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【地政学・戦略論の大家による最新の中国分析!】中国は今後どうなるのか? 暴発する中国という問題にどう向き合うべきなのか? 切れ味抜群の中国分析。日本オリジナル版。
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この20年ぐらいの中国政治の動き、特にリーマンショック以降の戦略の変化を知るのに便利な一冊でした。もちろん、戦略家としての著者なりの独自の視点から見たものであるのだと思うが、中国(政府)が何を考えているのか、中国の(国内)事情がどうなっているのか、次に何をしてくるのか、それに対して今後の日本(政府)がどう対応するべきか、ということが明確に述べられていて分かりやすい。そして、現在の尖閣諸島での動きを見ているとまさに本書で指摘されている通りにことが動いている。
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大国は小国に勝てない。確かに理屈を聞くとなるほどな、と思います。
中国の暴発は怖いですね。ただでさえ、中国人が世界で一番と言う中華思想で凝り固まった国民を、習近平が抑え切れなくなる可能性はありますね。こんなに不安定な大国の隣国を持っていると、防衛も真剣に考えなくてはいけないかもしれない。
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ルトワックの現代中国に対する見方をまとめたもので、彼の逆説的論理や中国は戦略下手説を知っている読者にとっては、本書の論旨に驚くところはない。 ただ、説得力に重厚さがないのは新書と薄い本のせいかと思っていたが、そうではなかった。
本書は、ルトワック著、奥山訳ではないのだ。奥山がルトワックにインタビューしてまとめた本だという。あとがきでそれを知り、少し興ざめである。
それでも、ルトワックの考えが、韓国の対日感情の解釈や、seapowerとmaritime powerなどで示され、さすが現代戦略家として説得力のある意見が開陳されている。一方で、周近平の後継が見えなくて不安定との意見には同意できない。
本書でルトワックがもっと知られて、本物の戦略に触れる人が少しでも増えてほしいと思う。
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中国を戦略的な視点から視ていることで、
中国の違った姿が 浮き彫りになる。
このルトワックという人は、スゴイな。
【エドワードルトワックの戦略論】
習近平が 『核心的リーダー』として登場している。
その意味を知るものはなく、
それを決めることができるのは、
習近平だけと言う中国の現実。
2000年以降、中国は三度、その戦略を転換してきた。
「チャイナ1.0」 =平和的台頭
『中国の国際舞台の台頭、経済は日本を超え、アメリカに迫る』
国際舞台には、戦略のロジックがあるが、それを抑えた。
「チャイナ2.0」 =対外強硬路線;胡錦濤時代
戦略ロジックを発動させた。大国の錯覚。
『胡錦濤は権力を充分に行使していない弱腰政権リーダー』
2014年秋に 間違いに気がついた。反中同盟ができた。
「チャイナ3.0」 =選択的攻撃
フィリピンに対する攻撃。
フィリピンのエリートは中華系。そして文化的に反米である。
→しかし、反発された。
インドに対する攻撃。
2009年から2014年まで、インドとの国境侵入事件を起こした。
そして、中国は スリランカに基地をつくろうとしている。
金はチカラなり という錯覚。
国力と経済力はちがうことを 強調。
イギリスもフランスも いまだに国力がある。
経済力が先行し、国力がおくれてやってくる。
経済力でごり押しすればなんとかなる。
2008年から2009年
線的な予測をすることで、中国はさらに伸びて行く。
アメリカは沈み、中国は昇る。
China Up,US down.
