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津村記久子=お仕事小説得意な作家さん、というイメージ。
そんな津村さんの最新刊はお仕事ファンタジー小説!
面白くないわけがないじゃないですか。
初めのみはりの仕事からつかみバッチリ。作家の自宅にとりつけた隠しカメラの映像を一日分ずっと見つづけて不審なところがないか見張り続ける仕事なのだが、寝てるとき以外は早送りしてはならない。仕事に慣れたら2日分を一気に監視することが可能。目的は当事者も気づいていないマル秘なブツが隠されていることがわかっているのでそれを発見すること。気がおかしくなる仕事を実にコミカルに描いている。
それと好きだったのはおかき袋の仕事。
津村さんご本人がこんな仕事あったらなーと思いながら書いたそうです。どんな仕事でも、楽そうに見えてもたやすくはないのだなと。
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おもしろかった!ちょっと変わったマニアックな仕事の話なんだけど実際にきっとある仕事の話だから想像できた。一見地味な世界にもちょっとした事件やドラマがある様子が細かくユーモアをもって描かれていて読んでいてリアリティーとおかしさとで笑ったしじわじわと感動もした。主人公がいい子で好き。これからもどんなとこでも働けそう。津村さんのお仕事小説をもっと読みたいと思った。
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津村さんらしいお話。
ストーリーは大学卒業後に14年勤めた会社をやめたOLのお話。
燃え尽き症候群になり
会社をやめて、ハローワークに通う主人公。
そこで、紹介される仕事は変わった仕事ばかり。
え?そんか仕事あるの?っと思わずいいたくなる。
いろいろな仕事をして、
ある決断を下す…主人公はいろいろな仕事をしながら働く意味や自分の働く上での原点に気づいたんだろうなーっと思いました。
面白かったです。
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ものすごくおもしろかったし、ものすごくよかった。津村さん、ほんとうにはずれがない! 大好きだ。
好きな仕事だったのにいろいろ疲れ果てて辞めたらしい主人公が、紹介してもらうちょっと変わった仕事を次々と体験する話。紹介される仕事がちょっと変わっていてファンタジーめいているのだけれど、嘘っぽくなくて、いやいや現実にありそうだ!と思えるところ、いやいややってみたいかも!と思えるところがすばらしい。(わたしがとても心惹かれたのは、おせんべいの袋の裏のひとことうんちくみたいなのを書く仕事。わたしは甘党なんだけどおせんべいが食べたくなった。わたしは甘党だからわたしがやるならクッキーの袋とかがいい(どうでもいい))。
恋愛はないし、深い友情で結ばれるとか、つながりとかもないんだけど、職場やひととき顔を合わせるだけで一見表面的な出会いでも、なにかちょっと温かい交流があったり、理解があったり、というのが素敵。こういうのが津村さんの特徴にも思える。主人公が、臆病と思えるくらい人々をすごく観察している、っていうのもなんか共感できて。
ごく普通に書かれているのに、なんだかものすごくおかしくて吹き出しそうになることもあって。津村さんのユーモアの深さみたいなのを感じる。
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職業という大きなくくりで
区別できないおしごと話
職業ではなく、
ひとつのおしごとに携わる様が描かれていて
おもしろかった。
いろんなところに
おしごとは発生していて
向き合っている人たちがいるんだなあ。
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タイトルからもう最高だって思って読み始めた。
14年勤めた会社をやめた主人公、5つの物語に5つの仕事。リアルさと、ファンタジーっぽさのバランスが絶妙で、仕事に対する思いは身につまされるところもあった。主人公のぐるぐる考えすぎちゃうところや、えいやっとエンジン掛けてやるところは好感持てて良かったな。
津村さんの作品本当好きだー。
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このかたの書くお話が好き。
地に足をつけたいのに、数センチ浮いてしまってるような
(↑こう書くと●ラえもんみたいやなw)
希薄で、もどかしい現実感。
この本はそれが満載。
「あり得なさそうな仕事」感 と
「主人公が現実と関わる距離」感 の強度の割合が
お話が進むごとに逆転してって
きっとこの本のあとには…と思ってしまう。
なんだかんだ言っても
この主人公、コミュ力高いしな。
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(2016/1/8読了)
主人公は30代後半、独身の女性。長く勤めた仕事を辞めたその後の転職先での出来事を綴った、連作。
それぞの話には、主人公を含め、心の病が大なり小なり関わっている。それでも暗い話ではなく、啓発的話でもないけど、読み終えて、安らぎや温かさを感じた。
