紙の本
新人さんとは!
2016/06/26 16:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナウシカ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これが、新人さんとはの作家さんとは、驚きです。それぞれの話の風景が、はっきりと見えてきます。この才能に脱帽です。
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深緑野分のデビュー作。
5編収録だが、舞台がそれぞれ異なっていて、作風の幅を感じた。
表題作にもなっている『オーブランの少女』と『仮面』が好みだった。
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舞台となる国、時代は様々ですが、どれも見事な筆致で描かれています。キャラクタの設定も良くできています。少しブラックなところがあるストーリーも魅力的です。
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強か。少女といえども女性ということなのだろうか。ほんのり怖く、逞しく生き抜く少女たちの物語。
あらすじ(背表紙より)
美しい庭園オーブランの管理人姉妹が相次いで死んだ。姉は謎の老婆に殺され、妹は首を吊ってその後を追った。妹の遺した日記に綴られていたのは、オーブランが秘める恐るべき過去だった―楽園崩壊にまつわる驚愕の真相を描いた第七回ミステリーズ!新人賞佳作入選作ほか、異なる時代、異なる場所を舞台に生きる少女を巡る五つの謎を収めた、全読書人を驚嘆させるデビュー短編集。
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「オーブランの少女」ナチスドイツ。
「仮面」霧深きロンドン。
「大雨とトマト」現代日本。
「片想い」エスの文化の日本。
「氷の皇国」架空の北欧の王国。
舞台も文体もフレイバーも全然異なる、幅の広い短編集。
表題作の陰惨さ、「片想い」のゆりゆりしさ、「氷の皇国」の魔性。
豊潤な翻訳小説のよう。まさに。
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表題作の『オーブランの少女』の他、『仮面』、『大雨とトマト』、『片想い』、『氷の皇国』が収められています。
どれも、とても丁寧なミステリなのですが、それ以外に、一貫して「少女」がテーマになっているのも、読んでいてとても面白いです。
少し、夢野久作の『少女地獄』のような雰囲気も。
国も時代も違う、5作品のどれもが、情景がするすると浮かんでくるのは、本当に凄い。
『オーブランの少女』は、シャーリィ・ジャクスン好きの人なら、きっと大好きな作品。
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5編の作品を収録した短編集。
各短編に共通しているキーワードは”少女”
元気な少女、儚げな少女、したたかな少女、と単に少女といっても、色々なイメージが浮かんでくるのですが、この短編に出てくる少女たちは、そうしたいずれのイメージのどれかには当てはまる、そんな気がします。
表題作の「オーブランの少女」は儚げで美しい、しかし残酷な短編。
老婦人の姉妹の殺人事件。その真相は二人の子ども時代にある、という話です。
箱庭のような美しい土地”オーブラン”で共同生活を過ごす少女たち。安心、安全な生活を過ごしながらも、彼女たちを監督する先生たちの言動や、集められた少女たちの境遇など、その生活はどこか不穏で、危うげな雰囲気が漂っています。そうした美しさと危うさのバランスが絶妙!
