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・人々の集団もコミュニティと同様に、個々の構成員が持つ知性とは別の、集団的知性を有している。さらにこの集団的知性は、IQが個人のパフォーマンスを予測する際に重要であるのと同じように、集団のパフォーマンスを予測する際に重要な要素となる。集団のパフォーマンスを上げると多くの人々が一般的に信じている要素(集団の団結力やモチベーション、満足度など)には、統計学的に優位な効果は認められなかった。集団の知性を予測するのに最も役立つ要素は、会話の参加者が平等に発言しているかどうかだった。少数の人物が会話を支配しているグループは、皆が発言しているグループよりも集団的知性が低かった。その次に重要な要素は、グループの構成員の社会的知性(相手の社会的シグナルをどの程度読み取れるかで測定される)だった。社会的シグナルについては、女性の方が高い読み取り能力を持つ傾向にあるため、女性がより多く含まれているグループの方が良い結果を残した。
・集団的知性は、個々の構成員が持つ知性とはほとんど関係ない。個々の能力よりも優れた、集団で問題を解決するという能力は、個人の間のつながりから生まれる。特に皆から多様なアイデアを引き出し、共有を促す交流のパターンと、アイデアを精査してふるい分け、合意を形成するプロセスがその中核となる。
・ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載した論文「チームづくりの科学」で詳しく解説している・・。チームの生産性と創造的な効果に最大の影響を与える要因は、対面でもエンゲージメントのパターンと、企業内で行われる探求のパターンであることが多いと判明したのである。
2008年のバンクオブアメリカのコールセンターでの研究で、同じ時間に休憩を取るようにしたら生産性が上がった。
・生産性を左右する最も重要な要素は、従業員同士が交流に費やした時間の合計と、エンゲージメントのレベル(職場の輪に皆が参加しているか)であることが判明した。この2つの要素を組み合わせるだけで、金額換算された生産性の変動の1/3を予測することができた。
・あるグループにおける例。マネジメントグループは一部のグループとは高いエンゲージメントを実現しているが、まったく交流していないグループも存在する。グループ間交流を行なっていないところもある。伝統的なトップダウン型の組織では、最悪の場合こうした交流パターンが生まれてしまう。
・昔ながらの官僚型組織は仲間同士の間で生まれるネットワーク型のインセンティブにはほとんど対応していないため、従業員がお互いに助け合おうとしたり、ベストプラクティス(何かを行うのに最も良い方法、手法、事例)を学ぼうとしたり、高いパフォーマンスを発揮しようとしたりといった傾向が生まれにくい。また従業員と経営陣の間にエンゲージメントが存在しないため、お互いに学び合うチャンスが生まれず、ビジネスプロセスが硬直化して非効率なものになってしまう。
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・ 社会物理学はいかに人間の行動がアイデアの交換によって促されるのか(人々がどのようにして戦略の発見・選択・学習を協力して行い、行動の調整を行うか)を研究する学問である
・ 最善の学習戦略は、エネルギーの90パーセントを探求行為(うまく行動していると思われる人を見つけてそれをマネする)に割くことだった。そして残りの10パーセントを個人による実験と考察に費やすのがよいという結果になった
・ 現代社会は個人を重視する傾向にあるが、人間の意思決定の大部分は、仲間たちと共有する常識や習慣、信念などによって形作られる。そしてこうした習慣は、他人との交流を通じて形成される
・ スターはメンバー全員がチームの一部であるという意識を持たせることで、均一で調和したアイデアの流れをチーム内に生み出し、誰もが新しいアイデアに前向きに取り組めるように十分なコンセンサスをつくろうとしていた。
・ 人々が他人と協調して同じ行動をしている場合、共同作業の報酬として、体からエンドルフィンが分泌される
・ エンゲージメント(チーム内のメンバー全員の間で繰り返し共同作業が行われている状態)の存在が社会福祉を向上させ、ビジネス上の関係を成功へと導くような信頼に値する協調的姿勢を促進する(グラミン銀行は借り手が5人一組になり、互いに返済を助け合うことをルールとすることで返済可能性を高めた)
・ 個人のインセンティブよりソーシャル・インセンティブ(今月の最優秀社員)のほうがはるかに効果的
・ エンゲージメントには交流が必要
・ 最大のパフォーマンスを発揮するグループの特徴
1) アイデアの数の多さ。無数の簡単なアイデアが、多くの人々から寄せられる
2) 交流の密度の濃さ。発言と、それに対する非常に短い相づちのサイクルが継続的に行われ、アイデアの肯定や否定、コンセンサスの形成が行われている
3) アイデアの多様性。グループ内の全員が数々のアイデアに寄与し、それらに対する反応を表明しており、それぞれの頻度が同じ程度になっている
・ カリスマ的仲介者は人々の間を熱心に歩き回り、短時間だが熱意に満ちあふれた会話を通じてエンゲージメントを行い、花粉を集めるミツバチのように行動する。あらゆる人々、あらゆる物事に対して純粋に興味を抱いている。彼らが真に興味を持っているのはアイデアの流れ
・ 報酬を幅広い形で提供することで、より多くの人々をチームに参加させることができた
