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【一言で評価】
折原一の作品らしく,読んでいるときのサスペンス感は抜群。しかし,オチが釣り合っていない。竜頭蛇尾というイメージの作品
【感想】
1993年に出版されたが,あまり売れず2002年に講談社文庫版が出版されたが,これもあまり売れず。2018年に本屋大賞の発掘部門で「超発掘本」となり,文春文庫で3度目の文庫化。あとがきでは,著者の折原一自らが,マイベストに挙げている作品
あとがきによると「倒錯の死角」や「倒錯のロンド」のような叙述トリックの創出に汲々とするようになっていたところで,複数の太いスト―リーを並行して書いていき,途中で混ぜ合わせ,叙述トリックはサスペンスを盛り上げる要素とするという作風を確立させた作品とのこと。確かに,今後に書かれた「○○者」シリーズに通ずる作品のように思えた。
個人的な感想をいうと,折原一は,やはり初期の作風が好みであり,多数のストーリーや作中作などの様々な文体を併せ,叙述トリックはサスペンスを盛り上げる要素とするようになってからの折原一の作風はあまり好きでない。読んでいる途中は面白いのだが,オチがそれほど面白くなく,読み終わってからがっかりする作品が多い。
異人たちの館もそうで,読んでいる途中は面白いのだが,オチの部分がイマイチ
この作品のメインプロットは「小松原淳」と「島崎潤一」を誤認させる叙述トリックだろう。小松原淳も島崎潤一も富士山麓の樹海で遭難しており,母親から「じゅんちゃん」と呼ばれている。島崎潤一の母親も,やや病的な人物で小松原潤一のアパートに忍び込んで原稿に手を入れるなどの奇行をしている。
小松原淳の父親が「ジョージ」という外国人で連続幼女殺人事件の犯人。小松原淳をイジメていた少年なども殺害しており,小松原淳に殺害されているというスジは折原一らしいというか,かなり無茶なスジ。その後,ユキとの関係を責められ自殺しようとした小松原淳が,実は生きており,小松原家に帰ってきて地下室で生活をしているという展開も,折原一らしいと思うけど,かなり無茶なスジである。
最後に小松原淳が島崎潤一の作品を乗っ取ろうとして,島崎葵(島崎潤一の母)とユキの逆襲に会うというオチがなんとも弱い。小松原淳の父が外国人のジョージで,謎の異人が小松原淳だということが,ラストに至るまでの段階で分かっているので、最後の終わり方がさっぱり意外性がない。
トータルで感じることは,冗長だということ。読んでいるときは,サスペンス感があるのでそれほど感じないが,読んでから振り返ると冗長さを感じる。作品を支えるプロットが小松原淳と島崎潤一を誤認させる叙述トリックと,小松原淳の父がジョージという外国人で連続幼女殺人事件などの犯人だったということ。ジョージが外国人だったので,小松原淳もハーフで異人だとして登場していた人物が小松原淳だったというところ
いくつかの作中作もあり,それらも若干スジに絡んでいるが,さほど効果的でない。作中作はなくても全体に影響がない。これも冗長さを感じさせる。読んでいるときは,もっと大きな伏線があるのかと思って読んでいるので,最後で作中作にあまり意味がなかったと分かると拍子抜けしてしまう。
トータルの評価としては,ギリギリ及第点というイメージの★3。
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以前、著者の『失踪者』を読んだら、面白くて。
そのすぐ後、本屋に行ったら、これの講談社文庫版が並んでいたので買って読んだことがある。
その時は、『失踪者』と比べたらイマイチかなーと思っていたのだが、この本、なんでも著者のマイ・ベストだとかで。
えぇー、そんなに面白かったかなぁーと、あらためて読んでみようと思ったら、とっくに絶版。
古本も、著者が「マイ・ベスト」なんて言うもんだから、猫も杓子も読んでみようと思うのか、えらく高いと。
