電子書籍
奇妙で不思議な物語!
2016/04/24 11:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、若くして亡くなった文豪フランツ・カフカの作品です。カフカと言えば、「変身」があまりにも有名ですが、この作品も彼の作品の特徴をよくあらわしています。ある村の丘の上に城がありましたが、村人たちの多くはそこへ足を踏み入れたことがありません。時々、用事があって出向くことはあっても、中に入ることはできず、入口で係りの者に用事を託すといった具合です。また、城に住む者たちは、頻繁に村へ降りてきて、酒場で飲んだり、旅館に泊まったりするのですが、そこではほとんど城の話は出ません。ある時、ひとりの男が城に用事があって、この村を訪れます。そして、どうやって城にいくことができるか村人に尋ねるのですが。。。とっても不思議で、かつ当時の社会の状況に対する皮肉で強烈なメッセージが込められています。カフカを知るためには、絶好の一冊です。
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ただ城へ到達するという目的を達成したいだけなのに、いちいち周囲の人の忠告やら、巻き起こす事件によって、一歩も進まない迷宮的な小説。
この小説の言わんとするところは、読み手によって様々に解釈しうるだろうと思う。
個人的にはなんか夢みたいな雰囲気の作品だな、と思った。よく夢の中で、どこかに行かなきゃならないのに何故か全然たどり着かないってことがあるが、それにそっくりの構造の作品だ。
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邦題「城」。長いことかかったと思う。読み終わるまでに。2週間じゃ済まなかったはず。大体1日に調子いい時で20ページ程度で、学校の行きはほとんど寝てるので帰りにちょびちょびと。螺旋階段を昇っていく感じというよりかは、地下にずんずんと下っていく感じのような感触を読んでいると受ける。ふと気を抜くと何の話で、どうしてそうなったのか、そもそも誰が今話しているのか、さっぱりわからなくなる。煙に巻かれる。不思議。いくら読んでも物語を掴めない。掴めそうな気がしない。ひょいひょい逃げて行く。だから追いかける。筋がないわけではない。ある。けど、それは筋と言えるものではない。カフカは文学として異端の中の異端だと思う。いや、異端ではなく、最先端なのかもしれない。こんな作品はカフカにしか書けない。。。すごい。。。(07/11/6)
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奇妙な村にやってきた主人公Kの物語。村に到着したKは、村を統治する伯爵の城との接触を試みるが、奇妙なことにどう苦心してもその試みが成功しない。それどころか、Kは次々に奇妙な人間たちのところへ巻き込まれていく。さらに、作品として未完なので私たちはKの行く末を知ることが出来ない。
村でまかりとおる理屈が完全に不条理で、登場人物の思考経路がしばしば理解できない。だけど、それが妙に現実らしく思えるから不思議である。言葉が通じているから、一見するとKと村とは生活を共有できているかのようである。しかし、言葉以外の多くの部分において全く異なる了解を前提しているため、両者における言葉の共有はむしろ誤解の原因にしかなっていない。もしかしたら人間の合理性は、このくらい滑稽で独りよがりなものにすぎないのかもしれない。
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カフカというと、『変身』は広く読まれているのではないでしょうか
朝、めざめると虫になってたという話ですが、
『城』も、主人公のKが、ある村に到着し、自分を取り巻く状況を理解できないままに
もがく様は似ている部分もあります
しかし・・訳者さんにけちをつける気は毛頭ありませんが、読みにくい・・・
恐ろしく会話が長いんですが、淡々と回りくどくて要点がよく分からない・・・
分からなさ加減が、リアリティがあるし、
カフカの不条理感を醸し出しているとも言えなくないのですが
白状しますと、三度目の正直でやっと読破しました
最初に手に取ったのは、10年近く前ですから、随分長くかかりました
10年の間に、読み手の私も変ったんだなと思います
不条理が、そういうことってあるよねって思ってしまう
奇妙な事に、主人公のKだけがイニシャルで呼ばれています
その村では何者でもないK
何を求めているのかも分からなくなりそうな空回りぶり
私もあったな、Kみたいな時・・・
今の社会にも大勢のKがいるんじゃないかなぁ
あっけない結末が、また、なんとも言えません
話したい事の半分も話せないまま、一方的に電話を切られたような後味の悪さ
それが、またリアルなんです
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つまらんものはつまらん。
短ければまだ許せたかもしれないが、どう考えたとしても意味不明な登場人物たちが、ダラダラと詰まらない会話を繰り返し続けるのだ。
ちっとは仕事をしろよ。そう思いながら本を閉じる。
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追記
Kがしていることは、不断の闘争によって、自分で自分のために希望を創り出すこと。どんな小さなことも、自分で闘い、勝ち取らねばならない。それが自分の人生を生きるということだろう。
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出会った中で最高の小説。人生の暗喩。
Kは城からどんなに蔑ろに扱われようとも、村人がどんなに信用できなくても、自分で自分を信じることをやめない。自分は使命をもってやってきた!その使命をやり遂げたい!と動き続ける。周りの環境が絶望的であればあるほど自分を信じる心が希望としての尊さを増す。
私ももうすぐ何がしかの仕事をもらって社会に出る。そこで相手に本当に必要とされているのかわからなくても、あるいは周りの全員が信用できなくても、自分だけは自分を信じていたい。何らかの使命を持って生きていて、それを絶対果たすんだと思い続けたい。
これが使命だというものを見定められたら幸せだか、それも終わりの無いものかもしれない。人生も死ぬまで未完だ。