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読了。内容としては中国に詳しい人が居酒屋談義をおこなっているような感じか。マニア?には少し物足りないかもしれないが、ところどころ調べてみたくなる事象について書かれていた。ややところどころやや日本や台湾寄り過ぎるコメントも見受けられるように思う。。
P.23
チベット侵攻は、中国共産党による「侵略」そのものだ。ただ、対外的にはそうは言えないので、その大義名分はコロコロと変わる。最初は「帝国主義者からのチベットの解放」だったが、その後「封建的農奴からのチベット人民の解放」という具合に。
P.30
「新疆」という漢字は中国語で「新しい領土」という意味で、明らかに中国側の視点から見た名称のつけ方だ。(中略)ウイグル人の祖先は、日本の平安時代ごろに「天山ウイグル王国」を建国していた。その後、モンゴル人の元王朝と満州人の清王朝の支配下に入り、名目上では属地であるが、実質的にウイグル人の王様が直接統治を続けていたので、本当の意味で「自治」が行われていたのである。清王朝滅亡後、中国国民党による中華民国になった頃、漢民族の軍閥による一時的な支配を受けたものの、圧政によって革命が起きたのちの1933年にホジャ・ニャズアジ大統領の式の下、「東トルキスタン・イスラム共和国」を建国した。国旗を制定し、新聞と貨幣が発行されるなど、国として必要な準備ができていたが、ソ連の軍事介入であえなく崩壊してしまう。
ソ連はその後、北モンゴルの独立と満洲国の権益を引き換えに東トルキスタンを再び中国国民党に売り渡した。49年、国共内戦を制した中国共産党の人民解放軍に侵攻され、あえなく中華人民共和国の支配下になってしまったのである。
P.92
せっかく大学を卒業しても就職できず、北京郊外の安い場所でシェアして集団で生活している人たちのことを「蟻族」、仕事はあっても稼ぎが悪く、日の当たらない地下の安い部屋をシェアして集団で生活している、蟻族よりもお金がない人たちを「鼠族」、そして不動産バブルが弾けて仕事が何もなくなった人たちのことを「モグラ族」と言う。
P.124
中国共産党は、結党の時は「中国ソビエト共産党」と、堂々と売国をアピールするような名前だった。さらに、設立した臨時政府は「中華ソビエト共和国臨時政府」と、なんとソ連の属地であることを認めるようなネーミングであった。等の成り立ちから見ればおのずとわかるが、中国人にしてみれば極めて売国的な政治結社であり、基本的に最初からソビエトを中心としたコミンテルンの手下だった。いつも旧ソ連の指示を仰いでは、出された指示通りに動いていたのである。
P159
台湾を代表する高山茶が、最近、中国大陸から買い占められるようになった理由は、中国人が近年になって上質で安価な台湾茶に出会い、業者が儲けの匂いを嗅ぎつけたらからにほかならない。美味しい台湾茶が中国人に大人気になったため業者が大量に買い漁り、中国の富裕層や海外向けに法外な値段をつけて売り、莫大な利益を得ているのだ。(中略)中国で台湾のお茶が人気になって以降、高山茶は台湾市場への供給量が減少し、出回らなくなってきたため、高山茶の相場も軒並み上がった。(中略)台湾では、自国で流通する台湾さんのお茶の量が大幅に減ったので、東南アジアから大量にお茶が輸入される始末である。ベトナムやインドネシアに台湾のお茶の苗を持ち込み、台湾の栽培技術と製茶技術を導入して大量生産されているお茶が、対話のお茶の市場に流れ込むようになったわけだ。
P.221
「太平天国の乱」(1851-64年)という空前絶後の内戦は、外国との戦争ではないのに、すさまじい数の死者を出したことで、史実をきちんと知る常識ある中国人は恥じているぐらいである。
太平天国の乱では、フランス革命(死者数489万人)やアメリカの南北戦争(死者約62万人)などとは桁違い、比較にならない規模の殺戮が起きた。14年近くもの間続いた大きな反乱で、死者は推定5000万人とも8000万人とも言われている。
1850年の中国の人口は約4億人。太平天国の乱では「全人口の5分の1が死亡した」と推定されているので、死者数8000万人という計算は正しいことになるだろう。
P.240
興味深いのは、日本では中国の各時代に入ってきた漢字の読み方や使用方法をほとんどそのまま保存してきたことである。そのため、同じ感じでも読み方のパターンが多いのだが、漢音・唐音・呉音・宋音、さらに日本独特の訓読みや送り仮名、慣用音まであり、それらが残って現代まで伝えられている点にも驚くしかない。
例えば「明」という漢字は、呉音では「ミョウ」、漢音では「メイ」、唐音では「ミン」と読む。訓読みだと「あけ」や「あき」、送り仮名を付けて「明ける」となる。
P.258
「中華思想」とは、簡単に言うと、中国的な「価値感、人生観、国家観、世界観」の総称ということになろう。中国は天の下にひとつという「天下主義」、文明の中華と野蛮な夷狄を分ける「華夷主義」、中華文化は天下無双であるという「文化主義」、国家は大きいほど良いという「大国主義」、天下万民をひとつに統一国家にする「天下統一主義」などがある。