紙の本
国からお墨付きの民主主義ガイドライン
2016/02/09 23:05
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
民主主義の危機が叫ばれています。しかし、明治維新前までは天皇の顔も知らない人たちは「お上のやることなんか、知らねぇ」って人が多く、その伝統があるから、案外2,3世議員が選出されても、それで良しとします。
案外、封建主義的なものが好みなのかしら?とはいえ、そんな日本で民主主義を導入しないといけないという事態が襲います。そう、GHQ統治下です。
民主主義は金や銀のように可視化できない精神的なものですので、可視化した「ものさし」はみんな分からなかった。だからこそ、民主主義を語る本は個人の思い入れが多く、ファンにしか届きにくい本が多く、真実と著者の願望が入り乱れた本が林立しているわけですが、西田さんは1948年から53年まで使われた中学高校の社会科教科書「民主主義」に着目します。
イギリスの民主政治は900年の国民の努力によって成りたっています。日本人の心に封建的な気持ちが残っていますが、逆に考えたら「ほんまもんの民主主義」を導入してから100年も経っていないわけです。信頼における評判社会、ポジティブゲームは、まだ始まったばかりです。しかも、日本はさらに複雑性を増した社会構造で民主主義を行わないといけない。
だから、ついリーダーシップのある人が引っ張ってくれたらいいと考えてしまいますが、プラトン的哲人支配論は、権力は必ず腐敗し、堕落が生じるという歴史が繰り返されています。
植民地経営の都合から、ある程度自治を許す方が植民地経営の費用も少なく、事業がうまくいかなかったときの損害も少なく済むという「都合のよさ」からアメリカ民主主義がスタートします。決して温情から来たわけじゃない。
よく、自分で勝ち取らない民主主義は、本当の民主主義じゃないみたいなことを言われますが、アメリカだって借り物の民主主義だったわけです。
西田さんは、現代の日本社会と民主主義の現状を採点するならば、75点と評しています。「こんなの理想論だ!」って思いながら読んでいたのですが「民主主義はこういう歴史があってね」っていう筋道立った書き方なのでストレスをあまり感じない「つくり」になっています。
各章の末尾にある「考えてみよう」は当時の考えと「今の私たちに照らし合わせたらどうだろう?」を結ぶ補助線としてうまく機能しており、問いを与える本となっています。
面白い本って、すぐに解答を用意してくれる本じゃなくて、知性のスイッチが入る「問い」こそ読書の醍醐味なんだ、っていう人におススメの本です。
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いろいろ違和感はあり。編者の言葉を借りれば75点の及第点といったところか。敗戦直後という時代背景を考えると致し方がないとも考えられる。例えば補章のところで、世界の安全保障は他国に任せ、日本は経済発展すれば良いのだ、というところは、結局現在に尾を引く辺野古の問題や、安保法制問題に関係しているのではないか。などなど、編者のいうように全てを鵜呑みにはできないが、改めて日本の民主主義を考える上では良い材料にはなると思う。
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民主主義 〈一九四八‐五三〉中学・高校社会科教科書エッセンス復刻版 文部省 西田 亮介
戦後占領下で文部省が作成し実際に使われた「民主主義」の教科書。民主主義とは何か、民主主義の意義とはなにか、民主主義が維持されるための要件は何か、といった、民主主義にまつわる基本的な事柄を丁寧に説明している。中学生・高校用とはいえ妥協のない作りだし、現代では考えられないくらい突っ込んだ記述も多いので、読み物としておもしろい。
去年の安保法制といい、選挙年齢の引き下げといい、民主主義をもう一度考え直してみるには今は良いタイミングなんだろう。
7
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民主主義 西田亮介編 幻冬舎
高橋源一郎さんの推薦もあって読み始めたが
期待に反して腰砕けで現状に甘んじた堂々巡りの内容であった
まず国家だの政党だの主義だのという縄張りに
執着しながらの民主環境などありえないし
成長し続けるもので最終的な答えなど無いと伝えるべきである
民主主義の理念を語っている前半と後半は
かなり筋も通っているように見えたが
それでも対立した主義という狭い視野にサエギラれ
縦社会の依存による縄張りと
個々の自律を目指す対等な集いを混同しているし
自由勝手と自由自在や平等と対等などの違いを
あるいは愛や美という理念についてあやふやであり
平和という無気力な言葉にごまかされているが