これは、ゴールドマンサックスの予測だった。
中国の主張した 九段線。
蒋介石の主張した 十一段線をベースにしている。
大国は 二国間の関係を保てず、
第三国が 支援する構造があり、想いのままにならない。
パラドキシカルロジック 逆説的論理。
2013年 ベトナムの反発。
中国のベトナム沖の石油プラットホームに対するベトナムの対応。
中国は 海のゲームでは勝ったが 地のゲームでは苦戦した。
最初の一手があれば 当然それに対する反応があることを
理解していなかったこと。
日米同盟の弱点
アメリカが領有権争いでは、中立の立ち場を貫く。
靖国神社参拝に対してアメリカは距離をもっている。
『ロシアは戦略をのぞいてすべてダメだが、
中国は戦略以外はすべてうまい。』
『中国が失敗したのは、自分たちの都合の良い日本を勝手にでっち上げたことによる。』
中国の主張をおしつけようとしたが、
自分たちの主張をおしつけることができなかった。
おなじように 『都合の良いアメリカ』もつくることになる。
『大国というのは、ある要求をする前に、それが成功するかどうかを見極めるものだ。
そしてロシアがそうであるように、一旦要求を表明すれば、そこから動きを止めることはない。
成功するまで行動しつづけるからだ。』
習近平のリスクは 党や軍を敵に回しかねない。
2015年9月の習近平の訪米は 失敗だった。
アメリカに対して 対等になったと言うイメージアップ。
G2 中国とアメリカの『新型大国関係』
これは、キッシンジャーが 中国に売り込んだ。
中国は 内向きであり 『自分たちに都合の良い外の世界』を
『発明』する。この『発明』は、日々更新され、強化される。
『百年国恥』の借りを返したやりたい。
『人類の歴史は、長きにわたる犯行と愚行の歴史』
冷静な判断をすべき時にできないという愚行。
中国という国の性質 『国体』
習近平を一体誰が選んだのだ?
習近平は 共産党支配を破壊しつつある。
反腐敗運動は どこに進むのか?
共産党が つくりあげてきたものは 腐敗にまみれていても
今の中国をつくりあげたことは 確かなのだ。
毛沢東のエンジンは イデオロギーだった。
共産主義を求心力とした。
鄧小平は マネーを求心力とした。
『イデオロギー志向』『権力志向』『マネー志向』
の共産党に、優秀な若者が 入らなくなっている現実がある。
習近平は 美しい妻をもち、共産党 政府 軍隊の権力を持っている。
当然、お金は 余るほどある。
しかし、もっていないものがある。
『真実を伝えてくれる人材』がいない。
情報のフィードバックシステムがない。
韓国がなぜ日本嫌いなのか?
それは、自分たちの祖父たちを恥じているからだ。
そのうらみが、現在の日本人にむけられている。
変数とは 政府の決定により変化する政策
パラメータとは 国体 である。
習近平は 中国と言う国体 を守ることができるのか?
中国4.0
1 九段線を引っ込める
2 空母の建造をやめること
中国の問題は 外国を理解できず、それゆえまともな外国との交渉もできない。
中国の戦略的な文化は 内的なコンセンサスの欠如。外的な理解の欠如。
『シーパワー』;海における軍事力。
『海洋パワー』;他国との関係で生まれるもの。
『大国は小国にかてない。』
日本は『慎重で忍耐強い対応』は 中国には逆効果である。
重要なキイワード
1 パラドックス
『今日成功した戦略は、明日は必ず失敗する。なぜなら それは今日成功したからだ。』
2 大国論
『大国は小国に勝てない。』
『国が大きいほど外国への理解度は低くなる』
3 感情論
4 戦略文化というパラメータ
『文化決定論』
『戦略文化』『戦略も文化に馴染みがない』
→内向きの権力闘争の戦略はあっても、外向きな戦略はなく
外は 内むけように『都合のいいように』編集する。
戦略を論じる場合に どこに足場をおくかで
かなり違ってくる。この戦略論は アメリカを軸にしながら
日本を足場にして考察していることで、かなり違った風景が生まれてくるのである。
もちろん 仮想敵国の 中国を 主なターゲットとする。
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まずエドワード・ルトワック氏が日本のためだけに語ったことを書籍化したという点で、既に読む価値があります。(戦略学関連で有名な奥山氏がルトワック氏にインタビューした内容を編訳したものです)
全体的な印象としては「とてもわかりやすい」です。そして内容が最新(2016年6月現在)でタイムリーである点も非常にいいです。
もっとも印象的だった言葉は「ロシアは戦略を除いてすべてダメだが、中国は戦略以外はすべてうまい」という表現です。
