紙の本
人形をめぐるミステリー、というだけじゃない重さと想いがある
2011/10/10 21:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
祖母の形見の人形店を継いだ主人公。
人形マニアと、凄腕の職人の三人で、修理専門の人形店として営業中。
修理として持ちこまれた人形とそれを取り巻くミステリー短編集。
*毀す理由
*恋は恋
*村上迷想
*最終公演
*ガブ
*スリーピング・ビューティ
一口に人形といっても、様々でそれに対する知識というか、含蓄に圧倒される。といっても、それが嫌みではなく、本当に人形が好きなんだというその気持ちになごむ。が、それを引きだしているのは、押しかけ従業員で人形マニアの富永くんなんだが。
店主である澪はリストラされたOLってことで、祖父母の思い出は大事にしてるけど、だからといってそんなに人形が好きではない。
この温度差が、かけひきの面白さになっていると思う。
そして、二人の温度差を一気にフラットにしてしまう人形職人師村。
人形は、人の形であると、その重さは決して揺るがない。
まぁ、とにかく面白かったのだ。
なので、「ガブ」から「スリーピング・ビューティ」の展開に、びっくりしたり安堵したり…。
続編をぜひお願いしたいですm(__)m
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母の市松人形"さよちゃん"が恐くて恐くて仕方無かった私を思い出しました。
"恋は恋"
津原さんの恋の物語はどれもきれいだ。
この御本を読了した直後、"空気人形"のサウンドトラックを教えて頂いて、"恋は恋"にぴったりな音だと想いました。
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登場人物たちのキャラが立っていて、特に年齢や見た目を気にする女性店主の心情や店員との会話にはくすりとさせられます。話もほのぼのとしたものや少し毒のあるものもあり、合間に挟まれる人形の雑学なんかもなかなか面白いです。
お気に入りは謎に包まれた人形職人の素性が明らかになってくる『最終公演』『ガブ』そして人形店の顛末が描かれる『スリーピング・ビューティ』
人形劇が少し見てみたくなりました。
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これも初めて読んだ著者だけれど、他の作品も読みたいと思った。まあ、ちょっと引っ張りすぎた謎が途中で好奇心よりも思わせぶりな感もなきにししもあらずではあったけれど、楽しく読了。
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■祖母の形見の零細人形店を継ぐことになったOL澪。押しかけアルバイトの人形マニア、冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、お店はそこそこの賑わいを見せていた。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告に惹かれ、今日も傷ついた人形を抱えたお客がやってきて澪たちは東奔西走することに。チームワーク抜群の3人の活躍が始まる。■
津原泰水はバレエ・メカニックしか読んでいない。なので壮大で残酷な幻想劇を書くというイメージしかなく、このようなあらすじを読んでまずびっくりした。
内容としてはキャラクター・その関係性がとても心地良く感じられた。何気ない問答からそれぞれに起こる事件にまで、見え隠れする人形への造詣が興味深い。和やかな空気感は、絶えず緊張感を強いられたバレエ・メカニックとは裏腹で、頁を気軽に捲っていった。
その分、殺人が起きたときには驚いた。非現実感に落とされるような結末にも。おそらく僕の期待の仕方が間違えていたのだろうが、僕はこれらを"不穏"と受け取ってしまい、思うように楽しむことが出来なかった。
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潰れかけの祖父の人形店を継いだ主人公。
そこになぜか腕利きの職人と人形マニアが住み着き、様々な人形にまつわる謎が引き寄せられてくる…
人形といえば、澁澤龍彦でハンス・ベルメールを知り、四谷シモンへと続いていくのが自分としてのひとつの流れ、それとは別にたまたま個展へ観に行ったのが三浦悦子。この人は、ベルメールの直系だろうか。かなり精神的にしんどい表現ではあったが。
もうひとつは内田善美。漫画家で現在は既に活動していないが、この人の「草迷宮・草空間」は市松人形が主人公。
自分としては人形はどうにも重たく、身近には置きたくないけれど、人形に関わる本は結構読んでしまう。この本もタイトルに惹かれた部分があるかも、津原泰水はこれまで2冊ほど読んでいるが、面白かった記憶がある。「セントルビナス探偵団の憂鬱」「赤い竪琴」など、どちらもおすすめ。
この作家の本はこれまで2冊ほど読んでいる。
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読み終わってあとがきで男性作家さんだと知ってびっくり。
タイトル買い&衝動買いの本はあんまり先入観を持ちたくないので、あらすじをさっと眺めるくらいで本編に入ってしまうので(今回著者名すら注視しなかった…。
しかも出るまで紆余曲折だったのですねぇ。
直前までドールズシリーズを読んでいたので、骨董・アンティーク系の話だと良いなぁと思って手に取ったのが切っ掛けでした。
ううーん、まさかラストでそんなことになるとは!
