紙の本
死を願う
2017/09/28 11:42
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投稿者:akiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
一番大切なひとの死を願う。それは確かに一つの愛の姿なのかもしれない。本当は一番大切なのだから、いつまでも生きてそばにいてほしいはずなのに、死ぬことで苦しみから逃れられたり、永遠に自分のものにできるこではと思ったり、古今東西よくある話ではあるが、やはり一種の真実だと思う。
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DV夫から逃れてきた地で恋に落ちた相手は、妻子持ちの中年男。
愛する男の死を願う、それは男の魂を独り占め出来る気がするから?
究極のエゴイズムだと思えるそんな感情も、
「かわいそう」な立場から自分を救ってくれた相手への愛?
短かったけれど濃密な恋愛期間。
主人公は、最後の最後に、元同僚からの電話で、
「不倫?」と気づかされる。
自分たちのしてきたことは恋愛じゃなくて不倫?
読者は、最初からそんなことはわかっている。
ふと思ったことだけど、
恋愛≧不倫、恋愛≦不倫、どちらの不等号が正しいのだろう?
もちろん、恋愛に正負はないのだろうが、
彼女たちの恋愛を不倫と言う一括りの言葉にしたくないような気がした。
おかしいなと思う場面もあった。
中年男の3週間の海外出張に、仕事を辞めてまで付いて行かれるの?
中年男は小さい子供がいるのに、1日置きに泊まりに来られるの?
まぁ、これは、そういうことが出来る立場の人たちもいる、ということで。(苦笑)
「美しい心臓を持て。純粋な生を生きよ。 」
2人はこの深い言葉を、出張先の中米で知ることになるが、
小手鞠るいさんは、本当に外国の描写が素敵。
行った気分になれる文章だと思う。
離婚も成立し、中年男と別れる決心をし、
病床にある別れた男の「生」を願う主人公。
もう相手の「死」を願うことがない。
そこに「愛」はないから。
好き嫌い別れるテーマだと思うが、
私は、好き。(小手鞠るいさんだからかも?笑)
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ーー願っていたのは、死だった。
私の死ではない。私たちの死でもない。
私が願っていたのは、その人の死だったーー
相手の死によってしか平穏が得られないほどの愛。好きの無間地獄。
「美しい心臓を持て!純粋な生を生きよ!」
とは、覚悟を決めて、とことん本気(マジ)で生きろということか。
でも、そんな恋愛が本当に幸せをもたらすのだろうか。。。辛すぎる
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逢えない時は相手に死を望んでしまうほど苦しい。
相手に赤ちゃんが生まれたことを知ってしまってからは それまでは意識を避けていたはずの奥さんの存在を異常なほどに思い知らされてしまう。
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「願っていたのは、死だった」
こんな一文から始まる本作品。
そしてこう続く。
「死を願いながら、わたしはあの、短い日々を生きた」
彼女が望むのは、自身の死ではない。
DV夫から逃げる彼女と密会する、既婚者の彼の死である。
…怖すぎる。
でもこんな始まりだからこそ、ちょっとクレイジーな恋愛小説だと思っていたら、「密度の濃い」恋愛の描写が中心に描かれる。二人で行く旅の描写は、崩壊の暗喩のように輝いている。
かつての自分と重ねて、その幸せを共に感じようと思ったわたしは、しかしその眩しさから、目をそらした。もしも、その思い出を共有した相手と、今も一緒にいられるのなら、直視できたのかもしれない。
わたしは、もう戻らないその日々に、蓋をした。
眩しすぎるほど輝かしい日々というのは、そう長くは続かない。
その眩しさの中では、目を開けることはできないからだ。
そう、冒頭に描かれているように、そんな日々は、永遠には続かない。
その日々が、短命で、瞬間的だからこそ、こうして今でも光を放ち続けているかのように、輝いているのだ。
「あの人が死ねば、死んでこの世からいなくなってしまえば、わたしを取り巻く世界はどれほどまでに安定し、わたしの心は、わたしの魂は、どれほどまでに大きな安らぎを得ることができるだろう」
こんな彼女の思いが吐露された冒頭を読了後に振り返ってみると、なんという皮肉な終わり方なのだ、と改めて思う。
自分の世界を安定させるためには、自分の目をしっかり開けて、世界をしっかりと見て、前へ進まなければならない。
目を開けて歩くには、眩しすぎてはならないのだ。
最後に。
関東地方にお住いの方、大きな地震は大丈夫でしたか?
大きな被害がないことを祈っています。
そして、あなたと、あなたの大切な人が、無事であることを、祈っています。