紙の本
こんな国と戦ったのか
2016/07/18 12:04
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あうら - この投稿者のレビュー一覧を見る
焚書する人、戦地へ本を送る人。ともに人類だ。
1945年にこんなに違いが出たのはなぜか。
日本は 一億火の玉!玉砕!と叫んでいたんだから
本を持っていたら戦地ではピンタものだろう。
本が持つ力をまだ日本人は知らないと思う。
暇つぶしだって娯楽だっていいじゃないか。
それが生きるということなんだから。
本を作る人、整える人、渡す人すべてに
あなたの仕事は意味があることだよと言っている。
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図書館で借りる。
第二次世界大戦中、アメリカが行った「兵隊文庫」について書かれた図書。当時の兵士のコメントや雑誌の引用が多めで兵隊文庫が説明されている。戦場は気晴らしや娯楽がないので、兵隊文庫が兵士からとても人気だったのははじめて知った。
あと復員した兵たちが兵隊文庫や復員兵の支援法によって大学の門をくぐり優秀な学生となっていったという話はすごい…
図書館や書物が様々な人の可能性を広げた例になるのかな…と思う。
戦争という特殊な状況だけど…
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これまではあまり知られていなかった第二次世界大戦の別の側面を示している良書だと思う。訳者の訳も読み易い。
ドイツが行った焚書とアメリカが行った「本は武器」という思想に基づく戦時中の読書活動、コインの裏と表のようなものを感じる。何が正義なのか、自由とは何なのか、そもそもコイン(=戦争)そのものに正義を論じる余地があるのかどうか、色々な意味で考えさせられた。
本が戦争の、ここでいう思想戦の一助になったことは複雑な気持ちにもなるが、思想の自由を守るうえで必要なことであったことは大いにわかる。「自由と民主主義」を標榜するアメリカらしい活動の展開だ。
兵士に供給し続けた「兵隊文庫」により、兵士の教養は維持でき、戦後の学習意欲の喚起、職業選択など、社会復帰の支援につながったことは、まさに読書という行為の尊さ、本の持つ力を示す内容だと思う。
本を読めば色々な思想に出会うことができる。幅広い考えを受容できなくなってくると国も人もいよいよ危険水域だと思う。偏狭的なナショナリズムに見舞われ、各国が置かれている情勢が厳しくなってきた。
偏った意見をSNSでひたすら主張する人も目についてきた。こんなきな臭い世の中において、これからも読書が有用な作用を起こし続けることを期待したい。
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人は「本」を読む生き物である
この言葉に象徴されてしまう以上のノンフィクションでした
第二次世界大戦の最中に
「戦場」から消されたナチスの焚書の事実
それとは全く対照的に
「戦場」に送り込まれ、切望されたペーパーバ゙ックスたち
「生と死」の瀬戸際で読まれた「本」の尊さが
ひしひしと伝わってくる
「本を読むこと」が単なる「娯楽」を遥かに越えて
「本を読むこと」が「生きること」になっていた
そんな史実がここにある
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第二次大戦で兵士達の精神的支えになった本の話。アメリカでは第二次大戦で出征する兵士が増えると共に、戦場に古本を届けようという市民活動が盛り上がる。その後、戦場での利便性を考慮し、コンパクトで簡単にポケットに入り、どこでも読める専用の本が供給されるようになる。本の供給にあたっては、有害図書を排除する等の選定基準が設けられ、厳しい状況下にある兵士達の精神に与える影響が考慮された。戦場での本の供給は、兵士達のリテラシーの向上をもたらし、戦後の復興において彼らの能力が社会に貢献するようになる。
因みに米軍の兵士達は戦争の機密管理上、日記を書くことが許されていなかった。一方、日本軍兵士は日記を書くことを奨励されていた。米軍兵士は戦闘の合間に本を読んでリラックスし、本が読めない日本軍兵士は自分を振り返り反省する。読書という娯楽一つを取っても、両軍の姿勢には大きな違いがあったようだ。
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とてもいい、とてもいいんだけれど、どうしても、”戦地の兵士に本を送る”状況の前にその状況を作らない努力が先でしょう、と思ってしまい、なんとなくモヤモヤしてしまう。
本の力の大きさを改めて感じるけれど、本はおうちや図書館やカフェで読もうよ、戦地で読まなきゃならないような状況を止めようよ。。。
