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小池真理子さんの作品を読むのは「望みは何と訊かれたら」「瑠璃の海」「エリカ」に次いで4作目になります。
図書館で借りて読みました。
「虹の彼方」は2006年の刊行ですから新しい作品です。
妻子ある43歳の作家(奥平正臣)と夫ある48歳の女優(高木志摩子)が不倫の恋に落ちるという話です。
この不倫について作者は終始肯定的に描いています。
世間の常識やモラルに対して挑戦的です。
女優が「結婚生活を乱してはならじ、と尼僧のような生活をしているとは考えられなかった」と書かれています。
志摩子は30歳近くの頃、妻子ある男と恋に落ち、身ごもります。
このとき、父親がショックで熱を出して寝込みます。
この父親に対して娘の志摩子は冷たい態度を取ります。
このときは流産に終わり、志摩子はその後別の男と結婚します。
志摩子の公演の千秋楽のカーテンコールの様子は華やかに描かれています。
演劇人たちの生活ぶりも良く描かれていると思います。
作家である正臣は自宅とは別の個人の仕事場を持っています。
ここで志摩子と逢瀬を重ねることになります。
このことについて、30年近く前に読んだ渡部昇一の「知的生活の方法」に、こういう仕事場で週刊誌を騒がせた事件なども起こっているので、一つ屋根の下に仕事場を持つのがよいと書かれています。
自宅と別の仕事場を持つことは誘惑が多いということです。
これを思い出しました。
正臣の妻真由美は夫の不倫に気づき、無言電話をかけたり、インターネットで浮気旅行の検索をしていたところを見つけます。
真由美の心理描写は細かく描かれています。
二人の関係は徐々に狂気じみてきます。
常識の一線を越えます。
理性を失い「恋愛至上主義」に陥ります。
正臣と志摩子の関係が深まっていく中で、志摩子は病気の夫を置き去りにして正臣に会いに行きます。
正臣は病気の子供を置き去りにして志摩子のもとに行きます。
週刊誌に関係をすっぱ抜かれた正臣と志摩子は上海に逃避行をします。
21日間を中国で過ごします。
作中には中国礼賛も見られます。
生きていくための強さがある、エネルギーが日本とは違う、これからどんどんのし上がる、などとあります。
「瑠璃の海」に見られた死への憧れや賛美も描かれていますが、二人は最後は死なずに戻ってきます。
余韻のある終わり方です。
二人は日本に帰りますが、それぞれ離婚して二人が一緒になりそうだという予感を感じさせて幕になります。
読後感としては微妙なところもあります。
小池真理子さんはこの作品で何を描きたかったのだろうか、極限状況に追いつめられた男女の心理を克明に描くことには成功していますが、不倫の恋や破滅的な愛を肯定する作品になってはいないかとも思います。
ミクシイレビューの評価は厳しいものが多いようです。
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図書館の本
内容(「BOOK」データベースより)
間に合ってよかった…。女優の志摩子と作家の正臣。48歳と43歳の女と男が出会い、恋に落ちる。それぞれに家庭があり、名声がある。この恋が、どれほど周りの人を傷つけるのか、世間の非難を浴びるのか。わかっていながらも、無防備な子供のように愛し合うふたり。遊びの恋ならどんなに楽だろう。もうもどれない、もう一人では生きていけない。切なさが胸をうつ第19回柴田錬三郎賞受賞作品。
珍しく読みにくくて、だめでした。
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48歳の女優志摩子と43歳の作家正臣は、舞台『虹の彼方』の主演女優と原作者というかたちで出会う。家庭も仕事も名声もある2人だったが、すべてを捨ててまで恋に生きようとする…。
自分のすべてを傾けて恋に溺れる2人はまるで初めての恋をしているように見える。全編を通してその一途さには共感できたが、なぜあんな逃避行が必要だったのか、それが分らなかった。
☆柴田錬三郎賞
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気づいたこと、私は不倫物に感情移入できない。そしてそんな感情移入出来ない話でこの長さ、読むのつらっ!
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序章と終章以外は,志麻子,正臣という2人の主人公の名前が章の見出しになっている。
読むのが辛かった訳ではない。
志麻子,正臣と読むと,ちょっと休憩したい。
同じところをぐるぐる回っているような感じ。
読後感として,赤川次郎の「杉原爽香」シリーズが思い浮かんだ。
赤川次郎の理想の女性像に対して,男性のだらしなさ。
小池真理子理想の男性像として,どんな状況でも自分のことに一途になって欲しいという気持ちが垣間見える。女性の行動は生き方としての美学が赤川次郎と違う。
何が美しいかを主張したくて,長くなっているのだろうと推測した。
辛くはないが,ぐるぐる感が残った。
そうか,志麻子,正臣という2人の主人公の名前が章の見出しになっているから仕方が無い。
中国での筆談で,「有没有落花生?」「全工程多少?」「冷房小」は通じたとの話は面白い。
解説を伊集院静が書いている。
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読み進めていく中で、きっとラストは・・と予想していたのが良い意味で裏切られた。それにしても凄まじい恋。自分には絶対ないなあ。
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「無伴奏」「恋」「欲望」の3作品を読み、すっかり小池さんにはまってしまいました。
読了した作品が少し古い時代の作品だったので、最近の作品が読みたくて不倫ものはあまり好きではないけど、読み始めた。
女優と小説家の恋ということで、現実味がなくて、そこが逆にロマンス小説として美しい情景描写とともに楽しめたのだと思う。
志摩子、正臣と交互にテンポよく視点も変わるのでぐいぐいと読み進められました。
よくあるDV夫など出てこないし、お互いの配偶者は全く落ち度もない、だからこそ罪悪感に苛まれたり、馬鹿だと自覚しながら本気の恋に落ち、引き返せなくなっていく2人がいっそ潔いと感じる程だった。
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小池真理子さんの小説は読み応えがある
不倫であっても主人公の味方になって行く末を応援したくなってしまう
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おもしろかった。ただ、わざわざ逃げなくても、これだけ想いあっているのなら、もう少しスマートな方法でいっしょにいられたのでは。と思ったり。どれだけの困難があってもいっしょにいると決まっているのなら、さいしょからそうした方が良かったのでは。逃げる事を納得できる理由が読んでいて見つからなかったかな。わたしだったらそうするな、と。
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テーマは不倫というありきたりかもしれないけれど、真理子さんの何とも言えない比喩表現がふんだんに使われていてとても読み応えがある作品でした。
今この瞬間の持続さえあれば、それでよかった。
が、追い詰められていることの表れすぎてとても苦しくなった。
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別に不倫を美化するわけでもないし、肯定する気もないが、本作における志摩子と正臣の、常識や世間体に対して真っ向から抗う「本気」の姿勢には、或る種の潔さが窺え、四十路を過ぎて尚、まるで10代の若者みたいにストレートな気持ちで人を愛せるふたりがとても羨ましく思えた。彼らのベクトルが、死を選ぶといったネガティヴなものではなく、ポジティヴな生のパワーに満ち溢れていたのが特長的で、それを象徴するかのようなラストシーンは印象深い
密かな関係が段々と露わになり、やがてお互いの家庭へと波及していく様子はとても生々しい。志摩子の存在に惹かれ溺れる正臣の言動が実にリアルで、小池真理子が男のサガを描ける数少ない作家であることを改めて実感させた