そして、その危うさの真実が明らかになる後半も、思わぬ展開でビックリ! ミステリですが、単にミステリの枠に当てはまらない不思議な短編でした。
もう一つ印象的だった短編は、最後に収録されている「氷の皇国」
舞台となるのは、皇帝の独裁によって支配される古代の王国。そこで皇太子殺害の疑いをかけられ、死刑に処せられようとする少女が主人公の短編です。
それまでの短編が仕掛けや構成で魅せるタイプのミステリだったのですが、そこから一転してのロジックを使った本格ミステリが展開されます。
舞台設定も珍しく、また主人公たちが死刑から救われるのか、というハラハラ感も加わり、非常に楽しかった短編です。
各短編本当にバラエティー豊か! 少し先が読めるものもあったものの、手を変え品を変え、様々なタイプのミステリを仕掛けてくる、著者の深緑さんの筆力はかなりのものだと思います。
そして、それぞれの短編に共通する一種の残酷さや、したたかさも物語に、いい刺激を加えてくれているように思います。
デビュー二作目の『戦場のコックたち』でものすごく話題になった深緑さんのデビュー作だけあって、その実力の片鱗を感じさせられる短編集でした。
第7回ミステリーズ!新人賞佳作「オーブランの少女」
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先日読んだ「戦場のコックたち」がなかなかに面白かったので作者のデビュー作も読んでみました。
で・・・まあなんというか「創元」っぽい感じの話だな、と。割と軽めの短編集なんですが「少女」をモチーフにというテーマがあるようで。
それなりに面白く読みましたが、女性作家に多い「なんとなくイヤミスっぽい」感じが多かったように思いました。「少女」で「創元」だもんなあ。まあそうなるかなあ。
とりあえずタイトル作の「オーブランの少女」についての感想なんですが・・・まあデビュー作だから荒削りなんでしょうけどもちょっと無理やり感が。たとえば、実はユダヤ人狩りをのがれさせるために少女たちを・・・ってわざわざ重篤な病魔に侵されてる少女を無理して隔離しておく必要があるのだろうか?家族の心情として。ユダヤ人狩りをのがれても病気で普通に命を落とす可能性も相当高そうな。だったら生き残ることができる可能性の高い健常な姉妹を名前を偽って送り込んだほうがいいんじゃないのかな?そもそもなんで少女だけで少年は入れないのか?とか。。。書いてはあったけど自分が読み逃したのかな。
まあ細かいこと気にしないでこの何とも言えない雰囲気を楽しめってことなのかもしれませんけどね。
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美しき庭園に隠されたもうひとつの庭の物語、醜い姉と美貌の妹を巡るヴィクトリア朝ロンドンの犯罪譚、寂れた食堂の亭主を翻弄する過去の思い出…。
異なる場所、異なる時代を舞台に描く、少女たちをモチーフとしたミステリ短編集。
表題作の「オーブランの少女」に、まず驚かされました。
最初に色とりどりの花が咲く美しい庭園が活写され、その後不穏な殺人劇が繰り広げられるのですが、その対比が鮮烈な印象を残してくれるのです。
情景が目に浮かんでくるような物語世界の構築力・リーダビリティは新人離れしていて、瞠目しました。
割と好きなのは「片想い」。
これは日本の戦前の女学校が舞台になっていて、いわゆる「エス」が出てくるのでわたし好みでした~。
制限の多い時代の女性の細やかな心の動きが活写されていて、頬がゆるみました。
前向きなラストの読後感が良かったです。
どの短編にも現れる、強靭さと脆さが危ういバランスで同居している、そんな季節を過ごしている「少女」たち。
平気で残酷なことをする同じ心で、愛するものに惜しみない愛情を与えることのできる彼女たちは、いつか自身が変容し、大人になった時に初めて通り過ぎた季節を思い返すのでしょう。
彼女たちの息づかいを間近で聞いているかのように、もどかしさや切なさが伝わってきて、素敵な緊張感を味わうことができました。
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ファンになってしまった……『氷の皇国』は手がかりの配置や事件後の途切れることのない緊張感、意外な人物の推理によるクライマックスの盛り上げなど1番好み。ケーキリア皇女がな、本当に良くてな……。
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傑作『戦場のコックたち』の著者である深緑さんの処女作となる短編集です。作品の舞台は架空の国家、19世紀のイギリス、現代の日本など様々ですが、いずれの作品も少女が主人公もしくは物語の鍵を握る役割として登場するところが共通しています。
表題作「オーブランの少女」をはじめ、海外の翻訳小説を読んでいるような独特の雰囲気と舞台設定の妙が印象に残りました。作者の筆力によるところが大きいと思うのですが、海外を舞台にした作品でありがちな「つっかかる」ところがほとんどなかったので、読み心地は非常に良かったです。