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第2次大戦時、米軍が前線の兵士たちに配給した図書を巡るノンフィクション。
主に本を供給する側の視点で描かれている。
終盤の復員の問題で、なるほどね、と思わされた。
1945年の戦争終結とともに復員してくる兵士たちを、社会が如何に受け入れていくかという問題を、アメリカがどう考え、なにをしたかということである。
兵士たちに高等教育を受けさせる権利を与え、労働者階級に障壁となった大学等への進学という壁を取り払い、人材の再教育を行っていく。
ただ、この対象に女性と黒人の復員兵は含まれていなかったというが、当時の社会観念的なものを反映しおり、自由な社会の二面性を感じさせられた。
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第2次世界大戦時、アメリカは戦地へ書籍を送り続けた。「兵隊文庫」として、携帯しやすいように、読み易いように、特別にあつらえた支給品だ。その他にも広く国民から書籍の寄付を集め、戦地へ送り続けた。
戦争映画では時間を持て余した兵士たちは家族からの手紙を読んだり、カードゲームに興じたりだが、本書を読む限り、かなりの時間を読書に費やしていたようだ。小説等のフィクションはもちろんだが、復員後を見越して職業訓練的な実用書もラインナップされていたそうだ。
そういった初めて知る史実にも驚くが、何より印象的だったのは、戦場で本を読むことにより、人間性を取り戻したというくだりだ。以下引用。『兵士は人を殺す訓練を受け、前線では筆舌に尽くしがたいほど残忍な行為を目の当たりにした。しかし、「私たちの軍の兵士は、本を読むという行為をしているのだから、(まだ)人間なのだ、と思うことができました。』
ショックだった。本の力と同時に、無力さを知ることになった。
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ノンフィクション。
第二次大戦中、ナチスは焚書で一億冊の本を葬ったが、アメリカはさまざまなジャンルの本一億四千万冊を前線の兵士に送り続けた。兵士はそれによって行軍や待機の退屈と焦燥から気を紛らわせ、世界情勢や戦争の意義を学び、残酷で悲惨な日常の中で精神を保ち続けた。
最初は全国から寄付された本を、その後は「兵隊文庫」という軍服のポケットにぴったりのペーパーバックを作って終戦まで戦地に送り続けた図書作戦の歴史が淡々と描かれている。兵士は行軍の際も本を離さず、砲弾の飛び交う塹壕の中で読書を続けて正気を保ったという。
母国が戦場になっていないとはいえ物資の乏しい中でこの作戦をやり遂げた国力もすごいし、兵士に幅広い知識を授けることによって士気を高めるやり方もすごい。戦争末期には復員後のことを考えてさまざまな職業の実用書を入れたりもした。読書習慣が身に付いた兵士が復員後に大学へ入学して新たな知識層を形成したという。
ノンフィクションなので派手な盛り上がりはないが、こうした事実を全く知らなかったので感動した。戦争の是非は置いて、この当時のアメリカはかなり素晴らしい国だったと思う。
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1933年ナチス・ドイツは最も大きな愚行を行った。焚書、ゲッペルスの指示で、非ドイツ的な思想で書かれた本を焼いたのだ。これは何度も行われ、町中や学校においても、多くの本が運ばれて来て炎の中に投じられた。ヒトラーが「我が闘争」という本を書いて、自らの思想を国民に訴え、国民を動かし、政治的に成功したにも関わらず、今度はその本を焼くことで、都合の悪い思想を抹殺できると考えたのだ。
これにアメリカが真っ先に対抗した。
アメリカ軍では戦地で戦う兵士たちが活字に飢え、本を読みたがっており、読書が戦地のひどい環境や、苦しい戦いのことを少しでも忘れさせてくれるため、士気の高揚に役立つことを知った。戦地において文字に親しむこと、それがナチス・ドイツに対抗する力になることがわかったのだ。
初めは戦地の兵士たちに送る書籍の寄付を集めることからはじまった。しかし、普通のハードカバーがかさばり、ただでさえ荷物の多い兵士には適さないものだとわかると、兵士の胸ポケットや、尻のポケットに収まる大きさのペーパーバックが開発された。それは「兵隊文庫」と呼ばれ、無料で兵士たちに配られることになった。
兵隊文庫はたちまち兵士たちの間で人気となり、兵士たちは塹壕の中で読み、負傷して横たわる野戦病院のベッドの上で読んだ・・・。
第二次大戦におけるアメリカという国の懐の深さ、徹底ぶりをまた知る。
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一気に読み終えた本
アメリカの兵士に書籍を送る活動が最初に行われたのは南北戦争の時だった.
