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電車の中吊り広告で本作の存在を知り、王道感のない変わったタイトルが印象に残っていたので、本屋で思わず手に取ってしまいました。そんなにブ厚くなく、むしろ薄いくらいのボリュームですが、じっくり読みたくなる内容の濃さがあり、なかなか読み応えがありました。
とある高校の生徒数名の群像劇で、高校のバレー部キャプテン、桐島君が部活を辞めることがそれぞれの生活に微妙に絡んでくるという内容。一人称の心理描写が中心なのですが語り口調がいちいち詩的で、一つ一つの表現をしっかりと読んでみたくなる魅力があります。
「人間関係はガラス細工に似ている」
「空気全体が落ち着かない放課後を真っぷたつに割るように、沙奈とふたり並んで歩く。」
適当にページを開いても、それだけで詩になりそうな表現がちらほら見つかります。こういう文章が散在しているので、これらを漏らさず読み尽くしたい衝動に駆られます。
また、本作は作者が大学生のときに書かれたそうですが、登場人物たちの年代が近いこともあって、リアリティの高さは尋常じゃないですね。年配の作者が描く高校生と比べると「本当にいそう感」や「(高校のとき)こういうこと考えてたなー感」が圧倒的に強く感じられます。
詩的表現とリアリティ。この2点がとても魅力的に感じられる作品でした。映画化されるそうですが、心理描写中心の本作がどう映像化されるかが気になりますね〜。
ところで本に挟まっていた、映画化記念の冊子(?)によると、本作登場人物では“かすみ”が一番人気だそうで。「特に年配の男性の方には〜」ともありますが、個人的には一人だけ特異な家庭環境を持ち、そのことで激しく悩む”実果”の方が気になりました。この子、カワイソ過ぎて泣けてくる…
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こんな感じだったかなー。と高校時代を思いだしながら読んでみた。
風景や登場人物の表現は高校生の感じで、なんだか若いなぁと。
19歳で完成させたのはすごい。
けど、私には合わなかったみたい。
なんにも訴えられるものがなかったし、残るものがなかった。
今後に期待。
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第22回小説すばる新人賞受賞作品。
バレー部キャプテンの桐島が部活をやめたことを軸に、
何がおこるわけではなく淡々と過ぎる高校生の日常を描いたストーリー。
今の高校生(特にaiko、チャットモンチー、岩井俊二監督が好きな人)が読んだら
ものすごく共感できるんじゃないかな。
ストーリーにはあまり入り込めなかったけれど、
情景の描き方、もののたとえ方はすごく上手。
特に情景は、映画のワンシーンが頭に浮かんでくるくらいで
懐かしい気持ちになりました。
たまにはこんな小説もいいかな。
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良かったな~
若い人の日常だけれど、そこにあるの普遍的な想い。
昨今の若者はと、ついつい思っちゃう、おばちゃんだけれど
私にもそういう時代はあったんだよ……
でも、私たちの時代より、便利になったせいか、
モロモロが面倒になっている気がする……
読後、電車の中の高校生の集団を違う目で見るようになった自分。
単純だと笑われても、ほんのちょっとだけれど、優しい目をしているはず。
著者のほかの作品も読んでみようと思う。
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4人の高校生を中心に描かれる恋愛や、心のもやもやのショートストーリー。
ところがタイトルにある「桐島くん」は登場せず、桐島くんに関係がありそうな人々のお話になります。一部では全く関係ない人も登場しますが・・・。
映画化されるようなので、それもチェックしたいと思っています。
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青春時代を凄く色んな視点から描いた作品でした。
華やかにクラスの中心だった人や、僕のようにそうでない人。
所々で、もの凄く共感できました。
それは心が痛くもなり、なんだか懐かしい感覚も覚える。
その狭い世界を必死で生きていかなくちゃいけない子供たち。
乗り越えれば、大して苦労のない、均等に評価される大人の世界が待っていると伝えてあげたいものです。
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一人のバレー部のキャプテンが部活をやめたところから始まる物語。そこからドミノ式に微妙な変化をもたらす日常が小気味よい。
高校生というのは大人の感情を持ちつつも、それが自分自身で理解しきれない時期であるというのが顕著に描かれていた。不安定感に共感の連続。
比喩に使われている言葉も意表をつく適切さで、思わず納得してしまい、サクサク読める一因かと。
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桐島は部活やめたらしい。
なんとなくずっと読むのを避けていたけれど
私と同い年の作者ということでついに読んでみることに。
うーん。なるほど。
現代風の語り口はかえって読みにくいし、一編一編の展開は結構べたべたなんだけども
