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「書籍を読むとは、単に受動的に読むのではなく、著者の語っていることに対して、「本当にそうなのか」と疑い、反証するなかで、自分の考えを作っていくという知的プロセスでもあるのだ」という著者が、いくつかのテーマで対立する本を選んで比較するという試みがこの本だ。対立しているか怪しい対戦もあるが、なかなか面白い試みである。
実際の戦いは以下の通り。
Round0: イントロダクション
『読書について』ショウペンハウエル vs. 『武器としての決断思考』瀧本哲史
Round1: 心をつかむ
『影響力の武器』※ チャルディーニ vs. 『人を動かす』※カーネギー
Round2: 組織論
『君主論』マキャヴェリ vs. 『ビジョナリー・カンパニー』※コリンズ
Round3: グローバリゼーション
『文明の衝突』ハンチントン vs. 『フラット化する世界』※フリードマン
Round4: 時間管理術
『ザ・ゴール』※ ゴールドラット vs. 『ストレスフリーの整理術』アレン
Round5: どこに住むか
『年収は「住むところ」で決まる』モレッティ vs. 『現代の二都物語』サクセニアン
Round6: 才能
『天才を考察する』シェンク vs. 『さあ才能に目覚めよう』※ バッキンガム
Round7: 大勢の考えを変える(マーケティング)
『ポジショニング戦略』※ ライズ vs. 『キャズム』※ ムーア
Round8: 未来
『ニュー・アトランティック』ベーコン vs. 『一九八四年』オーウェル
Round9: 正義
『アナーキー・国家・ユートピア』ノージック vs. 『正義論』ロールズ
Round10: 教養小説ー大人になるということ
『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』ゲーテ vs. 『タッチ』※ あだち充
Round11: 国語教育の文学
『阿Q正伝・狂人日記』魯迅 vs. 『山月記・李陵』※ 中島敦
Round12: 児童文学
『ハリーポッターと賢者の石』ローリング vs. 『しろいうさぎとくろいうさぎ』ウィリアムズ
自分が持っている本/読んだ本に※を付けてみたところ、全13対戦26冊のうち、10冊が該当している。両方とも読んだことがある対戦が二試合。まずまずではなかろうか。やはり読んだことがある本が対戦している方が面白い。
この仮想対戦は、自分でもできそうな気がしてきた。
例えば「意識」についてジョン・サールとデビッド・イーグルマンやジュリオ・トノーニなどを対戦させても面白い。この分野はまだまだ面白い対戦がたくさんありあそう。
「民主主義」について高橋源一郎や柄谷行人と池田信夫を対戦させてもいいだろう。ルソーや東裕紀までを勝手に絡めても面白そうだ。
シンギュラリティについて、ミチオ・カクとレイ・カーツワイルというのもありだろう。悲観的な予測の本と対戦するのもいけるだろう。
進化論に関して、実際に行われたドーキンスとグールドの戦いを検証してもいいかもしれない。人類の進化に限っても楽しそうな対戦が組めそう。
トマ・ピケティとハイエクも面白いだろう。ロバート・ライシュなど経済の世界にはいろいろと対戦カードがありそうだ。
死刑制度やオウムについて、森達也なら対戦相手には困らないだろう。
マネジメントについては、ミンツバーグも対戦相手が多そうだ。
実際の対戦については、実際に読んでみて面白いかどうか感じてほしい。内容よりもアイデアやテーマや本の選択の方に興味をひかれた本。
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現国のジャンルでとりあげられていた「山月記」や「オツベルと象」、懐かしい!子どもと読むべく速攻予約する。
絵本やディズニープリンセスの事例も面白い。 アナ雪しかり魔法にかけられてしかり、「規範(王道ストーリー)からの逸脱」があり、素直に内容を受け入れる子どもにはこれくらいのエッセンスがあった方がいいかもしれない。
また、「取り柄のない男子がなぜかアイドル的な女子から好かれ、成長と自己承認していく」は売れた漫画のなかではタッチが最初とのこと。
いまやよくあるパターンだけど、あだち充は先駆者だね。
