを切り口に「言葉の発達の謎」に迫る。いろいろな子供たちの事例を解析することで、どうやって言葉を獲得していくのかを解析する。
目次を見ると、この分野の先端性がよく分かると思う。ボクが興味が惹かれた3つは次の目次。
・ヘレンケラーの話
・システムの中の「似ている」を発見する
・ことばが作る「同じ」という概念、科学的発見と「関係のアナロジー」
ヘレンケラーの話しは漠然と知っていたけど、「言葉」というものを理解するための大切なエピソードだということが分かった。
この本は、ときどき読み返さないといけないと思った本。
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発達心理学、認知科学の視点から、言葉の謎を紐解いていく。これを読めば、「言葉って凄い!」と感心すること間違いなしです。
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本当に興味深く面白い一冊!
もうすぐ2歳になる子供がちょうど言葉を覚え始めていて、どのように言語を習得していっているのか興味があり、選んだ一冊でした。子供が言葉を習得する過程を知ることができただけでなく、言語というものがどれほど奥深いものかを改めて知ることができました。普段何気無く使っている言葉ですが、それがどれほど複雑で、獲得するのが難しいのか。それなのに子供は自分で考えながら習得していってしまうなんて、ほんとに天才だなと感じてしまう。
この本を読んで、子供の言語獲得のことだけでなく、大人になってからの第二外国語の習得がどうしてこんなにも難しいのかも、さらに理解できました。
子供がいるいないに関わらず、ぜひ読んでみてほしいな思う一冊です!
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この本はタイトルの通り、幼児に対する実験からどのように言葉を発達させていくかを記したものである。著者の専門が認知科学であるため、世に溢れている主観だけの教育本とは一線を画している。
言葉の発達の謎を解いていくと、私たちに有益な教育方法を示唆してくれる。
例を見てみよう。「走る」という動詞がある。こどもがこの動詞のつづりを覚え、意味を覚えれば、その言葉を理解し使えるようになるだろうか?そうはならないのである。
言葉を覚えるときにはいろんな要素がある。幼児が母国語を覚えるときには、発音・文型を捉え、「走る」だったら「歩く」との違い、犬が走るのと人間が走るのはなぜ同じなのかなどを、分析しながら使いそして修正していく。そしてやっと、「走る」という単語が理解できて使えるようになるのだ。
それでは私たちが苦労していることばの代表である、英単語を学ぶ際にはどうすればばいいのだろうか?一番良いのは1日じゅう英語を聞いてしゃべることである。がそんなことはできない。
そこで私たちは、英単語を覚える際には、しっかりした発音、意味、文型、例文、対義語、そのときの場面を思い浮かべるなど様々な要素を意識して取り組りくむことが必要だ。当たり前すぎて落胆するだろうか。それほどことばの習得とは地道な作業なのである。
幼児はことばを数えきれないほどのトライアンドエラーを通して身につけていく。私は年を重ねてエラーが怖くなっているように思う。成長したいならば失敗を恐れずに取り組んでいかければならないのだ。
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☆☆☆☆☆私がこの本を手にしたのは、子どもを見ているときにふと閃いた「人間が言葉を獲得していく過程は人間の観念の世界を拡張していく姿のようだ」と思ったことがきっかけだった。
自分が言葉を身につけてきた記憶はどうにも辿ることはできないが、子どもや孫たちのことばを身につける姿には何か不思議なモノを感じさせられていた。
「彼等は何のために、何に向かってことばを身につけていこうとしているのだろうか?」という疑問だ。
そう思った時に、この言葉の獲得の過程をもっと理論立てて知ることから始めてみようと思い、この本にたどり着いた次第です。
初めは『ことばを覚えるしくみ』を読んで見たが具体的過ぎて、学問をしているような感じだったので、その本でも勧められていたこの本を読んでみることにしました。
子どもの成長段階の各ステージで、必ず発する誤ったことばの使用を、楽しみながら「今、彼等には何が起きているのだろうか?」彼らの見つめている世界を覗くと、そこには人間の完成形に近づこうとするモガキみたいなものが感じられた。
本当に幼児期の成長の各段階、そして、“名前”や“固有名詞”、“動詞”などの具体的で視覚で捉えられる初期に覚えることばや、“形容詞”や“数字”などの抽象概念を要求されることばにわけて、どうやってことばの獲得に子どもたちが奮闘していくのかをよく描かれている。
子どもはことばを獲得していく過程で様々なエラーを犯しながら膨大なことばの世界を消去法で、ひとつひとつ潰していく。彼らはひとつのことばを獲得する過程で、そのひとつのことばを覚えるにとどまらず、その背景にあることばのシステムの全体に少しづつ近づこうとしている。
そして、一番印象的だったのは、最終章
「ことばが新たな概念を生む」
というタイトルの章では、私が期待していたことを 今井むつみ先生が語っていたこと。
ことばを覚えていくしくみと、物事を思考して何かを発見する姿勢の共通性を述べた部分
〜〜大事なことは、よく理解されている現象とまだ仕組みが分かっていない現象を対応づける時には、二つの現象の間の表面上の類似性(見た目の類似性など)ではなく、要素の間の「関係の類似性」を当てはめるということです。
二つの現象をそれぞれシステムとして考え、そのシステムを構成している要素そのものの共通性ではなく、要素どうしの類似性をそぎ落とした要素間の関係性の類似性、つまり二つのシステムの間の構造の共通性を考えるわけです。〜〜
“ことばの発達の謎”は“人類の存在の謎”を垣間見せてくれるものなんだなぁ。
なんか、迷宮へ入り込んだ様な感覚だ。
2016/12/23
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丁寧な実験を重ねて、ことばがどのように発達して行くかを解明しており、興味深い。特に、自分の子供の面白い発言など、ちゃんと故あってのことなんだな、と納得。また、ことばの発達が思考を形成していくあたりも面白かった。哲学が、ことばの定義から入る理由がよくわかります。ことばの意味するところを共通認識できるかどうかがコミュニケーションにおいてはすごく大事。
でも、ではどうして言葉ができたのか、とか、皆がその名前で呼び始めたのは何故か、とかが気になってきた。でもそれはこの本が扱う範囲ではないんだな。
興味は尽きない。
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はじめに
第1章 アラミルクガホシイノネ――単語の発見
第2章 ヘレン・ケラーのwater事件――ことばの世界の扉を開ける
第3章 歯で唇をフム――動詞の意味の推測
第4章 血圧がヤスイ――モノの性質、色、位置関係の名前の学習
第5章 ことばの発達の謎を解く――発見、創造、修正
第6章 言語が思考をつくる
終 章 読者のみなさんへのメッセージ
2章で名詞→3章で動詞→4章で形容詞。
んでその前後でシステムという観念の獲得と修正。
目新しい話ではないが、きれいに整理されている。
ちょうど2歳終盤の子供を見ていて、思い当る節が大有りで、そのへんも面白い。