その後の文春文庫版が出て、さらに数年。やっと古本の値段も下がったのと、久々に折原一モードになったので、読むころ合いはよしと読んでみた次第w
そんなこんなで読んだ感想は、あれ?こんな話だったっけ!?みたいなw
いや、大筋は合っていたんだけど、根本的な部分で記憶がごっちゃになっていたみたいで。
例の「お受験殺人事件」を題材にした話だと思っていたんだけど、「あれぇ、な~んか違う!?」とw
とはいうものの、「うーん。イマイチ、かなぁ…」という最初に読んだ時の印象は変わらなかったかなぁ…。
すごく凝った話になっていて、その辺は確かに面白いんだけど、悪役?犯人?敵役?がオールマイティーすぎるんだよね。
ま、物語の敵役というのは大概オールマイティーなもの、と言っちゃうなら、確かにそうなだけどさーw
でも、敵役のオールマイティーさに比べ、主人公(?)があまりに無力で。別に、そんなに入れ込んじゃうような主人公でもないwんだけど、それでも、読んでいてストレス溜まる!みたいなところがあるなーと思った。
つまりは、書く側の思い入れ=読者の面白さではない、ということなんだろう。
ただ、思い返してみても、大した展開があるわけでもないのに、約600ページを次々とめくらせちゃう不思議な面白さはあるように思った。
折原一は、最初に『失踪者』を読んだ時、すごく面白くって。
上にも書いたように、そのすぐ後にこの『異人たちの館』を読んだり、『~者』シリーズは出ると必ず読むんだけど、どれも『失踪者』を読んだ時ほどのコーフンを得られないんだよなー。
『失踪者』は、祭りのシーンも絡めたラストの緊迫感からくる興奮がよかったんだけど、折原一って、実はそういう作風ではないんだよね。
『~者』シリーズはほぼ全冊、その他も数冊(有名な『倒錯のロンド』はたぶん好みじゃないので読んでない)読んで、やっとそれに気づくって遅すぎだろ!と自分にツッコミを入れた(爆)
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これまで手を出したことがないジャンル
著者のあとがきまで読んでもう一度思い出すと うーんなるほど みたいな感じ
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叙述ミステリーといわれる作品を初めて読みました。
随所で伏線が散らばれており、読みながら前のページに戻ったりなどしておりました。
年表があったため、とてもわかりやすく
最後にはそういうことか。なっていました。
各所で鳥肌を立たせながら、ボリューミーな作品ながら読みやすさがあります。
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どこかのサイトで紹介されてたのを見て買った一冊。
ゴーストライターの話だった。
タイトルに館とついていたので、綾辻さんの館シリーズみたいな館の中で起こるミステリーだと思っていたが違う内容だった。
ストーリーの中に小説があったり、年譜があったりモノローグがあったり今まで読んだ事がない作りの小説だった。
そうゆうのが、始め面倒な小説だなと感じたが、話の中では重要であり、年譜は物語を理解するのにはすごい便利だった。
モノローグはびっくりした。
あらら そっちの人の話かと
あらためて話を振り返ると2人の小説家はどちらも母親の過保護の元に育った人達なんだと思った小説でした。
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2022.1.21
所々のつたない大袈裟な表現とかが更に気味悪さを増して気持ち悪かった(褒めてます)
序盤の方が気味悪くて好みだったかも。
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2018年本屋大賞発掘部門「超発掘本!