同じジャンルでコンセプトが対極にある本を比べ、反証したりしながら読み進めることで自分の主張を磨き理解を深めていく。
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題名はちょっとアレだが、中身は結構マジメ。ショウペンハウエルの『読書について』の批判から、様々なテーマから2冊を抽出し比較するという面白い試み。
抽出書籍には著者のバイアスがかかっているので、この対決が適切か否かの問題はある。が、フレームだけを応用するのはアリかな。やはりあるテーマについて考える時は類書を何冊か読んで比較し、疑問や批判をしていないとダメだね。
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だれかに紹介されたり、指示されたりして読む本が身につかないのは、読み手側の問題だと思います。
自分の考えを壊し、新しい考え方を提示するような本は、普通に読むと、文章は頭に入らず、読んでいて腹がたって不快に感じることが多いからです。
文字だけを追い、読了すること、感想を求められたときにとりあえずいっぱしのことを言うために読む本は、まったく読まないよりはまし、というだけで身にはなりません。
誰もが価値を認める二冊を対決させ、その両側から論じていく紹介方法は「矛盾」の対決を目の前で見せられているようでスリリングです。
何を読めばいいのかが分からないとき、古典に戻ろうと思ったときに、指針になる本です。
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似た題材を扱った本を2つ並べて批評した本。一度読んだことのある本でも、並べて比較したことはなかったので新たな発見を見せつけられた。かつて読んだ本を再読したい気分になった。
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ちょっと読むだけで、著者が非常に頭の良い、多くの本を読んできている人物である事が分かる。
「格闘技」となっているけれども、全般的に穏健な内容。著者本人が、刃物を持って、取り上げた本に対して挑みかかる様な部分があっても良いように思えたが…
ハリポタシリーズのこと頁が一番楽しく読めた。
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「~読書をするときも、自分の今の考え方と、著者の考え方を戦わせて、自分の考え方を進化させるために読むというぐらいの気持ちで臨むのが良いのだ。」(本書Round 0 イントロダクションより)ということで、本書はその戦い方の例を各章で2冊ずつとりあげて示してくれる。
ただ単に本を受動的に読んで、わかった気になっているが、あとで「あの本に何が書いてあったっけ?」となる自分にとっては蒙を啓いてくれる一冊だった。
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20180723
世界という書物を直接読破するために、考えるべき視座を持つために、本を読むことが大事である。
インプットするのではなく、自分の思考と戦わせて、アウトプットの糧にしなくては読書に意味はない。
その思考と戦わせる方法の一助を説いたのが、『読者は格闘技』である。瀧本氏の思考様式である、細かい単位でメリットデメリットを比較して論点を深掘りする読み方が非常に参考になる。以下はそれぞれの章で感じたことを列記する。
・フラット化 VS 文明の省略
・影響力を与えるには合理性と、他人の不合理性を考慮する必要あり
・ストレスフリーのために、頭から出して管理する思想は共感。方法を自分なりに生み出したい。
・情報を得られる、かつ、対面での情報収集はとても大事。
一方、心を休めるリゾートの意味で地方も大事。
・才能を持って、行きて行くためにどう生かすか。資本主義。お金を稼ぐ必要はあり。
・キャズムは参考になる。ターゲットはとことんまで細分化して良い。
・未来はディストピアと思う。人間の愚かしさは終わらない。しかし、自分で未来を作るというユートピア発想は何かに活かせるかも。
・正義論。コミュニティでの対話で決めるしか無いという考えだったが、人も情報も移住が増えてきている現代では、地域のコミュニティで対話もむすがしい。かつ意義も薄れてしまっている?