理想論や出来過ぎ感があるのは小説なのでしょうがないと思いつつ、5つの仕事については作り物ではなく、実際にありそう。
職安の人が、みんな正門さんのような人ならいいのにね。まあ、ちゃんと対応してくれるのは、紹介を受ける主人公の人となりがしっかりしているからだろうけど。
津村作品、初めの頃と作風が変わって来たようだけど、どちらも好きだな。
(内容)
「コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますか?」燃え尽き症候群のようになって前職を辞めた30代半ばの女性が、職業安定所でそんなふざけた条件を相談員に出すと、ある、という。そして、どんな仕事にも外からははかりしれない、ちょっと不思議な未知の世界があって―1年で、5つの異なる仕事を、まるで惑星を旅するように巡っていく連作小説。
(目次)
第1話 みはりのしごと
第2話 バスのアナウンスのしごと
第3話 おかきの袋のしごと
第4話 路地を訪ねるしごと
第5話 大きな森の小屋での簡単なしごと
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穏やかでユーモアたくさんのなかに
翳が見え隠れするような話。
「どの人にも、信じた仕事から逃げ出したくなって、
道からずり落ちてしまうことがあるのかもしれない」
でも、ちゃんと希望もあった。
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14年間務めた仕事を燃え尽き症候群で辞めた
三十代半ばの女性が、職業紹介所で紹介された
5つの仕事を体験するお話。
仕事の成功は依頼された人の意向を汲み取り
依頼人のイメージと自分の中の完成イメージとを
どれだけ擦り寄らせることができるのかに
かかっていると思っていた私。
人の感じ方は千差万別で、
ちょっとしたニュアンスの違いや経験値の違いで
自分勝手な解釈を必ずしてしまうものなので。
この主人公、一風変わった仕事を
オリジナルのアイデアや、時には周りの人を巻き込んで
迷いながらも着実に自分のものにしていきます。
最初は主人公の心の声がツボにはまり、
笑っていられたんですけど…。
3・4・5話は何だか苦しくなりました。
主人公は優秀で、雇用する側からの評価は
常に高いものなのです。
それなのになぜ苦しくなってしまうのか。
相手方に突進しすぎるのは良くないのかも知れません。
余白が、遊びの部分が全くないと
自分のいろんなものが追い詰められていってしまうのかも。
とはいえ、誠実な態度で仕事に臨むことにより得られた
主人公と職場の様々な人との関係。
その関係が進ませてくれる先に、
主人公の本当の居場所が待っている気がする終わり方が
ステキって思いました。
津村記久子さん、初読みです。
深いですね。労働を丁寧に観察されているなぁと
もっともっと読みたくなりました。
この題名の通りと、常日頃思っていて
手に取って大正解でした。
5つの仕事を何か紹介されるのであれば
私は迷わず「バスのアナウンスのしごと」を
選ぶと思います☆
職業紹介所の「正門さん」って何者なんでしょう?
この物語、続編はできませんかね??
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てっきりエッセイ集かインタビュー集なのかと思っていたので、小説だった事にまずビックリ笑
結局巡り巡って、自分の天職に出会うのが、なんとも。私も一度全く違う仕事に就こうか悩んだ事もあったけど、結局この主人公の様になりそうだと思ってしまった。
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津村氏のお仕事モノは本当に好きです。本書はさらにいろんな職業が出てきて、その場や人に対する自分の気持ちやスタンスなど、淡々と描かれていて、いい。わたしも正門さんのようなお仕事紹介者、ほしいなぁ。ニュートラル且つ分析力のあるような。
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最初の方はいつにも増してダラダラしてるな~と思いつつ、このダラダラしてるところが大好きなので、思い切り自分もダラダラと読む。ところが後半、なんだか不穏な雰囲気が出てきた?と緊張し、最後は何となく爽やかなものに満たされて読了。
津村記久子さんの小説には、いやな出来事や、かかわりたくない人々もきちんと描かれる。一方で、控えめに、地に足をつけ生きている、普通の人達も登場し、彼らが自分なりのやり方で、少し前へ進んだり、頭を低くしてやり過ごしたりする。その様に「ああ、自分も頑張ろう」と思う。毎回よい気分で本を閉じられる大好きな作家だ。
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シゴト、という事件が起こり続けるコンクリート・ジャングルを、若くもなければ美人でもない孤高の女刑事が正義の情熱を胸に秘めてハードボイルドに疾走する…。というようなコメディと言いましょうか。なんともオリジナルな味わいの創作ケーキを、地元の無名な喫茶店で食べたら、あれ?これは美味しいのでは?美味しいよねえ!とささやかな幸せを友人と語り合うような、そんな読書でした。
