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生物だけではなく、すべてが進化の法則にしたがう。すべてをデザインしコントロールするものはなく、ものごとはボトムアップで発展する。著者はこれを一般進化理論と呼び、宇宙、道徳、文化、経済、教育など通常考えられている生物進化以外の多くの領域で当てはまると主張する。生物進化を実現する原則 - 変異と淘汰による発展 - が非常に強力な理論であり、現存する生物やその機能を説明できる理論であることは論をまたない。ただ、著者の主張に反対するものでもないのだが、わざわざ進化を持ち出さなくてもいいのではと思うところもあり、少しロジックが強引なところも見受けられる。しかし、言いたいことはよくわかる。ボトムアップの進化の理論はある種の必然性を説明してくれ、それほど魅力的な理論でもある。
著者のマッド・リドレーは、マーク・ザッカーバーグも推奨した『繁栄』の著者である。その原題は、"The Rational Optimist ~ How Prosperity Evolves"で人類の繁栄についてもEvolve(進化)の文字が入っている。以前の著作にも『柔らかな遺伝子』や『ゲノムが語る23の物語』など遺伝子に関する優れた一般向け科学解説書がある。つまり、「進化」について少なくとも語ることができる資格は持っている。『繁栄』では、自らを合理的楽観主義と称しているが、乱暴に言えばボトムアップの自然選択に任せれば、たいていのことは上手くいくという考えといってもいいかもしれない。逆に言うと、トップダウンの方式についてはその狭い限界について批判的な意見を持っているということでもある。たとえば中央集権的な共産主義経済が破たんし、資本主義が想像を超える発展を見せているのは、著者の観点からは明らかに後者の優位性を示しているということだろう。2008年に崩壊したバブルは政府がデザインしようとした結果であるとするところはやや強引ではあるのだが。
本書で、進化の法則で発展しているとして取り上げられる分野は次の通り -「宇宙」「 道徳」「生物」「遺伝子」「文化」「経済」「テクノロジー」「心」「人格」「教育」「人口」「リーダーシップ」「政府」「宗教」「通貨」「インターネット」。世界史などで、まるで最初から企図された目的をもって進んできたかのように教えられるものについては、考え方を改める必要は少しはある。著者の意図は、「人間の意図やデザインや企画立案という妄想の束縛から「解放する」ことができればと願っている」というところにあるのだから。
リチャード・ドーキンス、ダニエル・デネット、ニック・レーン、シュンペーター、ケヴィン・ケリー、アントニオ・ダマシオ、ジョン・サール、ニコラス・ハンフリー、ベンジャミン・リベット、デイビッド・イーグルマン、など自分が好んで読む人も援用されていて楽しい。インターネットやビットコインも一般進化理論の結果であるとする。
本書でまず苦言を呈するところがあるとすれば、技術系の訳文である。TCP/IPと書かれるべきところを、ICP/IPというとんでもない誤字をしたり、DNSをDSNとしたりと、通信のところではわざとではないのかと思われるほど誤字だらけ。訳出の間違いというよりも綴りの写し間違いであるので、何とかしてほし���。ブロックチェーンなど技術に関連する最新トピックも含まれているのだが、正しく翻訳されているのか疑問がわいてくる。マット・リドレーの訳本ということで、ある程度の売りは期待できる本だと思うので、翻訳もしっかりとしてほしい。kindle版であればまず基本的なワードの誤訳はオンラインで修正するべきではないか。
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【原書目次】
Prologue: the general theory of evolution
The evolution of the universe
The evolution of morality
The evolution of life
The evolution of genes
The evolution of culture
The evolution of economy
The evolution of technology
The evolution of the mind
The evolution of personality
The evolution of education
The evolution of population
The evolution of leadership
The evolution of government
The evolution of religion
The evolution of money
The evolution of the internet
Epilogue: the evolution of the future
『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152091649
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タイトルが変。進化の考え方は様々な分野に現れるということを具体的な事例を示しているのが本書なんだと思うんだが。。
エキサイティングだが言い過ぎだと思われる箇所も多く、エンタメに寄りすぎな嫌いがあるので、そのつもりで読むのがいいと思う。
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原題は The Evolution of Everything: How New Idea Emergeだよ。訳書のタイトルと全然違うと思うのだが。
さらに翻訳の文体が私には合わない。リドレー氏は変な人でこんな感じの文体が合うのであろうか?
リドレー氏の本は初めて読んだのだが,なんだか変な人としか思えない言説が多いのだが。
進化なのか?特に最後のインターネットの章を読むと,進化ではなくて革新・発明ではないのか?
全部の章を読む前に返却期限になって返却。
日経新聞の書評で知って図書館に予約。
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進化とは「自然発生的であり否応ないもの」である。進化は人間の営みであるあらゆる所で見られ本書では「宇宙・道徳・生物・遺伝子・文化・経済・テクノロジー・心・人格・教育・人口・リーダーシップ・政府・宗教・通貨・インターネット」に分けて書かれており、それらは人間の営みでありながら人間の設計ではないとしている。
政府やリーダーはボトムアップで生み出されてくる「進化」を邪魔しない事が肝要であり歴史的な悲劇の大半は人為的でトップダウンによるものだとしている。上から変化をデザインするものを評価しすぎる風潮に警鐘をならし有機的、自然発生的な力を評価すべきという一つの問題作ではあると思う。
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生物に起こる進化は特殊進化理論であり、世界には一般進化理論とも呼ぶべき進化の法則がある。すべてのものごとは進化している。そして進化は計画されたもの(=創造説)ではなく、小さな変化の積み重ねによって達成される。上からの計画はたいてい失敗するよ。…というのがあらましです。
進化≒ボトムアップと創造≒トップダウンの対立が本書のテーマです。そしてだいたいの章では成功したボトムアップが失敗するトップダウンにとって代わられてしまって嘆かわしい。という結論になります。
ここで疑問なのはトップダウン式の機構が作り上げられるのも進化の結果なんじゃないの?というものです。他のボトムアップものとトップダウンのものが競争した結果、トップダウンが生き残っているから今はトップダウンがあふれているのでしょう。もちろん、進化だからいいというわけではありませんが。
p149の指摘はだいじだと思いました。イノベーションは意図的に引き起こせるものではないようです。アイデアの自由交換による変異と、市場での生き残りをかけた淘汰がイノベーションの原動力であり、明確なビジョンをもった経営者~のような話ではないのです。
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いろんなことが進化で説明できるという話。翻訳がいまいちで読みにくい。内容もある程度納得はできるが進化の定義範囲が広すぎる気がした。人の自由意志はないのか
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図書館で。
あらゆる事柄は意図ではなく偶然・進化によるものだというお話。ほんとにその通りだと思う。
が、意図の集まりこそが偶然を起こすんだと思う。