樋口麻衣さんは、この本を読んで欲しくて書店員になったという。
こんなもの、面白くないわけがないということで
読み進めた訳でありますが
本当に面白くないことはなかったと言うところです。
なかなかの分厚さをもつ本でしたが
メインストーリー、インタビュー、モノローグ、作中作…
様々な語り口で展開されていく為、そこまで苦なく読めました。
展開やトリックなどについて私から何も言うことはございませんが、ただどうしても気になった部分と致しましては…特にこれといった理由なく主人公に惚れるヒロインでしょうかね。
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折原一は『倒錯の死角』に続いて2作目。
作家志望の島崎潤一は、新人賞は獲ったことがあるものの、小説家としてなかなか芽がでない。創作活動をする傍ら、生活費を稼ぐために出版社から依頼されてゴーストライターの仕事をしていた。
あるとき宝石店を経営する小松原妙子という女性から、彼女の息子である淳の伝記の執筆を依頼される。淳は前年の9月に失踪しており、未だ生死は不明だという。島崎は執筆のため、淳の部屋で彼の過去の資料を調べ始める。そして過去に彼に関わった人たちに話を聞くが、誘拐や殺人・事故など彼の人生には多くの不吉な事件が絡んでいて、その事件にはどれも謎の異人の影が付き纏う。
本文とは違うフォントで時々挟まれるエピローグは、場面が変わり、樹海に迷い込んで出られなくなった男の独白のようだ。彼は必死に救助を求め、母親を呼び、どうにか生きようとするがその命は既に消えかかっている。彼が失踪したという小松原淳なのだろうか。
600ページ近くの大作。
作者自身のマイベストである『異人たちの館』は、その厚さがまったく苦にならないくらい読み易い。と同時に常に、濃い霧の中を歩いているような先が見えない不安を抱かせる。影は見えるのに、それがなんなのか分からないというもどかしさ。
叙述トリックってパターンがあるから、最初からそれと分かって読むと面白さが半減してしまうのが残念だ。できれば知らずに読みたいと思うが、それもなかなか難しいだろう。
あと、無理矢理な感じがどうしても感じられてしまう箇所がある。そんなの不自然だよとか、ずるいよとか。この話もいくつかそう感じる節はあった。
それからあまりにも長い話だったので、最後の終わり方があまり印象に残らなかった。でも年表はとっても親切だと思う。ややこしい話だと、時々自分で作る場合もあるわたしには有り難かった。
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主人公視点のほか、別の主軸のストーリーがあって後半にそれがひとつになる構成がすごかった。色々な愛の形があるが、母から息子への愛は特に異常だった。
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これは誰が描いてる文章?誰目線?って思いながら読み進めていくとだんだんストーリーが繋がってきて、あぁこれはこの人目線だったのか〜、ということは、このあとにこういう状況になるのか…
って考えながら読んでるとなんかズレがある…
って一気に引き込まれた!
謎解いたつもりが解けてなくて、何度も考えがひっくり返されて、登場人物がすごいかき乱してくる笑笑
進んだと思ったら戻ったりするし、人もたくさん出てくるから、途中頭の整理が必要になる
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樹海で行方不明になった小松原淳の伝記を書いて欲しいとゴースライター島崎順一の元に依頼が。伝記のための取材をしていく中で不可解な事件の数々、不審な影。島崎はゴーストライティングの中で何に出会うのか。
折原一さんの作品は初めてでしたが、読みやすさと伏線回収の数々、そして叙述トリックの爽快さが良かったです。こんなにスラスラ読める作品は東野圭吾作品以外で初めてかも。600ページの大作ですが、あっという間に読破できました。
モノローグや時系列表などあまり小説で見かけない描写に最初は違和感あったけど、読み返しやすくてページ数の多い作品にありがちな伏線確認しにくいというデメリットをカバーしていた。
ただラストがちょっとしっくりこなかったのが残念!全体的に良作だったので、★4で!
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サスペンスとしては間違いなく一級品であり、著者が得意とする、短編小説や日記を挟み込む形式の多重文体も存分に発揮されている。
しかし、折原一の作品ということで、自分は後半での叙述トリックによるどんでん返しを期待しすぎていたのかもしれない。
この作品にも確かに叙述トリックは使われているが、驚きはあまり大きいとはいえない。
期待が大きすぎただけに、少し残念だった。
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地元の素敵な書店員さん激推しの本だったので読みました。
だいぶ昔の本だけど、のめり込んで読みました。
ミステリーはドキドキするから苦手だけど
やっぱり面白い。
夜に読んだら眠れなくなる。
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期待していなかっただけに面白かった。かなり凝っていると思った(年譜、インタビュー、小説中小説、モノローグの組合せ)
失踪した息子の伝記を作り、自費出版したいというスタート自体非現実的と思ったが、請け負ったゴーストライターの島崎とその息子の小松原淳、その二人の両母親(メインは小松原の方だが···)、小松原淳の妹との輻輳する関係が面白かった。
どうも「新潮ミステリー倶楽部」というシリーズがあるらしく読んでみようかな?