調和という前向きな流れの中での繋がりで
あるべきなのでないだろうか
又資本主義にしろ共産主義にしろ
物質至上主義に邁進し意識の成長を放り出し
民主主義の名前だけを看板にしたところで
油が水を相容れることはなく建前として騙っているに過ぎない
ソ連も中国もその共産性は偽物であり
官僚支配による君主政治と何らかわるところがない
あえて言えばキューバだけが曲がりなりにも共産主義を
追求できたのではないだろうか
更には71から132ページの具体的な現象面の話になると
本質である無限性を期待しただけに読むに耐えない
まるで民主思想すら忘れたかのように現状に翻弄されだし
あきらめなのか欲得への執着からなのか背骨がとぐろを巻き
シナヤカサと優柔不断を取り違えているようで話にならない
民主という究極の思想は限りなく広い視野と意識の深さを
求め続ける精神的に常の新鮮な調和の流れを切磋琢磨することで
創造するために集う柔軟な関係を言うのであって
目先の正義や答えを争う主義主張ですら無いはずである
金融支配のNWOを唱える現在に至るまで
自然の摂理に従うインディアンの小規模な部落によって
横に繋がる制度に見る全員参加型の運営をしてきた所以外で
自主的に民主性を追求した組織は見当たらない
経験から知識を蓄積する大脳を発達させた生命の中で
不安恐怖による依存搾取を卒業して
一人ひとりが心を解放させてお互いを補い合うために集い
自ら視野を広くして全体観を養う前向きな生き方を身に付けて
過去の権利を競うことから卒業し
今を切磋琢磨する喜びの解放感に気付けるまで
民主の関係を目指すことはお預けなのだろう
多分この心の解放に気付きを得ることは
完全無条件によるベーシックインカム制度の導入によって
外目線の弊害に気付き嘘と秘密による競争を卒業できることで
ダムの堰が切れたように一人ひとりの民の心を
解放感と自主的情熱で満たせると思えてならないのだが
今の私の答えをあえて言葉にするならば
民主主義とはこの世という相対性時空間で
限りなく物質性と精神性のバランス点へと向かう行為であり
その生命現象の中で社会現象としてその姿形を成長させながら
表し続ける流れの断面断面のことである
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高橋源一郎さんが紹介されていた1948年〜53年にかけて使われていた中学・高校社会科教科書のエッセンス復刻版です。
〈圧倒された。これは教科書以上のものであり、また「論」以上のものである〉と高橋さんの言葉が帯で紹介されていますが、読んでいる間中からずっと「目からうろこ」状態というか本の持つすごさを感じ続けていました。
時代状況から向き合わざるを得なかったとは言え、格調高く「民主主義」について基本的なあり方を問う内容は、現代にも通じるし現代こそその理念を実現させなければならないと思います。
「民主主義は単なる政治のやり方ではない。すべての人間を個人として尊重することその基本がある」。根本は、この言葉に収斂されていくわけですが、目次を読んでもわかるように認識を深めていく視点がちりばめられています。政治に対してはもちろん、自らの生活や事業や運動の中できちんと生かすことができているか、検証していくことが大事ですね。
必読の本、お勧めです。
目次
第1章 民主主義の本質
第2章 民主主義の発達
第3章 選挙権
第4章 多数決
第5章 目ざめた有権者
第6章 政治と国民
第7章 社会生活における民主主義
第8章 日本における民主主義の歴史
第9章 日本国憲法に現われた民主主義
第10章 民主主義のもたらすもの
補章
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小林よしのりが批判していたので読んでみた。民主主義政治の対極にあるのは独裁政治だが、中東では民主化したことで、独裁時代よりも治安が悪化してる国もあるのは確か。
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昔の公民の教科書の現代訳本
教科書的できれいな流れかつ民主主義の大事さへの意思が込められてて良い
民主主義とは人間の尊重、反対は独裁主義
大きな自由と大きな責任、人間の平等
ただ一つの政党は良くないが、多すぎると勢力争いや浮身になり良くない。政党を見て人も見る。選挙後も見る
同じ人が長く続けることになる独裁政治は劣化する、適度な交代が大事
プロパガンダ①悪評の周知②立派な看板③立派なものとの結びつけ④良い記事を書かせる⑤真実と嘘を混ぜる
嘘を見破るのは有権者の役目
全体主義は自国だけの利己主義に陥る、民主主義ですべての個人を平等に扱う
民主主義に必要な自由①言論の自由②信教の自由③恐怖からの自由④欠乏からの自由
物事は変化する、いい面も悪い面もある、1つのものを絶対視しない。