紙の本
芸術団体の関係者が読むべきマーケティング必読書
2009/01/12 21:36
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
米国でアート・マネジメントを専攻するノースウェスタン大学のバーンスタイン助教授がまとめた書である。
芸術団体は、それを聴きにくる聴衆を集め、収益を上げて組織を維持しなければならない。とはいえ、聴衆におもねってばかりいても優れた芸術家が集まらなくなる。ときには前衛的なプログラムを演奏しなければ、社会的な役割も果たせなくなってしまう。その経営のバランスが難しい。
本書では様々な調査結果や実例を盛り込んで、米国内の芸術団体(管弦楽団、舞踏団、歌劇場など)が如何に聴衆を集めることに腐心しているかを紹介し、同時に著者の得意なマーケティング的な見地からの提言を随所に行っている。
ここでは様々な例が引用されているが、これをそのまま我が国の芸術団体に持ち込むことは間違いである。彼我の事情が異なるからである。しかし、手法には見習うべき点が多々あることも確かである。
米国では聴衆を集める手段として定期会員制度が幅を利かせ、これによって多くの固定収入を得てきたが、この制度に陰りが見えてきたという。我が国の管弦楽団でも聴衆を集めるのには苦労しているのだが、ここ10年以上定期会員は大幅に増加しているように見える。ただし、その傾向も頭打ちでいずれ飽和状態になるのであろう。その際には米国での具体的な手段が役に立つし、実際、制度自体が徐々にしかもすでに改善されてきているのも事実である。
もう一つ、印象的であるのはITの利用である。定期会員制度が低落傾向にあるのはパッケージになると、自分の好きなプログラムを選択できないという当然の結果に行きつくからであるという。それが定期会員の減少の大きな原因であるという。その結果、1回券を買い求める人が増えているそうだ。その1回券を買う聴衆をITが支えている。昔に比較すれば、簡単に1回券がWebサイトで購入でき、それを郵送してくれるからである。
そればかりではない。定期会員券の更新の際にWebをうまく利用しない手はない。更新時に簡単なアンケート等で顧客(聴衆)の意向が調査できるからである。サービスにおいてもITの利用によって、格段に質を向上させることができるのである。
我が国の芸術団体もITへの投資は不可欠であろう。その点、まだまだ遅れていると言わざるを得ない。事情は異なるのだが、参考になる点はそこかしかに述べられており、関係者が学ぶ必要のあるマーケティングの実践論が述べられている。聴衆の期待が何であるかに着目し、それを調査していくのは、世界中どこでも共通した課題である。是非、関係者には一読してもらいたい書である。
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演劇、オペラ、クラシック音楽、ミュージカルなど、芸術団体のマーケティングについて書かれた指南書。著者はアメリカの大学におけるアートマネジメントの教育者であると同時に、数多くの芸術団体のコンサルタントを務めている。
営利目的の企業と異なり、芸術団体は必ずしも「売れる商品」ばかりを売るわけにはいかない。芸術性の追求は市場原理とか資本主義経済には適さないと考える人も多いだろう。しかしそれでも資本主義の国で芸術活動を行うためには、顧客をひきつけるマーケティングが必要だ。特に、“芸術は一部のエリートだけのものではない”と考える団体ならなおさらに。
本書が示す顧客獲得の手法は明瞭で説得力がある。時代の変化と共に顧客の行動パターンは変化しているので、旧態依然とした手法は通用しなくなり、新しいスタイルが必要になっていること。逆に変化していない意識は大切にすること。やめるべきことと推進すべきことの説明。
私がよく行く演劇は非常に規模が小さく、商業的に成立するようなレベルではない団体がほとんどだ。彼らがマーケティングに使える具体的な手法は、本書が例示する大規模な団体と同じにはいかないだろう。しかし、インターネットの活用など小規模団体でも可能なものも少なくない。それになにより、「顧客満足」という観点が重要であることは規模に関係ないのだ。小劇場演劇の関係者にもぜひ読んでもらいたい。
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クラシックとオペラを興行としてどのようにマーケッティングして成功させるか、詳細なケーススタディとともに解説している。
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クラシック音楽、演劇、オペラなど、次第に縮小している?といわれている
芸術のマーケティング本。
フィリップ・コトラーの推薦序文つき。
内容は
第1章 芸術ビジネスの可能性
第2章 現状と顧客の特性をつかむ
第3章 芸術鑑賞のメリットとは
第4章 芸術マーケティングの計画を立てる
第5章 作品、会場、コミュニケーション
第6章 芸術の値段
第7章 市場調査の手法とプロセス
第8章 インターネットと芸術ビジネス
第9章 芸術におけるブランドとは?