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著者の作品は初読みとなりましたが、2018年発掘部門「超発掘本!」、いやいや読み応えありました。
1993年に発刊された作品の為、昭和を彷彿させる雰囲気がプンプンする中、600Pに及ぶ大作の中には多重文体、現実にあったB級事件、叙述トリックにサスペンス...いやぁ〜これでもか〜って感じで詰め込まれていました。
本作の特徴は多重文体だと思いますが、それがハンパなく盛り込まれてどんどん本筋の間に差し込まれて(遭難者のモノローグ、島崎潤一がまとめた小松原淳の年譜、淳の関係者へのインタビュー、淳が書いた短編小説…)おり、見事に混乱させられます^^;
本作の主人公はゴーストライターの島崎潤一。
富士の樹海で見つかった白骨遺体、近くの洞窟から見つかった小松原淳という若者の免許証、こんな感じで本作の幕は上がります。
小松原淳は疾走しており、母親は島崎に淳の伝記をまとめるように依頼をし、島崎が淳の生い立ちからどんな人物だったのかを淳が残した物と関係者への取材でまとめていくのが大筋のストーリー。
淳の幼少期に起こった誘拐事件に父親譲治の疾走、それぞれの事件にかかわる謎の背の高い不審な男の影...
淳の妹ユキ。
謎が謎を呼び、過去と現在がクロスする中、物語は思いもよらない結末をむかえる。
説明
内容紹介
富士の樹海で失踪した息子・小松原淳の伝記を書いて欲しい。
売れない作家・島崎に舞いこんだゴーストライターの仕事。女依頼人の広大な館で、資料の山と格闘するうちに島崎の周囲で不穏な出来事が起こり始める。
この一家には、まだまだ秘密がありそうだ――。
五つの文体で書き分けられた著者の初期最高傑作が甦る!
メディア掲載レビューほか
折原一のマイベストは、サスペンス小説の歴史の集大成だ
読み出したら途中でやめられず、最後まで読み通してしまうサスペンス小説は多々あるが、それらの中に、時代が経過しても古びた印象を受けない作品は果たしてどのくらい存在するだろう。折原一が1993年に発表した長篇ミステリー『異人たちの館』が、そんな貴重な1冊であることは確かだ。
作家志望の島崎潤一は、前年9月に失踪した小松原淳の伝記の執筆を、淳の母・妙子からの依頼で開始した。淳は8歳で児童文学賞を受賞した天才少年だったものの、その後は大成しなかったらしい。島崎は淳の過去を知る人々を取材して廻るが、彼の半生には誘拐未遂・失踪・殺人など、数々の不穏な事件が起きており、そのたびに謎の“異人"の姿が見え隠れしていた。そして島崎自身も何者かにつきまとわれる。
淳の過去を調査するうちに次々と意外な事実が発覚し、冒頭から漂っていた不気味な雰囲気は次第に濃密なものとなってゆく(BGMのように作中を流れる童謡「赤い靴」も効果的)。作中には取材対象者の証言、淳が執筆した小説、何者かのモノローグなどが入り乱れ、読者を奥深い迷宮へと誘う。極度に技巧的な構成、さまざまな文体の使い分け、登場人物の造型に滲む異常心理、巧妙かつ大胆な伏線など、海外サスペンス小説を愛好してきた著者がそこから学んだ数多くの美点を一作に凝縮したような小説に仕上がっている。その意味で本作は、サスペンス小説の歴史の集大成であるとも言えるだろう。
著者本人が自作のマイベストと評価している本作は、2016年に刊行された文春文庫版を含め3度も文庫化されている。まさに不朽のサスペンス小説なのだ。(百)
評者:徹夜本研究会
(週刊文春 2017.3.30号掲載)
内容(「BOOK」データベースより)
8歳で児童文学賞を受賞し天才少年と呼ばれた小松原淳は、なぜ富士の樹海に消えたのか?母親の依頼で淳の伝記を書くことになった作家志望の島崎は、膨大な資料を読み、関係者に取材して淳の人生に迫るが、やがて不気味な“異人”の影が彼の周辺に出没するようになり…。著者畢生の傑作がここに復活!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
折原/一
1951(昭和26)年生まれ。早稲田大学卒業後、編集者を経て88年に『五つの棺』(後に改作して『七つの棺』)でデビュー。95年には『沈黙の教室』で第48回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)