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こないだ読んだ『新しい自然学』と同じ著者で、その本と同じことが言える。どうやら著者は一般読者向けに一生懸命わかりやすく書いているつもりなのだが、残念ながら、全然わかりやすくないのである。
著者のアタマが良すぎて、論述のスピードがかなり速く、重要な用語もすこぶる簡潔に済ませてしまって次へ次へと急いで行くので、これらの科学に知識を持っていないと間違いなくついて行けなくなってしまう。
意地悪く言うなら、わかりやすく説明できないというのは、他者に対する想像力が弱く、コミュニケーション力が低いということになるが、まあ、科学・数学以外はぜんぜん勉強してこなかった人なのだろう。
超一流の自然科学者となると、社会学も文学も哲学までも相当に読み込んでいる「知の巨人」となるのだが、この著者はそういうタイプではないようだ。
というわけで、前に読んだストロガッツ『sync.』にもえがかれた現象も登場し、ネタとしては興味深い本なのだが、完膚なきまでに理数科の枠内におさまった文章ゆえに、あまりお薦めできるものではなかった。
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「非線形科学の世界的第一人者による画期的な入門書」だそうだ。
複雑系の本は、分かったような、分からないような本が多くて、さらにほとんどが翻訳もの。ということで、分かりやすさを求めて、読んでみたが、やっぱり、今、一つ、すっきりしない。
内容的には、ジェイムズ・グリックの「カオス」やスティーヴン・ストロガッツの「SYNC」あたりとかぶっているのだが、どちらかというとこの本のほうが、分かりにくい気がする。
で、どうしてだろうと考えると、この本、内容的には、実はかなり分かりやすくコンパクトに書いてあるのだが、コンパクトすぎて著者の研究の苦労話とか、学者の人間模様があまり書かれていないことが分かりにくい印象につながっているのではないか。
ということは、一般人がこういう類いの本を読んで分かった気になっているのって、ほんとのところ本筋とは別のところであるということかなー。
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著者の蔵本由紀氏は、国際高等研究所副所長、京都大学名誉教授などを務める物理学者。非線形動力学(非線形科学)の世界的権威で、本書でも取り上げられる「蔵本モデル」(振動子集団の可解模型)を提唱した業績などで、ノーベル賞候補との評価もある。
本書は、「全体が部分の総和としては理解できない」いわゆる“非線形現象”の典型である“同期現象”について、具体的な現れ方を多くの例を通じて、数式を使わずに紹介・説明しようとしたものである。因みに、「全体が部分の総和として理解できる」現象を“線形現象”といい、従来の数学を基にした数々の手法は、線形現象は説明できるが、非線形現象を説明することは困難であったのだという。
そして、著者は同期(=シンクロ)現象として、複数の振り子時計、複数のメトロノーム、パイプオルガンの音、ろうそくの炎や、自然界のコオロギの声、カエルの声、ホタルの光、生理現象である心拍、体内時計、更に、ロンドンのミレニアム・ブリッジの揺れ、コンサートホールでの拍手など、数々の興味深い例を詳しく取り上げている。
そうした同期現象は近年注目を集めるようになってきており、それは、物理学者の努力やコンピューターの高度化により理論的な取り扱いが可能になってきたこと、生命科学の進歩に伴い、生き物の様々な活動の中に同期現象が含まれていることが判明してきたこと、同期現象を人工システムにいろいろと応用できるのではないかと期待されていることなどによるのだという。
そして著者は、同期現象は一見関係がなく見える様々な科学分野をつなげる普遍的な概念の典型であるとし、これまでの科学は、「分解して、総合する」ことによって、この世界を理解しようとしてきたが、ここに来て人々はそのアプローチに疑いと不安を感じ始めており、この複雑世界を理解するためには、複雑なものを複雑なまま捉えて、そこに潜む構造を発見し、それらを丁寧に調べていくことが必要であると結んでいる。
後段の生理現象や自律分散システムに関する記述は相当難解で、典型的文系キャリアの私はとても理解できたとは思えないが、著者が最も伝えたかったであろう同期現象の面白さは十分に感じられたし、今後現実世界で様々な現象を見、聞き、感じるにあたって、新たな切り口を与えてもらったことは間違いない。
(2017年7月了)
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非線形現象を解析する科学。カオス、フラクタル、ネットワーク理論、パターン形成、リズムと同期、などについて数式を使わずに説明している。自然の現象を横断的に見てそこに不変構造を見つける。
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平易に、出来るだけ読みやすく、という姿勢はとても良く伝わってきた。
けど、それが空回りして、余計に分かりにくくなってしまったいたように思った。
なんだか文章が上滑りして、中身まで読み込めなかった。
資格試験の勉強のためにしばらく読書から離れてたから、こちらがついて行けてなかった部分も多いのかも。
この分野の学問は本当に面白いのだけど、いかんせん、内容を簡単に説明するのが難しい。
取っかかりがないというか、入り口が高いというか。
すっと馴染むことさえ出来れば、あとはスルスルッと理解していけるのだけど。
本書は、その壁の向こう側にスタートラインがあった感じ。
もう少し踏み込んだ話にシフトしても良かったかも。
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世界的第一人者による非線形科学の入門書。
教科書をわかりやすくしたような本。とはいえ、非理系の人には敷居が高いと思われる。一般人向けということで数式を使わないなどの工夫がされているようだが、解説なしに使われている専門用語がそれなりに出てくるので、ある程度の知識がないと厳しい。
4章の「リズムと同期」は明確で判り易いが、他は、章によって差があるものの、単なる紹介に留まっているところが多く、ピントがぼやけている感じを受けた。
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要素還元的な科学観一辺倒への危惧とともに、非線形科学の概説
カオス、散逸構造、フラクタル、スケールフリー(ネットワーク)の紹介
カオスについては、ローレンツモデルが対流のモデル化であることを新しく知った。異なるカオス構造に共通に存在数、ファイゲンバウムの普遍定数
要素を見てもわからない構造に対する知見が存在する(さまざまな自然現象に共通に出現するフラクタル構造等)ことは明らか。そこに、世界の真理の手がかりがあるのか(科学が成り立つか)という問いの探求
再読したい
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p.19-21 構成要素の相互作用から生まれる新しい性質の発現を創発とよぶことができる。例)鉄が結晶化したり、磁気を帯びる。
p.120 縮約
p.211 臨界状態での物質内のゆらぎを特徴づけるキーワードは、自己相似性やベキ法則。(平均値や分散や中心極限定理に変わって)
☆不安定というか、生々流転する世界の基本法則なのか?
p.212-213 自己相似性はベキ法則と密接に関係。自自己相似性を持つ。
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非常に難しいが、歴史は冪乗で動く、アロメトリーの冪乗法則、これもフラクタルか。とのつながりが興味深かい。さらにプロローグとエピローグがすべて。「創発と言う概念をよりどころにした複雑現象の科学は、原理を探求する基礎科学として本当に成り立つか、その根拠は」これには明確な応えはない。しかし。「不変と多様性」で前者が素粒子物理の諸法則に、行為者が物質科学レベルの諸現象に対応するというのは間違いと。つまり樹木の根元に遡ることなく、枝葉にわかれた末端レベルで横断的な不変構造を発見できるという事実を強調。逆に言えば「不変なものを通じて変転する世界、多様な世界を理解する」を主張。ファイゲンバウムの普遍定数も。