難点をいえばミステリとしてはちょっと弱いところがあったことと、「大雨とトマト」は設定が現代の日本ということで本作品集の中ではちょっと浮いた感じがしました(展開自体は割と好きではあるのですが)。とはいえ本作はデビュー作。『コックたち』を経て、次回作でいったいどこまで飛躍してくれるのか非常に楽しみであります。
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少女は、秘密を抱いて微笑む。
表題作だけでなく、どの作品も、何かしらの偽りや秘密を持った少女が登場する。明かされた真実は残酷だったり、やるせなかったり、切なかったり。後味は、それほど悪くない。さっぱりした文章だと思う。特に舞台が外国のものは、翻訳小説のように感じた。
「オーブランの少女」管理人の姉妹、老女の死体、それらの正体は誰なのか? 重要なのは、真相としてここで述べられている手記も、語り手の脚色を含むということ。閉ざされた庭といえば、「秘密の花園」だが、もっと怪しげである。
「片思い」これだけは舞台が日本、おそらく少し前の。女学校の生徒たちの友情と秘密。吉屋信子のような世界。女子校、女子の世界、女子の友情(優しいver.)、というものを楽しみながら読めた。
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表題作の語り手が、事件に関わってしまった自分の娘に対して何の感情も示さないのが、事件そのものより怖い。
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単行本で出た時から読みたかった一冊。文庫化を待ってた。
≪オーブランの少女≫
美しい〝オーブラン〟で起こった管理人の老婆の姉妹の姉の方を裸でやせ細った人間だったもの(としか言いようのないもの)が殺すというショッキングな事件が起きる。ともに管理をしていた妹もその後自殺してしまう。主人公の娘は、妹の老婆から死ぬ前に日記と思しきノートを託されており、それを知らされたのは二人が亡くなって三年たってからだった。小説家だった主人公はその日記をもとに真実を編みなおす。オーブラン、そこは昔病気を患う少女たちを預かるホスピスだった。そこに一人の少女が迎え入れられる。彼女は静かなここの生活を送りながら、ある事件をきっかけに日常は変化していく。はたしてオーブランの正体は?死んだ姉妹、そして二人を殺した狂人の正体は。
《仮面》
二十世紀初頭のイギリス。医師は患者であるバルベル夫人のもとを訪ねていた。冬の町は恐ろしく冷たく、そして殺人に来訪した医師のブーツを重たく濡らした。バルベル夫人の元には使用人がいた。ひきつれた火傷の跡、曲がった鼻、しかしその瞳だけは恐ろしく美しいアミラという少女。彼女にはたった一人の美しい妹がいた。バルベル夫人の死んだ夫の経営していた店で踊っていたリリーという少女。医師は姉妹のために夫人を殺した。そしてしれは事故として膜を閉じるはずだったのだ。医師が世界が反転するのは、夫人を殺した翌朝のことだった。
《大雨とトマト》
父親の経営していたレストランを継いだ主人公は、大雨の日に店を開けたことを二日酔いの頭で後悔していた。閉めてしまいたい店の中には男が一人。何が気に入ったのか毎日のように食べにくる男は、今日も不味そうに肉を噛んでいた。男が帰れば店を閉めようと思っていたところへ、店のドアが開く。大雨の中入ってきたのは少女だった。彼女は店主をみると少し惚けて、そして何故今日ここに来たのかをトマトサラダを食べながら話し出す。彼女は「…父を探しにきたんです」といった。見たことあると感じた少女の顔を、店主は記憶の中から掘り起こす。それは彼が犯した唯一の不貞の相手の顔だった。美味いと思っているわけではないのに毎日食べにくる男の理由と、少女の探している父親とは。
《片想い》
まだ女が学問を大手を振って学べなかった時代の女学校。そこに転校してきた環と仲のいい薫子は環の隠している真実を、彼女に持ち上がった異性不純交際の噂をきっかけに問いただす。噂の真相と、環とはいったいどんな人間なのか、語られる真実に少女は胸を焦がす。
《氷の皇国》
寒さの厳しい北国。その端に位置する漁村に首なし死体の正体を巡って、村の酒場は繁盛していた。そこで放たれるいくつもの推理がひと段落したあと、年老いた吟遊詩人は一つの物語を語りだす。ここが昔氷の皇帝の国だったころのこと。死体の首は何故なかったのか、何故この村に流れ着いたのか、そしてたった一人その死体に涙を流した老婆の負った過去とは。
短編集。物語に引き込まれる文章と、そして人物たち。この作家さんが好きになりました。ほかの小説も読む。
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美醜を突き詰める気高い筆致、一貫した無常観に作家性の強さがあって、作者は今後すごいことになりそう。というかもうなってる?