続きがあるなら楽しみに待ちたいと思います。
この人の本なら他のも探してみようかな。
それからの為に再読。
独特のテンポだよなぁと今更ながらに思うなど。
とっとっとっと、前のめりに読まされてしまうのだけど、そこへあちらからもこちらからもと集まって寄り合わされて…という感じが強いです。
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【祖母の形見の零細人形店を継ぐことになった澪は、押しかけ従業員で人形マニアの冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、なんとかお店を切り盛りしている。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告をみて、今日も傷ついた人形を抱えたお客さんがやってくる。人形と大事な思い出を修理すべく澪たち3人の活躍が始まる。】
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人形もしくは人形堂を中心に据えた物語。ぬいぐるみからラブドールまで様々な人形が登場するが、描かれるのはその持ち主や作り手、それから人形堂の三人。
ラブドールの回は好奇心も手伝って非常に面白く読んだし、他の話も人形という素材に心惹かれていたので最後まで読みきった。
しかし全体としてどうかと言うと、ひどく物足りなさが残った。すべて中途半端なのだ。早々に廃刊になった女性誌に連載されていたそうだが、連載打ち切りのような最終話はそのせいなのだろうか。
勿体ない作品だった。
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祖母の形見の人形店を継いだ主人公。
人形マニアと、凄腕の職人の三人で、修理専門の人形店として営業中。
修理として持ちこまれた人形とそれを取り巻くミステリー短編集。
*毀す理由
*恋は恋
*村上迷想
*最終公演
*ガブ
*スリーピング・ビューティ
一口に人形といっても、様々でそれに対する知識というか、含蓄に圧倒される。といっても、それが嫌みではなく、本当に人形が好きなんだというその気持ちになごむ。が、それを引きだしているのは、押しかけ従業員で人形マニアの富永くんなんだが。
店主である澪はリストラされたOLってことで、祖父母の思い出は大事にしてるけど、だからといってそんなに人形が好きではない。
この温度差が、かけひきの面白さになっていると思う。
そして、二人の温度差を一気にフラットにしてしまう人形職人師村。
人形は、人の形であると、その重さは決して揺るがない。
まぁ、とにかく面白かったのだ。
なので、「ガブ」から「スリーピング・ビューティ」の展開に、びっくりしたり安堵したり…。
続編をぜひお願いしたいですm(__)m
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不思議なことは起こらないのに、現実と幻想の境目がわからなくなる話。アンドロイドのはなしを読んだあとと似た気分になった。
人形を作るときの気持ちとか、人形を持ってるときの気持ちとかが大切にされてるけど、詳しくは描かれてない。煙に巻かれた感じ。
人は人と人の間で生きるものなのだなあ、と思わされる。
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人形の持つネガティブな面(気持ち悪さ、怖さ)よりも、ポジティブな面(かわいさ、人間性、パートナーシップ)の魅力が満載。たまさか人形堂で働く3人の登場人物を中心に短編形式で物語が進行する。
話が進むにつれ、3人の素性や人となりが描かれるにつれ、どんどん3人が好きになっていく。
短編ごとの読後感が圧倒的に爽やかだったり、水滴の滲みのような不思議な後味だったり、小さい頃の「世にも奇妙なアメージング・ストーリー」や初期の「世にも奇妙な物語」を観た時の「不思議な話を聴き終えた」という感覚が蘇った。
良作だと思います。
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2011/10/19:津原泰水さんの作品は初めて読みました。小さな人形店と人形に関わる人を巡る短編集。もし続編が出るのでしたら読んでみたいです。
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澪が少々自虐的なのは、掲載誌が「Beth」だったからだろうか…妙齢の女性向けってこと?
しかし人形がたりは抜群に面白いス。人形浄瑠璃からラヴドールまで。今月の文春に載ってる続編ではリカちゃん人形。折しも雛祭直前。
「美の基準なしには人間ってね、缶ジュース一本だって買えないんですよ。」
この台詞! ほかにも冨永くん語録がたくさん…。
ところで、「伽羅先代萩」の「御殿の段」では私も寝た経験が。人間国宝・住大夫さんの語りで、ですよ…。
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津原氏の小説は今作で二度目だ。
前作に漏れず「独特の世界観」を構築する筆力は健在だ。
作品名を読んで大体予想はつくと思うが、本作は人形店が舞台だ。
様々な理由で持ち込まれる人形に纏わる依頼を、ひょんなことからお店を継ぐことになった「澪」を筆頭に、才ある押しかけ従業員富永君と、一級品の技術を持つ謎多き職人「師村」さんの助けを得て解決していく。
人形というのは不思議な性質を兼ね備えているものだ。持ち主の人生や、辿った歴史をまるで「記憶」しているかのようにその身に刻んでいる。
そのミステリー性を十分に生かしつつ、物語に組み込んでいくプロットに読者は魅入られるだろう。