紙の本
古代をよみとく方位の視点。
2016/05/15 23:36
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投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直、かまどや洞穴の子宮のメタファーなどは現在ではありきたりになった感がある。著者の研究テーマの五行思想は古代史ミステリを楽しむための視点のひとつとしておさえておきたいところだと思う。我々と古代人の差異のひとつに方角への感性があると思う。正確な装置がなくとも星や太陽から多くの情報を得ていたのだろう。本当はそうした方角情報の実証性の研究も欲しいところ。本作は各論は面白くないが、全体で氏の論の正当性を補強していると思われる。
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陰陽五行が日本列島にどのように浸透したかを民俗学の大家が紐説く、、、日本古代の呪術は「性」が鍵であるという主張
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本書の骨子を、思い出しながらまとめてみる。
粗雑なまとめで、著者には申し訳ないが。
古代の信仰では、東から西へという移行が注目された。
日本に限らず、太陽の運行に関わる発想だろう。
東の常世から西の人間界に、神も、新しい命もやってくる。
ここに、大陸から伝わった陰陽五行思想が習合する。
東西南北、季節、色、時間、音などが体系化される。
上記の古代信仰に、南北の軸が加わる。
韻である北(子)は女性、陽である南(午)は男性。
そして、陰と陽の二極は調和しなくてはならない。
こうして、日本の古代信仰では性的な結合が大きな意味を持つようになる。
生命は、北の未生の状態から、東(卯)へ移動し、現世へやってくる。
子卯の結合も重視されるようになる。
これを原理として、吉野さんはさまざまなものが読み解けるという。
大嘗祭の儀式、各地に残る祭礼、白鳳時代の遷都、高松塚古墳の壁画、補陀落渡海の出立地や時間、お水取りなどなど。
牽強付会といわれるのかもしれない。
でも、さまざまな事象が次々と解き明かされるのに、目を瞠る思いがする。
昨日、たまたま遠野の風景を特集したテレビ番組を観た。
その中で、「卯子酉神社」がちらりと映った。
この名前はまさしく「卯子結合」を体現する。
また、西を表す酉と組み合わされいる。
後でネットで調べたことだが、地元では縁結びの神として知られている祠だそうだ。
たしか、この神社については、本書では触れていなかったように思う(吉野さんは絶対知っているだろうとは思うが)。
でも、これ、まさしく本書で説いている、性的な呪術に支えられた死と再生そのもの。
とても吉野説を牽強付会とは思えなくなった。
本書のあとがきで、吉野さんは研究者として遅咲きの人であったことを知った。
断定的なものいいが災いして、彼女の説を受け入れない学者もいたとか。
柳田国男をも臆せず批判する人である。
どんな人だったのか、もっと知りたくなる。
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はじめの三分の一は、あれ僕ラノベ買ってたっけ?と勘違いするぐらい。女陰女陰と出てきてカイちゃいましたが、天武天智の陰陽五行説の展開では非常に説得力のある論を展開し、見事
お水取りについては陰陽五行で説明し切っていただき
感激すら覚える書物でした◎
巻末の解説文にも書かれていることにも繋がりますが、著者後継はちゃんと居るのだろうか?と言うのが目下の関心どころ^_^
山折哲夫氏だけが、参照すべき古代信仰の学者ではない。と言いたいw
とにかく、陰陽五行を知るには吉野裕子氏。
だと僕は思う。
個人的には日本古代信仰と陰陽五行説の習合を隣人同士の習合と表現した著者に拍手を送りたい(^^)