・ヴィルヘルムマイスターとタッチは読んでみたい。
・国語の教科書に載せている理由など考察し直すのは面白いかも。
・ハリーポッターの世界観が進化していっているという発想は興味深い。映画を観たい。
インプットではなく、アウトプットするための読書法を学ぶ。
自分の考え方の視座を持っていないと論文への同意点、相違点が分からない。その考え方を意識して読む。
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ジョン・ロールズは、社会の中で自分がどの立場になるかわからなければ公平に決められると考えた(「正義論」)。
ロバート・ノージックは、国家が存在する以前の初期段階では、個人がお互いの権利を保護するための組織を自主的につくるが、その組織は規模の利益が働くため統合されて独占状態になるため、不必要な介入をしない最低限の機能をもった最小国家が各人の自由意思を最優先させるユートピアであると主張した(「アナーキー・国家・ユートピア」)。
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読書好きにはたまらない、刺激的な一冊。
将棋の感想戦のような、著者の読書の楽しみ方や頭の中を覗かせてもらえる内容。
こんな読み方があるのか、こんな本があるのか、とたくさんの本が紹介されているので、これから読みたい本が一気に増えるはず。
既に読んだ本について書かれている部分では、自分の感想と対比でき、著者とそれこそ感想戦ができて楽しい。
闘うべき本を求めて、武者修行の旅、冒険へ旅立つぞ。
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安定の瀧本節
ショーペンハウエルの読書にあるように、他人の知識をそのまま取り入れるだけで、考えなくなるという読み方では意味がない。
読書は、批判的視点、もしくは、これを今の生活に取り入れるとしたらという視点で読むことで、思考の新しい視点を作ることであると思っている。
他の本を読みながら、これはあの本でも行ってたことだなとか、相互に行き来することも、思考を深めるために重要。
必ずしも書いていることだけを考えるのではなく、
その背景を見ながら考える(その当時の状況から考えると、よくこんなことを考えたな)という読み方は面白い。
そのてんで、哲学書を読むというのも面白いかもしれない。
強みは、遺伝×環境である。
あくまで相対的な物なので、いる場所を鑑みて、強みを設定するしかない。
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2020/01/13 読了。
著者が13のトピックごとに、対比する本を比較しながら、本を紹介する読書指南書。
本に書かれていることは必ずしも正しくなく、読者は読んだうえで考えなければならないとの著者の考え方が伝わってくる。
後半は小説やマンガなども含まれてくるものの、何らかの教訓や、ストーリーを抽象化して他との共通点を見出そうとするなど、ユニークな試みをしている。
以下は他の方のレビューから拝借させていただいた、目次。
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Round 0 イントロダクション
Round 1 心をつかむ
Round 2 組織論
Round 3 グローバリゼーション
Round 4 時間管理術
Round 5 どこに住むか
Round 6 才能
Round 7 大勢の考えを変える(マーケティング)
Round 8 未来
Round 9 正義
Round10 教養小説―大人になるということ
Round11 国語教育の文学
Round12 児童文学 読書は感想戦―あとがきにかえて
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この本は、著者である瀧本哲史氏が読んだ本のレビューなので有るが、単純に名著を読んだレビュー程度のものでは無く、本として世に出ているものの中から氏が分類したキートピックスについて、二冊(実際には複数の書籍)を対比して述べるスタイル。
仕事に関係が深い内容から、正義や教養、児童文学など幅広くトピックを紡いでおり、読書の幅を広げるのにも良いガイドとなる。
瀧本哲史氏の『ミライの授業』を読んで、一気に全部の本を買い込んで、かなり氏に傾倒中なので、そう言うバイアスがかかっている前提での評価ではあるが、本を好きになる為の一書としておすすめ。
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いかにもなMBAの名著が並ぶ前半~中盤。
勉強になりつつ、まーこんなもんでしょとも思っていたら「未来」というテーマでベーコン「ニュー・アトランティス」とオーウェル「1984年」、「教養小説」のテーマでゲーテ「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」とあだち充「タッチ」を取り上げる。
普遍的なテーマに時代など関係ないこと、18世紀末のヴィルヘルム・マイスターとバブル直前の高校球児を並べると変わった読み方を味わえる。こんな取り上げ方ができるのが、この著者の味であろう。
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格闘技としての読書,と位置付け,テーマ分野について読んだ本群を使った,自己完結的ディベートの薦め.一般的には,特定のテーマ分野を掘り下げるために,当該分野の複数の書物をあたれ,とまでは言及するが,さらにディベートに持っていくという一段階上を行く本手法は,目から鱗が落ちるが,言うは易く行うは難し.日々精進あるのみ.