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本文中の至るところに散りばめられた詩的イメージがいい。
物語としては、「砂漠の中心で」が白眉であろう。自分も喉の渇きを感じながら夢中で読んだ。
サン=テグジュペリの他の作品も読んでみたくなった。
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1930年代の飛行機はエンジンの不調でリビア砂漠やアンデスの山の中に不時着することもしばしばある。サハラ砂漠に不時着するとムーア人に襲われることもある。アンデスの標高4000mの高台に不時着した盟友メルモーズは滑走スペースがないので飛行機を奈落に向かって走らせる。断崖の縁から真っ逆さまに落下する途中で奇跡的に揚力を得て生還した。再び空に戻ったメルモーズは何年後かに南大西洋上空で消息を絶つ。同じくアンデス山脈で飛行機が故障して奇跡的に生還した盟友ギヨメは第二次世界大戦中に輸送飛行中に地中海上空で撃墜される。サンテグジュペリ自身、何度も事故を起こして奇跡的に回復し、リビア砂漠で水もほとんどもたずに遭難したときは2日目から幻覚があらわれる。奇跡的に通りかかったアラブ人に助けられるものの第二次世界大戦中にはフランスが降伏したあとアメリカで執筆に励んで星の王子様を出版したのに連合軍の偵察隊に復帰して消息を絶っている。そうまでして危険な仕事に帰って行くのは、歯車の一部となって精神生活とは無縁の小市民として生きることに耐えられないからだという。そこまで命をかける気にはとうていなれないが、自分はどう生きていきたいかを問いかけながら人生をすごしたいと思う。
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幻想的な感覚に囚われました。
表現力が豊かです。
前半は自然の大地を飛ぶ中での人間の小ささ、自然の大きさ、感覚の解放(一体感)のようなものを感じました。、、、ニュータイプ?
砂漠のところは自然の厳しさと人間の精神の解放。
本を読んでいてこんな感覚になるなんて初めてです。
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人間の気高さとは何かについて書かれた本。
p76の下記の一節は僕の座右の銘の一つになっている。
「人間であること、それはとりもなおさず責任を持つということだ。自分のせいではないと思えていた貧困を前に赤面すること、僚友が勝ち取った栄冠を誇りに思うこと、自分に見合った石を積むことで世界の建設に貢献していると感じることだ。」
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【冒頭】
大地は僕ら自身について万巻の書よりも多くを教えてくれる。なぜなら大地は僕らに抗うからだ。人間は障害に挑むときにこそ自分自身を発見するものなのだ。
【いちぶん】
救いをもたらしてくれるのは、一歩踏み出すことだ。一歩、また一歩。同じ一歩を繰り返して。
愛するとは互いに見つめあうことではない。一緒に同じ方向を見つめることだ。
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パイロットとして孤独と向き合い、地球や人間の歴史や根源的な存在意義に思いを馳せた究極のエッセイ。コロナ禍で味わう孤独などサン=テグジュペリが向き合った孤独に比べればピーナッツ程度ではないか。金言の連続。
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サンテグジュペリのエッセイ。これまで読んできた本は飛行機から見た風景や人間関係が主だったが、今作は様々な人々にスポットを当てた人間観察のエッセイ。
少々小難しいが、上品で知的な表現が心地よい。大体の作品で解説は飛ばすけど、今作は解説もしっかり読んだ。貴族出身で飛行士で、詩的な作家ときたら、モテないわけがない。著者のことをもっと知りたい。
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すごく面白いという感じでは無いですが、全体的にキレイな文章でかつ心に残るフレーズもたくさんありますので、読んでおいて損は無い本だと思いました。とりあえず、この本を読んでから「星の王子さま(ちいさな王子)」を読むのがオススメ♪
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「ぼくたちは何世紀もの間道に騙され続けてきた」
「自分の中のモーツァルトを虐殺しない」など、美しく簡潔ではっとさせられる文章と、サン=テグジュペリのパイロットとしての経験などを基にしたルポルタージュやエッセイを寄せ集めた作品。
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郵便飛行機のパイロットとして、アフリカの砂漠や南米の山岳地帯でのエピソードを連作にした。砂漠で不時着し極限状態。僚友との絆。学生の部活動で同じ目標に向かう一体感に似たものを感じた。最終章での人間と自然との関わり、偉大さ、平和への願いにも気づきがある。2022.1.29
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パイロットという職業人を描いたエッセイをまとめた作品。表現が詩的。
みすず版と比べるとかなり読みやすい。