中国は戦略的だという印象を多くの人が持っていると思いますが、実は最近の中国はまったく逆だとの指摘は新鮮。
個人的な印象として、確かに最近の中国は大日本帝国っぽい自滅の道を進んでいるように感じるし、最初は戦略的に見えた動きも、最近は計算が狂い始めているように見え、本書の指摘はもっともだと感じます。
反対に、行き当たりばったりな対応だとマスコミに避難される安倍首相の対ロシア外交ですが、私個人は、安倍首相は実は戦略的に正しい動きをしようとしているのではないかと常々思っていたので、それを本書によって追認できたのは収穫。
あと、奥山氏のあとがきも面白い。
アメリカ人は、人類普遍の価値観の存在を絶対視しており、文化論に根差した言説を嫌う傾向にあるが、実はその発想そのものがアメリカの文化に根差した発想だという指摘はとても面白く、納得できるものでした。
混沌とした時事ニュースを戦略を意識したうえで見聞きするためにも、本書はおすすめの1冊です。
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2015年に習近平が訪米の時にオバマに提案した「新型大国関係」つまり「G2」提案は、日本のマスコミでは、日本は米中の挟間に取り残されるような取り上げ方をした。
本書によると、この習近平の「G2」提案は、キッシンジャーのアイデアで、しかも彼はアメリカの中で「G2」を信じている唯一のアメリカ人と喝破している。
別の本でも、中国はキッシンジャーへ莫大な資金援助をしているとのこと。
また、キッシンジャーの著書の中で、彼はドイツと日本は必ずアメリカを脅かす存在になると警告しているほどの日本嫌いなのだ。
しかし日本のマスコミは、中国問題になると、直ぐにキッシンジャーのインタビューを掲載したりして、中国寄りの論調が目につくし、中国報道に関して、中国の主張を受け入れなければ、日本はすぐにでも中国から締め出されるか、尖閣に攻め入られそうなヒステリックな論調で、政府批判をする。
そういう意味で、本書は目先だけではなく、もう少し長い目で戦略的に中国を見ているし、日本のマスコミや評論家には見られない別の視点で中国を見ているのがよく分かる。
以下、この本の概略を紹介します。
中国はこの15年間に三度の大きな外交政策の転換をしている。
チャイナ1.0:1970~2008:平和的台頭
1972年以降のアメリカの対中政策は、中国を助けてソ連に対抗させる政策であったが、2000年以降アメリカは中国が余りに豊かになりすぎる事を恐れ始めた。
しかし江沢民に指導された中国は、GATT・WTO・IMFへの加盟をし、私的財産権や知的財産権など国際法を順守し、国際秩序を脅かすようなことはしなかった。
チャイナ2.0:2009~2014:対外強硬路線
リーマンショックの発生とそれを克服した中国の自信が、政策を大きく変えていく。荒唐無稽な「九段線」に代表される南シナ海や尖閣の問題を次々と起こす。
これに対して周辺の民主主義国では、親中派のリーダーを選ばなくなり、インドのナレンドラ首相や日本の安倍首相のように中国との摩擦も厭わないタフな人物が選ばれるようになった。またフィリピン、マレーシア、ミャンマー、ベトナムなどが、反中国包囲網を形成し始めた。
ここで中国は「力の論理」に対抗する「逆説的論理」を理解できていない失敗を犯した。中国の最初の一手に対して、それに対する反応が周囲から起き、相手も動くし、情況も変わるダイナミックな相互作用が動きだすということが、理解されていなかった。
この時期の中国は、日米同盟の2つの弱点を突こうとしていた。
1つ目は、アメリカは尖閣の領有権争いでは中立を貫く。2つ目は靖国参拝問題。
特に中国は日本に対して強硬姿勢を貫いた。彼らの読みは、中国市場に魅力を感じる日本企業が政府に圧力を掛け、言いなりに成るはずであった。
それに対して安倍内閣は、靖国府不参拝の約束も尖閣が係争地であることの認定もしなかった。
チャイナ3.0:2014~ :選択的攻撃
太平洋を中心に反中国包囲網が形成され、2014年秋に中国は「チャイナ2.0」の間違いに気づいた。
そこで「選択的攻撃」と呼べる「チャイナ3.0」に移行したが、成功していない��
この「チャイナ3.0」は2つの要素から成り立っている。
①反撃をしてきた側への攻撃を止める。ベトナムと日本との関係がその例。
②キッシンジャーの提案する「G2」つまり「新型大国関係」を構築する。
ここでも、中国は壁に突き当たっている。
ここで著者はプーチンと習近平の違いを次のよう述べている。
