紙の本
今よりもっとましな人生があるかもしれないっていう悪夢
2015/09/29 16:32
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投稿者:うもも - この投稿者のレビュー一覧を見る
若い女の子が町長さんの妾になって…という物語からはじまったシリーズですが、
この巻はさまざまな登場人物のおりなす「短編」が詰まっているまさに「フラグメンツ」といった風体。
どれも閉塞感を感じる、なにか物寂しいお話が続きます。
「夢みたいだね。今よりもっとましな人生があるかもしれないっていう悪夢」
という台詞に集約されている気がします。
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読み終わった後に作品の世界に浸れないのがこの人の作品。だからこそ読んでしまう。
女子高生を描くなら、『センチメントの○○』より断然こっちだと思う。
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第1章「この町にはあまり行くところが無い」、第2章「小指の思い出」、第3章「ASPHYXIA」。後半の別章「みはり塔」「奥さん、いいじゃないですか」「ぽつん」の6つの短編を収録。
なんといっても「みはり塔」が良い。これだよ、この読後感を待ってたんだよ。”夢だね。今よりもっとマシな人生があるかもしれないっていう悪夢。”
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首絞められてイク主婦に、たははな感じ。
てへ。
この主婦の見てくれが超好み。
こんなオンナになりたいぜ。
ほんとこの人の作品って、最後の〆が非常によい。
あたしの好きな感じ。
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〜これは夢か、現実か・・・われ欲情す、ゆえに我あり〜
山本直樹の漫画は結構読んでいて・・・とか言うと、変な人って思われそうだ。
エロ漫画なことに異論はない。わけても上質で、極めてエロいエロ漫画だったりする。
だいたい、初期の作品はコミカルでありえない設定ながらも現実的。
「フラグメンツ」では現実と仮想世界の狭間に潜り込み、今描いている「堀田」に至っては、もうシュールでぐちゃぐちゃな世界になっている。
どれが一番好き?というと、フラグメンツの浮遊感が好き。まだ読んでいない作品もあるけど、本屋さんに売ってないんだもの。人間だもの。
あれ?これって夢じゃないの、と、思うことがある。
デジャヴ。予知夢。目の前の世界が演劇みたい。あれ、私って存在してるんだっけ。世界って何だっけ。
フラグメンツには、そういう「現実の破綻」が何度も起こる。
そして、そういう世界のなかで、いつも性交だけが、確かな実感を持って描かれる。
山本さんの描く性交のシーンは、なんだか静か。えぐい表現なんだけど、不思議と静か。
それは、白昼夢のようなファンタジーの中の出来事だからなんだろうか。
山本さんの漫画では、性交の熱よりも、終わって熱が冷めたあとの、空虚で行き場のない気持ちの方が心に残る。
車に乗って、どこともつかない街へ出たり。
手をつないだまま、遠くを見つめたり。
わけもないのに涙が出たり。
まるで、性交した後には、そうするしかないみたいに、描かれる。
だから、切ない。
山本さんの漫画を、エロい漫画というよりも、まず「切ない漫画」として読んでいる。
おぼつかない足で、地面をうまくとらえられない。
そういう私たちが、どうしても、どうしようもなく性交に惹かれる。惹かれ合う。
肌をくっつけて、自分の存在を、相手の存在を、確かめる。
そうして、快楽と高揚ののちに、また「確信のない世界」がやって来る・・・
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どこにも行けない。ここから逃れることなどできない。夢は悪夢へと変わり、わたしたちはただどうしようもないまま、やりきれない想いを抱えてここにいるだけ。