・ ストレスを軽減したいという意識が新しい交流パターンの生成を促す
・ 現在の都市システム設計は、金銭的なインセンティブに大きく頼っている。富裕そうに有利で貧困層が行える探求の量を減らしてしまう
・ 探求の増加は短期的には収入の増加にはつながらない。収入の増加が探求の増加をもたらしている。おそらく、人は裕福になると自信を持ち、新しい社会的機会を探求しても安全だという余裕が出るからだろう
・ 様々なコミュニケーションチャネルと気分の関係を見たところ、��分が非常に良い、あるいは非常に悪い日には、人々はメールやメッセンジャー、SNSといったチャネルは鮭、対面でのコミュニケーションや電話をより多く行っていることがわかった、慰めが必要であったり、特別に幸せな気分を感じていたりするときには私たちはより情報豊かな交流の手段を求める
・ デジタルメディアを通じたコミュニケーションの大部分が現実世界での交流から生まれているが、一度それがはじまると、たとえその後離れた場所にいようとデジタルメディア上での上流が信頼関係を強化することになるのだ
・ アダム・スミスは、「見えざる手」は市場メカニズムがコミュニティ内の仲間の圧力によって制約を受けることから生まれると考えた。しかしその後私たちは、市場メカニズムの方を重視し、彼のアイデアの一部である「仲間からの圧力」の重要性を忘れてしまった
・ いいアイデアの探求はデジタルの世界で起きるが、コンセンサスを求めるエンゲージメントは、主に対面での交流を通じて進むだろう
・ 分散型リーダーシップ:意思決定を組織内で最もランクの高い人物ではなく、最も判断に適した人物にゆだねることで、組織はより堅牢になり、混乱から早期に立ち上がることが可能なのだ
・ 周りへの小さな親切を通して信頼を得たい、という人間の隠れた本能を促すシステムを創れば、300万人ものほとんど見知らぬ人々が、8時間という短時間に即興的に協力し合い、グローバルな問題を解決できる
・ パーソナルデータストアにより、ユーザーが自分のデータのための最高のサービスとアルゴリズムを手に入れられる市場が可能になる(データの所有権を各個人にし、それぞれが提供先を決定する)
・ 新しく発見された行動が、速い思考の「習慣や直感のレパートリー」のひとつとして採用されるかどうかは、その行動が仲間同士のコミュニティの中で長年培われてきた常識と一致しているかどうかとの関連が大きい(これまでのコンテキストに左右される)
・ 影響:ある存在の状態は、それが所属するネットワークにおける近隣の存在の状態からの作用を受け、その状態に応じて変化する。ネットワーク上の個々の存在は、それぞれ個別に定義された、ほかの存在に対する影響力を持つ。またそれぞれの相互の結びつきの強さも、この影響力の大きさに応じて、大きくなったり小さくなったりする。「仲間の行動に接触した量」や「社会的絆の強さ」の測定を結びつけることで、ある個人が特定の行動をするようになる可能性の有効な予測を行うことができる
・ 遅い思考の場合、たった1回新しいアイデアや情報に触れただけでも、行動をかえるのに十分な場合が多い。しかし私たちの行動の大部分が、速い思考によって引き起こされることがわかっている。速い思考では通常、何らかの新しい行動を自分でもやってみようと思うようになる前に、その行動を別の人が行って成功しているという「お手本」に何度か接する必要がある
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書評
『ソーシャル物理学』が語る、組織や都市をクリエイティブにする方法とは? | Biz/Zine(ビズジン)
https://bizzine.jp/article/detail/1078?p=2
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vol.328 ビックデータの権威が説く。良いアイデアはいかに広がるのか?新しい科学。http://www.shirayu.com/letter/2015/000664.html
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これからのリーダーが読むべき優れた組織論。「仕事において生産性を上げ、成功するためにはどうすれば良いのかという重要な情報は、コーヒーコーナーや休憩室で見つかる可能性が高い」
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ソーシャルネットワーク下での人の行動を,数学的モデルで説明したら,うまくいった.
経済的インセンティブとは異なるソーシャルネットワークインセンティブを与えることで集団へのチューニングも可能で特定の行動などを促すこともできるようになりました.という本.
また,「つながりすぎた社会」とも言える現代の特徴や危険性も.
・人の行動は集団から受ける影響の避けられない.
→情報被曝量マックスの現代では,接する情報源を積極的に取捨選択する能力が求められるだろう.SNSで誰をフォローするかとか
・ベル・スター研究.「スター」(花形)の研究者がやっていたことは「他の研究者にもビジョンや行動計画などを自覚させること」→組織で他者を動かそうと試みる時に使えそう.
・レッドバルーンコンテスト
・集団的知性の高さは,よく言われるかつ想像しやすい「団結力,モチベーション,満足度」ではなく「会話の参加者が平等に参加しているかどうか」→これもすぐに使えそう.
