社会の安定は右と左の相違を解消できるか。
2010/05/30 11:23
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦記物を読んだり、軍事上の抑止力について議論をしているとき、戦争反対を唱える人からは「右翼」と、迷惑な尊称をいただく。そういう意見を持つあなたは「左翼」ですか、と尋ねると、違うという返答。あんな、内ゲバで仲間を虐殺するようなマネはしません。第一、戦争反対だから、と言う。
はたして、右翼となんぞや、左翼とはなんぞや、と頭を巡ると、明解な回答を持ち得ていない事に気づく。右翼の源流には玄洋社の頭山満、左翼の源流には中江兆民がいるが、水と油の関係と思える両者は実のところ大の仲良しで、共に青山霊園に眠っている。酒を好まない頭山満だが、飲んだくれの中江兆民の酔言には拒むことなく付き合う仲だった。どころか、臨終の床を見舞った頭山満に対して中江兆民は「伊藤、山縣ダメ。後は頼む」と枕元の黒板に記して遺言にしている。
無政府主義者の大杉栄にカネを渡したのは当時内相であった後藤新平だが、その後藤新平に大杉栄を繋いだのは杉山茂丸、頭山満だった。大杉栄の内縁の妻であった伊藤野枝と頭山満は遠い親戚関係であったといわれている。
後藤新平と親しい杉山茂丸の息子は作家の夢野久作だが、その夢野久作の秘書を長年務めたのは共産党員で逮捕歴もある紫村一重だった。「極めれば、右も左も紙一重」、対極にあるもの同士が意外に近しい関係にあることは昔からいわれてきたことである。
本書は右翼と左翼の発生の歴史を図式も交えながらわかりやすく解説しているが、「あとがき」にもあるように、右翼と左翼について研究途上とある。
右翼と呼ばれた人々、左翼と呼ばれた人々の関係を見て行きながら本書をなぞっていくと、「右翼」だとか「左翼」だとか呼称される双方が敵対する形で相互に利益を誘導していたのが戦後の「ウヨク」と「サヨク」の関係だったのではと思える。
著者は「宗教」と「民族」というカテゴリーでも右翼と左翼の関係を論じているが、ここまできたなら、人間という生物学の観点からも右翼と左翼を検証してもおもしろいのではと思った。力の持つリーダーが群れを率い、種を保存し、弱者はそれに従うが、他の種族には滅ぼされかねない関係にある。ときに、群れの中からリーダーのスキを狙って反抗し対抗勢力を築く仲間がいるなど。
右、左と思想区分が困難になってきたということは、日本の環境が安定してきたという証拠になるが、はたして、社会の安定は右と左の融和にまで至るのだろうか。
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「右翼」と「左翼」、「右」と「左」、その成立の始原から分類の変遷、戦後日本の持つ左右対立の特殊事情(ゆえに必然的に孕む問題点)までわかりやすく説明を試みたのが本書。
途中までは「これは浅羽氏のするべき仕事か?」という疑問がついて離れなかったがあとがきを読んでひとまず納得。
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「右」と「左」の定義、歴史、現在をわかりやすく示してくれる本。
「自由」「平等」に重点を置いて「進歩」してきた世界。その「先」はまだ、残されているのか---とにかく必見の書。
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結構、定義を間違えてた。反省、反省。
最近の新書はお手軽でものたりない感あるけど、雑誌感覚で、集中して知識整理できるから便利ね。
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「右」「右翼」と「左」「左翼」について、歴史的形成の過程から近現代における日本での「右」「左」の変遷まで述べています。
世界史や日本の近現代史を「右翼」「左翼」という切り口から描いており、近現代史の良い復習になりました。
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分かりやすかったけど、物足りない感じがした。
でも、よくわからなかった「右翼」と「左翼」についてなんとなぁく分かった気がする。
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右翼と左翼に地手の歴史的な流れが分かるが、筆者自身があまり中道的な書き方ができていない。自分は右翼左翼の軸の外にいて描いているつもりなんだろうが批判の仕方がずれている。
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右、左の概念を正しく知りたくて購入。よくわかったけれども、一冊全部読みきる気にはならなかった…。文章がとにかくまどろっこしい
2006.12.27
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確かに「右−左」の軸にそった分類をしにくくなった時代だと思う。この本は「右翼」「左翼」の発生から現在に至るまでの歴史的経緯をわかりやすくまとめている。これって、十分に学術論文足りえる内容なんじゃないのかな。こんなのが新書で読めるのはありがたいと思う。