第二次世界大戦、1940年にはその本の数はずっと少なくなってた。そんな中、すべての訓練基地に図書館と娯楽施設を建設するという計画を立て、その計画を大きく動かしたのは、レイモンド・L・トラウマン中佐だった。
1942年国家防衛図書活動が立ち上げられ、1947年に兵隊文庫プロジェクトは終了した。この間1億4000万もの本が米軍の兵士に届けられた。
戦争中の兵士は、娯楽が必要であり、その有用性は政府も認めていた。このような中で兵隊文庫は大きな役割を持つことになる。あるものは家族にさえ示せなかった気持ちを本の著者に手紙で送り、著者から返信が来たり、蛸壺(塹壕)の上を戦車や銃弾の飛び越える中本を読むことで精神の安定をはかったりすることができた。
また復員後の兵士には大学への進学が許され、彼らは熱心に勉強し、他の学生に平均点をあげる奴と揶揄されるほどだった。これは兵役中に読んだ本の影響が大きかった。
一方、ドイツではヒットラーによる“書物大虐殺”が行われ、多くの本が灰と化した。ヒットラーは読書家で、本が及ぼす影響を知っていたからだとされた。
本を読む時代・環境でその感想が違ってくる。いわゆる名作とよばれる本はどのような環境にあっても感動や感銘を受ける本なのだろうと感じた。又同時に本が作られ、どんな人たちがその本を読み語り継がれてきたのか――背景を知ることも重要だと感じた。
第7章には日本の戦争が書かれており苦しかったが、兵隊文庫が兵士に対しどんな本がほしいかという、ご意見募集のくだりが書かれており救われた(引用参照)。
この本を読んで知らないことが多々あるのを知った。ナチスの本の焼却、アメリカの世界各地への派兵、本国復員兵士の処遇、日本の兵隊文庫など。自分の無知さに少し凹んだ。
改めてこの本を見てみて、表題の文字列が逆三角形になっているのに気がついた。きれいだなと思う。
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http://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/373e528bd46313f76e2b5a16b12dfe77
http://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/5643e8fb8e21c65cce442a4757af13e8
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第2次大戦中にアメリカ本国から最前線で戦う兵士たちへ向けて送られた本について調べられた労作。
特に、「兵隊文庫」と言われる、兵士たちのためだけに編集された本は、アメリカの出版のあり方にも大きな影響を与えたといわれる。
「戦場のコックたち」(深緑野分)にも出てくる「兵隊文庫」。その「兵隊文庫」がどんな経緯でできたもので、どういうものだったかがわかった。
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第二次大戦中、米軍には兵隊文庫があったという。
ナチスの焚書と対局にあるような体制。現在のペーパーバックの普及にもなったという。
米国って、いろいろとすごいなあ。連合国の中でも特殊だったようです。
ともあれ、対日本軍の戦いは米国にとっても過酷だったようです。
いろいろと思いを馳せる本でした。
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第二次世界大戦。それは各国の武力同士の衝突であり、そしてもうひとつ。思想と政治、社会、経済、精神の戦いでもあった。
ナチスドイツは大戦終了までに焚書と発禁によってヨーロッパ中から一億冊以上もの書物を消し去り、憎悪と荒廃をもたらした。一方アメリカでは、国民から寄贈された書籍や、新たに発行したペーパーバックを世界中の戦地に送り続ける図書運動が展開された。
ヨーロッパ戦線、アフリカ戦線、太平洋戦線。戦いに次ぐ戦いの中で、米軍兵士たちは、読書に慰めを見出す。
戦友を失い、自身も負傷や病に倒れ、そうでないものは頭上で砲弾が飛び交うなか、塹壕で泥まみれとなる日々。故郷の記憶は遠く、家族の顔も思い出せずに、戦場で心を擦り切らせた若き兵士たちが書籍を開けば、そこに故郷を見出すことができた。
書籍は思想や知識の宝庫であり、それが兵士、弾丸、航空機から原子爆弾まで投入された大戦の、もうひとつの武器となった。戦い続ける兵士の心を支え、平和を願う心を育てた。かくも大規模に展開されながら、戦後には忘れられた “図書作戦”の全貌、本が持つ力に光を当てたノンフィクション。