「大国というのは、ある要求をする前に、それが成功するか否かを見極めるものだ。ロシアがそうであるように、いったん要求を表明すれば、そこから動きを止めることはない」「中国の場合は、尖閣について大騒ぎをする割には何も起こさない。中国はただ騒ぐだけなのだ。これはロシアと中国の大きな違いだ」
「ロシアは戦略を除いてすべてダメで、中国は戦略以外はすべてうまい」と皮肉っている。
別途、著者は韓国と日本の謝罪問題についても述べている。
ここでは、本題から外れるので簡単に留める。
日本は韓国に対して既に十分過ぎるほど謝罪したし、今後もそれは続くであろうが、無駄である。なぜなら、韓国が憎んでいるのは、日本人でなく、日本の統治に抵抗せずに従った自分達の祖父だから。韓国人は自分たちの祖父を恥じている。その怨みが日本人に向けられている。だから彼らは決して日本人を許せないのだ。
また日米関係についても、以下のように述べている。
「アメリカが戦略面で日本を守ることは、何ら問題はない。ただ日本に取って中国の脅威というのは、その性質が異なる。日本本土への侵攻というより、離島の占拠だからだ。率直に言って、アメリカは現状では日本の離島の防衛までは面倒を見きれない。ここから、日本が自国の安全保障を全てアメリカに依存することから生じるマイナス面が明らかになる。自国の小さな島すら自分で守れないことが、むしろ日米関係を悪化させる方向に向かわせる。これは日本政府が自分で担うべき問題なのだ」
チャイナ4.0:著者からの中国への提案
ここまで書くと書き過ぎるので、これは省略する。
日本政府への提言
結論として、中国は戦略の下手な、極めて不安定な国なのである。それに対して周辺国は、全ての国に当てはまる「戦略の論理」を見極め、それに冷静に対処していくことが、求められる。
巨大で不安定で予測不可能な中国に対し、あえて積極的な計画を持って対抗しようとするのは、そもそも馬鹿げているし、成功するはずがない。
真珠湾攻撃のようなアタックや、逆に平和的イニシアチブなども進めずに、日本はひたすら受動的な「封じ込め政策」に徹するべきなのだ。
全編を通じて、現在の中国の分析に関して、日本のマスコミが避けているような視点からのものであり、現状分析~提案に至るまで「目から鱗」の新鮮な論述である。
是非お勧めの一冊である。
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アメリカの歴史学者ルトワック氏による本。
軍事戦略、安全保障論を基に中国の今までとこれからを説明する。
中国の外交政策の流れがわかり、章立ても短いので読みやすい。
軍事戦略・地政学などいろいろな面から考察されているので、読む価値はある。
しかし、一部の日本人にとっては「ウケ」がいいだろうが、「こういう捕らえ方もある」と客観的に読む必要があると思う。
繰り返しになるが、「こういう対中国観もある」というくらいの評価。
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とてもわかりやすい現代中国論。大国は小国に勝てないという説を基に理論が進んでいくがとてもわかりやすい。中国の横暴に恐れていたけど、中国の内情を知れば弱気になる必要はないなと思った。
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稀代の戦略家と言われるルトルック氏による中国の動向の分析。難しい説明ではなく、どちらかというと心理、感情や歴史に基づく分析でわかりやすい。米中露韓や東南アジア諸国の動向など、本書の内容がどこまで予想に合致するのか今後注視したいと思う。「大国は小国に勝てない」「逆説のロジック」「リニアな未来予想の罠」など、ビジネスでも必要な考え方で参考になる。
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中国という国家について、そして取り巻く各国、特に日本のとるべき姿についてのインタビュー本。ルトワック氏は現代戦略家として世界的な著名人。逆説的論理、国体というべきパラメータ、戦略的に見た各国の国民性、大変興味深い議論が多かった。今後の世界情勢はますます混沌とするのではないだろうか。
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日米同盟でカバーしきれてないの2つの弱点
①アメリカが領有権争いで中立の立場を貫く
②靖国参拝問題
チャイナ1.0 2000~2008 平和的台頭
チャイナ2.0 2009世界金融危機~2014 対外強硬路線
太平洋を中心に反中同盟が結成されたため