#著者の浅羽氏の本ってハズレはあまりないと思うぞ。
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確かに右翼と左翼をしっかり説明しろと言われたら無理なんじゃないかって思う。基本的に読むのは1章、6章、7章だけでいいと思う。現代の日本はうまくまとまっとる感じ。ところどころ理論をこねくり回しとるだけのようにかんじた部分もあったけど。。。
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右翼ってなんだろ?左翼って?自分はどっち寄りなんだろ?って言うのが気になって読み始めました。すごくわかりやすかった。僕にとっては教科書です。
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購入日不明。再読済。
右翼・左翼の始まりはフランス革命期の議会にある。?王党主義vs立憲(自由)主義(ジャコバン)?自由主義(フイヤン)vs民主主義(ジャコバン)?法的民主主義(ジロンド)vs社会的民主主義(山岳派)
どんどん左から右へスライドしていく中、山岳派が実権を握り、恐怖政治が始まる。テルミドールの反動で結果逆戻りになる。
各地でブルジョワ革命が起こり、19世紀欧米では、進歩主義、進歩史観が広まる。そしてそれは、ヘーゲル、マルクスへと受け継がれる。また、ナショナリズムは右翼だけのものではなかった。フランス革命時の「博愛」は誤訳で、実際は「団結」といったほうが正しい。これは、左派の求める自由、平等をしっかりしたものにするためであった。この左派も次第に中道になってくると、自由、平等も当たり前のこととなってくる。そして、格差問題が浮上し、共産主義勢力がでてくる。プロレタリアートは何処の国にもいるので、彼らはインターナショナルな活動をする。そうなると、ナショナルズムは反動、右的とされた。帝国主義時代に入ると、先進国でプロレタリアートはみられなくなった。植民地から搾取していたからである。そうなると、南諸国では資本家を追っ払い「独立」しようというナショナリズムが起こる。つまりナショナリズムは、左→右→左というように変遷してきたのである。一方日本の右派左派は特殊である。用いられたのは明治。フランス右派といえば王党派、つまり王政復古。しかし、日本には復古するものがない。倒幕はしたが天皇の力が昔から弱かったため復古のしようもない。そのため、日本の右派の主張は「国枠」「大アジア」といったものだった。左翼思想も欧米から輸入したものだった。その中で、大正デモクラシー期には左派が台頭し、他方戦時期には右派が台頭した。戦後の日本は右派左派ともに落ちぶれた。右派は日米安保を肯定、左派は資本主義妥当を中ソに任そうとした。要するに、経済成長を受け入れ、自分達の「正義」を捨てた。しかし、新左翼(トロツキスト、中核、連合赤軍)、新右翼(野村秋介、鈴木邦男)もでてきた。しかし、両者とも時代遅れ、国民の心はつかめずにいた。そして右翼はウヨク(雨宮処凛、山口二矢)、左翼はサヨクというように各人のアイデンティティ獲得のためのもの、サブカルチャー化してしまった。今の右、左派理念がない。理念的な右は日米安保否定、武装中立といったことをするはず。理念的な左翼なら徴兵制を敷いて、中国韓国に行って償いをするくらいのことが必要でないか。
新書だけれど結構内容は濃かった。再読したのに未だきちんと頭の中で整理されていない・・・ただでさえごちゃごちゃしているイデオロギーを左、右というたった2つの概念で規定しちゃうからいけないんだよな。もっと新しい分類方法発明して欲しい。
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別にどちらでもないが、右翼と左翼というのが漠然とわかればいいなと思って読んでみた。新書はそれがいい。起源から始まって、近代日本の右左の流れまで。あぁ、そういうことかというのと、極右から見れば右は左だし逆も同じというあっけない事実に気づいた。
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タイトル通り、右翼と左翼という概念の誕生から、思想の変遷等を世界と日本という点から教えてくれます。
すんごく勉強になった。右翼と左翼の誕生から現在に至るまでを俯瞰しており、そのあらましを知ることができる。
もちろんこれは入門書的なものであり、専門書等ではないので、深く掘り下げて右翼と左翼について知りたいっていう人には向かない。しかし、新書であるということからもわかるように、その分野を知悉することはできないが、通暁するためのあしがかりにするには最適である。
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政治の分野でよく使う「右」「左」を生い立ちから説明しています。フランス革命前からのこ概念が合ったことに驚きますが、現在の日本の状況分析は一見に値します(わかりやすく的確に説明しているという意味で)