もう見ることができないなんて!
2017/11/30 21:16
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投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国宝や重要文化財建造物は、厳格な保護措置がとられ、災害などで壊れてしまっても、なんとか修理しようとするが、指定されていない建造物は、所有者の意思で取り壊されることが決まっても、それを覆すことは難しい。
結果、明らかな傑作と評価されるような近代建造物の数々が、二度と見ることができなくなってしまった。
本書は、そんな再見不可能の傑作レトロ建造物の在りし日の姿を切り取った写真集だ。
本書は大きく5つのカテゴリーに分けて建物を紹介する。オフィスビル、邸宅・集合住宅・商店、学校・病院・宗教施設、劇場・ホテル・デパート、公共施設・官公庁舎である。これらは、大きく一般人を受け入れてくれていた物件と資格がないと入れない物件に分けられる。そして、前者により喪失の哀しさが付きまとう。なぜなら、その建物が建っているうちなら、内部を比較的自由に散策することができたわけだから。
建造物が喪失したきっかけは様々。
大規模災害による損傷からの復旧が困難という判断が下されることもあるが、これはやむを得ないこと。残念なのは、企業の論理で解体の反対運動の甲斐なく壊されてしまった事例だ。もちろん、維持管理費の負担は所有者にあり、長年の痛みが万が一の事故を起こしてしまった場合の責任も、所有者は負わされる。それを思うと、第三者が残してくれと運動を起こすこと自体が出過ぎたことなのかもしれない。
そうであっても、石川県金沢市の白雲閣ホテルについては、少し考えさせられた。
昭和12年建築のこの白雲閣ホテルは、国の登録有形文化財に登録されていたという。しかしながら、ホテル経営の悪化により平成11年に倒産。その後、再建のために競売にかけられるも、残念ながら買い手がつかず、平成18年には復旧不可能とされ、文化財登録を抹消、金沢市により解体された。
市民が収めた大切な税金が資金源となるため、じゃあ自治体が運営しますと軽々には言えないのだろう。無論、交付金もそれに足されるが、何でもできるほど潤沢なわけではない。しかし、本件について、解体の他に打つ手はなかったのか。小さな山村なら仕方ない気もするが、あの金沢市だ。
まあ、これも所有者の気持ちや自治体にも事情があるわけだから、やはり第三者がどうのこうの言える話ではない。
ただ残念なだけだ。
都心は見せる顔が様々に変わる。日進月歩とでもいうのだろうか、いつもどこかで大規模工事が進められている。大規模工事の前には、そこに建造物が存在した過去があったかもしれない。東京駅のように過去に戻しましたというのならまだしも、完全に姿を変えてしまうと過去を思うことは難しくなる。表参道ヒルズをみて、同潤会アパートを思い浮かべることなぞ、すっかりなくなってしまったのではないか。
建物は維持管理が大変で、真新しいものを好む気持ちもわからなくはない。しかし、本書にあるかつての名作群を眺めると、喪失による損失の大きさを感じざるを得ない。もう二度と見ることは叶わないのだと、改めて哀しくなる1冊であり、その分、貴重な1冊でもある。
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投稿者:ぴっきーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
写真に使われているところは昔行ったところも結構あり、取り壊されて悲しく思っていたので、こういった形ででも残っていてよかったと思いました。
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時間がたって老朽化していくと
文化財指定か、取り壊しか難しいところですよね
部品や材料の調達ができないこともあるだろうし
メンテナンスに相当の労力を要することを考えると
やっぱり消え去ってしまうしかないのでしょうね
幸い保存されている建物も沢山あるはずなので
自分の足で訪ねていけたらいいな、と思います
先日の綿業会館に行く機会があったのは、本当にラッキーでした
その時代の空気感は、訪れてみないとわからないですよね
この本にあるいくつかは、実際行ったことがあるところもあります
復元されているところもあるけれど、やっぱり心が痛みます
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細部まで見逃さない美しい写真集です。レトロ建築への偏愛に溢れています。美しい外観だけでなく、内部も美しく、写真に切り取られた様々な意匠までが美しい。記憶に残っている大丸百貨店や神戸の中山手教会をはじめ、ここにある全ての建物が存在しないと思うと見ていて切なくなりました。
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烏兎の庭 第六部 11.17.21
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto06/diary/d2111.html#1117
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フランスとかに行くと昔の建築が修復されながら大切に使われていることに感動する。
でも戦後の日本の感覚って
それが失われちゃってるのかも
スクラップ&ビルド
古いもの=カッコワルイ
って思ってるんだろか?