みすず版は、英語版にのみ収録されているエピソードも翻訳していたようで、本書には載っていないエピソードも記憶にある。
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名作だということなので、読んではみたものの、、、最初の150ページは、自分のパイロットとしての実体験を話しているのか、空想の話をしているのか、急に黒人奴隷を解放した話になったり、何が何だか全く掴みどころがなく、とても退屈な内容だった。
途中から、砂漠で墜落、遭難した話になって、急に具体的な話となり、なんとか読み続けることができたものの、、、
でも、全体を通して、うーん。。という内容。
命の尊さは感じられたけど、、、ね。。
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郵便パイロットての経験を通じて人間のあり様については解くエッセイ。
やや難解な文章なので少々読んでいて注意散漫になることが多かった。当時の飛行機乗りはかなりの危険が伴った職業だったようで、故に人間の生き方についての考えが研ぎ澄まされていったように思える。また、当時の読者達は飛行体験を記した本書により未知の世界に想いを馳せたのだろうし、文学的価値以上に読者達を楽しませたのではないかとも思う。印象的なのは、リビアの砂漠に不時着して死の間際まで追い詰められた過酷な体験を綴った「Ⅶ砂漠の中心で」でのサバイバル。
死ぬことと向き合うことになった時にまた読みたくなるような、人生の哲学を丁寧に描く作品です。
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人間が生きるとは何かということをパイロットという職業で経験したことから詩的に語る作品。
同じことを様々な表現で描かれているが、286,287ページの表現を残しておきたい。人類の前進に貢献する、貢献している他者を認識することが幸せなのだと感じさせてくれる。
「人類の形成過程はまだ完了していないということだ。また、僕らは自分自身と宇宙を同時に意識しなければならないということだ。僕らはこの闇の中で架け橋を作らなければならない。」
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【読もうと思った理由】
新潮文庫版の「人間の土地」を読了したが、理解度が低いと感じたため、同作品の別訳者で別出版社の書籍を読みたくなった。
今回選択したのは、光文社古典新訳文庫です。
【あらすじ】
郵便機のパイロットとして長いキャリアを持つ著者が、駆け出しの日々、勇敢な僚友たちのこと、アフリカや南米での人々との交流、自ら体験した極限状態などについて、時に臨場感豊かに、時に哲学的に語る。人間にとって大切なものは何かを鋭く問うたサン=テグジュペリ文学の大傑作。
【著者 サン=テグジュペリについて】
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
[1900-1944]フランスの作家、飛行家。
兵役で航空隊に志願、除隊後は民間航空業界に入る。26歳で作家デビューし、自らの飛行体験に基づく『南方郵便機』『人間の大地』など発表した。1931年に発表した『夜間飛行』はアンドレ・ジッドに絶賛され、またフェミナ賞を受賞。また1942年の『戦う操縦士』は、ヒトラー『我が闘争』に対する「民主主義からの返答」として高く評価される。詩情あふれる『ちいさな王子』は、子どもから大人まで今も世界中で愛され続けている。
【感想】
読了後の率直な感想は、「これ同じ作品?現代文学と全く一緒だ、めちゃくちゃ読みやすい」だ。
読書中はもちろん、読了後でも知的好奇心が刺激され、なんとも形容しがたい幸せな気分になれる、そんな稀有な作品だった。
例えるならば詩的で、ほんのり哲学的要素をまとった言葉のシャワーを、ずっと浴び続けている、そんな恍惚な体験だった。
作品の内容は、8章からなる、自伝的エッセーである。読了後に知ったのだが、このエッセーは、1932年以来、色々な新聞、雑誌に発表してきたエッセーやルポタージュを寄せ集めて、一冊の本にまとめ上げたものだ。
著者は1926年に民間航空会社のパイロットになってから、1944年の偵察飛行中に消息を断つまで、生涯一貫して、いちパイロットであった。よってこのエッセイ、パイロットとして勤務中の出来事を綴ったものだ。
「定期路線」と題された章から始まり、「僚友」が続いて、最後は「人間たち」に行き着く。航空路線便で働く僚友たちの姿を描き、そこから派生して、生きとし生ける全ての人間に通じる問題を投げかけようとする、筆者の思いが感じられる。
8章の中で最も感動的したのは、7章の「砂漠の中心で」だ。パリーサイゴン間の長距離飛行中に、遭難事故に遭い、リビア砂漠に不時着する。地図も何もない中、3日間ほぼ水分補給が出来ず、オアシスを探してさまよい歩き続ける。なんとその距離、3日間で200kmだ。3日間も水分を飲まない人間の実体験を語っているので、臨場感がこの上なくリアルに伝わってくる。
(本文一部抜粋)
空腹は全く感じず、感じるのは喉の渇きだけ。いや、渇きというより、むしろ渇きのもたらす結果だ。このこわばった喉、石膏のような舌、口の中を何かに引っ掻かれる感じと、ぞっとする味。
そんな死が目の前に迫った極限状態の中、助けられる場面はまるで映画のワンシーンのように感動的だ。ぜひご自身で読んで、体感して欲しい!