一般的なビジネス本と同じノリだとなかなか頭に入って来ず,理解しながら読み進めないと身につかない.じっくり読みなおさねば
https://www.sense-network.co.uk/
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ジャケ買い、ならぬタイトル買いで。ただ、「ソーシャルな物理学」だと思いきや「ソーシャルを物理学」する本でした。すぐ誤解に気づきましたが、止められない止まらない状態で最後まで。10年以上前に読んだ『「みんなの意見」は意外に正しい』が、ここまで来たか、と思いました。それは「集合知」というテーマから「集合知イノベーション」というテーマへのアップグレードです。それを支えるのがテクノロジーの進化で、非常に実務的な本であると感じました。「アイデアの流れ」「エンゲージメント」という土台の考え方から「アイデアマシン」としての組織について、それが「データ駆動型都市」を生み出し「データ駆動型社会」に至るという章立ても論文のようにシンプルです。コネクトカー、コンパクトシティ、医療データなどなど今、企業は街作りについての社会実験に多大な投資を始めていますが、そのムーブメントのベクトルの理論的支柱が本書であるような気がします。間違えて買って、よかったぁ…
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社会物理学の紹介本であり、アカデミックなデータ分析。矢野和男氏の「データの見えざる手」と高い世界観。
最近だとバラバシ・アルバートがやっていた研究も近しい。
著者は、社会に起こる様々な現象をソーシャルネットワークと進化のダイナミクスにより紐解く。
・ソーシャルネットワークの中をアイデアがどのように流れていくのか
・社会規範がどのように生まれるのか
・複雑性はどのようなプロセスから生まれるのか
■多くの人が抱く誤解
「最良のアイデアを持っているのは最も賢い人だ」と思うかもしれないが、実際はそう単純ではない。最良のアイデアを持っているのは、他人のアイデアを最もよく取り入れることのできる人なのである。
■社会物理学とは何か。
社会物理学とは、情報やアイデアの流れと人々の行動の間にある、たしかな数理的関係性を記述する定量的な社会学である。アイデアが社会的学習を通じて人々の間をどのように伝わっていくのか、またその伝播が最終的に企業・都市・社会の規範や生産性、創造的成果をどうやって決定付けるのか、を解釈できるようにする。
■ハーディング現象
トレーダーたちのSNSを解析したところ、ある事実が発覚した。それは、ソーシャルネットワーク内において社会的影響力は非常に強いということ。メッセージに反応して互いの行動に過剰反応して、結果的に株の売買で全員が同じ戦略をとりやすくなる。
→社会物理学的な解決策は、新しい戦略の普及が遅くなるようソーシャルネットワークを変化させること
■ 重要な2つの概念
・アイデアの流れ、いかにアイデアがソーシャルネットワークを伝わるか。アイデアの流れの過程は「探求」と「エンゲージメント」に分けられる。
・社会的学習、新しいアイデアが習慣となる過程で生じるもので、学習が社会的圧力によって加速したり形作られたりすること
■ 社会物理学では、人間の内側にある認知の過程までは追わない。本質的に確率的であり、人間の思考がいかに形成されるかを検討外とすることで生まれる不確実性を持つ。
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学びの多い本だった。ソーシャルインセンティブを活用することで、個人への経済インセンティブよりも人の行動を変容できるというのは、言われてみればそうだが目からうろこ感があった。また、集団としての知性は、メンバーひとりひとりの能力よりも、集団内の交流の多さ・多様性で決まるという話も驚き。
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通常の物理学は、エネルギーの流れがどのように運動の変化をもたらすかを理解する学問だが、ソーシャル物理学は、アイデアや情報の流れがどのように行動の変化をもたらすかを考察するものだ。
「これを伝えたい」として書かれたfacebookの情報よりも、どこをどう動いたとか誰にいつ電話したとか、どこでカネを使ったとか、そういう「デジタルデータのパンくず」にこそ着目し、社会をよりよくしてみよう、というもの。
たとえば、インフルエンザ、という言葉の検索傾向で、流行地域が予測できるかもしれない。例えば、自動車の運転中に、ここはみんな急ブレーキしているよ、という警告ができるかもしれない。
18世紀的概念の「市場」よりも、「交換」のほうが人間社会にはむいている、ということも説く。その本質に社会をどうデザインできるか? 富の流ればかりが注目されるが、アイデアの流れが重要だ。
社会物理学がデジタルパンくずをきっちり拾って検証しつづけていくと、そのビッグデータによるデータ駆動型社会がやってくる。反対する人もいるだろう。けれど、感染症に早く対応できたり、交通事故が減ったり、あるいは金融危機が予測できたりすれば、それはいいことではないか。
とにかく、アイデアの流れが重要だ。ひとりでデジタルパンくずを探していても、たぶん答は見つからないが、そういう隘路に入ってみたいなあとも思う。反社会的物理学。