全体を通してみた時にうまくいっているなと思いました。
ただこうまでお互いのお話が絡み付いていると、桐島くんが最後まで出てこないのはやや不自然な気もした
むしろ出てこないことでうまくまとまったのかな。わからないけど。
私も彼のような文才が欲しい。げに。
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どうやら部活をやめるらしい、ということだけで学年中のニュースになり、またそのことが広い範囲の人達に影響を及ぼす。
おそらく「校内ヒエラルキー」のトップにいるのであろう桐島にはそれだけの影響力があり、そんな些細なことでも周囲に影響を及ぼすというのが「学校」という狭い世界だったなぁ、と懐かしく思えました。
正確に言うと「懐かしく思える」なんてノスタルジーに浸るような生易しい感情ではなくて、記憶に刺されるような衝撃に近いかもしれません。
目に見えるものではないけれど、確実に存在していた「校内ヒエラルキー」。自分がどのレベルにいて、どんな振る舞いをすれば間違いがないのか、そんなことをそれぞれ考えながら毎日を過ごすことが、少なからずあった気がします。今思うと、なんだったんだろうなと笑えるけれど、当時その存在は絶対で、その中で生きていくしか選択肢はない、窮屈さとか閉塞感の描き方がものすごくリアルでした。
とはいえ、自分がここまで共感できるのは、著者とそんなに歳が離れていないからなのかもしれません。もっと上の世代の人が読んだらどんな風に感じるのかも気になる作品。
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バレー部のエース、桐島が部活をやめた。彼の近くにいる人間のそれぞれの思い、葛藤を瑞々しく描いた青春小説。
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中高生を書く小説においては、妙に大人びた主人公が登場して現実味が乏しい場合が多いが、本書は高校生の危うさや残酷さなんかが描かれていて、定まらない価値観のなかで心が揺れる様がリアルで面白かった。プロットが殆どなく、心象風景だけでここまで読ませるのはなかなかだ。
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印象的なタイトル。でも桐島くんは本文には直接出て来ない。周りの男子女子の視点での高校生活を少しずつ切り取って見せた感じの話。外交的な(イケてて目立つ)グループと内向的な(ダサい)グループに自然と分かれて混ざり合わないというのは自分の頃もそうだったけど、そういう階層をどっちが上で下で、なんてことは、内向的なタイプは自覚していたかもしれないけど、目立つ華やかな子たちはもっと無邪気だったような気がする。PCも携帯も持っているのが普通の時代に学生でいるのは大変そうである。大人で良かったと思いました。映画化されているみたいです。
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この著者は、所属している大学の卒業生さんです。
個人的に、あまり入り込めないストーリーでした。それぞれの視点から、桐島を取り巻くストーリーが描かれているけど、ほとんどの話が少々単調に思えた。
そして、著者の本は初めて読んだけど、全体的に若者向け、な感じがした。ほかの著書を見てみても、学生を描いているような作品タイトルが多いので、そう感じました。
ストーリー自体に引き込むというよりも、細かい描写で引き込むような気がした。青春の、溌剌とした描写が、とても若者向けという印象。
ただ、宮部実果の母親の話はとても残酷で、あの話だけはめちゃくちゃ引き込まれた。
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まだそう遠い昔ではない自分の高校時代を思い出す。
表面的にはこんな露骨ではなかったけれど、外見で下手に出たり馴れ馴れしく話しかけてみたり、そんな所が自分にも周りにもあった。
そしてそんなどろどろした気持ちに"いい人"になるための計算をして、悩みながら今日の自分はいる。
「なんでもかんでも計算しちゃうこんな頭、どっか行けばいいのに。」
何度こんな風に思ったか分からない。
それでもなんとか動き続ければ、外見なんかじゃ測れないもっと複雑な社会に放り込まれる。
いま思えばある意味、こんな狭い世界で生きられた学生時代は貴重だと思う。
この頃の葛藤があって今があることを忘れないようにと、この本を読んで思いました。
後、この本の話し言葉がなんとなく違和感を感じるような自分の出身地の言葉と似てると思ったら、同じ出身地だったので少し嬉しかった。
高橋優さんの主題歌もすごくいいし、映画も観たいです!
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なんだか高校生に戻りたくなったわ
著者・朝井リョウさんが当時19歳の時に書いた作品.小説で描かれている高校と同年代であることで,本当に触れるか触れないかのギリギリの距離感を保って一人一人の高校生の現実が描かれている気がする.小説特有の背景・心情描写もくどいということなく,リズム良く読み進めることができた.
現在の高校生を描くのに必須だと思われる携帯電話が全く登場しないのが,印象的だった.
【第22回小説すばる新人賞受賞作】
2012年8月映画化