また、サン=テグジュペリといえば、詩的な文章が有名だ。本書は本当にほぼ全てのページに、詩的でほのかに哲学的な香りのする文章が書かれており、読んでいて、感情を動かされ続ける。
読まれる方によって、感銘を受ける箇所がそれぞれ違うと思うが、参考までに僕が最も感銘を受けたのは以下の言葉だ。
(本文一部抜粋)
「どんなにささやかな役割であってもかまわない。僕らは自分の役割を自覚して初めて幸せになれる。そのとき初めて、心穏やかに生き、心穏やかに死ぬことができる。人生に意味を与えるものは、死に意味を与えるものだから。」
「星の王子さま」が好きな方はもちろん、詩的で感動できる文体が好きな方には、ぜひご一読頂きたい作品です!
【本書をきっかけに得た気づき】
今回の同作品を昔の訳と新訳を比較して分かったのだが、新訳でなければ、文章を理解するために脳の働きの大部分を割かれてしまう。よって脳の構造上、感情を司ることまで追いつかず、オーバーフローしてしまうんだと思う。だから感情がフリーズしている為、読後感が消化不良になってしまうんだと思った。それが古典が疎まれてしまう理由なんだと。
なので、古典を新訳でのみ刊行している光文社古典新訳文庫は、僕にとってこの上なく、ありがたい存在だ。自分のプロフィールにも書いているが、ほとんどの本がすぐに絶版になる中、発行されてから100年以上も読み継がれている書籍には、やはり他の本と比較しても新たな知識や知恵を得れる可能性が、かなり高い本だと思う。なので今後も古典は読み続けようと思う。
【光文社古典新訳文庫について】
光文社古典新訳文庫の巻末には、必ず1ページを使い、古典新訳文庫を創刊した意義を載せてくれている。この文章、内容が素晴らしいのは言うまでもないが、文章自体が非常に洗練されており、流麗で美しく個人的に非常に好感を持てる。
単語のチョイスは言うに及ばず、読点「、」の打つ箇所や、漢字表記かひらがな表記にするか、文章の構成に至るまで、推敲に推敲を重ねた文章だと、読み手にありありと伝わってくる。
あまりに美しく、感銘を受けた文章なので、下記に転記します。
いま、息をしている言葉で、もういちど古典を
長い年月をかけて世界中で読み継がれてきたのが古典です。奥の深い味わいある作品ばかりがそろっており、この「古典の森」に分け入ることは人生のもっとも大きな喜びであることに異論のある人はいないはずです。しかしながら、こんなに豊饒で魅力に満ちた古典を、なぜわたしたちはこれほどまで疎んじてきたのでしょうか。
ひとつには古臭い教養主義からの逃走だったのかもしれません。真面目に文学や思想を論じることは、ある種の権威化であるという思いから、その呪縛から逃れるために、教養そのものを否定しすぎてしまったのではないでしょうか。
いま、時代は大きな転換期を迎えています。まれに見るスピードで歴史が動いていくのを多くの人々が実感していると思います。
こんな時わたしたちを支え、導いてくれるものが古典なのです。「いま、息をしている言葉で」──光文社の��典新訳文庫は、さまよえる現代人の心の奥底まで届くような言葉で、古典を現代に蘇らせることを意図して創刊されました。気取らず、自由に、心の赴くままに、気軽に手に取って楽しめる古典作品を、新訳という光のもとに読者に届けていくこと。それがこの文庫の使命だとわたしたちは考えています。
【雑感】
次は、絶対に死ぬまでに読もうと思っていた、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を読みます。かなりの長編で、著者の歩んできた人生観や時代背景など、事前にある程度把握していないと、「罪と罰」のとき同様、「取り敢えず読了だけはしました」にはなりたくない。
なので今回は、先に「100分de名著のカラマーゾフの兄弟編」を読み、ポイントを理解してから本編に臨もうと思います。
レーベルはもちろん、光文社古典新訳文庫で。