第10章 顧客ロイヤリティを築く
第11章 気まぐれな顧客を重視する
第12章 芸術鑑賞の経験をもっと豊かに
さまざまな角度からのマーケティングを扱っており芸術分野に限らず勉強になる。
そこそこページはあるが実例が豊富なので非常に読みやすいです。
時々読み返しています。
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舞台芸術の分野での4P/4C(製品・価格・場所とチャネル・プロモーション/顧客にとっての価値・顧客にかかるコスト・顧客にとっての利便性・顧客との会話)の考え方を、実際の事例や調査データとともに解説。
顧客のターゲティングでは、年齢、ライフサイクル、性別、人種民族による分析と事例。高齢者に向けては、11時開演にしてラッシュ時間とずらしたり、20~30代、10代にはそれぞれにメリットの異なる割引制度など。
価格と販売方法については、定期会員制とシングルチケット購入者へのプロモーションとが対立するような形で書いてあり、おもしろい。
アメリカでは特に、1960~70年代に定期会員制度が定着、芸術団体の経済基盤に安定をもたらした面、ここ10年、定期会員は減ってきている。
本書にある調査では、かなり前から予定が決まってしまうことを嫌う、若い世代に特に顕著。一方で、シングルチケットの購入者の大多数は、5年以上継続してその劇場や団体のチケットを購入という結果もある。
定期会員になる人=よい座席を確保したい、その団体の公演をもれなく全て観たい。優先事項はその二つなので割引は大きなフックにはならない。
シングルチケット購入者=あらかじめスケジュールの決めるのが難しく、観たい作品だけを選んで観たい。
観客の世代交代と、余暇の時間、お金の使い方が大きく変化しているため、シングルチケット購入者→定期会員というすごろくも成り立たなくなっている。
定期会員制には変化が必要で、それに変わる会員制度の例もいくつか。
また、チケットの価格についても、チケット購入を決めるのにもっとも重要なのは公演の興味、スケジュール、チケット価格の順、という調査結果。
価格を気にする人たちの中でも「買いたくて買えない」層と「その価格では気が進まない」層とに分かれる。
観客が上演作品や日程、会場などに関して感じる価値に見合った価格設定が重要。
当然、オンラインチケット販売についても、
舞台芸術を鑑賞しない人々や、あまり鑑賞しない人にとっての問題は、芸術そのものではなく、情報やチケットを入手する方法や時期
と、事例により言及。
芸術マーケティングの計画の立て方や調査分析の仕方なども書いてあるが、この辺りのことは本書とあわせ、マーケティングの本も読んだほうがよいと思う。
いずれにしても、アメリカと日本で事情の違うところも大いにあるし、事例を個々の公演単体でまねをしてもあまり意味はない。
ミッションは何かにより、達成すべき目標やそのためにとるべきアクションは変わる。
この間、あまうめを観にいったときのアンケートで「劇団に何を求めるか」というような質問に「持続性」と書いたのだけど、それは多分、少なくとも3年後の自分たちをイメージすることだと思う。
そのときに、観客や支援者との道筋を考えるフレームワークとして参考になる本だと思う。
そして、当然、地域の劇場にも。
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コンサートや舞台など、芸術をビジネスとして成り立たせるために、
観客をどう集めるかについて、マーケティング視点から書かれた本。
芸術関係に携わっている人であれば、どれも参考になると思う。
では、関係していない人にとってはどうか?
マーケティングの重要性は当然ながら、
ものを売るためのやり方は無尽蔵にあること。
売れないのは工夫が足りないということが実感できる。
何事も外部要因のせいにしてはいけない。
・企業にとって製品は目的だが、顧客にとっては手段
・「お金に見合う価値」でなく、「時間に見合う価値」で勝負
・顧客経験に重点を置く
等、自身が身を置く業界でも見習わなければならない内容も多かった。
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全くもってマーケティングには興味がないんだけど、どうやら、一番欠けてるのはマーケティング視線だな、と思うので、止むを得ず読む
とにかくもう時間がない現代ですから、何より貴重なのは時間
時間というコストを最小限にする、もしくは、コストに見合って充実させとく
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vol.14 福札とマーケティング本。http://www.shirayu.com/letter/2009/000059.html
【芝蘭友のトップストーリーニュース】
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芸術文化の中で衰退していっていると言われるクラシック、オペラを題材にした、エンターテイメントとしての復活を目的としたマーケティングの事例を紹介。
歴史があるだけに、固定観念やアカデミックな方面からの意見などに翻弄され、難しいところがあるが、視点を変えたり、データを分析すると意外な事実が判明したりと面白い。