津村記久子さんの小説は、ご縁もあって全部読んできました。と言う訳で今年の新刊を店頭で見つけて購入。
主人公は「30代半ば、中肉中背、女性。事務系の仕事を長らくしていたが、パワハラで心を病んで退職」という、津村ワールドのレギュラー主人公のような人物です。
この小説は連作短編と呼ばれる作り。
主人公の女性「わたし」が、職業紹介所の人に紹介されて、色んな仕事を転々とします。
どの仕事もユニークで、それなりに索漠としながらも面白く、そして色んなことがあって「わたし」はまた次の仕事へ…。
というお話です。
本の帯の売り文句に「今回はファンタジー!」と銘打ってあり、ほうファンタジーなんだ、と読み始めました。
…で、言うほどのファンタジーでもなかったのですが、ぎちぎちのリアリズムに囚われないとぼけた味わいは、確かにファンタジー。
津村記久子さんなりのファンタジー、とでもいうべき軽さと愉しさがありました。
どの辺がファンタジーかな、というと、職業紹介所のおじさんが毎回毎回、判で押したような仕事の紹介の仕方。
繰り返されるたびにおかしみが湧いてきます。
そして、主人公の周囲で起きる出来事も、なかなか考えたらご都合な展開もあるんですが、それが「ご都合」というより、
「あ、そういうノリの世界観なのね」という紡がれ方をしているあたりは、ファンタジー風味です。
なんで、肩が凝ったり胃が痛くなったりしなくて楽しめる本です。
津村さんはこの10年、ある意味細腕一本で、「細々と会社労働で働く中の下か、下の上くらいの労働者生活小説」とでも言うべきジャンルを、耕して芽を撒いて風雨に耐えて育て上げてきたような小説家さんだと思います。
小説のほとんどは、仕事をして生活をしていくということ自体が中身になっています。
そこで起こる出会いやら恋愛やら不倫やら不幸な運命とか自殺とか、そういうドラマチックな2時間ドラマ的な展開を避けながらも、リアル生活感をベースに気持ちのドラマを高度な技術で彫り込むように描いて来たと思います。その中には常に、「弱いもの苛めへの怒り」「男性的な、暴力的な、威圧的な権力への抵抗」という、どれだけ打たれても曲がらない芯を強靭に持ってらっしゃいます。
それでいて、ここ最近は何か肩の力が抜けた不思議な平明さ、明るさ、軽さみたいな筆致が味わい深いですね。
小説としては、10代の若者を描いた前作の「エブリシング・フロウズ」が、実に濃度の高い傑作長編でした。
その後、何を書くかな、というわくわくで通読。
①みはりのしごと
…主人公は「ある機関」が犯罪に関与しそうな人物を隠しカメラ��覗く仕事をしています。津村記久子さんそのもののような女性小説家のツマラナイ日常をひたすら監視する。
その究極なまでにツマラナイ仕事の中に、慣れや生活の歪みに苦しみながらも、どこかしらヤリガイを感じたり情熱をかすかに持っちゃうあたりが面白み。
最終的には、女性作家が「知らずに預けられていたダイヤ」を、無事に奪取してめでたし。
②バスのアナウンスのしごと
…地元の町のバス会社。車内で停留所付近の会社やお店の宣伝を音声で流す。そして広告料を取る。
そのアナウンス原稿を作る仕事。
これまたやっているうちに、やりがいを感じてしまう主人公。
更に、「年下の先輩」である同僚の不思議な女性が、アナウンスでお店の興亡を預言しているのでは?という謎のミステリー。
③おかきの袋のしごと
…おかきを作っている会社。ぽたぽた焼き、じゃないけれど、袋に豆知識を書いて売っている。
その豆知識の原稿を作る仕事(なんだかんだ、文章にまつわるところが、ご愛嬌)。
これまた、豆知識作成に七転八倒真面目に苦闘する主人公と、思わぬ爆発的人気を得る商品、というややファンタジーな愉しさ。
ところが売れたら売れたで別のストレスが出てきて…というあたり、この1篇はかなり好きでした!
④路地を訪ねるしごと
…路地を訪ねて公共ポスターを貼ってもらうという営業っぽい外回り。
ところがこの会社が、実は、「その地域の怪しい新興宗教っぽい団体と闘う」という隠れ目的があることがだんだんわかってきます。
津村さんなりの、若干ファンタジーな、「老人の心の隙間に付け入る団体」の描き方が、実はけっこうリアルでスリル。
なんだかんだ、この戦いにのめり込んでしまう主人公…。
⑤大きな森の小屋での簡単なしごと
…大きな森林公園の、「ただいるだけ」の管理人補佐的な仕事。
なんだかんだ、こんな仕事でもハードボイルドに職務熱心な主人公が、コッケイオカシイ。
あまりにも巨大な森林に、いくつかの謎が見え隠れ。
何者かが隠れ住んでいるのか?その人はなぜ森に棲んでいるのか?…
どれもこれも、仕事という戦場に傷つき疲れ、あくどい仕事、索漠とした仕事に身をやつし。
それでも仕事に恋して仕事に一喜一憂、やっぱり仕事は愛おしい。愛おしいから一枚めくると憎らしい。恨めしい。醜い。
つまりこれは、ほとんど仕事=恋愛というべき変態パラレルワールドの、ハードボイルドな女探偵のパロディ的ミステリー・ファンタジー。
軽やかに読ませる語り口の向こうに、この2015年に意欲的にオリジナルな小説を刻んでいく津村さんの、立派なシゴトを感じられる快作でした。
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ありそうでなさそうであるわけない職種の設定が絶妙。ミステリー仕立て。サラメシに取材いってほしい職場。