チャイナ3.0 2015~現在 選択的攻撃ー抵抗無いところは攻撃、抵抗あれば止める(日本、ベトナム、インドに対して攻撃姿勢を控え始めた。)
中国の最大の弱点ー慢性的な内向きの性向、外の世界を見ることができない。
大国は小国に勝てないー小国を他の大国が支援する構造が生まれる。(大国を恐れるため)
『中国4.0』エドワード・ルトワック著 紹介
https://youtu.be/jN9pU56cE-Y
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戦略の逆説的論理、大国は小国を倒せない、戦わないことを選ぶことの意味、など、一世を風靡したルトワック氏の論拠の導入に基づく中国分析。1.0から4.0への変遷の解説もわかりやすい。それにしても、当氏の主張するcriteriaは悉くチャイナcriticizeにハマるのが面白い。
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急に突飛というか、極端な提案が出てきて、現実離れしていることがあるけれど、意見の一つ程度の気持ちで読み進めた。
今まで見聞きしたニュースと照らし合わせていくと、割とびっくりするし、むしろ怖くて、ニュースが見られなくなる。安倍政権が何をしているのか、今日本がどういう状況に置かれているのか、なんとなくうっすら見えてきて、目を反らしたくなる。
でもそんなことじゃ国を守るなんてできないんだろうなぁ。
世界では、きれいごとでは生きていけない。
きれいごとで生きているように見せかけて、実際それは実行していない、そういうことなのだ。
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【196冊目】中国そのものの分析というよりも、戦略論の観点から中国をとらえ、日本に提言を行うもの。
中国1.0は、平和的台頭。
→リーマンショック等を見て、米国一強の時代は終わったと理解。
→中国2.0は、対外強硬路線。
→周囲を見渡すと、日本や東南アジア、インド等がアンチ中国で連携していたことに気がつく。
→中国3.0は、選択的攻撃。
※なお、中国4.0は筆者の中国に対する提言でしかない…。
中国2.0の失敗の原因は、中国が陥った3つの錯誤にある。
1. 金は力なり。
2. 中国の発展は直線的に続く。
3. 大国は二国間関係を持ち得ないのに、G2論に依拠したこと。
特に三点目は、筆者の戦略論の真骨頂。「逆説的論理」=小国が大国に攻撃されると、その小国を守ろうと他国が支援する。日露戦争でロシアが、ベトナム戦争でアメリカが敗北したのもこの論理が働いていると筆者は分析する。
その他。
・習近平は圧倒的な権力を持っているが故に、不都合な真実を伝えてくれる人がいない。これは彼の戦略を誤らせる。しかし、こうした内向きさは中国の文化である。
・ルトワック氏は本書で何度も尖閣に言及している。これは、日中間の戦争の最も現実的な火種が尖閣諸島にあるという彼の認識ん裏返しであろう。
・中国はsea powerではあるが、maritime powerではない。前者は艦船の建造など資源を投入すれば構築可能だが、後者は違う。日露戦争のときのロシアもmaritime powerを持っていなかった。そのため、アフリカ大陸を迂回して日本海に到達したとき、ロシアの艦船は既に疲弊していた。maritime powerとは、外交関係等の要素も含めた総合力である。ロシアの艦船は食料や燃料を補給させてくれる寄港地が少なかった、その意味で、イギリスは真のmaritime powerであった。→この点、「一帯一路」構想に賛同する国が増えればこの点は克服できそう。
筆者のルトワック氏から日本政府への提言は、次のとおり。ただし、文脈から言って、そのほとんどが尖閣対処に向けられたものに聞こえるのは、私の認知のゆがみだろうか…。
◯米国が島を守ることまで日本は期待すべきではない。米国は核の傘は提供するし、大筋の戦略でも合意するが、島ぐらいは自国で防衛してくれよと思っている。
◯対処すべき相手国である中国は、巨大でありながら不確実性を抱えた国である。
◯したがって、日本は「封じ込め」という受動的対処方針のもと、米国に頼らずに独力で島を奪還する多元的能力を身につけるべきである。「受動的」とすべきなのは、不確実な大国相手には積極的戦略が意味をなさないことの裏返し。「多元的能力」については、海保、海自、陸自、空自のほか、外務省にも言及あり(有事の際には中国製品の税関手続を遅らせるなどの措置を各国が実施するよう、事前に働きかけるなど。)。