便利さに欠けるからか?
でもさ、イマドキのデザインの方が狙いすぎてカッコワルかったりしない?
初めて大阪に来た時に目にした
阪急百貨店の前にあったコンコース跡
心斎橋大丸のゴージャスな内装
孔雀のステンドグラス、エレベーター、天井の細工
ダイビルのモダンな内装
に感動したのを今でも覚えている
この写真集に収められている建物はもうないんだなあと思うと本当に残念でならない。
著者の伊藤隆之さんがこんなステキな写真で残してくれてよかった。
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すでに取り壊された近代建築の写真集。
自分が知っているのはダイビル、大丸心斎橋店、大阪中央郵便局、東京駅くらいだけれど、東京駅以外は取り壊しが決定した時に心が痛んだ記憶がある。特に大丸心斎橋店はあんなに素晴らしいヴォーリズ建築(内装もね!)なのにどうして……って思った。
日本は地震国で、基本木造建築だから、建物の取り壊しに対する躊躇がないのかな……。
あと、権威のない建築物に対してはひどく冷酷な国だと感じている。それがたとえ重文であっても。
現代の建築物で、後世まで残るものって日本においてはほとんどない気もするし、そういった価値のあるものはない気がする。丸の内や新宿の高層ビル群なんて残らないだろうし残っても別に嬉しくもないなぁ。機能性・経済的利潤・コストを追ってばかりで無機質で、全部同じにしか思えないんだもの。まぁ、別に残すの前提で建ててないのでいいのか。
この本の中で素晴らしい采配で再建された建物が東京駅と歌舞伎座、モダン寺くらいしかないのがぐさぐさくるなぁ。
だからこそ、こうした記録写真や取り壊し前の調査は貴重なのですよね。
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Unlimited
よく、外国は古い建築物が大切に使われながら残っていると言われるけれど、日本の古い建築物が残らないのはなぜだろう。古い寺社とかは残ってるのに。思いきり古いものは守らなければならないと思っているけど、近現代あたりのものは取り壊されて当然と思うのか。
でも、その建築物を管理していたり、所有していたりする人にしてみれば、古くてかなわないから新しくしたいのだろう。傍からわあわあ言ってるのは無責任。お金も手間も自分もちではないのだから。
古き美しき建築物が取り壊されて、どれも同じ表情の建物ばかりになると嘆く節もあるけれど、あと100年経てばその同じような建物が懐かしくレトロチックになるのでは。
写真はどれも美しい。確実にそのビルがあったことを認識している建築物がある反面、確かにそのあたりをウロウロしていた時期があったはずなのに建物の存在に気づいていなかったものも多く、そういう意味ではノスタルジーを感じる資格もない私が、しばし余韻に浸った本。
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取り壊されてしまった建物。丸の内ビルヂング、同潤会アパートなどはきっと風景の一部として目に入っていたのかもしれない。美智子様の実家「正田邸」も物納で今は公園に。
満鉄社員住宅(大連)は初めてみた。
表紙は朝鮮総督府。床は大理石のモザイク模様。
1926(大正15年)建築、1995(平成7年)解体。
建築期間15年。第二次世界大戦後ここで大韓民国の成立宣言が行われる。長く政府の中央庁舎として使用されていたが、1986年に国立中央博物館に転身。が、韓国にとって負の遺産だとして、時の大統領金泳三の命により解体。現在は残骸の一部が天安市にある独立記念館の野外に展示してある。
2016.3.10初版第1刷 図書館